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二十六  そっか、そうだった

 マコトさんに聞きたい事があったけど、ペッコペコのお腹が、卵サンドを食べることを優先させる。

「祝〜。本当にお腹空いてるのね。慌てない、慌てない。よく噛んで食べなさいよ。」

「う、、、あ、はい、、。」

卵サンドを頬張り過ぎて、返事するのもやっと。それでも一つ食べ終わる頃には、なんだかお腹いっぱいな気がした。

 マコトさんは、「右腕使えないでしょ。」

と、スプーンとフォークを持って来てくれていた。なんて気がきくんだろう。

「ありがとうございます。」

しばらく人の優しさに触れていなかったからかな、泣けてきた。

「ちょっと。泣かないの。」

「だって、、、。」

「まだ気持ちが、たかぶってるんだね。食べたら少し寝なさい。」

「、、はい。」

 マコトさんの事をスラリとして、綺麗でモデルの様な女性、そう思っていた。

男性と分かった今でも、優しい言葉遣いやもの腰に、お姉さんの様だと素直に甘えたくなる。

コーンスープが冷めない様にと、スープジャーに入れてきてくれている。卵サンドも手で食べやすいからと選んでくれたに違いない。

腕はどす黒くなってショックだし、けっこう痛みもあるけど、マコトさんとの優しい時間が心地良い。

 そんな優しい時間が流れてる中に、

「祝ちゃん。どう?眠れた?」

駒井がやってきた。朝から見たくない、全く見たくない顔。だからめっちゃ不機嫌な気持ちをそのままぶつけて、

「眠れなかった。寝るから、帰って!」

ぶっきらぼうに言葉を投げつけた。

「なになに、食べてるから、寝ないでしょ。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、聞きたいことがあるんだ。お話聞かせて。」

「私には、話すことない。」

「そんな、連れないこと言わないで、ちょっとだけ。」

ふん、っと思ったけど、入ってきた駒井は昨日と同じスーツを来ていた。

さっきまで夏乃さんが座っていた椅子に座ると、駒井のお腹がグーっとなった。駒井の存在はどう考えても頭にくる、でも、

「もー、、はい。一つあげる。」

「え、」

「お腹空いてるんでしょ。」

駒井は、驚いた顔してたけど。

「い、いや。い、いいよ、大丈夫。お腹空いてないから。ホント、全然大丈夫。祝ちゃん、ちゃんと食べないと。腕、回復しないよ。」

アレ、駒井のくせに、優しいこと言う。

「駒井ー。無理しちゃってー。お腹、なってたじゃん。」

「お、お腹はなっても、お腹いっぱいだから。大丈夫。」

って言いながら、また、グーって。

お腹は正直だ。

「マコトさんが持って来てくれたの。本当は私の朝ごはんだけど。だから一つだけ。それ以上はあげない。」

駒井は、マコトさんの方をチラリと見た。

「コマちゃん。祝がそう言うんだから、いただけば。痩せ我慢したら、コマちゃんのお腹が可哀想よ。」

マコトさんの笑顔を見て、駒井は申し訳なさそうに、

「良いんですか、ホントに、、。んー。祝ちゃんありがとう。実は、腹ペコなんだ。めっちゃ嬉しいー。ありがとうございまーす。」

本当に腹ペコそうだったから、お初で私だって堪能したかったけど、ボリュームのあるハムサンドを分けてあげた。そして、

「これで、貸し百一だかね。」

そう言って渡したけど、駒井ったら、

「それでも良いです。」

って、ハムサンドにがっついている。

警察も大変なんだな。マコトさんもポケットから缶コーヒーをあげていた。駒井は食べ終わると、

「あー。生き返ったー。美味しかったー。ごちそうさまでした。」

缶コーヒーを飲んで満足そうだけど、動き回っていただろう駒井が可哀想で、大好きな卵サンドも分けてあげた。

「それで、人の朝食を邪魔してまで聞きたいことって!」

卵サンドも食べ終わった駒井は、

「本当にごちそうさまです。祝ちゃんはツンデレだね。1秒前まで、めっちゃ優しかったのに。」

「何よー。帰れ駒井!も〰️、卵サンドあげるんじゃなかった!」

「あー。ごめんなさい、ごめんなさい。本当にありがとうございました。夜もカップラーメンだけだったし。栄養偏っちゃって。本当に体も喜んでるよー。」

調子いいヤツ。警察よりもホストに向いてそうだ。

「一つだけ、それだけ聞いたら即帰るか。」

そう言ってポケットから写真を出した。ピンボケを修正したような写真。どこかの防犯カメラのよう。

さっきまでとは違う真剣な顔をした駒井が、

「この男を知らない?昨日だけじゃなくて、最近、千花さんの家の周りで目撃しなかった?」

そこには細い金縁のメガネをかけ、右耳にピアスを2つしている、目つきの悪い男が写っている。

「んー。知らない。見たこと無いな。」

「この男、もしかしたら、長髪になってるかもしれないんだ。どうかなー。もう一度、よく見たら思い出したりしないかなぁ、、どう?。千花さんの家の周りをウロつくとかなかったかな?」

よく見たけど答えは同じ。

「わかんない。それに私、マコトさんのとこに来たの、三日前だし。マコトさんと夢ちゃんに初めて会ったの、クレに初めて行った四日前。クレに行った次の日に初めて千花ちゃんと話したから、良くわかんない。」

「はっ。待って、待って。じゃ、じゃあ、ハルさんとは?ハルさんとはいつから知り合い?」

「ハルさん見かけたのは、四日前にクレに行った時にナポリタン食べてたの見かけたのが初めてだよ。話したのは、その次の日。だから、三日前。三日前からの知り合い。」

「はあー。マジで?そんなつい最近知り合った人たちのために、腕がもげそうなくらいラリアットして、100キロの大男を命懸けで倒したの?」

「ん〜確かに。そっか、マコトさん達の事、五日前までは全く知らなかったんだ。」

そんな私に、駒井は呆れた顔で、

「祝ちゃん。それホントなの。ちょっとお人好しすぎる。本当にお人好し。信じられない。走って逃げて良い事案だよ。あんな大男に?殺されてもおかしくなかったんだよ。それを見ず知らずの人の為に、命懸けでラリアットするなんて、、。はー。いやいや、僕が女の子だったら絶対に走って逃げる、近寄らないよ。ラリアットなんて、絶対にしない。」

なるほど、言われてみればそうだけど、

「見ず知らずじゃ無いもん。確かに四日しか経ってないけど。ハルさんだって、千花ちゃんだって大切って思ってるもん。てかさ、なんか、駒井ー。どさくさに紛れて、ラリアットって言いたいだけなんじゃないの!」

真剣に聞いていたマコトさんが笑い出したけど

「本当にそうね。なんだかずっーと前から祝と一緒に暮らしてる気になっちゃってたわ。」

あー私も同じ気持ちなんです。

だからマコトさんのその言葉は、とっても、とーっても嬉しかった。




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