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29 .タウンハウス

カディスが予想した通り、アイビーはクロームの休暇最終日に、セルリアン王国の王都アルペルオにあるヴェルディグリ公爵家のタウンハウスに到着していた。

祖父母も一緒だ。

ラシャンが、家族全員一緒だと喜んでいた。


本邸からタウンハウスへの移動は、プテレヴィで時間短縮をしている。


初めて小型の竜の乗り物であるプテレヴィを見たアイビーは、顔を輝かせて、プテレヴィの周りをぐるぐる回って観察していた。

微笑ましい光景に、クロームたちや護衛の騎士たちは顔を溶かしていた。


クロームとラシャンがアイビーに会いに本邸に来た時は、2人移動の上、クロームが歴代最強の魔術師なので護衛をつけなかった。


でも、今回は公爵家全員が動くため、護衛騎士をつけないわけにはいかない。

戦えるアイビー専属の執事チャイブもいるが、チャイブが強いことは隠しておきたいのだ。


だから、クロームの実力を考慮して3人ほど護衛騎士をつけて戻ることになった。

護衛騎士は、数日タウンハウスに滞在して本邸に戻る予定だ。


プテレヴィが早い移動手段といっても約2日かかる。

慣れない移動での旅の疲れを癒すため、到着日翌日の訓練はお休みになっている。


ゆっくり眠っていたアイビーが起きると、ドア前にマラガにそっくりなルアンが笑顔で立っていた。


本当に鏡のようにそっくりな2人だが、唯一違う点ある。

それは、ホクロの位置だ。

マラガは口元にあったが、ルアンは左目尻にある。


アイビーの侍女だったマラガは、本邸勤務なので同行していない。

代わりに「双子の妹がタウンハウスで働いているから、是非お嬢様の侍女に」と勧められていた。

なんでも可愛いものには目がないそうで、鬱陶しいほど仕えてくれるだろうとのことだった。


それを体現するように、タウンハウスに到着したアイビーへ、マラガとそっくりな女性が熱烈な眼差しを向けてきた。

アイビーの侍女も名乗り出たそうだ。


ルアンは、今日も昨日と同じで顔を輝かせている。


「おはようございます。お嬢様」


「ぉはよう……起こしてくれてよかったのに」


「いいえ! そんな勿体ないことできません! 寝顔も最高に可愛かったですよ!」


「ありがとう」


普通の子供なら興奮しながら言われたら照れるかもしれないが、相手はアイビーだ。

褒められ慣れているし、自分が素晴らしく可愛いことも知っている。

微笑みながらお礼を言うなんて、息をするのと同じくらい容易いことだ。


ルアンが用意してくれたお湯で顔を洗い、着替えを手伝ってもらう。

終始顔を蕩けさせているルアンだが、とても手際がいい。


鏡台前の椅子に座ると、ルアンは真剣な顔で「どんな髪型も似合うとなると、決めるの難しいですね」とアイビーの髪を梳きはじめた。


「お嬢様、朝食はいかがされますか? こちらにお持ちしますか?」


「お父様たちと食べないの?」


「クローム様はお仕事に、ラシャン様は学園に行かれましたよ。ポルネオ様とローヌ様はお済みになられています」


「そうなのね……お父様とお兄様をお見送りしようと思っていたのに……」


「お出迎えされるだけで喜ばれると思いますよ。それに、明日からは訓練がございますからね。お見送りできますよ」


「うん。明日からは寝坊助になりそうなら、絶対に起こしてね」


「お任せください」


ツインテールに決まったようで、結んだ後、緩く巻いてくれている。


「今日の予定、チャイブは何か言ってた?」


「いえ、アイビー様が朝食を済ませたら呼んでほしいとだけうかがっています」


自室で朝食を食べ終えたアイビーは、ルアンにチャイブを呼んでもらった。


すぐにやってきたチャイブは、手紙を2通乗せたお盆を持っていた。

どちらも青い封蝋がされている。


「お嬢様、私が先に読んでもよろしいですか?」


「うん。いいよ」


チャイブが目を通した手紙を受け取り、アイビーも読みはじめた。


1通はカディスからで、「婚約について陛下の許可をもらった」という簡素な手紙だった。


もう1通は、「午後から遊びに行きますね」という一方的な手紙だった。

送り主の名前は、レガッタ・ブル・セルリアン。

アイビーは知らない名前だ。


「ねぇ、チャイブ。レガッタ様って誰?」


「カディス殿下の妹君ですよ。この国の王女様ですね。お嬢様と同じ年だったと思いますよ」


「今日、午後から遊びに来るんだって」


「そうみたいですね」


「何か準備した方がいいの?」


「お茶やお菓子の準備は、我々がしますよ」


「私は何もしなくていいの?」


「ええ、笑っていればいいですよ」


「分かったわ」


起きてから大分と過ぎたが、タウンハウスの探検も兼ねて、ポルネオたちに朝の挨拶に行くことにした。


アイビーは、すれ違う使用人たちにも挨拶をかかさない。

もちろん、とびっきりの笑顔付きだ。


昨日到着した時に、顔を輝かせていた使用人はルアンと新人の侍女たちだけだった。


その他の使用人は目を丸めて顔を強張らせ、そして、窺うような探るような瞳をアイビーに向けていた。

さぞかし昨日の夜は、色んな話に花を咲かせていただろう。


だとしても、衝撃が落ち着いた今となれば、アイビーの可愛さに目を垂らしてる。






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