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114 .料理教室

アイビーの支度が終わり、朝食のため食堂に向かう。


食堂にエーリカとフォンダント公爵がいるのはおかしくないが、今日も今日とて笑顔のカディス・レガッタ・イエーナ・ルージュが席に着いている。

もう慣れてしまっているので、驚いたりしない。

逆に、いない方がきっと違和感を覚えてしまうだろう。

それはアイビーだけではなくフォンダント公爵も同様のようで、上機嫌で子供たちの参加を許してくれている。


ちなみに、今日の夜は晩餐会が開かれる予定だ。

といっても、大勢を呼んで催す晩餐会ではなく、カディスとレガッタも参加するフォンダント公爵家お見送り会になる。

エーリカたちは明日の朝食後に帰路に就くことになっているので、最終日の今日、歓迎の晩餐会と同じように王族を招いて食事をすることになっていたのだ。


だが、毎食カディスとレガッタと食べているようなものなので、お招きしてというのもおかしな話である。

だからか、フォンダント公爵が、晩餐会にもイエーナとルージュの参加をカディスに許可を貰っていた。


カディスははじめからその気だったらしく、クロームとフォンダント公爵に話すつもりだったらしい。

フォンダント公爵にお礼を伝えながら、4人とも着替えを持ってきていることを打ち明けて、フォンダント公爵の爆笑をさらっていた。


賑やかな朝食が終わり、アイビーたちはぞろぞろと厨房を訪れた。

エーリカが厨房に入ることは、朝食時にフォンダント公爵から了承を得ている。

それ以外は知らない。聞いていない。


念のため尋ねようとしたが、チャイブに口を塞がれて「いいか? 絶対に聞くなよ。知らぬ存ぜぬを通せ」と耳打ちされたので確認をしないことにした。

アイビーが頷いた後、チャイブはラシャンに目配せをしていて、気づいたラシャンは一瞬だけ目も口も固く閉じていた。


料理長が最も張り切っているレガッタにつき、カディスの補佐は副料理長がすることになった。

イエーナとルージュにもベテランの料理人が教えることになり、残ったアイビーたち3人には中堅の料理人が2人手伝ってくれることになった。


「楽しいですわ!」


「で、でんか、お気を付けください」


「実験みたいだね」


「料理も実験も成功するまで色んな分量を試しますから、確かに似ていますね」


「いい匂いです。このままでも食べられそうです」


「生ではダメですよ! おやめください!」


「これで合っているかしら?」


「はい。手順通りで素晴らしいです」


横から前から途切れなく声が聞こえている。


「エーリカ様、お上手ですね」


「少し前までは料理をしていましたから。簡単なものでしたら今も作れると思います」


「そうなんですね。では、今度教えてください。一緒にお弁当を作って、馬でハイキングに行きましょう」


「楽しそうです。ぜひご一緒させてください」


アイビーとエーリカがお喋りをしながら手際よく作業している横で、ラシャンはなぜか顔や服に粉が飛んでいて、手にマドレーヌのタネがつきまくっている。


「僕に才能はないのかも」


「ラシャン様、大丈夫ですよ。全部食べられる食材ですから、焼いて美味しければ成功です」


落ち込むラシャンを励まそうと必死な料理人に続いて、アイビーもラシャンに声をかける。


「そうですよ、お兄様。美味しければ成功です。それに、お兄様へのプレゼントを作っているんですから、お兄様は失敗してください。私とエーリカ様の分で、お兄様のお腹はいっぱいになりますから」


「アイビーとエーリカ嬢に貰えるのは嬉しいけど、僕も2人にお返しで渡したいんだよ。だから、成功させたいんだ」


「嬉しいです、お兄様。それは是非成功させてください」


手のひらを返して喜ぶアイビーに、ラシャンはおかしそうに笑い声を漏らした。

ラシャンの笑い声に誘われるように、エーリカも小さく笑っている。

アイビーはアイビーで、恥ずかしそうに「えへ」と笑顔を浮かべた。


周りはドタバタと騒がしく、アイビーたち3人は和やかに作業を進めて、なんとか全員お昼ご飯前に作業を終わらせることができた。

マドレーヌは型に流し、クッキーは小さく丸めるまで。

何故なら焼く作業が危ないため、それは料理人たちがやってくれることになっているからだ。


アイビーたちはお菓子作りの感想を言い合いながら昼食をとり、昼からはエーリカがお土産を探したいということで貴族街の中央通りに足を運んだ。


平民街のように屋台はないが、いくつもの商会が店を構えていて品揃えに問題はない。

平民街に比べると治安もいい。

でも、気軽さがないので、慣れていないと緊張してしまうだろう。


案の定エーリカも顔が強張っていたが、胸を躍らせながら買い物をしているアイビーとレガッタを見て、途中から楽しそうにしていた。


7人が作ったマドレーヌとクッキーは晩餐会の食後にデザートとして出され、同じ分量で作業をしているはずなのに、それぞれ味が違うように感じ、笑いながらみんなで食べ比べたのだった。






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