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9 .国の成り立ち

ヴェルディグリ公爵家に住むようになってから日課になった訓練をするため、アイビーは裏庭に向かっている。

裏庭と言っても、屋敷の正門と反対側にあるだけだ。

明るいし、手入れは行き届いているので、広大な庭園と呼んでも問題ないとアイビーは思っている。


裏庭に到着すると、祖母のローヌがいつものように温かい紅茶を飲んでいた。

ローヌの服装や膝掛けが、日増しに分厚くなっているような気がする。

そういえば、昨日「そろそろ場所を温室に移してもいいかもしれないわねぇ」と訓練終わりに言っていた。


アイビーの装いは、動きやすいワンピースだ。

アウターに薄手のポンチョを纏っている。

薄手で軽いのに暖かいので、連日着用しているくらい気に入っている。


日々異なる服をという高位貴族の概念は、今まで最低必要枚数の洋服で過ごしてきたアイビーの前では成り立たない。


でも、「まずは何でも受け入れるように」とチャイブに言われているので、されるがまま着替えている。

ただ何を着ても似合う自信しかないから、動きやすさに重きを置いて選んでもらっている。


実際、何を着たとしてもみんな頬を染めて褒めてくれるし、可愛くおねだりすればアイビーが気に入った服を着せてくれている。


「アイビーちゃん、始めましょうか。まずは基礎の自然を感じるところからね」


公爵家に来て初めて知ったことだが、ごく稀に精霊魔法が使える人間が生まれるそうだ。

そして、アイビーは使うことができると言われたのだ。


精霊魔法については初耳だったため、ローヌに質問をした。

「精霊は分かりますが、精霊魔法って何でしょうか?」と。


微笑んだローヌから「精霊魔法を説明する前に」と、この国の成り立ちを教えられた。

チャイブから習っていたが、「おさらいしましょう」と始まったのだ。


セルリアン王国の歴史は、水の精霊と人間が恋に落ち、婚姻を結んだところから始まる。


夫婦は、名前もない村に住んでいた。

村の人たちも親切で、平和で穏やかな暮らしだったそうだ。


だが、水の精霊の力を我が物にしようとする者が現れ、水の精霊の妻を捕らえてしまった。

「妻を殺されたくなければ服従しろ」と脅されたのだ。


妻を助けたいが、心が醜い者の言う通りにはしたくない。

苦悩し嘆き悲しんだ水の精霊が仲間たちに助けを求め、火の精霊と風の精霊と雷の精霊が手を貸すことにした。


そして、戦わずに無事に妻を救い出し、もう2度と妻を奪われないために、村を拠点に国作りを始めた。

水の精霊が初代の王様となり、国を繁栄させるために協力した火と風と雷の精霊が後の3つの公爵家になる。


これが、セルリアン王国が精霊の国と言われている由縁である。


ちなみに、隣国アムブロジア王国の成り立ちは、瀕死の魔女を助けた青年と魔女が恋に落ちるが、両種族の苛烈な反対を前に2人は心中をしてしまう。

深く反省した両種族が手を取り合い興した国となるので、アムブロジア王国は魔法の国と呼ばれている。


アムブロジア王国では、王侯貴族は魔法を使えて当たり前なのだそうだ。

多種多様の属性が使えるそうだが、得意不得意があるようで、自然と使える属性が限られているらしい。

その中でも治癒を得意とする白魔法を使える者は、数百年に1人という割合でしか現れないそうだ。


魔法が使えて当たり前のアムブロジア王国に対抗するために、セルリアン王国で編み出されたものが魔術になる。


王家と公爵家は精霊の血を受け継いではいるが、必ずしも精霊魔法を使えたわけではなかった。

だから、人々は体内のマナを呪文に乗せて排出し、目には見えないがいるとされている精霊の力を借りて、魔法のような現象を起こす魔術を生み出した。


ただ魔術に関しても、使える者と使えない者とに分かれる。

実のところは解明されていないが、妖精が好むマナかどうかによって、使える者と使えない者に分かれていると言われている。


そして、使える者の中でも特に妖精に好まれる者は、魔法陣を手に刻印することで無詠唱が可能になる。

チャイブが無詠唱できる人物になり、アイビーの父クロームも無詠唱できる1人である。


魔術が使えるのは50人に1人の割合なので、使えた人間のほとんどが魔術師団所属になる。

魔術師団所属じゃない者は、チャイブのように王侯貴族に仕えている。


それに、公爵家でラシャンのように魔術が使えなくても、魔術適性は50人に1人と言われているので、落ちこぼれの烙印を押されることはない。


嫌なことを言ってくる人間はいるが、そういう人間は魔術関係なく人を攻撃したいだけの心が黒い人間だ。

相手にするだけ無駄というものだ。


相槌のようにうんうんと頷くアイビーに、ローヌは微笑んでいる。






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