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76 .ラシャンの目標

楽しそうに笑った父様に首を傾げた。

母様が冷たい人だとは思っていない。

騎士だったという面でも尊敬している。

でも、父様を突き放しているような言葉なのに、父様は幸せそうに目を細めたんだ。


「ティールはね、自分の気持ち、やりたいこと、食べたいもの、全部を戸惑いもせずに教えてくれたんだ。贈るプレゼントでさえも指定されていたよ。だから、私が勝手に想像していたティールとの誤差で喧嘩をせずに済んだし、本当のティールを好きになれた。数年も経てばきちんと好き嫌いが分かるようになったしね。それに、私が何でも口に出すようになったのはティールの影響だね。少しでも口籠ったり言葉を飲み込んだりすると怒られていたから。『あなたは本気で私を惚れさす気はないの? 私はあなたの全てを愛したいのよ』ってね」


「母様は、本当に勇ましい方だったんですね」


父様やお祖父様、お祖母様から、母様の話は聞いていた。

そのどれもが勇敢で豪快な性格だったから、小さい頃の僕は母様みたいに綺麗な女の人は全員、何事も恐れずに大胆なんだと思っていた。


それが違うって知ったのは初めてパーティーに参加した時で、あの時も父様に「女性の方はお菓子のようなんですね」って言って父様を笑わせてしまったんだ。

今思えば恥ずかしいよね。


でも、僕の中でアイビーは正しく可愛い飴玉なんだ。

キラキラと輝いて綺麗で可愛くて甘くて、でもケーキとかと違って崩れたりしない。

頼りないわけじゃなくて、思いっきり投げつけられたら痛い飴と同じような強さがある。

だけど、飴は強く踏みつけられたら砕けてしまう。

固いけど強固ではない。

だから、僕が守るんだ。


朗らかな顔で頭を撫でてきた父様は、その手で僕の肩を掴んで傍らに抱き寄せた。


「そうだよ。とても自分の気持ちに真っ直ぐな人だったよ。そのティールと過ごしたからか、私にはアイビーはまだまだ自分の気持ちを伝えてくれていないと思うんだ。楽しいこと嬉しいことは話してくれるけど、欲しいものや嫌なこと悲しかったことは言ってくれていないからね。でも、それって私たちもアイビーには言っていないでしょ。アイビーのためにってつい先回りしてしまって、アイビーが笑ってくれたら喜んで。アイビーに嫌な想いをしてほしくないから、黒い心は見せないようにしている。それも素敵なことだから、私はそこの完璧を目指しているんだよ」


「え?」


素っ頓狂な声を出してしまった。

話の流れから、母様と同じように全てを言い合えるように頑張っているって話すんだと思っていた。


「確かにティールとは想いをぶつけて支え合ったけど、私はアイビーの全てを包み込みたいんだよ。だから、アイビーの心が和らぐ場所を作りたいんだ」


「どうして心が和らぐ場所なんですか?」


「旅をしていたアイビーには故郷がなく、きちんとした帰る場所がなかったからね。だから、どんなに遠く離れても何日出かけようとも、アイビーには帰る家があるんだよって、ここに帰ってくれば私が笑顔で迎えるよっていう場所があると信じてもらいたいんだよ。それに、家は心が和らぐ場所であるべきだからね。心が開放的になったら全ての気持ちを吐き出してくれると思うしね。まぁ、カッコいい父親でいたい私の我が儘でもあるね」


可笑しそうに笑った父様は、「でもね、本当は全部の場所になれるように頑張っているんだよ。1つずつ叶えて、アイビーに『お父様が誰よりも大好きです』って言ってもらうのが夢なんだ。アイビーには内緒だよ」と付け加えていた。


話をしている間は父様の言葉を噛み砕くのに必死できちんと考えられなかったけど、父様と母様はパートナーだから互いのどんな気持ちも伝えていた。

だから、僕もパートナーには全部の気持ちを伝えるように頑張ろうと思っている。

それは、エーリカ・フォンダントをパートナーと認め、心を許してからになるだろうけどね。


だけど、アイビーには父様と一緒で僕は頼れる兄でいたい。

父様と同じで、アイビーをものすっごく甘やかして何を言っても何をしても愛してもらえるって知ってもらうんだ。

困ったことがあれば僕を思い出して相談してもらえるようになるんだ。


そのことが、今回のことでより明確な目標となった。

やっぱり僕は何としてでもチャイブに勝ちたい。

アイビーを1番に抱きしめるのは僕でありたい。

アイビーが二度と怖い想いをしなくていいように、アイビーが泣かなくていいように、アイビーが笑って過ごせるように、僕がアイビーを守るんだ。


何度も誓ってきたことだけど、今まで以上の強い願いになった。

絶対に叶えてやるんだ。

だって、僕はアイビーを愛していて、アイビーのたった1人の兄なんだから。






いいねやブックマーク登録、読んでくださっている皆様、本当にありがとうございます。


年内の投稿は本日をもって終了となります。

今年の内に第2章完結が目標でしたが、全然無理でした(笑)

この後、レネットたちがどうなるか、クレーブスもどうなるのか、ラシャンの誕生日にエーリカが来るし、新キャラのエルブの登場も控えているしで、第2章はまだまだ内容が盛り沢山です。

アイビーとカディスの誕生日もありますね。2人の仲はどこまで進むんでしょうね。

続きの物語の投稿開始は、約1ヶ月後の1月21日(火)を予定しています。

その間に頑張ってストックを作れたらいいなと思います。


2024年、作品を読んでくださり本当にありがとうございます。

読んでくださる方がいらっしゃることはとても嬉しくて、楽しく書く力になっています。

心より感謝しております。

2025年も私らしく変わらず楽しく投稿していこうと思っております。

引き続きお付き合いくだされば、この上なく幸せです。

朝晩と冷え込みが激しく、風も冷たくて身にしみる季節です。

皆様、どうかご自愛くださいませ。

皆様や皆様の大切な人たちが明るい日々を過ごせていますように。

よいお年をー╰(*´︶`*)╯♡

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