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126 .幸せな1日

その後も挨拶は続き、お色直しの時間が来て、ようやく休憩を取ることができた。

クロームは会場に居るままだが、ラシャン・カディス・レガッタ・イエーナはアイビーと共に下がっている。

きちんと1時間後には戻ってくると伝えているので、追いかけてこようとする人たちはいなかった。


「ルージュ様って、まだ来られていませんよね?」


挨拶が忙しくて会えなかったのかもと思い、レガッタに確認してみた。

カディスには声をかけていなくても、レガッタとは話しているかもと思ったからだ。


「見ていませんわ。ギリギリの時間に来るかもしれませんわね」


「どうしてですか?」


「パーティーが終わった後に、お茶できるからですわ」


「パーティー中はゆっくり話せませんもんねぇ。殿下とレガッタへの挨拶も多くて、アイビーの誕生日なのにって思っちゃいましたよ」


レガッタたちへの挨拶に付き合っているからこそ出てきた愚痴だろう。

ただイエーナはお疲れ気味なのに、カディスとレガッタは元気なように見える。

「ルージュ様は違うと思うけどなぁ」と思ったアイビーも疲れてはいるが、姿勢を崩して歩くイエーナほどではない。

もちろんラシャンからも疲労は感じない。


「アイビー、チャスナットと何か秘密の話でもした?」


カディスに問われ、アイビーは目を丸くした。


「どうして分かったんですか?」


「ずっとアイビーを見ていたからね。チャスナットが顔を近づけた時、驚いていたでしょ」


「まぁ! お兄様ってば、アイビーをそんなに見ていましたの。どこまでアイビーが好きですの」


「どこまでって……うーん……普通に『誰よりも』かなぁ」


——今日のカディス様は、大盤振る舞いだなぁ。


「まぁ!」


——レガッタ様、顔を輝かせていて可愛い。


「殿下、恥ずかしくないんですか?」


——嘘だから恥ずかしくないんだと思いますよ。私も頑張らないと。


「僕の方が、殿下よりアイビーを愛していますよ」


——嘘だって知っているはずなのに、お兄様はいつもカディス様と張り合うよね。嬉しいからいいんだけど、言い合って疲れないのかなって、ちょっと心配かな。でも、軽口なだけだから楽しいのかもな。


それぞれに対して静かに心の中で感想を述べていると、すぐに自室に着いた。

レガッタだけが一緒に入ってきて、ラシャンたち男の子は近くの部屋で休憩しながら待っていてくれるそうだ。


「アイビー、こちらのドレスも可愛いですわ。きっと似合いますわ」


「ありがとうございます。お祖母様が選んでくださったんです。きっとお祖母様も喜んでくれると思います」


ルアンたち侍女に脱がされながら、ソファに座っているレガッタとお喋りする。


「私も次の誕生日パーティーの時は、3回ほど着替えようと思いますわ」


「大変じゃありませんか?」


「でも、着替えの度に1時間は会場を抜けられますのよ。適度に休憩できるのは嬉しいですわ」


「挨拶ばかりですもんね」


「本当にそうですわ。ダンスが始まったら挨拶は無しにしてほしいですのに」


——レガッタ様はダンスが好きだからなぁ。でもイエーナ様は、ダンスと挨拶なら挨拶を選びそう。お兄様やカディス様と違って体力ないもんね。


ダンスに張り切るレガッタと、肩を落としているイエーナを想像して、つい笑ってしまう。


「どうしましたの?」


「レガッタ様たちが一緒にお祝いをしてくれて、嬉しいなと思ったんです」


「これからもお祝いしますわよ。アイビーは私のお姉様になりますもの」


「レガッタ様の誕生日の方が早いのに、お姉様って変な感じがしますから、いつまでもアイビーって呼んでくださいね」


「もちろんですわ。私の親友ってことは一生変わりませんもの」


レガッタの元気な笑顔に、疲れていた体が癒されたような気がする。


去年は去年で、大切なことに気付け、たくさんの愛をもらい、これ以上ないほど幸せな1日だった。

でも今年は、家族からの愛情はもちろん、この1年でできたかけがえのない友人たちからの友愛に満たされた気持ちになる。

ずっと無いもの強請りだと思っていた、家族や友人が、今は側にいてくれる。

本当に泣いて喜びたいほど嬉しくて、笑顔を作らなくても自然と溢れてくる。


侍女が用意したお茶を飲んで一息ついているレガッタから、鏡に視線を移動させた。

髪型を少しだけ変えるそうだ。

鏡の中のルアンが、怖いくらい真剣な顔をしている。


——レガッタ様には言えないけど、いつか好きな人ができたらいいな。その人と2人だけで過ごす誕生日があったとしても、それはそれで素敵だろうな。私だけを愛してくれて、私もその人だけを愛するって、どんな感じなんだろ。

チャイブとカフィーは「幻想だ」とか「別に」とかしか言わないだろうけど、ルアンなら「カディス殿下との参考にはなりませんよ」って言いながら色々教えてくれるかな。お祖母様に、お祖父様との馴れ初めを聞いてもいいかも。


小さく「ふふ」っと笑ってしまった時、青い薔薇のイヤリングが目に付いた。


——カディス様が好きになる人かー。カディス様は美的感覚が歪んでいるし、理想が山より高いそうだからなぁ。どんな人を好きになるのかな? カディス様となら恋愛話をしても問題ないよね。今度聞いてみよう。


「お嬢様、終わりました。こちらも可愛すぎます! 私、溶けちゃいそうです!」


「ありがとう、ルアン。ルアンがいつもより可愛くしてくれたおかげだよ」


よろけて、「可愛い、可愛い」と言いながら床にうずくまるルアンを放っておいて、レガッタに近づく。

レガッタも可愛いと褒めてくれ、気分は上々だ。


ラシャンたちも交えて少しだけ休憩し、後半戦も頑張ろうと会場に戻った。






予告→火曜日、新事実発覚。金曜日、第2章完結。

よろしくお願いいたします。


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