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123 .誕生日プレゼント

アイビー12歳の誕生日を迎えた今日、去年と違いパーティーが開催される。


ラシャンの誕生日は父のクロームが中心になって進めていたので、1ヶ月と少し違うアイビーの誕生日は祖母のローヌが仕切ってくれていた。


時々、「こういうのはどうかしら?」と意見を求められ、「可愛くて素敵です」と答えている。

飾りや雰囲気、会場の様子がどんなものであれ、自分の可愛さは変わらないと自負しているので、ローヌがしたいようにしてくれていいのだ。

なによりお祝いをしてくれるだけで嬉しいのだから、本当に何でもいいのだ。


だから、ドレスも軽ければ何でもよかったが、ローヌが「アイビーちゃんは似合うドレスが多くて選べないわ」と「前半と後半で着替えましょう」と張り切り、ドレスを決めるのに1週間ずっと着せ替え人形になっていた。

褒めてくれたり喜んでくれたりするのは嬉しかったが、さすがに疲れたので、来年の誕生日までドレスの試着はしたくないと思っている。


去年と同じだったのは、朝起きたら家族全員が部屋にいて「おめでとう」と言ってくれたこと。

その後に、少し違うが、それぞれが手渡しで誕生日プレゼントをくれたことだった。


温かい気持ちで胸がいっぱいの朝食が終わり、アイビーはパーティーの支度に入ろうとした。


「お嬢様。カディス殿下、レガッタ殿下、イエーナ公子様が来られました」


もう何時に来ようが、驚かなくなった。

「そっか、今日も早いな」くらいだ。

使用人たちも慣れたものである。


「お嬢様に直接プレゼントを渡したいとのことですが、いかがいたしましょうか?」


「うーん……」


悩みながらチラッとルアンを見ると、微笑んで頷いてくれた。

行っても大丈夫ということだろう。

じゃなかったら、焦り顔で首を横に振られるはずだから。


「少しだけ余裕があるから、挨拶しに行くわ」


カディスたちはいつもの応接室にいるということで、カフィーとルアンをつれて向かう。

途中で同じように応接室に向かっていたラシャンとエルブと合流し、「本当に仕方ない殿下たちだよね」と呆れるラシャンに笑った。


応接室に入ると、カディス・レガッタ・イエーナの3人共が、きちんと正装をしていてビックリしてしまった。

ラシャンの誕生日パーティーの時、カディスとレガッタだけが着飾っていて、イエーナはラフな格好だった。

だから、今回も同じような姿だろうと、勝手に思っていたのだ。


「イエーナ様、今日は普段着ではないんですね」


「ええ、絶対に朝イチで巻き込まれると思っていましたから。私、学習できるんですよねぇ」


「本当に素晴らしいです」


アイビーが拍手すると、イエーナは胸を張って鼻高々になっている。

「ふふん」という陽気な声も聞こえてきて、上機嫌なのがよく分かる。


「分かっていなかったら、ボロクソに言っていたところだよ」


「あー、よかったです。また心を抉られるところでした」


「私、イエーナは言われてたくて、わざとしていると思っていましたわ」


「レガッタ、違いますからね。私は優しくされたい人間ですよ」


「そうなんですの? お兄様やラシャン様に言われるのを、喜んでいると思っていましたわ」


「違いますよ。殿下もラシャンも、小さいことでチクチクチクチク虐めてくる、いじめっ子なだけですよ」


「イエーナ、喧嘩売ってる?」


「誰がいじめっ子だって? 悪いのはイエーナでしょ」


3人が騒ぐのももう慣れっこなので、全く気にせず、アイビーはレガッタの隣に腰掛けた。

カディスの隣も空いていたが、ラシャンがそこに座ったので、レガッタの隣を選んだのだ。

レガッタを挟んで向こう側には、イエーナが座っている。


「アイビー、お誕生日おめでとうございますわ」


「ありがとうございます、レガッタ様」


レガッタが侍女のバーミに視線を向けると、壁側に控えていたバーミが平たい箱をレガッタに渡した。

そして、レガッタはその箱をアイビーに差し出してきた。


「気に入ってくださると嬉しいですわ」


「ありがとうございます」


今開けていいものかどうか悩んだが、レガッタの期待している瞳に中身を確認した方がいいのだと気付き、丁寧にリボンを解いた。


プレゼントをもらったのはアイビーなのに、レガッタの方がワクワクしていて、その姿が可愛らしいのにおかしくて、小さな笑みが溢れる。


「わぁ。可愛い手袋ですね。ありがとうございます」


白色の光沢ある下地の上に置かれているプレゼントは、細かいレースで作れた青色の手袋だった。


「アイビーは魔術が使えますでしょ。先生方も褒めてましたから、来年には魔法陣を刻印するかもと思ったんですの」


チャイブもだが、クロームも刻印を隠すために手袋をしている。

理由は、魔術師は珍しいので、刻印をジロジロ見られて鬱陶しいからだそうだ。

ただそれだけらしい。

刻印を自慢する人は手袋をしていないので、本当に本人の自由とのこと。

チャイブに至っては、執事という職業柄もあるが、旅をしていた時は素性を隠す必要があったので必須だったという理由も追加される。


「とっても嬉しいです。刻印後の初めての手袋は、絶対にこの手袋にしますね」


「では、私のはレガッタの次に使ってください」


レガッタの後ろから覗き込むように、イエーナが会話に加わってきた。

イエーナからのプレゼントも、ナンキンからイエーナ、イエーナからアイビーに渡される。


レガッタからのプレゼントと同じ箱を受け取ったアイビーは、キョトンとしながら箱を開けた。

中には、先程と色違いの手袋が入っている。

色は鮮やかな黄色だ。


「本来ならダメですが、アイビーと私は友達ですからね。それに、レガッタの親友でもあります。ですので、友好の証に受け取ってください」


レガッタはニコニコ顔だが、カディスとラシャンからは重たい息が吐き出された。






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