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33 .レガッタとのお茶会

チャイブが、レガッタの椅子をアイビーの向かい側から45度付近まで近付けた。


満足そうに微笑んだレガッタは席に着き、アイビーもチャイブが引いてくれた椅子に腰を下ろした。


お茶はルアンが淹れてくれ、レガッタの侍女が紅茶やスイーツ類に白色の丸い球を翳しはじめた。


物珍しく見ていると、眉尻を下げたレガッタが話しかけてきた。


「私たちの決まりなのです。本当に疑っているわけではありません」


レガッタが居心地悪そうにする理由が分からず、アイビーはチャイブに視線を送る。


「お嬢様は初めて見られますよね。王女殿下の侍女が行っているのは、毒があるかどうかの検査でございます。あの丸い球は、毒を探知する魔道具なんですよ。クローム様の作品ですね」


「お父様は天才なのね。本当にカッコいいわ」


「ぜひ公爵様にお伝えしてあげてください。泣いて喜びますよ」


——うん、泣きながら抱きしめてくれそう。喜んでくれるなら忘れずに伝えよう。


ずっと離れて暮らしていたが、約1ヶ月間、短くても濃密な時間を過ごしたのだ。

クロームがどんな反応をするか、アイビーもすぐに想像できる。


クロームの泣き顔を思い浮かべて、アイビーは頷きながら小さく笑った。


「アイビー、初めて見ますの? お兄様はされておりませんでしたか?」


アイビーが思い出すように首を傾げてからしっかりと頷くと、チャイブが苦笑いしながらレガッタに答えた。


「王子殿下の場合は、侍従の方が王子殿下に運ばれる前に確認されていましたよ」


「そうですのね。お兄様はたまに面倒くさがって省きますのよ。だから、ヴェルディグリ公爵家ではやっていないのかと思いましたの」


——ううん、絶対に省いていたと思うよ。チャイブが淹れたお茶を、そのまま飲んでたもん。


そう思いながらも口には出さず、ただただ微笑むアイビーである。


毒の検査が終わり、レガッタが1口飲むのを待ってアイビーもお茶に口をつけた。


チャイブがレガッタに、ルアンがアイビーにスイーツを取り分けてくれ、ようやく和やかなお茶会が始まった。


「アイビーは食べる姿も可愛らしいですわ」


——そうでしょ、そうでしょ。


「ありがとうございます。レガッタ様も可愛いですよ」


「嬉しいですわ」


頬を膨らませて食べるレガッタの姿はリスに似ていて、動物好きのアイビーは心からレガッタを可愛いと思っている。

意地悪してこない、酷い言葉を投げつけてこない、愛らしい反応をするレガッタは、好感度がとても高いのだ。


——食べ方だけじゃなくて雰囲気も似ているかも。レガッタ様の絵を描いてみたいなぁ。仲良くなれたらお願いしてみよう。


「お兄様は女性をお嫌いだと思っていましたが、ただ単に理想が高いだけでしたのね」


「カディス様は、どのようなお兄様ですか?」


「優しいですわ。でも、剣の練習ばかりで遊んでくださいませんの。そこだけは優しくないですわ」


「カディス様のことが大好きなんですね」


照れたように真っ赤になるレガッタに、アイビーは柔らかく微笑んだ。


アイビーだけではなく、レガッタの侍女バーミも目を細めている。


ルアンだけは、可愛いものばかりの空間にずっと顔を溶かしている。


「アイビーは、お兄様のどういう所が好きですの?」


——絶対にこういう質問されるよね。大人でも子供でも恋愛に関しては興味津々だと思うの。伊達におばちゃんたちに揉まれてきていないもの。まさに設定を活かせる場面だわ。


アイビーは、迷子になっているところを助けてもらったという嘘の話を、頬を染めながらレガッタに話した。


レガッタは、「きゃー! お兄様ったら!」と言いながら胸をワクワクさせている。


「運命ですわ。素敵ですわ」


「はい。再会できて本当に幸せです」


「いいですわー。私もそんな恋がしたかったですわ」


項垂れるレガッタに、アイビーは頬に指をあて首を傾げた。


「私、もう婚約が決まっておりますのよ」


「え? カディス様より早かったんですか?」


「そうなんですの。お母様が決めてしまわれて、お父様も国外に出すよりはという判断みたいですの」


「その婚約者の方は嫌な方なんですか?」


「嫌いですわ。色んな女の子に目移りしますもの」


「最低ですね。そんな男は蹴ってしまえばよろしいんですよ」


拳を握りしめるアイビーを見て、瞳を瞬かせたレガッタは声を上げて笑い出した。

今度は、アイビーが目を点にしている。


「私、アイビーが大好きですわ」


「私もレガッタ様が大好きですよ」


「嬉しいですわ。私はアイビーの親友で味方ですわ。何かあったら言ってくださいましね」


「ありがとうございます。レガッタ様も何かあれば仰ってくださいね。その婚約者を殴るも蹴るもいたしますからね」


レガッタは、嬉しそうに幸せそうに笑っている。


周りは、レガッタと婚約者のイエーナに仲良くなってほしいから、レガッタの前でイエーナのことを悪いとは言わない。


妹を可愛がるカディスでさえ、イエーナに苦言を呈することはあっても、レガッタにイエーナの文句は口にしない。


だからこそ、レガッタは、初めて自分の味方をしてもらえたと感じて心が軽くなったのだ。


「アイビーがお兄様の婚約者で、本当によかったですわ。お兄様にも言いましたけど、ダフニなんかになっていましたらお父様に抗議していましたわ」


「ダフニ? どなたですか?」


「スペクトラム公爵家の養女ですのよ。元の名は、ダフニ・クラベット。スペクトラム公爵家の傍系の男爵家で、ダフニは精霊魔法が使えるかもしれないそうですわ。元々、ルージュ・スペクトラム……私の従姉妹が、お兄様の婚約者候補と言われていましたの。でも、2代続けてスペクトラム公爵家が王妃というのはっていう貴族の反対がありまして、話は流れたそうですわ。だけど、お祖父様は野心家ですのよ。それならば断れないようにって、精霊魔法が使えるかもしれないダフニを養女に迎え入れましたの。これで晴れて公爵家ですから、お兄様と結婚できる爵位になったんですのよ」






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