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4 英雄、大きな音を聞く

「シショー。荷物、しまった?」


「ああ。こっちは終わってるぞ」


「わたくしも終わりましたわ」


「それではローゼルさんの準備ができたら撤収ですね」


 俺たちは地下二層で4日間の滞在を終え、帰還の準備を進めていた。


「でも残念でしたわね。ストレージが見つからなくて」


「しょんぼり」


 目的の一つだったストレージだが、今回の探索では見つけることができなかった。

 だからローゼルは行きと同じく背嚢に荷物を詰めている。


 ちなみにもう一つの目的はバカンスだった。

 巨大なパラソルに人数分のローチェアに新たに購入した水着と準備も万全だった。

 そのお陰もあって、海辺のバカンスは堪能してもらえたようだ。

 もっとも、俺は三人がはしゃいでいるところを見守っていただけなのだが。


「でも、グレーパックは、いっぱいだった。だから、ローは満足」


 さっきから背嚢に入れているのはローゼルお気に入りのグレーパックだ。


 グレーパックは通常の保存食よりも軽くてかさばらない。それでも量があれば邪魔になる。

 だからストレージにしまっておこうかという提案は笑顔でお断りされた。

 どうしても自分が持って帰るとローゼルが譲らなかったのだ。


「ローゼルは本当にそれが好きですわね」


「うん。だって、おいしいし」


「そうなんですわよね。もうすっかり普通の食事では満足できない体になってしまいましたわ」


 ダンジョン滞在中はレプリケーターで作った食事を食べるが、地上へ戻ればいつもの味気ない料理が待っている。


「そう言うな。塔に登れはあの味が懐かしく……ならなかったな、そういえば」


 レプリケーターの料理のが間違いなく美味いので、それで満足できていた。

 むしろレプリケーターがあったお陰で頑張れたと言っても過言ではないかもしれない。

 美味しい食事はモチベーションを保つためにも大切なのだ。


「これから先、今までのお料理とジニア様のお料理、どちらか一方しか一生食べられないとしたら、迷わずジニア様の方を選びますわ」


「ローも、そうする」


「いや、しかしだな。故郷の味というのは大切にした方がいいと思うぞ」


 食感がなくなるまで茹でられた野菜やパサパサになるまで煮込まれた肉の塊を塩味で食べるだけなんだが。

 あと元の食材がなにかわからないレベルまで油で揚げてもあるな。


 やっぱりお世辞にも美味いとは言えんよなあ。


 その時、ドーンという大きな音がする。


 三人は咄嗟に音の方を確認し、いつでも動き出せる体勢をとっていた。


「こんな音、初めて聞きますわ」


「森の方向のようですね」


「また、おっきなゴーレム?」


「ここは地下二層ですわ。ゴーレムが出るのは三層ですわよ」


「ジニアさん、どうしますか?」


 今回の探索の目的は地下二層に籠ってアーティファクトを探すことだった。

 魔物との戦闘はあったが、それが主目的ではなかった。

 だからあえてここで危険を冒す必要はない。


「森ということはディープアリゲーターがたくさん生息する場所ですわよね」


「遺跡の近くにいたエリアボスが動いた可能性も考えられます」


 現在はダンジョンの様子が変わりつつあるのも事実だ。

 変化の状況を確認するのも探索者に課せられた義務である。


「なにが起きているかを確認する。有力な魔物であれば戦闘は避けて離脱しよう。今回の探索は戦闘が目的ではないしな。無理はしないこと。いいな」


 三人が真剣な表情で頷く。


「ローゼル、いけるか?」


「うん。いいよ」


 グレーパックで一杯になった背嚢を背負う。


「よし、移動を開始する」


 いつものように俺が先頭に立ち、三人が続く隊列で行動を開始した。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


「続きを早く読みたい!」と思われましたら【ブックマークに追加】(更新通知にチェックを忘れずに)をお願いします。不定期更新なので、その方が読み逃しがないと思います。

また「面白かった!」と思っていただけたのなら、広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてもらえると作者のやる気が出ます!

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