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13 .父と兄

明るい日差しに頭が覚醒していき、欠伸をして、目を擦りながら起き上がった。

マラガを呼ぼうと、呼びベルを取るために横に向きかけた顔が斜めで止まる。


——うわっ! びっくりした。どうして綺麗な親子が笑顔で座ってるんだろう? よく似てるから親子だよね? 私の部屋で何をしているんだろう? あれ? 私と同じ髪色の人と、同じ瞳の色の子供……まさか……


「「おはよう、アイビー」」


「おはようございます。えっと、お父様? お兄様?」


声の心地よさに確信めいたものがあったが、間違っていては失礼になるので小声になってしまった。

それでも綺麗な親子に届いたようで、2人は大粒の涙を流しながら抱きついてきた。


「アイビー! 会いたかった!」


祖父母と抱き合った時と同じように、2人の温もりが家族だと教えてくれている。

特別な安心感が、心を包み込んでくれる。


泣きたいわけではないのに涙が溢れてくることも同じだった。

目も胸も熱くて、自分ではどうしようもできない。


顔を見ようと少し距離を取っただろう父と兄も、幸せそうに微笑んでいるのに涙を流していた。


数分お互いの存在を確かめていると、アイビーがまだ眠っていると思って起こしに来てくれたマラガがやってきた。

父と兄の姿を確認したマラガは、瞳を吊り上げ「いくら家族でも淑女の部屋に無断で入るものではありません!」と父と兄を注意した。


申し訳なさそうに肩を落とす2人がおかしくて笑うと、父と兄は嬉しそうに瞳を輝かせて部屋から出て行ったのだった。


「アイビー、今日はどこかにお出かけしようか?」


「それとも、何かして遊ぶ?」


朝食の時間になり、祖父のポルネオから父と兄の紹介があった。

彫刻のようにカッコいい男性が父のクロームで、神の使徒のように綺麗な子供が兄のラシャンだと教えてもらった。


チャイブから名前は聞いていたが、名前だけ知っているのと実際に会うのとでは現実味が異なってくる。

アイビーは口の中で2人の名前を呟き、口元を緩ませていた。


今は、賑やかな朝食の最後のティータイムになる。


「午後からでもよろしいですか?」


「午前中はもう約束があるのかい?」


「精霊魔法の練習か、剣の練習をします」


食堂が僅かにどよめいたので、「あ! 精霊魔法は秘密だった」と思い出した。

だが、精霊魔法の練習が内緒ではなく、使えるようになったことが秘密なのだ。


そして、一同が驚いているのは、剣の練習という言葉にである。


アイビーは知らない話になるが、母親であるティールは騎士団員だった。

大人たちは「そんなところまでティールと似ているのか」と胸を熱くしたのだ。


ラシャンは、クロームからティールが騎士だったことを聞いている。

「ラシャンの才能はティールから受け継がれているんだね」と言われ、なんだか誇らしくて嬉しくて顔を輝かせたものだ。


でも、ラシャンにとって両親は敬う存在だが、アイビーは守るべき存在になる。

可愛らしいアイビーが自分と同じように剣を? ということが理解できなくて、目を点にしたのだ。


「えっと、お祖母様……ごめんなさい……」


「あら、いいのよ。精霊魔法と剣の練習で悩むのは仕方がないわ。どちらも難しいものね。両方使えるようになりたいものね」


祖母であるローヌの柔らかい笑みに「そうだ! 使えることが秘密だったわ」と思い出した。

ローヌのおかげで周りから見れば、どちらも練習したいけどどっちにしようか悩んでいる図になる。

安堵したアイビーは笑顔で頷いた。


「アイビー」


「はい、お祖父様」


「剣の練習をするのか?」


「はい、毎朝していました。最近できていなかったので再開したいと思っています」


困ったように微笑む4人に首を傾げていると、チャイブがジュースのお代わりを持ってきた。


「もういらないよ。でも、ありがとう」


「お嬢様」


「ん?」


「今までは冒険者になる予定でしたので剣の練習をしていましたが、これからは公爵令嬢ですから剣の練習はされなくてよろしいんですよ。強い騎士たちが守ってくれますからね。それでも、剣の練習をされたいですか?」


「うん、したい。ご飯が美味しくてたくさん食べちゃうから運動したいの。チャイブもいつも言ってたでしょ。ブタさんだと可愛くないって」


途端に厳しい目つきになったポルネオたちに、チャイブは「あははははー」と乾いた笑い声を上げた。

チャイブに「どうしたの?」と尋ねても、「なんでもありませんよ」と流されたので気にしないことにした。

もう一度聞いても答えてくれないだろうし、再度質問するほどの興味もない。






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