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18 .ルージュも一緒にヴェルディグリ公爵家へ

「え? アムブロジア王国でのパーティー?」


「スペクトラム公爵家の縁戚? 詳しく教えて」


と、驚愕したラシャンとカディスに、ルージュは放課後有無を言わさずヴェルディグリ公爵家の馬車に乗せられた。

黄昏るように窓の外を見ているルージュに、アイビーは小さく笑ってしまった。


感情表現が乏しいのか、公爵令嬢としてわざと表に出さないのかは分からないが、ルージュは表情を変えない。

微かに微笑んでくれたことはあったが、いまだに笑った顔を見たことがない。

当然、怒った顔も悲しんだ表情もされたことはない。


だからか、気持ちのまま物思いにふけっているようなルージュが珍しく、そのことが嬉しくて笑みが漏れたのだ。


「ルージュ様、我が家は嫌ですか?」


「そうじゃないわよ。ヴェルディグリ公爵家に行ったと分かったら五月蝿いなと思っただけよ」


ルージュの馬車の御者には、ルージュがヴェルディグリ公爵家に行くことをスペクトラム公爵家に伝えに行ってもらった。

ルージュの帰宅用馬車は、ヴェルディグリ公爵家から出す予定だ。


「ダフニさんですか?」


肯定も否定もされず視線を逸らされた。

やっぱりルージュにダフニの名前は禁句なのかと、無意識に小さく頷いていた。


馬車は順調にヴェルディグリ公爵家に到着し、アイビーお気に入りの温室でお茶をすることになった。

レガッタが初めて来た時に案内をした温室で、それから何回も利用している。


「遮音の魔道具を発動させてくれる?」


カディスがフィルンに声をかけ、一礼したフィルンはすぐさま魔道具を取り出した。

これからアムブロジア王国の話をするというだけあって、真剣な面持ちをしている。


だが、それはカディスだけで、アイビーとレガッタはスイーツに夢中だ。

ラシャンはアイビーに専心だし、ルージュは初めて見るスイーツを静かに見つめている。


「ルージュ様、このフラワーフル食べてみてください。ちょうど今日、みんなが買いに行ってくれていたそうなんです。4つもあって本当によかったです」


アイビー・レガッタ・ルージュが1つずつ。

残りの1つを、ラシャンとカディスで半分ずつだ。


「そんなに貴重なの?」


「人気店でして、1人1つしか買えないんです」


大きな口を開けて幸せそうに食べるアイビーを見てから、ルージュは小さく切り分けた1口を口に含んだ。


「美味しいわね、これ」


「美味しいですよね。もうすぐチョコレート味も販売されるそうですよ」


アイビーは行けていないが、侍女が平民街に行くときに伝言をお願いしていた。

試作品をくれたビスタは残念がっていたらしいが、アイビーが喜んでいたと伝えると破顔してガッツポーズをしたそうだ。

「販売開始したら、是非とも買いに来てください」と、頭を下げていたと聞いている。


「そんなことより、ルージュに聞きたいことがあるんだけど」


「お兄様。そんなことと仰るならフラワーフルくださいまし」


カディスの半分しかないフラワーフルを見つめながら言うレガッタを無視して、カディスは2口でフラワーフルを食べ切ってしまった。

「あ!」と声を上げたレガッタは、恨めしそうにカディスを見ている。


「尋ねられたいことは、アムブロジア王国でのパーティーのことですか?」


「そうだよ。ルージュがダフニを落としたかどうかなんて、僕は興味ないしね。それに、アイビーたちも信じていないんだから聞く必要ないでしょ」


「はい、卑劣な人たちにムカついているだけです」


「私もアイビーに同意見ですわ」


「僕はアイビーの判断を信じるよ」


ルージュは口をキツく結んだ後、数秒目を閉じた。

そして、困ったような呆れたような息を吐き出し、目を開けている。


「私は何もしてないわ。それだけ言っておくわ」


ルージュがやっと心を許してくれたような気がして、アイビーは笑顔で大きく頷き、レガッタと嬉しそうに微笑み合った。


「それで、殿下は何を知りたいのでしょう?」


「そのパーティーにメイフェイア公爵家、またはフォンダント公爵家がいたかどうか。もしいたなら、どんな雰囲気だったか、かな」


ルージュの視線が、ラシャンを捉えた。

カディスだけは訝しげにルージュを見やるが、アイビーたち3人は不思議そうに顔を見合わせる。


「ラシャンに何かあるの?」


「いえ、もしかして縁談でもあるのかと思っただけです」


「え? 僕に? どうして?」


「実は、メイフェイア公爵家の令嬢からラシャン様のことを色々質問されたんです」


「カディス様ではなく、お兄様のことをですか?」


絶句しているアイビー・カディス・ラシャンが謎だったようで、ルージュは1人首を傾げているレガッタを最後に見た。


頭を抱えるように頬杖をついたカディスが、ルージュに一連の流れを話し出す。

元々はカディスに縁談の話を持ちかけたこと、陛下が狙われていたことを知っていたこと、そしてアイビーに接触してきたことを。


アイビーの過去、アイビーと契約で婚約していること、アイビーの精霊魔法のことは秘密のままだが、カディスがルージュを信用したということに気付き、アイビーは人知れず心を温かくしていた。






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