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靴磨きの聖女アリア  作者: さとう
第一章
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スラム生活

「おい、魚」

「やった、ありがとー」


 私とクロードの生活が始まって、数日が経過した。

 この数日、それぞれ役割分担を決めた。

 まず、用水路に泳いでいる魚はクロードが捕獲。私が調理をする。

 調理と言っても、焼くだけ……お塩、欲しいな。

 クロードに聞くと、唖然とする。


「塩? 馬鹿言うな。塩なんて高級品、スラム街暮らしの俺たちに買えるわけないだろ」

「だよね……じゃあ、お金あればいいの?」

「それこそ馬鹿だ。こんなみすぼらしい、孤児の子供が仕事なんてできるわけない」

「ってか、さっきからバカバカ言い過ぎだし!!」

「ふん。年下のくせに生意気だからだ」


 クロードは九歳。私より一個上だ。

 でも、精神年齢は私のが高い……なんとなく、クロードをじっと見る。


「なんだよ」

「……クロードって、薄汚れてるよね」

「あ?」


 あ、言い方。

 クロードの額に青筋……すると、クロードは私のほっぺを両手で挟んでグニグニした。


「お前だって、薄汚れ、てん、だ、ろ!!」

「うぼぼぼ、うぼっ、やや、やめ」

「ぷ、あっはっは!! タコみたいだな!!」


 異世界にもタコいるんかい……なんて、思ってしまった。


 ◇◇◇◇◇


 私とクロードは、スラム街にあるゴミ捨て場にやってきた。

 ゴミ捨て場というか……酷い。服や靴、布の切れ端や木材、鉄っぽい何か、折れた剣や防具とか、なんでもごちゃ混ぜにした酷い場所だ。


「ここは、表通りに近いゴミ捨て場。表の街のゴミは、全部スラム街に捨てられる。見てわかる通り、食べ物は全部、大人たちが持って行くんだ……残ったのは、ゴミばかり」

「え、そう?」

「……は?」

「すごいじゃん。見てこれ」


 私は、靴を引っ張り出す。

 ボロボロで汚れた靴だ。底が抜けてたり、穴が空いているのもある。

 そして、踏み台や、ボロボロのシャツなんかも拾った。

 クロードは首を傾げる。


「……そんなゴミ、どうするんだ?」

「ゴミじゃないよ。見てて」


 私はシャツを破き、畳んで持ちやすくする。

 そして、布切れで靴を丁寧に磨くと、汚れた靴は綺麗になった。

 それからゴミを漁ると、ボロボロのカバン、使い古された裁縫道具も見つける。

 私は、使えそうな道具をクロードに押し付け、小屋へ戻った。


「こんなゴミ、どうするんだ? 食べ物とか探さないと……」

「ね、私考えたの。前にクロード言ったよね? お金あれば塩とか買えるって」

「そんなこと言ったか?」

「言った!! 確かに、大人のお店じゃ私たちを雇ってくれない。だったらさ……私たちで商売すればいいのよ!!」

「……はぁ?」

「私、昔読んだ絵本を思い出したの」

「……絵本?」

「うん。まぁ見てて。趣味は裁縫で、ぬいぐるみとか編んだこともあるのよ」

「お前、八歳でそんなことできるのか?」


 正確にはアラサーだけどね。

 ミシンでぬいぐるみとか作ったりするの、けっこう好きなのよね。コ〇ケとかに出てオリジナルぬいぐるみとか売ったこともあるし。

 私は、カバンをナイフで切って、カバンを縫っていた太い糸を抜き、裁縫道具にあった太い針で靴の修繕を始めた。そりゃ本格的な修理は無理だったので、ちょっとした穴を縫うくらいだけどね。

 そして、縫った靴を布で磨くと、新品とはいかないがそこそこ綺麗な靴になった。


「おお……!!」

「ね、これ売れるかな?」

「……わからん」

「そうね。靴だけじゃお金にならないから、サービスもしましょ。私、『靴磨きの少女』って絵本を読んだのよ。みすぼらしい少女が、お母さんに会うために、靴磨きをしてお金を稼いで、お母さんに会いに行くお話!! まぁ、私たちは生活のためだけど……」

「…………」

「な、なに」

「お前、すごいな……アリア」

「ふふん。もっと褒めてもいいし!!」

「……ははっ」


 クロードは、初めて私の前で子供っぽく笑ったような気がした。


 ◇◇◇◇◇


 さて、やること決まったら動かなきゃ。

 私は、ゴミ山から使えそうな服を探してしっかり洗い、子供用にサイズ調整する。

 そして、薄汚れた身体を綺麗にする。


「こっち見たらコロス……」

「み、見るわけあるか!!」


 私は顔、身体、髪をお湯でしっかり洗う。そして、繕った服と靴を着た。

 姿見がないからよくわからないけど、アリアはかなり可愛い部類に入ると思う。伸び切った銀髪をポニーテールにして、そこそこ綺麗なワンピースを着た姿は、愛らしいかも。

 クロードも、身体を拭いて髪を梳かし、私の繕った服を着た。


「───まともな服、久しぶりだな」

「…………え、うそ」

「な、なんだよ」

「クロード、カッコいいじゃん」

「───ッ!?」


 クロードは、顔を真っ赤にしてそっぽ向いた。

 身なりをよくしたクロードは、どこかの貴族令息みたいな高貴さが滲み出ているような気がする。これ、十年後はとんっでもない美青年確定じゃん。


「よーし!! じゃあ、初仕事に行こうか!!」


 私が異世界に来て一か月……私、かなり逞しく生きています。

 だって、異世界生活やりがいある。社畜なんかよりよっぽどね!!

 では、今日のお仕事。靴磨きと修理靴の販売、行ってきます!!

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