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8 .ラシャン・ヴェルディグリ②

自室で制服から私服に着替えながら、鏡を見やった。


着替える時に乱れてしまったミントグリーンの髪を、頬を緩ませながら整えている僕が映っている。

サラサラの髪なので、ナチュラルマッシュの髪型は簡単に整えられるのだ。


それに鏡を見るたびに、ヴェルディグリ公爵家の証と言われているエメラルドグリーンの瞳が映るから嬉しくなる。

肖像画でしか知らないけど、母様と同じ瞳の色。

顔は父様に似ていて、髪の毛の色はお祖父様と同じ。

お祖母様とも、どこか一緒のところがあればよかったのにと思う。


「公爵様との休暇、楽しんできてくださいね」


着替えを手伝ってくれている侍従に大きく頷いて、父様が待つエントランスに急いだ。


落ち着かない様子で待っていた父様と外に出て、目を見開いた。

小型の竜であるプテレヴィと呼ばれる生き物の手綱を、この家の執事長であるシュヴァイが持っているのだ。


シュヴァイは、領地にある本邸の執事長ジョイの子供だ。

ジョイと同じモスグリーンの瞳なのに、瞳から真面目さが滲み出ていないのは、爽やかに見せようとしているキャラメル色の束感スタイルヘアのせいだろう。

いつまでも若く見られたいらしい。

侍女たちが、そう話しているのを聞いたことがある。


ヴェルディグリ公爵家の執事は、傍系のフォーリッジ子爵家が担ってくれている。

将来僕に仕えてくれるシュヴァイの子供も、今勉強中だと聞いている。


父様とシュヴァイに手伝ってもらって、プテレヴィに先に乗っていた父様の前に僕は座った。

乗りながら「馬車だと往復だけで20日かかるんだった」と、やっと気づいていた。

プテレヴィだと、明日の夜には着ける。


移動手段としてありがたいプテレヴィだが、ほとんどの家は所持していない。

1頭につき1ヶ月の餌代や飼育代が、平民の1年の生活費ほどかかるそうだ。

飼育場所も、貴族の屋敷1軒分は必要になる。

王都の屋敷には3頭しかいないが、それでもさすが公爵家なのだそうだ。


シュヴァイが見えなくなった上空で、僕は気になっていることを父様に質問した。


「父様、領地で何があったんですか?」


「ラシャン、驚いて落ちないようにね」


「はい」


そんなに仰天することなのか。

しっかりと鞍を掴んでおこう。


「アイビーが帰って来たんだよ」


「え……」


アイビーが帰って来た?


もちろんアイビーは知っている。

会ったことがない僕の妹だ。

5歳の時、父様に説明されてから、ずっと会いたかった妹だ。


チャイブという執事から送られてくる手紙は、僕も読ませてもらっている。

どんなに可愛い子なんだろうと、5年後を楽しみにしていた。


「それって……一緒に暮らせるのですか?」


「ああ、そうだよ。これからは一緒にいられるんだよ」


嬉しい。

一緒に過ごせると聞いただけで泣いてしまったほど、胸がいっぱいになった。


だって、どうして僕たちが離れて暮らさなきゃいけなんだって、腹が立っていたから。

女の子で母様に似ているから危険だなんて理由で、会えないことを理解したくなかった。

僕がアイビーを守れる騎士になれれば一緒に暮らせると思って、歴代最強の騎士を目指していた。


まだ僕は弱いけど、でも一緒に暮らせるんだ。

本当に嬉しい。

こんなにも胸が高鳴っているのは、身体強化できたとき以来だ。


父様の様子がおかしかったのも納得の話だ。

アイビーに早く会いたい。


「でもね、緊急事態だから帰って来たそうなんだよ」


僕は父様から、アイビーがどうして帰って来たのかを教えてもらった。


聞いた僕は、心底苛立っていた。

今以上に僕たちを苦しめようとしてくるなんて、どこまで悪い奴らなんだ。


父様は、出発する前にメイフェイア公爵家とアムブロジア王家を探る手配をしてきた、とも教えてくれた。

「アイビーを守るために色々考えないとだね」と言われ、僕はしっかりと頷いた。


領地に行ったら、お祖父様に鍛えてもらおう。

早く強くならないと。

アイビーと安心して暮らせるように強くなるんだ。






読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。


祝日の投稿はなしの予定ですが、始まったばかりですので5月3日(金)と5月6日(月)は投稿いたします。

お楽しみにー!

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