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炎の鳥は熱く躍る  作者: 斎木伯彦
進学試験
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進学試験

「さあ、続きといこうぜ」

「ルディ、連携を」

「ええ」

 グレイスに促されて、ルディはカインの正面に立つ。その彼女の右にグレイス、左にはスカーレットと先程と変わりない布陣だ。変化したとすれば、今回はカインの背後に二人が先行していることだ。

「へへ、なかなかやるな」

 ルディは静かに前に出た。何の工夫もなく模擬剣を突き入れる。恐らくはカインが彼女の模擬剣を避けて、左右のどちらかに動くはずなので、そこをグレイスかスカーレットが追撃して終わる、はずだった。

「悪くねぇ作戦だ」

 カインの声が耳元で聞こえて、ルディは驚く。目の前、彼女の右肩に彼の顔が迫っていた。その真っ赤な瞳と視線が合ったと思った瞬間、彼女は仰向けに倒れている。

「え……?」

「ルディ!」

 グレイスの声、続けて何かが床に打ちつけられる鈍い音が響いた。仰向けのままに視線を音の方向に向けると、グレイスが隣に寝ている。カインの姿はなかった。

「降参だ」

 スカーレットはあっさりと負けを認めた。他の女生徒も戦う意思のないことを、模擬剣を手放す行為で示す。

「そこまで、挑戦者の勝利とする」

「やったぜ」

 カインはニカッと笑う。その笑顔にルディは胸を締め付けられるような感情を覚えていた。


「納得いかない!」

 金髪の少年が教官たちに抗議していた。それというのも、何の説明もなしに百人組み手が始められ、準備不足の上、不意打ちで昏倒させられたのだから、結果を受け入れられないとの言い分だった。

「大体、あいつはどこの誰なんだよ?」

「セントラルガーデン及び、士官養成所では身分や出自を問うのは禁則事項です」

 白い長衣を着た男性が横から口を挟む。

「師匠、そいつは俺に勝てると思っているんだろ? だったら正々堂々と一騎討ちで白黒つけりゃ納得するんじゃないか?」

 赤毛の少年の提案に教官たちも頷く。

「やれやれ、カイン君、口の利き方を改めなさいと言っているでしょう?」

「い、いひゃい、いひゃい。ひひょお、ほりゃないぜ」

 様子を窺っていたルディは思わず吹き出していた。同年代では圧倒的な強さを見せるカインが、師匠の前ではまるで赤子同然なのだ。その落差に笑ってしまう。

「……だから、レイモンドは勝てると思っているのかしら?」

 確かに白い長衣の男性の実力は不明で、纏っている雰囲気も強者のそれではない。しかし所作の中に只者ならぬ気配を感じるのも事実だ。

「グレイスは、どう思います?」

「そうだな、実際に手合わせした感じでは、カインの圧勝だと思う」

 セントラルガーデンではそれぞれが互いの実力をよく知っているので、本気のカインと手合わせしたルディ、グレイスたちしかレイモンドとカインの実力差を窺い知る者はいなかった。しかしセントラルガーデンの教官たちにも中央の意地、自負がある。このまま負けっぱなしではいられないという暗黙の了解が、レイモンドとカインの一騎討ちという形での決着を後押ししていた。

「それでは、レイモンドの抗議を受け入れ、カインとの勝負を行う」

「好きな武器を選べよ、それで納得するだろ?」

 カインの居丈高な態度にレイモンドは苛立ちを募らせる。レイモンドは懐から手袋を取り出すと、それをカインの顔面に向けて投げ付けた。カインは無造作にその手袋を左手で受け止める。

「剣だ、正々堂々と剣による決闘を申し込む」

「ほう」

 レイモンドは挑発に乗せられるまま、カインに人差し指を突きつけてそう宣言した。その彼の宣言にカインの師匠だけが反応する。

「それでは、休憩を挟んでから始めましょう」

「師匠、俺は今からでも構わねぇけど?」

「治療術士に休憩が必要ですからね」

 百人近い生徒の治療を休みなく行っていたので、治療術士たちは疲労困憊といった風情だ。

「誰かさんが、良い勢いでコテンパンにしてくれましたからね」

「そりゃ、師匠が素晴らしい指導をしてくれたからな」

 師匠の嫌味に、カインも負けじと返す。レイモンドはバカにされている気がして、歯ぎしりが酷くなっていた。

「威張っていられるのも今の内だぞ。恥を晒さないよう気を付けるんだな」

 そう言い捨ててレイモンドは足音も荒々しく行ってしまった。

「やれやれ、恥を晒したのあいつの方だろうに」

「あの!」

 ルディは彼らに近付くと、声を掛けた。

「どうされましたか?」

 カインの師匠が尋ねかけて来るが、ルディは何と切り出して良いのか逡巡した。

「の、飲み物とかお食事を用意できますけど、如何ですか?」

 カインとその師匠は顔を見合わせた。師匠が軽く頷く。

「喜んで頂くぜ」

「カイン君、言葉遣い」

「い、いひゃい、いひゃい」

 頬をねじり上げられて情けない声を出しているが、学園一の使い手を瞬殺した上、百人抜きを達成した猛者だ。ルディは思いの君である以上に、彼の強さに惹かれていた。

「それでは、こちらにどうぞ」

 ルディは自分自身でもどうしてこのような大胆な行動に出られたのか不思議だった。二人を案内して、校内の一室に誘う。

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