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64 .ラシャンへの執念

ヴェルディグリ公爵家に到着すると、ラシャンとカディスは剣術の稽古に行ってしまった。

イエーナがヴェルディグリ公爵家に来る時は、アイビーたちと一緒にのんびりお茶を楽しみたい時だけになる。

そして、今日もお茶会組に混じっている。

ジョイが定期的に手紙で教えてくれる動物たちの様子の話で盛り上がりながら、今日のお茶菓子である宝石のようなケーキを食べる。


実はこのケーキは、マーリーお勧めのケーキ屋さんの話を、夕食時にクロームたちにしたことがキッカケで作られるようになった。

「見た目は綺麗だったけど甘すぎて食べられなかった」とアイビーが悲しそうにしていたと料理長の耳に入り、料理長が美味しくて見た目が最高に美しいケーキを作ってくれたのだ。


もちろん、アイビーは厨房に足を運んで料理長にお礼を伝えている。

「手紙をあげるといいと思うぞ」というチャイブの助言があり、感謝の言葉を記した手紙付きだ。

料理長は泣いて喜んでくれた。


アイビーの嬉しそうな照れたような顔にメロメロになった料理人たちによって、毎日の料理の質も上がっていたりする。

みんな、アイビーからの手紙を狙っているらしい。


いつもはお茶会中は誰も来ないのに、今日は1人の侍女が少し足早にやって来た。

そして、チャイブに何か耳打ちをしている。


「『皆様、街に出かけられていない』と、すぐに帰らせてください。もし駄々を捏ねるようでしたら、執事長に対応をお願いしてください」


苦い顔をした侍女が、「かしこまりました」と頭を下げて、急いだ様子で戻っていく。

4人で顔を見合わせてから、チャイブに尋ねた。


「ねぇ、チャイブ。何かあったの?」


「ゴミが訪ねてきただけですので、気にされなくて大丈夫ですよ」


「ゴミとは誰なんですの?」


アイビーの問いは濁したが、さすがにレガッタの質問にきちんと答えないわけにはいかないのだろう。

チャイブは、諦めたように息を吐き出してから口を開いた。


「シャトルーズ子爵令嬢です。『公爵様の許可無しでは通せない』と騎士が門前で馬車を止めているそうです。ですが、お嬢様と約束をしていると言い張っているそうです」


「まぁ! 嘘を言って中に入ろうとしているんですの!?」


「うわー……ラシャンへの執念が怖い……」


「あなた、ものすごく利用されそうね。今のうちに友達じゃないと公言した方がいいんじゃない?」


「嘘をつかれるのは困りますもんね」


「そうですわよ。何を言われるか分かりませんわ」


「お嬢様、何かあったんですか?」


帰ってきてそのままお茶会に突入したので、今日学園であったことをチャイブやルアンにまだ話せていない。

チャイブの面持ちは変わっていないが、ルアンは不安げな表情で見てくる。

レガッタの合いの手が入りながら、アイビーは2人にレネットが謝りに来たことを伝えた。


「なるほど。ラシャン様目当てだろうとは思いますが、誘拐の可能性もありますので気を付けてくださいね」


「でも、レネットさんに私を誘拐する理由ってあるの?」


「お嬢様を売れば相当のお金が手に入るでしょうし、令嬢に必要なくてもシャトルーズ子爵は欲しいと思うんじゃないでしょうか。お嬢様はティール様に似ていますからね」


「分かったわ。学園以外でレネットさんと会わないようにするわ」


「アイビー、学園でも距離を空けた方がよろしいですわよ」


ルージュとイエーナの2人は頷いて、レガッタの言葉に同意を示している。


「しかし、今日のように寄ってこられたら避けられませんから。無視をして悪い噂を広められても困りますし」


「ラシャンに断ってもらえば、アイビーに纏わりつかなくなりません?」


「そういえばイエーナは知らないんでしたわね。ラシャン様はもう何度も断っているのですわ」


「え? 本気で怖すぎません? ラシャンですよ?」


「お兄様は優しくて綺麗で素敵ですから」

「ラシャン様は性格以外問題ないから」


アイビーとルージュの正反対の声が被って、2人は目を瞬かせながら顔を合わせた。

レガッタとイエーナが「ルージュに賛成」と声を上げて笑うから、アイビーとルージュもおかしくなってお腹を抱えたのだった。


夕食時の日課のようなもので、今日あったことをクロームたちに報告している。

いつもはにこやかに話を聞いてくれるのだが、レネットのことだからか渋い顔をしていた。

ポルネオやローヌも悩むような難しい表情を浮かべていた。


ただ先に報告が上がっていたようで、クロームは「シュヴァイから聞いたよ。本当に困った令嬢だね」と溢していた。

そして、絶対に1人にはならないようにと念押しされた。


大きく頷いておいたが、実質アイビーが1人になる時なんて眠った後だけだ。

学園では常にレガッタとルージュと行動を共にしている。

もしまたお昼に誘われたら、マーリーのところに合流させてもらえばいい。

「そこまで心配しなくても大丈夫なのにな」と、この時は軽く考えていた。






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