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12 英雄、未踏破エリアへ向かう

 ギルドの依頼を受けたのは俺たちのチームだけではなかった。

 スノウボウルも新人に声をかけて即席のチームを作り、未踏破エリアの探索をするそうだ。


「お嬢ちゃんたちのような将来有望な探索者は一人でも多い方がいいからの」


 目を細めながらそんなことを言っていた。


 フリーの探索者であれば、あの大ベテランに声をかけられて断る奴はまずいない。

 新人であればスノウボウルと組んで、積極的にノウハウを吸収したいと思うだろう。


「討伐隊を地下三層に送り届けたときもそうだが、声をかけられて二つ返事の奴の数がスノウボウルの人望を物語ってるよなあ」


 人格が優れているとはまさにああいうことをいうのだと思う。


「あら。ジニア様がお声をかけたらそれ以上の方が応じてくださると思いますわよ。少なくとも、わたくしは一も二もなく引き受けますわ」


「ローも」


「もしもあの時、ジニアさんから声をかけていただいていたら、喜んでついていったと思います」


 三人から信頼の目を向けられて照れくさいながらも誇らしい気分になったのは言うまでもない。


「しかし、今日のギルドはやけに混んでいるな」


 受付嬢たちは対応に追われている。


「見慣れない方も多いですね」


「あら。あちらにいるのはトンレサップ家とサイアム家のご子息ですわね」


「あの人、みたこと、ある」


「エズニス家のご子息ですわ。どういう風の吹き回しかしら。探索者とは縁遠い方ばかりを見かけますわね」


 もともとアームドコートの召喚ができるようになる紋章を持つ者は貴族が圧倒的に多い。

 だが貴族にはボールサムのような考え方をしている者も多数いるらしく、探索者としてダンジョンに潜るのを嫌がる傾向があるのも事実だ。


 もちろん、ティアたちやタンジーたちのように貴族であっても探索者を志す者もいる。

 トンレサップやサイアムやエズニスのご子息たちもその類の人種なのだろう。

 だからこの光景がおかしいわけではない。


 ようやく受付が空いたのでそこに滑り込む。


「あ、こんにちは、ジニアさん」


 なぜだかパチェリィはホッとしたような顔をする。


「大変そうだな」


「そうなんですよ。今日はやけにチーム登録を希望される方が多くて」


「貴族が多いんだって?」


「そうみたいですね。先日、ダニューブ公爵が声明を発表したじゃないですか」


 ダニューブ公爵はかつて聖塔に登った英雄の一人だ。

 彼のチームにティアたちの祖父が加わっていて、塔での活動内容を記したのが『ダフォダルは如何にして聖塔で90日間を生き延びたのか』という本だ。

 二人からは「おじ様」と呼ばれている。


 そして俺たちにスクリーンの回収を依頼したのはその人ではないかと推測しているのだが。


「あれで刺激を受けたんでしょうかね。探索者になりたいという方が急に増えまして。ギルドとしては嬉しい悲鳴です」


 良くも悪くも影響力の大きい偉人だ。

 たった一言でこれだけの変化が起きるなんてな。


 塔を目指すライバルが増えるわけだが、探索者が増えるのは少なくとも悪いことではないと思うので歓迎したいとは思う。


「それで、今日はどのようなお話でしょうか」


「先日の未踏破エリア探索の依頼を受けようと思ってね。これが計画書だ」


「依頼を受けていただいてありがとうございます」


 パチェリィはしっかりと書面に目を通して頷く。


「はい、たしかに受領いたしました。計画には外縁部を回るとありますけど、理由をうかがってもいいですか?」


「中心部に残っているエリアは他に回るチームがいるだろうと思ってね。そうすればかち合うこともないだろう?」


「目の付け所ってやつですね。わかりました。それでは、お気をつけて」

ここまで読んでいただきありがとうございます。


「続きを早く読みたい!」と思われましたら【ブックマークに追加】(更新通知にチェックを忘れずに)をお願いします。不定期更新なので、その方が読み逃しがないと思います。

「面白かった!」と思っていただけたのなら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてもらえると作者のやる気につながります。

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