18 英雄、合流を果たす
眩い光が降り注ぐ場所から薄暗い遺跡内に飛び込んだせいで視界が真っ暗になる。
「ふぅー……」
両目を閉じて暗闇に目を慣らす。
その間に背後から足音が聞こえてきた。
少し離れてしまっていたようだ。
「は、は、は、はぁはぁ……はぁ、はぁ……や、っと、追いつきましたわ」
「ふぅはぁ、ふぅはぁ……こ、ここに……ローゼルさん、が……」
「ああ。息を切らしているところ悪いが、すぐに入るぞ」
俺の目はすっかり暗闇に適応していたが、駆け付けたばかりの二人はそうもいかないだろう。
ストレージからミニフラッドライトを取り出して周囲を照らす。
「この遺跡の三階にいる」
「ここに魔物は……」
「いる。近くにコボルドの巣があるからよく見かけた。だがダンジョンの様子が変わってきているから今もそうだとは限らない。ディープアリゲーターがいる想定で動いてくれ」
地下二層でもっとも厄介な魔物の一つがディープアリゲーターだ。
水辺から遠いこの場所にディープアリゲーターがいる可能性はかなり低いが、楽観主義よりは最悪を想定して動くべきときもある。
これまでに何度も倒した経験があるとはいえ、ここまで駆け通しの息が上がった状態で同じように戦えるはずもない。しかも今はチームで一番の攻撃力を持つローゼルがいない状況だ。
神妙な顔をした二人が頷いている。
「わかりました。シールドをかけておきます」
「よし。いくぞ!」
最低限の罠チェックと警戒だけで先を急ぐ。
多少、足音がしていようが構うことはない。
むしろこの足音をローゼルが聞いてくれていることを願いたいほどだ。
ローゼルがいる三階に入った。
ここから遺跡中央へ向かって少し行き、右手側にある通路の先にローゼルはいるはずだ。
素早く通路や壁などの確認をしながら進む。
通路を曲がったところで前方から光が漏れているのが確認できた。
「ローゼル! 無事か!」
俺の脇を小さな影が駆け抜ける。
「ローゼル!」
小柄なティアが駆けていく。
その前方に人影があった。
逆光で表情はわからない。
「ティア!」
声は間違いなくローゼルのものだった。
飛び込んだティアをローゼルが抱き留める。
「心配しましたわ。本当に心配しましたのよ」
「うん。ごめんね」
「いいのですわ。ローゼルが無事だったんですもの」
「ケガはありませんか?」
「うん。だいじょうぶ」
ティアを抱きしめたままのローゼルが俺を見上げる。
「ごめんなさい、シショー……」
「いや、無事だったのならいいさ」
しょげているローゼルの頭を撫でてやる。
とにかく無事でよかった。
「俺の方こそすまなかったな。もっと罠に注意するように言うべきだった」
三人が順調にやれていることに安心しきって注意を促さなかった俺のミスだ。
「ううん。ちゃんと、確認しなかった、ローがわるいの」
「ほう。わずか数時間でやってくるとはな。流石は聖塔探索士と言ったところかな」
奥から姿を見せたのはカラフルな衣装に身を包んだシクモアだった。
「なぜこんなところに?」
「この遺跡を探索していたら彼女が転送されてきたのさ。だから保護していたのだよ。一人なのを放っておくことはできなかったものでね」
「仲間が世話になった。感謝する」
「いや、いいさ。走破者――いや、この国では探索者か。同業の仲間のために当たり前のことをしただけだ。本当に気にしないでほしい。それよりも――」
シクモアが俺たち三人をしげしげと眺めている。
「相当無理をしてここまで来たようだ。この奥でキャンプをしているから来たまえ。身体を休めるといい」
「あのね、シショー。タイム、すっごいの。まるで、魔法みたい」
シクモアのチームに強い魔力を持った仲間がいるのだろうか。
「ははは。彼女はタイムの料理がお気に入りのようだ。貴殿たちの口にも合うといいのだが」
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