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靴磨きの聖女アリア  作者: さとう
第二章

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頼れるケイムス

 私は、一年間のきびし~いお勉強を終えて、ようやく『セイファート魔法学園』に入学することができた。

 今日は入学式。子爵家の馬車に乗って、ケイムスと一緒に学園へ向かっています。

 いやー……緊張してきたかも!!


「アリア、何度も言うけどよ」

「はいはい。変な人に付いて行かない、危ない物食べない、男には気を付けろ、嫌味な女にも気を付けろ、何かあったら俺を呼べ、でしょ? ってか危ない物食べないとか、馬鹿にしないでよね」

「わかってんならいいけどよ。いいか、お前はすっげー可愛いんだから、妙な男がわんさと寄って来る……マジで気を付けろよ」

「…………」

「ん、なんだよ」


 む、無自覚……ケイムス、ふつーに私のこと『可愛い』とか言うし。

 いやまあ、たしかに可愛くなったと思う。十五歳に成長して、銀色のロングストレートヘアはサラサラだし、華奢だけどスタイルはいいし、小顔、くりっとしたエメラルドグリーンの瞳はマジで可愛い。

 ケイムスは私のこと『妹』って見てる。恋愛には発展しなさそう……まぁ私も、この一年でだいぶ距離近づいたけど、ケイムスは『お兄ちゃん』や『兄貴』より『カッコいい幼馴染』って感じだし。

 

「はは」

「……なんだ、その乾いた笑い」

「ケイムス。あんた、人のこと心配するのもいいけど、自分のことも考えたら?」

「は?」


 いやだって……ケイムス、かなりカッコいいし。

 さらっとしてるけどどこかクセのあるブラウンヘア、シミのない肌、切れ長の眼はどこか色っぽいし、この一年で魔法だけじゃなくて剣術の腕前も相当上がってるし、体格もガッチリしてる。

 マジで乙女ゲームの主人公みたいな感じ…異世界の男ってすごいわ。


「あんた、絶対モテるよ? ふふん、婚約者とか探すのもいいんじゃない?」

「アホ。そういうのは親が決めるモンだろ」

「え、そうなの?」

「ああ。ま、政略結婚ってやつだ……お前はたぶん違うけど」

「私、元庶民だしね……」

「そういうんじゃない。オレや姉ちゃん……姉上は、政略結婚だけど、お前は名目上はじいちゃ……お爺様の娘ってなってる。メイヤード子爵家としてじゃなく、お爺様が考えることだ」

「そっかー……」

「ま!! そんじょそこらの男にお前はやらんけどな!!」

「ぷ、なにそれ。じゃあ、私とケイムスが結婚する?」

「ぷははははっ!! いやいや、無理。オレ、もっとおしとやかな子がいいし」

「なによそれ!!」


 ……やっぱこいつ無理!! 

 頼りにはなるけど、異性としては見れないし!!


 ◇◇◇◇◇


 学園前で馬車を降りると、すでに新入生が門を超えては中へ。


「入学式は講堂で開かれるみたいだな」

「うん、行こ」


 一人で行く子もいれば、すでにグループになってる子たちもいる。

 すっごく嫌な予感。こういうグループって、漫画ではよく『派閥』とか、リーダーシップ取りたがるお調子者ポジションだよね。

 

「アリア、お前目立つから変な動きするなよ」

「へ、変な動きって何よ」

「例えば「そこのあなた」……え、オレ?」


 と───私とケイムスの前に……すっご、縦ロール。金髪縦ロール女子だ……が、現れた。

 お供の女子生徒もすでに二人いる。しかも扇子まで持ってるし。

 縦ロール女子はケイムスをビシッと扇子で差した。


「あなた、私の騎士にしてあげる。さ、私をエスコートなさい」

「「…………はい?」」


 いきなりすぎてケイムスも茫然とした。

 なにこの子。いきなりケイムスを騎士とか。

 ケイムスはすぐにキリッとした顔になる。


「申し訳ございません。どこのどなたか存じ上げませんが、すでに先約が」


 と、私を軽く肘で小突く……ああ、そういうこと。

 私はケイムスの腕を取る。

 縦ロールは、私をジロッと睨んだ。


「あなた……この私、ロザンドリオ公爵のレイラを知らないと? そして私の誘いを断ると?」

「……申し訳ございません。すでに約束した令嬢の案内を反故にし、あなた様の案内をするというのは、騎士にあるまじき行為」

「む……」

「ロザンドリオ公爵令嬢。このお詫びは必ずしますので……」

「……まぁいいわ。じゃ、次に行くわよ」

「「はい、お嬢様」」


 あらら、思ったよりあっさり行っちゃった……って、あの子また別の男子に声かけてるし。

 ケイムスは「ぷはっ」と息を吐いた。


「なんなんだ、あれ」

「アレとか言わない方がいいよ。公爵令嬢とか言ってたし……」

「……あれは、自分の派閥作りの一環だな。新入生のグループで権威を保つために、今のうちに仲間作りしておこうってハラだ。おい、さっさと行こうぜ」

「う、うん……でも、大丈夫なの?」

「こっちは名乗ってないし、向こうから絡んでこない限りいいだろ」


 私とケイムスは、そそくさと講堂へ。

 

「それにしてもケイムス、あんな言葉遣いできたんだね」

「そりゃそうだろ。高位貴族の相手とかする時もあるし……お前も習っただろ?」

「まぁね……はぁ、堅苦しいのヤダなあ」

「オレも……」


 入学前から、早くもゲンナリする私とケイムスだった……。

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