第二十四話 過去編(アルフィアとの出会い)
俺が、第699階層を攻略していた頃――
「よし。通例通りなら、ここに強い魔物……階層主が居るな」
第699階層に降り立った俺は、今までの階層とは違う荒々しい雰囲気を感じながらそう呟いた。
階層主――それは俺が呼称したもので、100階層おきに出現する強力な魔物を指す。
また、そいつが居る階層には、俺が居なくても階層主を含めた大量の魔物が跳梁跋扈しており、今も――
「「「「「グルルルルアアア!!!!!」」」」」
「おらあああああ!!!!」
その階層に降り立った途端、既に待ち構えていた数多の魔物たちが、俺たちに襲い掛かって来た。だが、それらを俺は剣の一振りで薙ぎ払う。
「ふ~準備しておいて良かった」
「カタ、カタ、カタ……!」
そう言う俺の傍らには、数多の魔法を得意とするローブを羽織った骸骨の魔物――エルダーリッチ――に、《擬態》の技能で変身しているルルムの姿があった。
この階層に下りる直前、俺は自前の強化魔法を施すだけでなく、こうなる事を見越してルルムにも強化魔法を施してもらっていたのだ。
《擬態》した生物の種族特性を一部引き継ぐという強力な能力を有するルルムだからこそ出来る芸当。悔しいが、手札の多さに限れば、俺はルルムに完敗する。
「さてと。そんじゃ、さっさと行かんと」
もたもたしていたら、直ぐに魔物が群れを成してやって来る。
それを身をもって理解している俺は、即座にルルムとロボさんを連れ、走り出した。
そして――殺し、彷徨い、殺し、彷徨い――
下へ行くにつれて広大となっていく階層を、多少の構造変化も念頭に入れながら捜索すること――数週間。
遂に、その姿を見ることとなる。
「なるほど。ドラゴンかぁ……」
前方の広場で、周囲に居る魔物を惨殺する、今までの魔物よりも数段上の魔物――ドラゴン。
体長は50メートル程と結構大きく、赤い線が入った漆黒の鱗を身に纏っている。
風格や場所からして、あれが階層主で間違いないだろう。
「流石に見とくか。【真理を見通せ――《鑑定》】」
隙が生まれるし、わざわざやらなくても強さぐらい分かるという理由で、戦闘においては意外にも使ってこなかった《鑑定》を、俺はあのドラゴンに行使した。
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【名前】無し
【種族】古代龍
【年齢】184歳
【レベル】1815
【状態】健康
【身体能力】
・体力17480/20180
・魔力17980/21920
・筋力21310
・防護21920
・俊敏16340
【技能】
・苦痛耐性・魔力操作・自動再生
・暗視・気配感知・殺戮
・視力強化・聴力強化・威圧
・魔闘技
【魔法】
・火属性・風属性
【固有魔法】
・無し
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「おいおい。予想出来てたとは言え、強すぎだろ……」
純粋なステータスは、俺のほぼ倍。そこに魔法が加われば、素の俺じゃまず手が付けられないだろう。
だが――問題無い。
それだけ、俺の魔法――そして仲間が優秀なのだ。
「グルルア!?」
直後、古代龍がこっちに視線を向けた。だが、これは《鑑定》を使ったのだから当然の帰結。
俺は動じることなく、直ぐに動いた。
「ロボさんは壁を。ルルムはそれまで全力の溶解液で足止めを」
俺は即座に指示を出すと、詠唱を始めた。
直後、100メートル先から放たれた特大の炎の息吹が、俺たちに襲い掛かって来る。
「きゅきゅきゅ~~~~!!!!!」
だが、スライム形態になったルルムが、全力で紫色の溶解液を噴射し――相殺した。
「きゅ~……」
だが、俺と同等クラスのルルムが、全力とは言え速攻で放った溶解液で相殺するのは中々無茶だったようで、かなり消耗した様子だ。
それでも――時間は稼げた。
「【――《完全障壁》】」
ロボさんの障壁が発動し、続く追撃から俺たちを守った。
その間に、俺は魔法の詠唱を進めていた。
「【自然の神秘をここに。永遠に滅ぼせ。顕現せしは――】」
そして、ここで一旦詠唱を止め、全力で魔力を練り始める。
あいつを倒すのに、生半可な攻撃では意味が無い。
最初からドデカい一撃で――有無を言わさず撃破する。でなけりゃ、ああいう魔物は追い詰めたら追い詰めたで馬鹿みたいにしぶとく抵抗してくるのだから。
「グルアアァアアア!!!!!」
炎が渦巻く。風が渦巻く。爪が裂く。
その猛攻に、さしもの《完全障壁》にも罅が入り、悲鳴を上げていた。
俺の《拒絶領域》と違い、こっちは魔力の影響を受けやすいからね。強力な魔法の前じゃ、そう持たないのだ。
だが――それでも1分、持ちこたえてくれた。
なら大丈夫だ。
「よし――」
あと少しで壊れるという所で、俺は詠唱を再開した。
「【――万物を穿つ水の雫――《久遠の雫》】」
パリン!
詠唱の終了と同時に、破壊される障壁。
俺の――思い描いていた通りだ。
直後。
直径1メートル程の、膨大な魔力を秘めた水球が古代龍の上に出現したかと思えば――落ちた。
ゴ――
それは、古代龍を容易く貫き――風穴を開けた。
「ガ……ァ……ァ……」
身体に大穴が開いた古代龍は、俺でも分かるぐらい、驚愕に満ちていた。そして――バタリと力なく斃れ伏す。
「よし。後はとどめを刺すだけだ」
そう言って、俺は死に体となった古代龍を見やる。
すると、古代龍は頭をゆっくりとこちらに向けたかと思えば、まるで語り掛けるかのように、「グルァ、グルァ……」と鳴いた。
「自我が……あるのか? ルルムやロボさんと同じように?」
俺は理性のある瞳をじっと見つめながら、再び起こった異常事態に、前回ほどでは無いが、驚愕を露わにする。
「……あー【取りあえず、聞かせてくれないか?】」
俺は言葉に魔力を込め、簡易的なテレパシーの要領で、意思疎通を試みてみた。
これも、あれから成長した証。
すると、俺の言葉――というよりかは、思っている事が伝わったのか、古代龍は再び「グルァ、グルァ……」と鳴いた。そして、俺はその鳴き声に秘められた意思を、読み取る。
その結果――
「なるほど……『最期に圧倒的な力を見れた。妾は満足じゃ。さあ、殺すが良い』……か」
意思を読み取れた俺は、どうしたもんかと悩みだしてしまった。
流石に、いくら殺し合ったとは言え、既に敵意も戦意も無い魔物を殺すのは、ちょっとあれだな……
こいつを仲間に出来たら心強いし、仲間にならないか誘ってみよう。
「えー……【それは分かった……が、ここで死ぬのでは無く、俺の仲間とならないか? そうすれば、まだ見ぬ強者との戦いが楽しめるし……なにより、俺ともまた戦えるぞ?】」
あ、こいつ俺以上の戦闘狂やな……と思った俺は、そんな感じで上手い事説得を試みてみた。すると、俺の想いが伝わったのか、その瞳があらん限りに見開かれる。
そして――
「グルァ……ルァ……」
了解、と愉快そうに頷いてくれた。
だが、このままでは自動再生も間に合わず、死んでしまう。
そこで――
「ルルム。ホーリースカルになって、このドラゴンを癒してくれ」
「きゅ?……きゅきゅ!」
ルルムは不思議そうにしつつも、特に気にすることなく《擬態》で神聖な輝きに包まれる、浮遊する骸骨――ホーリースカルになると、そいつの十八番たる回復魔法で、みるみる内に癒していく。
「グルルアアア!」
身体が癒えた事で、古代龍は機嫌良さそうに咆哮を上げた。
そんな古代龍に、俺は早速名前を付ける。
「君の名前は……アルフィアだ」
「グルァ!」
そうして、新たに古代龍のアルフィアが仲間になるのであった。
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