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ゆとり宇宙人は頑張らない  作者: ヤマトノ
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やっと来た宇宙人

人類史には人類の常識を塗り替えるような出来事がいくつか刻まれている。


地球は平らではなかった、宇宙の中心は地球ではなかった、相対性理論の発見、NDA構造の発見…


様々な出来事や発見が我々人類の常識を覆してきたわけだが、今日まさにその人類史に過去に例をみないほどの大発見を人類は目の当たりにする。





アメリカ合衆国某会場。


会場は多くの報道陣でにぎわっていた。通常の記者会見とは違いカメラの数が異常なほど設置されている。


そのカメラの目線の先には、記者会見で質疑応答するであろう者が着席する壇上と、両端には「NASA」と大きく書かれた旗とアメリカの国旗が掲げられていた。


壇上には大量のマイクが設置されていた。


この会見には各国、といっても大国のみならず地球上のあらゆる小国も参加している。ここまで多数の国の報道陣が集まる会見のは異例中の異例である。


ほぼ全世界の国の報道陣のカメラが壇上に向けられているといっても過言ではないだろう。この記者会見の映像はインターネット上でもライブ中継されており


無数のミラー配信も存在し、視聴しようとすれば誰でも見れるくらい様々なプラットフォームから放送されている。


会場は報道陣の記者会見前の中継であらゆる言語が飛び交っていた。その中に日本の報道陣のカメラも当然向けられている。


日本人女性リポーター「まもなくアメリカ航空宇宙局NASAより大規模な記者会見が行われようとしております。」


「会場をご覧ください。各国の報道勢たちのカメラの量と、会場を埋め尽くさんばかりの人の数。」


日本のお茶の間に記者会見の会場内の様子が映し出される。この記者会見の様子は日本の宇宙好きだけにとどまることはなく、今までNASAに関して、ましては宇宙に関して興味すらなかった層の注目も集めている。


それほど今回のNASAから発表は世間をざわつかせているのだ。先日のNASA職員のインタビューではNASAの総力をもって世界中に公開するつもりと公言していた。


アメリカとNASAが全力でこの記者会見の注目を集めた結果がこれだ。ここまで人類が総出で興味がひかれる理由…


それはこの一点に限るだろう。





地球外生命体の有無





日本人女性リポーター「今回、NASA側から各国の報道局に、記者会見の参加要請が出されたわけですがこのような大規模な記者会見は異例といっていいでしょう。

今、全世界の人々が注目していることは…そう地球外生命体の発見。ではないでしょうか。ついにこの日が来るとすれば人類史に残る大発見になるでしょう。

ここまで大規模な会見を開くということはそれなりの発表が期待できるのではないでしょうか。もしも今回の発表が地球外生命体の発見に関するものであるならば

ここまで大規模に公表する何かしらの意図、があるのではないかと考えられます。一体NASAは我々に何を伝え-」


カメラのフラッシュ音が会場を覆いつくし、カメラを見ていた各国のリポーターが壇上へ一斉に視線を向けた。


うっとうしいくらいのフラッシュの中、二人の人物がステージ中央の壇上へと歩いている。


一人は男性で年齢は40前後の高身長のアメリカ人男性。もう一人は20代であろう若いアジア人男性。二人ともしっかりとした黒いスーツを着ている。


先頭でステージ中央の壇上へ歩いているアメリカ人男性は目を細めながら胸元のポケットにひっかけてあるサングラスをおもむろに取り出し、手のスナップの力でサングラスを開き装着した。


そして彼らは壇上後ろに設置された椅子に着席した。しばらくの間、会場中のフラッシュ音が鳴り響きある程度収まってきたであろう時に、サングラスを外し、元あった胸のポケットにひっかけた。



「申し訳ない。まぶしいのはなかなか慣れなくて。」



正面から映ずることで、そのアメリカ人が何者であるかを確認することができた。宇宙飛行士のスティーブ・スミスであった。



「まずは各国の報道陣の皆様、遠いところお集まりいただき感謝します。急な要請にご対応したくださったことも重ねて感謝します。

今回、ここまでの大規模な会見を開くのにも重大な理由があるのはお判りいただいていると思いますが、まずは彼を紹介します。通訳で来てもらったケイタ コバヤシです」



隣に座っているアジア人男性が軽く会釈をした後ケイタ コバヤシが話し始めた。もちろん英語である。



「ケイタ コバヤシです。日本から来ました。よろしくお願いします。通訳として参加させていただきます。」



会場内が少々ざわついている。それは当然であった。誰しも世紀の発表を心待ちにしていたのにもかかわらず、日本人の通訳がいる。


なぜ日本人の通訳が宇宙飛行士と一緒に出てきたのか…


各国報道陣は一体どういうことだ?と言わんばかりの表情をし、ざわついているとそのざわつきを抑え込むように強めの声でスティーブ言い放った。



「結論から言うと我々は月で地球外生命体であろう生物とコンタクトを取りました」



一瞬会場が静まり返り、数秒後会場が一層ざわつき始めた。


生物が生息できるであろう環境の惑星がある。生物の顔のような影が月面で見つかった。あの星には水が存在している可能性がある。


等ではない、生物とコンタクトを取ったといっているのだ。発見ではなくコンタクト。意思疎通である。これは紛れもなく人類史に刻まれるであろう出来事だ。


しかしさらに日本人の通訳の存在意義が問われるところだ。スティーブが話し続けた。



「その地球外生命体を発見し、コンタクトを取ったのが私であります。今から話すことは正真正銘本当の事であり驚く方のいると思うが、真摯に聞いていただきたい。

私が月面調査中に発見した生命体は私たち人間と変わらない容姿をして、体の機能、感情や行動、善悪の考え方、などいたるところが我々と同等の生物です。


そして…






日本語を話します。」





衝撃発言に報道陣は目を大きく開き誰もが驚愕している。が、すぐさま疑念を抱く


「いやいやそんなことあるか」


「ばかげている。それってただの日本人じゃないのか」


「いやでも月で発見したって」


「マジ…なのか?」


世界中の記者会見視聴者たちも一斉に疑念を抱いた。スティーブが壇上にあるマイクを口元に近づけた。



「よって今回日本人の通訳を参加させたわけですから、当然その地球外生命体もこの会場にいらっしゃってます。

我々に伝えなくてはならない、重要なことがあるようなのです。」



会場内がざわつく。



「ここに来るのか?」


「これはすごいことなんじゃ…」


「実物が出てくるってことは本当なんじゃないか?」


「何かの間違いだろ…」



様々な言語で様々な憶測が飛び交う。スティーブが続ける。



「しかしその地球外生命体…いや彼女にもプライバシーがありまして…名前や顔は隠し、声などは加工させていただきます。

これは我々が申し出たのではなく、彼女からの申し出であります。先ほどお話しした通り彼女の感性も我々と変わらず、大変プライバシーを重んじております。我々と何ら変わりない生物とお考え下さい。


では…ご登場お願いします。」


ステージの袖から一人のスーツ姿の女性が現れた。身長は160程度、顔には何やらキャラクター物?のお面をしている。よって年齢はわからない。髪の毛の色は真っ青なブルー。


体格は細く胸はまぁまぁある。髪の色は派手で地球上に存在しない髪色ではあるが、それ以外は人間と同じといっていい。


一見して彼女が地球外生命体とは思えない。カメラのフラッシュが瞬く間に壇上に向かう彼女の影を量産した。


彼女はすたすたとステージ中央の壇上の後ろに設置されたコバヤシの隣の椅子に着席した。いったん腰を上げて椅子の位置を調整し再度座りなおした。


彼女の人間っぽいしぐさが報道陣、視聴者の疑念を膨らませていく。左から 彼女 コバヤシ スティーブ の順に着席している。


「・・・・・・・・」


彼女は黙ったままだった。お面のせいで表情は全くわからない。


コバヤシが目の前にある大量のマイクの一つを彼女の方向に傾けた。彼女はコバヤシに軽く会釈をしゆっくり大きく息を吸い込んだ。そして発言した。



「こんにちは地球の皆さん。大変恐縮なのですが納税をお願いいたします。」



おそらくお面の内側に声を変える機会が取り付けてあるのだろう。加工された音声であったが女性の声というのは聞いて把握できた。


地球に来た宇宙人が人類に向けて放った最初の言葉は想像の斜め上を行くものだった。

よろしくお願いいたします。

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