残された手紙
『秋の歴史2022』参加作品です。
最終日、諦めかけたけど、やっぱり駄目でした。
だって駄目元で一番好きな戦国武将名と手紙で検索したら、えらく良いの見つかっちゃったんですもん。
凄まじく独自解釈をぶち込んでいますが、よろしければお楽しみください。
「……殿」
「何じゃ」
「あの文を早く焼きませんと……」
「文……、あぁ、あれか」
「『あれか』ではありません! あの文の存在が知られたら!」
「……焼かぬ」
「な、何を仰せになる! お父上と弟君と袂を分かってまで残そうとなさったこの家が滅んでも良いと仰せになるのですか……!」
「そう喚くな。たかが鷹の礼だの湯治の依頼だの大した文ではない。何をそんなに血相を変える」
「何故そんなに落ち着いていらっしゃるのですか! 天下の趨勢は決まり、皆こぞって帰順と忠誠を誓って家を守ろうとしております! ですのに殿は……!
「帰順も忠誠もとうに示しておるじゃろう。倅を出したのは何のためだと心得る」
「そのお命に関わるからこそ拙者は」
「あの文はその時に見せてある」
「……は?」
「かつては仲の良い友であったと伝えてある」
「……ま、まさか、あの方に、直接……!?」
「面白がっておったよ。褒美に刀も賜った」
「あ、が、と、殿は何故そのような事を……?」
「友誼など少し調べればわかるもの。それを『文はない』などと言えば余計に嫌疑が深まろう」
「そ、それはそうですが、しかし何も見せなくとも……」
「何事も先手よ。言われて見せるのと言われる前に見せるのでは、心根が違って見えよう」
「……」
「それにな、義父上に素晴らしい友を自慢したいと思ったのじゃよ」
「……全く殿は、智謀の方なのか純朴の方なのか、未だに計れませんな……」
「はっはっは。そんなもの儂にも分からんわ」
軽やかな笑い声と共に、秋風が爽やかに吹き抜ける。
その風には亡き友の匂いが残っているような気がした。
読了ありがとうございます。
さてこの武将名はだーれだ?
……これだけの情報で、しかも独自内容盛り盛りの内容で、当てられる人がいたら凄まじい歴史オタだと思います。
気になる方は感想欄でどうぞ(露骨なクレクレ)。
お楽しみいただけましたら幸いです。