↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/198

25 .取り決め

アイビーは胸に手を当て、カディスに微笑みかける。


「カディス様。私、誘拐を心配するレベルで相当可愛いんですよ」


「そうなんだね。でも、僕は別にって思うよ」


「カディス様は美的感覚がおかしいんです。あまり外で仰られない方がよろしいですよ」


カディスの頬がまたヒクつき、フィルンは顔を横に向けて笑いを堪えている。

ラシャンはまたもやアイビーに同意していて、チャイブは表情を真顔から崩さないでいる。

百人百様とは、まさにこのことだろう。


小さく息を吐き出したカディスが、お茶を1口飲み、数回頷く素振りを見せてきた。


「まぁ、いいや。で、僕の一目惚れ以外の設定は?」


「出会った場所などは、今の状況のままでよろしいと思うんです。あ、でも、運命的な方が好感度は高いでしょうから、私が街で迷子になっていたところをカディス様に助けていただき、そこでお互い恋に落ちるんです。後日ヴェルディグリ公爵邸にて再会をし、『あの時の!』と想いを寄せあうというのはどうでしょう」


「なんだか具体的だね」


「昔、隣に住んでいらしたおばさまが、そういう本が流行っていると教えてくださったんです」


——あの時は男の子の格好だったから、私に理想の男性像を託してきたんだよね。絶対美男子に成長するだろうから、中身もカッコよくなってほしいって。おばちゃんの勢いすごかったな。


「ふーん。その話、母上も好きそうな気がするよ。でも、それだと何回も求婚はおかしくなるよ」


「その設定はなくしましょう。お互い一目惚れをし、再会で恋が燃え上がっているにしましょう」


「分かった。どこの街とかも決めよう」


「はい。後は時間がある時にでも、お互いの好きな物を教え合いましょう」


「確かに知っている方が怪しまれないか。僕は視察に来た領地で、アイビーと仲を深めるんだからね」


「はい、そうなります。最後に、手紙は月1で送り合うでいかがでしょうか? 日常的なことを共有しておけば、ボロは出難いと思うんです」


「月1でお茶会じゃなくていいの?」


「ヴェルディグリ領と王都は近いんですか?」


「え? アイビーは王都に来ないの?」


カディスに目を見開かれ、どうして驚かれるのか分からないアイビーはチャイブを見やった。


「クローム様はお仕事が、ラシャン様は学園がありますから、後半月ほどで王都のタウンハウスに戻られるのですよ」


「私はどうするの?」


「お嬢様のお気に召すままでよろしいかと」


「そうなんだ」


納得したように姿勢を戻すアイビーの手を、緊張しているような面持ちのラシャンが握ってきた。


「アイビー、王都は嫌かな? 来月は僕の誕生日があるんだ。アイビーと一緒に祝いたいな」


転々としていたアイビーにとって、住む場所はどこでもいい。

だから、王都は嫌だとか、領地から離れたくないとかはない。

それに、優しくしてくれるラシャンの誕生日を、お祝いできるならお祝いしたい。


「行ってもいいなら王都に行きます」


「本当に!?」


「はい」


幸せそうに笑ったラシャンを見ながらチャイブは、「ポルネオ様たちも王都に移り住むって言いそうだな」と、ドタバタするだろう公爵家の様子を思い浮かべ、微笑ましい気持ちとは裏腹に苦笑いが出そうだった。


「じゃあ、月1のお茶会でいいよね。手紙は面倒だし」


「カディス様、燃え上がる恋ですよ。近くに住むのなら月1はおかしいですわ」


「みんな噂話好きだもんねぇ」


心底鬱陶しそうに言うカディスに、アイビーはしっかりと断言する。


「その通りです」


「月1のお茶会と、学園が終わってから行ける時に公爵邸に行くことにするよ。今もラシャンと訓練をするのに月に何回か行っているし」


「分かりました」


カディスが、何かに気づいたようにアイビーでもラシャンでもなくチャイブを見た。


「アイビーのお披露目ってするの?」


「まだ決めておりませんが、されるならお嬢様の誕生日である1月21日になるかと思います」


ラシャンが、小声で「アイビーの誕生日」と手を握りしめている。

きっと今からプレゼントを考えるつもりなのだろう。


「ラシャンの誕生日じゃないんだね」


「ラシャン様のお誕生日は、ラシャン様が主役ですから」


「それもそうだね。んー、この話は師団長たちとするよ。もしお披露目をするのなら、その時に僕がエスコートして婚約発表すれば、インパクトは大きいだろうからね」


「かしこまりました。クローム様たちには事前にお伝えしておきます」


「よろしく」


腰を折るチャイブに、カディスは視線だけを向けていた。


この後も話し合おうとしたが、クロームたちに聞かなければ分からない不透明な部分が多く、明日にでもクロームたちにも参加してもらう場を設けることになった。


その結果、アイビーは美少女過ぎるあまり隠れ住んでいたことになった。

ティールの事件は社交界では有名なので、誰もが納得するとのこと。


カディスとはお互い身分を偽った状態で1年前に出会い、ヴェルディグリ公爵家本邸の庭で再会することになる。


忘れられずにいた2人はすぐに恋人になり、カディスと一緒にいるためにアイビーは世に姿を現すことを決意した。

そんなアイビーをカディスは守りきると約束した。


という筋書きになったのだった。


アイビーのお披露目と婚約発表は、アイビーの誕生日に行われることになった。

王宮で催す予定なので、婚約発表がメインとなる。


理由としては、第1王子の婚約発表を公爵家でするわけにはいかず、ましてや公爵令嬢の誕生日のついでに発表という形で取り扱えないためだった。


「アイビーが主役なのに」と公爵家の面々から恨めしく見られたカディスは、最高級のドレスと宝石を用意することを約束して事なきを得ていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。