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十三 ケース1 大村 奏

 私が終止符屋に来て初めての依頼人は、姉との関係を終わらせたい、大村おおむら かなで

初めは緊張からだろう、オドオドしていたが、一旦話だすと関を切ったように話しだした。

「私は大村奏と言います。四人家族、二人姉妹の次女です。関係を終わらせたいのは、姉の由美子です。姉とはひとまわり離れていて、つまり十二歳違います。私と姉は血が繋がっていますが、父と姉に血縁関係はありません。姉は、母が十八の時の子供で、父とは姉を連れて再婚しました。姉が十二の時です。私はずっとそのことを知らずに育ちました。母は、私が十歳の時に他界して、その時二十二歳だった姉と離れて暮らすことになって初めて、姉が連れ子だったことを知りました。」

そこまで言うと一旦水を口にして、一つ息を吐き

「私はまだ、十歳だったし、母を亡くして寂しくて、その上姉までが目の前にいなくなってしまうことに耐えれなくて、泣いて一緒にいてほしいとお願いしたんですが、どうしても一緒には暮らせないと、出ていってしまって。それでも私を可哀想と思ってくれたのか、父に内緒で時々会ってくれていました。」

私は、不思議だった。どうしてそんなに慕っている姉との関係を終わらせたいのか。幼い頃、母のいない寂しさを埋めてくれた優しい存在なら、これからも姉妹でいたいはず。どうしてと聞きたかったが、マコトさんからも、春吉さんからも念を押されるように、見ていればいいと言われた言葉を思い出して、我慢した。依頼人の奏さんがため息をついたのを見て、マコトさんが声をかけた。

「そう。」

「はい。優しい人です。」

「でも、終止符を打ちたいのね。」

「、、、はい。」

「話してくれるかしら。」

奏さんは、またため息をつくと

「わ、私も春から社会人になるし。その、、、もう子供ではないので、、、か、干渉してほしくないというか、、えっと。」

さっきまでと打って変わって、なんとも歯切れが悪い。

「奏さん。誰かとの関係に終止符を打つのは簡単ではないの。」

「、、、。」

「自分では終止符を打てない。できない理由も人それぞれで、自分の中ではその理由もわかっている。わかっているのにどうする事もできない。でも誰かの手を借りてでも終わらせたい。」

「、、、はい。」

「私たちはお手伝いをするだけです。終わらせるのはあなた自身なのよ。」

「、、、私、、自身。」

「そう。だから、ここではあなたの本当の終わらせたい理由を話してほしいの。そうでないとあなたもその心に終止符は打てないわ。」

マコトさんは穏やかだった。思い詰めてここに来ている。ここにくるまでにもたくさんの葛藤があったに決まっている。その人の口を開かせるのだから、私みたいな己のことしか考えていない者には到底出せないほどの穏やかさで語りかけている。

「そうですよね。、、はい。お話します。」

奏さんは座り直すと

「えっと、、、。ん。えー、父は母より三つ年下です。姉と父は十五歳違いで。その、、、。」

決意するように座り直した奏さんだったが、話しにくそうな様子は変わらなかった。

「その、、、父が言うには、姉は父に、、、その、、親子以上の感情を抱いていると。母が亡くなった時にはわかりませんでしたが、今は少し思い当たることもあって、、、。」

マコトさんは静かに聞いていたけど、

「それで、どうしてあなたが終止符を?お父様はなんと言っているの?」

確かにそうだ。お父さんとお姉さんが関係に終止符を打ちたいならわかるけど、奏さんがどうしてだろう?

大体それって本当なのだろうか?親子以上の感情を持っているのは父親の方じゃないのか!再婚相手の連れ子にってよくある話だ。自分の娘を騙して、良い父親ヅラしたいだけなんじゃないか?

「父は今、海外です。私がいけないんです。姉の気持ちを知らなくて、また一緒に暮らしたいって言い続けちゃって。姉は諦めるために家を出たと思うのに。それで、父は日本に居られなくくらい追い詰められて。父がいなくなった事で、姉は私に、、その、、ものすごく執着するよになってしまって、、。私から姉を求めていたのに、、もう苦しくて、、、。」

マコトさんは立ち上がって、奏さんの隣に座ると

「ちゃんと自分の気持ちに向き合えた。」

奏さんの話、信用したんだ。なんだか意外だった。

マコトさんは奏さんの肩にそっと手を添えて、静かにさすっている。奏さん頬に涙が伝わって次々と溢れて落ちた。

 少し奏さんが落ち着いてくると、マコトさんは席を立って、また奏さんの斜め前に座ると

「では、具体的な話をしましょう。」

マコトさんは全面的に奏さんの話を信じたのだろうか?私はやはり納得がいかない。海外逃亡する奴の事なんて、信用する気になれなかった。




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