表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/148

23 英雄、ヒサープの相談を受ける

 通りに面した軽食を出してくれる店に入る。

 このあとは家で食事の予定があるから俺はお茶だけを注文する。

 ヒサープはお茶と一緒に焼き菓子を頼んでいた。


「それで相談というのは」


「近頃、探索者になりたいという人が増えているのではないかと思うのですが」


 事実なので頷いて返事とする。


「その中には貴族も多いのではないでしょうか」


 ティアが何人か見知った顔があると言っていた。


「その通りだ。よく知ってるな」


「実はですね、鏡会に癒やしの力を持つ者を紹介してほしいという相談というか、ほとんど強制じみた話がいくつも入っていまして……」


 まるでボールサムがササンクアをチームに加えた時みたいな話だな。


「これまでにもダンジョンの浄化を名目に探索者に協力する信者はいましたが、それはあくまで自発的なものでした。まるで徴用するかのような今回の話は鏡会内でも問題になっているんです」


「癒やしの力を持つ人がチームにいると安心感が違うから気持ちはわかるが、強引に引き込むのはよくないな」


「人々を救うことは鏡会としては当然のことですからそれはいいのですが、探索者というのは大変な仕事ではありませんか。そうすると聖職者としての日々の務めが疎かになってしまうと思うのです。癒やしという神から与えられた力を人々に分け与えることができないのならば、ダンジョンになど入るべきではないという声が大きくなりつつありまして……」


「例の禁足派というやつか」


 俺の確認にヒサープは頷く。


「そもそもの話なんだが、聖女ってそんなにたくさんいるのか?」


 ササンクアのように癒やしの力だけでなくアームドコートが召喚できる者となればかなり限られる存在だと思うのだが。


「だから困っているのです。下手をすると探索者として適切ではない者までもが連れていかれかねないものですから」


「正気を疑う話だな……」


 俺のような例外者が言うのもなんだが、アームドワーカーではない者がダンジョンに入って無事ですむはずがない。

 最低限、自身を守ることができなければチームの足を引っ張るのは間違いない。その結果、チームが全滅するということにもなりかねないだろう。


 聖女のような貴重な人材をそんな理不尽で失うとなれば鏡会として難色を示すのは当然だ。


「わかった。強引にチームに引き込まれた鏡会関係者がいたり、アームドワーカーではない者がチームに所属したりしている場合はダンジョンへ入れないようにしてほしいとギルドに話をしておく。よく知らせてくれたな」


「いいえ。ジニア様に相談することができてよかったです」


 ギルドだって探索者の死亡が増えるのを喜ぶはずがない。そんなことを放置していては組織の維持に支障をきたすから適切な対処をしてくれるだろう。


「しかし、これで鏡会の貴族に対する風当たりが強くなりそうだな」


「それはもともとのことですから」


 ヒサープが微苦笑している。

 これまでもこういった衝突は何度もあったのだろう。


「貴族といっても悪い奴ばかりではないんだがな。権力がある分、無理を押し通すことができてしまうから、勘違いする奴もいるんだろうなあ」


 俺の周りにも何人か貴族の知り合いはいる。

 ティアやローゼルは価値観の違いはあれども良い人間だと思うし、ニモフィラやキャトリアも好意を持って接することができる人物だ。

 タンジーは頑固な男だが、塔へ行きたいというひた向きさを俺は高く評価しているつもりだ。


「幸いダンジョンにはしばらく入れないことになっているから、この間にギルドには手を打ってもらうよ」


「よろしくお願いします」


 肩の荷が下りたのか、ホッとした表情をしたヒサープは大きな口を開けて焼き菓子を頬張った。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


「続きを早く読みたい!」と思われましたら【ブックマークに追加】(更新通知にチェックを忘れずに)をお願いします。不定期更新なので、その方が読み逃しがないと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ