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58 .バイオレット・メイフェイアから手紙

夜も深まった時分、ヴェルディグリ公爵家の一室にて、ポルネオ・クローム・ラシャン・カディスがソファに座り、従者のシュヴァイ・チャイブ・フィルンが側に控えている。


アイビーは、先ほど眠ったばかりだ。


お茶が行き渡ると、口火を切ったのはカディスだった。


「バイオレット・メイフェイアから手紙が届いたよ」


「どのような内容だったのでしょうか?」


クロームが尋ね、ポルネオとラシャンも真っ直ぐカディスを見ている。


「遠回しに書いていたけど、直訳すると『陛下の体調が少しでも悪いのなら毒の可能性があって、その毒の解毒は難しいけど自分なら可能だ』かな」


「そこまで書くということは、やはり陛下の暗殺に一枚かんでいるんでしょうか」


「どうだろうな。お得意の未来予知かもしれんぞ」


クロームの疑念に、ポルネオが答えている。

ラシャンは、前回と比べて足りない内容を確認するようだ。


「殿下、アイビーとの婚約のことは書かれていなかったんですか?」


「書いてあったよ。ご婚約おめでとうございますってね。婚約パーティーをしてからまだ5日。早すぎるんだよね」


「招待状の時点で、誰かが隣国に情報を流していた……」


クロームの呟いた言葉に、カディスが同意するように頷く。


「でも、おかしなことに、父上の命を狙っている貴族たちには隣国との関わりが見つからない。まだ後ろに誰かいるのかな?」


「可能性としては捨てきれませんが、ローモンド侯爵が誰かの命令を聞くとは思えないですね」


「うん、父上も師団長と同じ意見だったよ。曾お祖母様が降嫁してからというものローモンド侯爵家の態度は大きくなったらしくて、今回のことは王になりたい侯爵が起こしたんだろうって見解だね。自分が中心じゃないと嫌なんだから主犯は侯爵だろうってさ」


「ええ、私もその見解に賛成ですな。王権派と見せつつも、我ら三公全員を睨んでおりましたから」


ポルネオの言葉にラシャンがクロームを見ると、クロームは小さく頷いている。


「ローモンド侯爵一派は、年が明けるまでに一掃する予定だよ。今は取りこぼしがないように動いている」


「かしこまりました。アイビーが眠る前に蝶を作り出していましたから、忘れずにお持ち帰りください」


「助かるよ。僕からも何かお礼は考えるけど、父上も粛清が終わったらアイビーに何か贈りたいって言ってたよ」


「お気持ちだけで十分ですよ。いただいてしまうと何を憶測されるか分かりませんから。殿下からも必要ありません」


クロームの気持ちを理解できなくもないが、はっきりと断られると、つい苦笑いをしてしまう。

カディスは、「そういえば」と思い出したように口を開いた。


「ローモンド侯爵はアイビーを見て泣いていたけど、何か関係があるの?」


ポルネオとクロームは、忌々しそうに息を吐き出している。


「ティールに惚れていた1人ですよ」


「花束を渡そうと、毎日ヴェルディグリ公爵家に通っていたらしいです。ティールには付き合う前から『プレゼントに花束はいらないからね。本当に目障りなの』って言われていたくらいです」


「あの頃は、屋敷が花で埋もれると思ったほどだったな」


懐かしそうに笑うポルネオに、クロームは「そうらしいですね」と甘く微笑んでいる。

ラシャンとカディスは笑みの理由を問わなくても、どちらもその時のティールを思い浮かべていると分かった。


「じゃあ、ローモンド侯爵と隣国の繋がりはなさそうだね。侯爵自体も手元に置いておきたいと考えるだろうしね」


「そうですね。それに、最近アイビーを探っている子供たちがいるようなんですよ」


「子供たち?」


クロームはしっかりと頷きながら、聞いてきたカディスを見ている。


「貴族ではなく、各家に出入りしている業者で働いている子供たちですね。無邪気に『可愛い子がいるって聞いたけど、どんな子?』みたいな感じで尋ねているそうです」


「へー、誰も平民の子供相手に警戒しない。そこをついているんだね」


「そのようです」


「それと、こちらで調べたバイオレット・メイフェイアのことですが、彼女が探していた人物は3人。フォンダント公爵家に入ったエーリカ、アイビーが変装をしていたカフィー、そして貧民街で育っているヒースという青年。このヒースという青年ですが、メイフェイア公爵家に足を運んだ後、消えています。誰も行方を知らないそうです」


「物騒な話だね。その青年は何者だったんだろうね」


「引き続き捜索しています。それと、『欠けた林檎』という傭兵団と接触しているようです」


「公爵家なんだから騎士団がいるだろうに。何に傭兵団が必要なんだか」


「後、エーリカ・フォンダントとバイオレット・メイフェイアですが仲が悪いそうです。というか、バイオレット・メイフェイアは、同年代の子供たちとは距離をとっているようです。特にソレイユ殿下とは会話らしい会話さえしないそうです」


カディスが息を吐き出して、話をしていたクロームから視線を逸らし遠くを見た。


「師団長は、ソレイユ殿下も調べた?」


「ソレイユ殿下というよりアムブロジア王家を探りました。だから、アムブロジア王が家族を無視していることも、王妃が子供を害していることも知っていますよ」


「本当に腐っているよねぇ」


「はい。今のところソレイユ殿下の味方は、フォンダント公爵家のみのようです。血のつながりがないので大々的には助けられないみたいですね。陛下に相談をしてからになりますが、1度フォンダント公爵家に連絡をしてみようと思っています」


「連絡をしてどうするの?」


「敵の敵は味方になるかもしれませんから。1つでも多く手札が欲しいんですよ」


「そっか。師団長がそう思っているって、父上に軽く伝えておくよ」


「ありがとうございます」


その後も会議は続き、初めて聞く話ばかりのラシャンはずっと必死に頷いていたのだった。






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