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49 .噂

長期休暇が終わる2日前に、王都のヴェルディグリ公爵家タウンハウスに全員で帰ってきた。


プテレヴィでの移動のため空中でカディスたちとは手を振り合って別れ、タウンハウスの訓練場に降りる。

クロームは仕事でいなかったが、シュヴァイに「アイビーたちを手厚く迎えること」と命令を出していたそうで、すぐに入浴、そしてマッサージという予定が立てられていた。


心身ともにほっこりしていると、チャイブが手紙を2通持って部屋に入ってきた。


「早く読んだ方がいいと思われる手紙を持ってきました」


「ありがとう」


ソファに預けていた体を起こし、チャイブから手紙を受け取る。

1通はルージュから、もう1通はファンクラブ会長のキャンティからだった。


「ルージュ様からって初めてね。何かあったのかな?」


ルージュの身に何かあったのかと不安になり、ルージュの手紙から読むことにした。

「あなたがいつ読むか分からないけれど、登校前には受け取ると思うから送っておくわ」という前置きの後、今現在王都の貴族の子供の間で騒がれている噂が書かれていた。


「すごいね」


無意識に心から出た声だ。


「感心している場合ではありませんよ」


「それは分かっているけど、あの時ダフニさんが嘘泣きしながら走っていったのは、こういうことがしたかったからなんだと思うと、狡賢いなぁってちょっと尊敬しちゃったの」


ルージュの手紙に記載されていた内容は、アイビーがルージュと結託してダフニを虐めているという噂が飛び交っているというものだった。

レガッタの誕生日パーティーで何人も目撃しているため、もの凄い勢いで駆け巡ったらしい。


そして、その噂に関してダフニは色んなお茶会で「私の出自が原因のようです。あの場には相応しくないと言われたんです。マナーも頑張っているんですが、あの方たちから見ればお粗末のようで……もっと頑張りたいと思います」やら「カディス様に近づくなと常日頃から言われておりましたから」と涙ながらに語っているそうだ。


ムカつくとか呆れるとかは全く湧いてこず、ただただ「手の込んだことするんだなぁ」と舌を巻いてしまう。


「『噂は大きいけれど、あなたを信じる声が多いわ。みんな真偽には興味がなく面白がっているだけみたいだから、気にしなくていいわよ』か」


「お嬢様の可愛さが為せる業ですね」


「やっぱりそう思う?」


自分のことのように胸を張るルアンに、照れたように微笑む。

チャイブからの呆れていると分かる視線が突き刺さってくるが、「可愛いからだもん」と自分に言い聞かせる。


チャイブの物言いたげな顔を無視するために、ルージュの手紙を机の上に置いて、キャンティからの手紙を手に取った。


長期休暇の過ごし方や体調を崩していないかなどの言葉から始まり、心底腹立たしいことが起こっていると続けられている。

怒り心頭の事件の内容はルージュと同じ内容で、「お茶会に参加しては否定しておりますので、ご安心ください」と記されていた。


どうやらファンクラブのみんながアイビーを擁護してくれていたようで、ルージュの「あなたを信じる声」というのがキャンティたちだったということだ。


「嬉しい。キャンティ会長たちに何かお礼をしないとね」


「小さなテディベアでしたらたくさんありますが、いかがされますか?」


「あげていいの?」


「はい。屋台で売っていたもの全て運んでおります。目は宝石に変えておりますので、皆様にお渡しされても喜んでいただけると思いますよ」


「じゃあ、全部キャンティ会長に送るわ。みんなに配ってほしいってお願いする」


「かしこまりました。1つ1つ箱に入れて、明日届くように手配いたします」


「そっか。後期が始まる前に何か伝えた方が、キャンティ会長も安心できるもんね。お礼の手紙を書くね」


柔らかく微笑んで頷いてくれるチャイブに、アイビーはにっこりと笑い返した。


「そうだ。ねぇ、チャイブ」


「何でしょうか?」


「マーリーさんとダフニさんって仲がいいの?」


「そうですねぇ。仲がいいというより、バーチメント侯爵令嬢は世話焼きの性格のようですので、ダフニ公爵令嬢だけではなく弱い立場と思われる人たちに手を差し伸べているようですよ。孤児院の訪問もよくされているそうです」


「マーリーさんは正義感溢れる人なんだね。じゃあ、今回もマーリーさんは関係ないのかな? でも、キャンティ会長の手紙には、お茶会でダフニさんに話題を振る役と同調する役をマーリーさんのお友達がされているって書かれているんだよね」


「そこまでは何とも。それに、仲良くなってもいないのに、マーリー令嬢がどういう性格か決めつけるのは違うと思いますよ」


「それもそうか」と、数回無意識に頷いていた。


「うん? でも、表面上では別に悪い人ってイメージはないのに、どうしてカディス様もお兄様もマーリーさんはダメだったの?」


「あのお2方は、ただ単に理想が高かっただけだと思いますよ。特に殿下がですが」


肩をすくめながら言うチャイブが面白くて、小さく声を出して笑った。


「カディス様は我が儘だもんね」


「あれは捻くれているっていうんですよ」


「はは、ぴったりな言葉だね」


お腹を抱えて笑っていると、ラシャンが「アイビー、一緒に過ごそう」とやってきて笑っている理由を聞かれた。

素直にカディスの話を伝えたら一緒に爆笑したのに、どうしてそんな話になったのかという原因には目を吊り上げて怒っていた。


いつ何時でも可愛いアイビーのために全力で怒ってくれるラシャンに、「チャイブやお兄様が味方なら何も怖くないわね」と気持ちを強くしたのだった。






次話から学園が再開します。

あんなことやこんなことが起こる予定です。


それと、来週と再来週は金曜日のみの更新となります。

11月12日より火・金の投稿を再開します。


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