私は運は単なる物事の運びに過ぎないと思っている(後編)
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7のカードが二枚表になる。
ベティは48を二枚めくる。
ユリカは17のカードを二枚めくる。
51を二枚。
27を二枚。
52を二枚。
37を二枚。
53を二枚
47を二枚。
54を二枚。
57を二枚。
44を二枚。
ユリカは39と5をめくる。
39を二枚引く。
「フフフ… 友達って、あなた見たところそこそこ年齢言ってるのに… それで、友達って… 友達の数が自慢できるのは小学生かパリピ界よ? くだらないわね」
ユリカはあざける。
36と11。
「挑発かしら? くだらないわね。 それもあなたの作戦?」
ベティは11と11を表にした。
ユリカは24と21をめくる。
ベティは34と34。
ユリカは27と3をめくる。
ベティは3と3.
「ねえ… さっきから、毒を塗ってる? あいにくだけど、私に毒は効かないわよ」
ベティはユリカの目論見を話す。
「そうなのね。 それは困ったわ…」
「そんな卑怯な手しか使えないのかしら?」
「…私ね。 こういうゲームをモチーフにした漫画やTVが好きなの。 よく見てたの。 けどね… 見るたびに思うの… まどろっこしいなって、お金をかけたゲームならまだしも、命をかけたゲームって… まあ、命をかけさせて、抗うさまをあざけるコンセプトのものならわかるけど… 両者が命がけでゲームってwww まどろっこしい。 当人? 当事者? そのキャラクターは真剣なんでしょうけどね。 私には滑稽だわ… だって、直接命を奪えばいい話だもの」
「…そういうものを楽しめないなんて… 興がない人ね」
ユリカはベティに提案する。
「ところで、このままいくと、私が負けるわよね?」
「そうね。 もう逆転は不可能ね」
「…1分目を瞑ってくれないかしら?」
「はあ? なに訳の分からないことを言ってるの? そんなこと飲むわけないじゃない… と、言いたいところだけど… まあいいわ。 それによって変わるものでもないし… 目を瞑っててあげるわ…」
「ありがとうね」
ベティは1分ほど、目を瞑った。
「どうぞ、開けて頂戴。 その間、細工をさせてもらったから」
「まあ、何をしても、私が勝つことに変わりはないけどね。 私の運の力は小細工で破れないわよ」
ユリカとベティは交互に札をめくっていく。
場には22枚のカードが残った。
「さあ、どうぞ。 最後のペア分かっているんでしょ? めくりなさいよ」
ユリカは1の札を2枚めくる。
「さ、数えるまでもないわね」
「そうね。 この勝負、私の勝ちよ」
「は? なに言ってるの? あなたルール分かってる?」
「ええ。 そちらこそ分かってないのかしら? よく見てごらんなさい。 1のペアを引いたら、その時点で得点を交換するってルールがあるでしょう?」
「はぁ? そんな馬鹿なこと… あなた、 ルールを付け加えるなんて、バカじゃないの? そんなことアリなはずないじゃない。 反則、反則よ」ベティは声を荒げる。
「あなた…案外自分の能力を分かっていないようね。 まあ、まだ時間もあるし、解説をしてあげるわ。 まず、私は毒や能力無効化の汁をカードに塗った。 あなたは運が良い事にそれを回避した。 良い点数を引くよりも、それを回避することを優先した。 ここから分かることは、あなたの運とは、ゲームの勝利よりもあなたの命を守ることに特化しているってこと。 まあ、あるでしょ? 漫画やTVでも、負けた方がよい場合って… そういうとき貴方の運はどのような運びをするのか… 確かめてみたら、案の定命を守る方を優先した」
「そ、それが何よ? どうせ負けたら命がなくなるのに… それで、何で私の運が… 負けに導くのよ…」
「気付かない? 今ここにたくさんの能力者が近づいてきてることに」
「…え」
ベティが周囲の気配を探る。
「いくらあなたの能力が高くても、多くの能力者に攻められれば、ひとたまりもないわ。 無効化能力者、運を克服できるほどの強者、因果律操作ができる能力者。 こんな奴らに抗う術… あなたにあるかしら?」
「そ、そんな。 それすら、運が守ってくれるはず」
「そんなに万能な能力なんてないわよ? その運はたかが一人の神候補が用意したもの… できることなんて限られてるわ。 範囲も効果の強さも… だから、呼んだのよ。 たくさんの能力者たちを、ここにね」
「バカな… それでも、そんなことうまく行くわけがない…」
「うまくいくわ。 だって、私だもの。 さて、どうする? あなたの運は、あなたが勝つよりも負ける方が生き残る可能性が高いと判断したようよ。 、負けを認めて、私の家来になりなさい。 そうすれば、守ってあげる… 時間はないわよ。 早く認めなさい」
「そんな… バカなこと… めちゃくちゃだわ。 そんな方法で勝つなんて、ありえない」
「あり得るわ。 物事の因果を同時に操れば… 神を凌駕するほどの因果を結び付ければ、運ぐらい簡単に覆るわ」
「…分かった。 負けだ。私の負けだ」
「じゃあ、さっさと来なさい。 この街を出るわよ」
「…分かった」
「あなた… 運が良かったわね。 私に見初められて…」
「このクズ…」
「フフフ。 いつまでそんな口が利けるかしら、楽しみね」
ユリカはベティや荷物を馬車に入れて、街を後にした。