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二十七  刑事ドラマ

 駒井が持ってきたピンボケ写真は、全く見覚えがない男だったが、乗り掛かった船だし、知らないだけでは済ませたくない。

「この男がどう関係してるの?大男の仲間?」

駒井に聞くと、ちょっと困った顔をした。

「ん〜。マコトさんと祝ちゃんだから良いかな〜。まあ、聞かなかったことにしておいて欲しいんですけど。」

駒井は椅子に座り直し、

「あの大男は、斉藤と言ってつい最近、出所したんです。」

「えーっ。い、いわゆる、む、務所帰り、、、。」

「まあ、そうだけど。務所帰りって祝ちゃん、刑事もの見過ぎだよ。」

マコトさんは笑いながらも、シーっと指を口に当てた。

「あ、すみません。」

茶々を入れたらいけないと、私も口を手で覆った。駒井は話を続け、

「この写真の男は、生方うぶかた。麻薬などの取引の仲介役のような存在です。斉藤は生方とは違う組織の運び屋です。」

「運び屋!そんな人が、どうして、千花ちゃん家にいたの?」

あ、また口出しちゃったと、口を押さえた。

「マコトさんは知ってると思いますが、千花さんのお母さん、フィオさんはイタリアとのハーフ。たまたまフィオさんが里帰りしていた時にイタリアの空港でトイレを探していた斉藤に親切にトイレの場所を教えたそうです。その後、同じ飛行機で、日本に到着した。」

「それで?」

「フィオさんの荷物は、キャビンアテンダントが持つような小ぶりなスーツケース。実家に帰るんだから、旅行者のような大荷物は必要ないからね。日本の空港でフィオさんはスーツケースを受け取ろうと待っていたが、いっこうに自分の荷物が出てこない。そこで、空港職員に自分の荷物が無い事を訴えた。もう一つ大きさが同じようなスーツケースは残ってたが、フィオさんの物ではなかった。結局、荷物は見つからなくて、そのまま帰宅したんだが、帰り道、斉藤に襲われたんだ。」

「えー。どうして?大丈夫だったの?」

どうしても黙ったられなくて、大きな声を出してしまった。

「うん、大丈夫。その後。残った荷物が不自然で空港警察が調べたんだ。」

「どうして不自然?」

「フィオさんは実家に帰るから、小さな荷物。普通の旅行者なら?」

「そっか。イタリアだもんね、熱海とかに行くんじゃないんだもの、普通は大きなスーツケースってことか!」

「だね。だから小さなスーツケースを不審に思って空港警察は調べた。荷物の中から、合成麻薬が入っていただろう袋が見つかた。中は空だったけどね。空港警察は荷物を取り違えられたフィオさんにもう少し事情も聞きたかったし、危険かもと思って、後を追いかけた。そこに斉藤がフィオさんを襲ってきたからその場で逮捕した。」

「ん?なんで襲ってきたの?それに、務所帰りの斉藤が、なんで今更千花ちゃんとこにいたの?わかんない。だって、自分が間違えて、それで逮捕されて、なんで千花ちゃんの所に来たの?話は終わってるでしょ。」

駒井は、ニヤッとして、

「そう。いくら斉藤が慌てたとしても、さすがに自分の荷物ならフィオさんの荷物と、とり違えるなんて、おかしいよね。」

「うん。大きさが同じくらいくらいじゃ間違えないよ。」

「その通り。初めから斉藤の供述は矛盾があった。そこで、防犯カメラを確認したら、同じ大きさのスーツケースがもう一つあったんだ。全部で三つ。」

「なるほどね。」

マコトさんはわかったみたいで、頷いたけど

「うん?わかりません。何がなるほどなんですか?」

「取引したって事よ。」

マコトさんはそう言ったけど、まだ理解してない私を駒井が見て。。

「そう、取引に使ったんだと思います。祝ちゃん、密輸するなら、今時スーツケースに大量な麻薬を入れたりしないだろ。」

「ん。手荷物検査されたらバレちゃうし。バレないように少しだけ?」

「ピンポン!正解。」

ふふ、なんだろう、ちょっと嬉しい。

「大きさの同じ小さめのスーツケースで、一つには合成麻薬。もう一つには代金。日本に到着後、お互いがその荷物を交換して持ち帰れば取引が成立。だが、斉藤は同じようなフィオさんの荷物を間違えて取ってしまった。」

「そっか。イタリアの空港で接触してるから、フィオさんの小さなスーツケースを見ていたかも。それで、自分が間違えたもう一つの小さめのスーツケースをフィオさんが持っていると思い襲った。」

駒井は頷いたけど、

「斉藤は取り調べでも、裁判でも、スーツケースの事を一言も供述してないんだ。自分は、ただフィオさんに馬鹿にされたから襲ったんだと。」

「何それ!」

「斉藤は大きな組織に属していた、組織ならこんな不確かで小さな取引はしない。って事は?」

「組織には内緒の密輸!」

「まあ、内緒かはわかんない。」

「えー。」

正解じゃないのが悔しい。

「大きな取引のついでに自分も小銭を稼ごうとしたってとこかもしれない。」

「やっぱ、内緒じゃん。」

マコトさんが、まあまあと私をなだめてくれた。ただ私は疑問に思った。

「でも、現金を沢山持ってたら、それだって税関で見つかるでしょ。」

「そう、だから今時は?」

「暗号通貨!」

「大正解!と言いたいところだけど、、、。」

「あ、そっか。今更千花ちゃんのとこに来るような間抜けなヤツだから暗号資産は扱えないか。」

「たぶんね。」

「じゃあ、口座でも記した、えっと、USBとか、、かな?」

「大正解!と思うよ。」

「思う?ああ、斉藤の記憶か。」

「そうなんだ。前回の時は口を割らなかった。話してしまえば、組織から命を狙われるのは明らかだね。そして今回は記憶を失ってるから、現段階でその辺はハッキリしない。残ったスーツケースの中に確かにUSBはあったんだが、中身は空。何もなかった。」

マコトさんが、

「取引相手は、初めから支払う気なんて無かったってことね。」

「だと思います。でも斉藤はそう思ってない。今は斉藤に記憶はありませんが、千花さんの家に侵入した時、USBを預かっているだろっと聞いたそうです。なので十中八九間違いないです。」

私はこの写真の男がどう関係してるのか駒井に聞いたが、マコトさんは、

「写真の男が生方ね。斉藤の荷物をピックアップした。」

「そうです。たぶん合成麻薬入りのスーツケースを。」

「あ、わかった。ブツだけ持って行かれて、お金は受け取れなかった。組織に内緒だから、務所にいる間は命の保障があったけど、出所した今は組織からも追われる。それで斉藤は焦って千花ちゃんを襲った!。」

マコトさんがよくわかって、偉いって頭を撫でてくれたけど駒井は

「祝ちゃん、ブツってー。ホント、刑事ドラマ見過ぎだよ。」

良いじゃん、刑事もの、大好きです!



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