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2作品目の第1話になります!
楽しんで頂けたらうれしいです!
今推しである、アーデンベルトの腕に中にいる。
頬には鍛えられた胸筋が当たっている。
そして、アーデンベルトが私の髪の毛に鼻をうずめる。
「カトレ……、君の髪はまるではちみつのように甘い香りがする」
「団長!まだ髪の毛洗っていないので、あまり嗅がないでください」
そう言って、アーデンベルトを見上げた。
翡翠の美しい瞳と目が合う。
あぁ、なんて美しい瞳なんろう……。
アーデンベルトに見とれてしまった。
「そんなとろんとした表情をされては……」
そして、推しの美しい顔が近づいてくる。
おでこに温かく柔らかい感触がふれた。
「……!?団長……!?」
次は頬に触れた。
「だ……、団長!?」
「あまりしゃべると、次は口を塞ぐぞ?」
アーデンベルトは形の良い唇の口角を上げた。
「……!?」
驚きのあまり固まってしまった。
アーデンベルトの熱のこもった瞳と絡み合う。
「そんなに怯えるな。今日はこれ以上しないよ」
「私の愛しい人……」
そう言ってアーデンベルトは私の髪の毛にキスをした。
えぇぇぇぇぇぇぇ~!?
ちょっと待って!このシーンにこのセリフって……。
推しとヒロインの甘々シーンじゃないの~!?
どうして私が~!?
◇◇◇◇◇◇◇
チョキチョキ……
ハサミで何かを切る音がする。そして、高いところから、何かが床にハラリハラりと落ちていく。
彼女は鏡を見ながら、その手を止めない。
「おおおお、お嬢様~!何をなさって~!おやめ下さい~」
「エリサ、もう私決めたの。止めないで」
私は腰の下まで伸びた、美しいブロンドの髪を躊躇なく切っている。しかも、サイドは耳が出ており、後ろは襟元ギリギリまで。
ロングヘアから、ショートカットへ。
チョキン!
最後の一房を切り終えた。
「お嬢様~!!」
バタッ……。
侍女のエリサがショックのあまり倒れてしまった。
「エリサ!大丈夫!?」
頭はうってないわね。
私はエリサを壁まで運び、壁に座らせる。
「ごめんね、エリサ……」
パサッ……。
生地はシルク、ピンクの花柄の美しいドレスが足元に落ちる。
次にコルセットが落ちた。
豊満な胸はをさらしでまき、シンプルな前開きシャツとズボンを着用し、ブーツを履く。
前から用意しておいた置き手紙をテーブルの上に置き、2階の窓からロープを垂らす。
今は夜なので誰も外には居ない。
グローブをして、慎重に2階から下に降りる。
着陸成功……。
しばらく、さようならお父様お母様、エリサ……。
結婚前にどうしてもやらなきゃいけないことがある。
いや、見届けなきゃお嫁になんかいけない。
馬を一頭拝借し、私は裏門からそっと出る。
「はっ!」
勢いよく馬は走り出す。
王都まで馬で1時間。私はひたすら走り続けた。
◇◇◇◇◇◇◇
ここは王都にある騎士団本部である。
その正門の前には、たくさんの人だかりが出来ている。
「まだ入団希望者はいるか~?もうすぐ締め切るぞ~!」
「はい!います!」
カトレーヌは大柄の男たちの間をやっと抜ける事が出来た。
あまりにも入団希望者が多く、受付にもたどり着けないなんて……!
みんな入団前から体でかすぎない!?
「キミ、名前と年齢は?」
受付のいかにもチャラそうな男が尋ねる。
「カ……、カトレ……。1……4……歳……です」
「ずいぶん息切れてんな。大丈夫か!?」
「はい!大丈夫……です!」
嘘です。本当はめちゃめちゃ苦しいです。
でかい男たちを押しのけて、ダッシュしてきましたから。
すべては推しに会う為!!
この世界が私の大好きな乙女ゲームだと気づいたのは、一週間前の出来事。
お風呂で寝てしまい、溺れかけて起きたら前世の記憶を取り戻したのだ。
よくある転生というやつだ。
まさか自分が!?とマンガやラノベの主人公が言っていたが、本当にそうなってしまった。
私は侯爵家の長女でカトレーヌ。年は18歳。
髪の毛はブロンドで、少しウェーブがかっている。
瞳は色素の薄い茶色。まつげは長く、瞳はそこそこ大きい。
唇は割とぷっくりしている。まぁ、そこそこ可愛い言われる。
というか童顔なので、子供っぽく可愛いと言われる。
背は高くなく、小柄だが出てるところは出てる。
貴族女性だから足を出す事はないが、結構美脚だと思う。
侍女にもよく褒められた。まあ、お世辞半分だろうが……。
童顔なのに豊満ボディがチグハグで、私はそこがコンプレックスなのだ。
顔と体があっていない……。
兄弟は1個下の弟が1人。兄弟仲は普通だ。弟は今進学校で寮生活を送っている。
そして私は特定の婚約者はいないが、そろそろ結婚しなければいけない。
うちの侯爵家はそこそこ財力もあり、さらなる発展のためにも有力な貴族との結婚が大前提。
厳格な父にもそう言われて育ってきた。
はやばや婚約者を設けなかったのも、父なりにかなり吟味している様子。
夜会にも積極的に参加させられて、格上の家と交流するように言われきた。
そして、前世の記憶を取り戻した私。
大好きだった乙女ゲーム「あなたの優しさに包まれて」の世界。
内容は女性嫌いな堅物騎士団長が、ヒロインと出会い恋をし、ヒロインを溺愛していくという話。
ヒロインは 癒しの力を持つ、ヒーラー。魔獣の討伐で2人は運命的に出会う。手傷をおった推しが、ヒロインのヒーラーにたすけられるのだ。そして、2人は恋に落ちる。
無口で、クールイケメンな騎士団長!!それが、彼女の前だけは甘々になるのが、もうギャップ萌え!!
推しは私の大好きな黒髪でシャープな顔!瞳は美しい翡翠色。そして、長身で鍛えられた筋肉!!
ゲーム中では、騎士団の訓練風景は上半身裸のシーンや入浴シーンも多くあり、腐女子にはたまならい仕上がりだったのだ!!
1話ごとに必ず筋肉シーンがあり、もうたまりません!!
その推しが同じ世界にいると知ったのなら!!
なんとしても会わなければならない!!
いや、みるだけでもいい!1年!推しの幸せをこの目で見守りたい!あわよくば筋肉を見たい!
推しがヒロインと結婚するまでの1年間。全力で2人を見届けたい。
私は身近で推しを見るために、騎士団の入団試験を決意し今日に至る。
もちろん、女性は入れない世界なので、男装してになる。
背は小さいが、騎士団は14歳から入れる為、まだ少年と偽れば何とかなる。
推しとヒロインが出会うのが1ヶ月後。
「だいぶ落ち着いてきたかな?」
チャラい受付の男が声をかけてくれた。
「はい!もう大丈夫です!!今日はよろしくお願いします!!ボク、なんでもやります!!絶対に入りたいです!!」
カトレーヌは受付の者に頭を下げた。
「ははは。それを決めるのは団長だよ。さぁ、中に入って。受かるといいな」
受付の人がウインクして、背中を押してくれた。
騎士団だから、無骨な人の集まりかと思ったけど、こんな気さくな人もいるんだ!よかった~。
カトレーヌはほっと胸を撫で下ろす。
「おい、そんなひ弱な子供も通すのか。もう少し、受付で絞ってもらわないと困るぞ!」
この低くて、色気のある声は……。
カトレーヌは声の方を見る。
カトレーヌの瞳が大きく開かれる。
耳に少しかかるくらいの黒髪に、翡翠の美しい瞳。そして180㎝を超える身長に、簡素なシャツからもわかる強靭な肉体。
ああ、神様……。
ありがとうございます………。
バタッ……。
カトレーヌは幸せのあまり、にやりと笑ったまま気を失った。
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