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49 英雄、家を案内する

「言っておくが、面白いものはなにもないからな」


 そう前置きして、三人を家に招き入れる。

 思えばこの家に誰かが来るなんて初めてのことだ。


「屋敷の離れよりも狭い建物ですわね。ここは物置かしら」


 ちょっと待て。貴族基準で家を見るのはやめてもらえないか。

 比べ物になるはずがないんだから。


「一応言っておくが、これは一般的な家族が暮らしている大きさの家だからな」


 ティアが目を見開いて驚いていた。


「いいお家ですね。中心街から少し離れているからか周りも静かですし。とても暮らしやすそうです。私としては鏡会が近いのも喜ばしいですけど」


 ギルドからもそこそこ近いので生活はしやすいとは思う。


「ですが――」


 窓に近寄ったササンクアが桟を指でなぞる。


「あまりお掃除はされていないんでしょうか」


「悪いな。男の一人暮らしだったんだ」


 部屋の掃除は気が向いた時にしかしたことがない。

 ここで暮らし始めておよそ半年。掃除をしたのは一度だけだ。


「まずは家中のお掃除をしないといけませんね」


「掃除はメイドに任せればいいのですわ。隅々までピカピカにさせますわよ」


 正直、それは助かる。

 家の中のことなんてまったくしたことがなかったからな。


「シショー、ごはんは?」


「ローゼルたちの屋敷には料理人がいるんだろ?」


 俺の確認に二人が頷く。


「どうする。ここで暮らすならレプリケーターで作ってやれ――」


「おねがい!」

「ジニア様にお願いいたしますわ!」


「あ、はい」


 かぶり気味に言われた。


「一階のリビングとダイニングキッチンは共同スペースとして使おう。二階に部屋が複数あるから個室として使えるはずだ。ついてきてくれ」


 三人を二階へ案内する。


「ジニア様はどのお部屋を使っているんですの?」


「俺の部屋は一階にある。二階は使っていなかったから好きにしていい」


 もともと一人で暮らすには広すぎる家なのだ。

 二階を三人に解放したところで俺に不自由はない。


「じゃあ、ローは、ここ」


 階段から一番近い部屋をローゼルが確保する。


「フォーサイティアさんはどうしますか」


「わたくしは……そうですわね」


 部屋を覗き込む。


「……ベッドが入りませんわ」


 部屋よりデカいベッドなんて本当にあるんだ。


「なんだったら壁を壊して二部屋を一部屋にして使うって手もあるぞ」


「そこまでしていただいたら申し訳ありませんわ。わたくしも一部屋で結構です。小さめのベッドを用意すれば問題はないと思いますの。ローゼルの隣の部屋をお借りいたしますわね」


「でしたら私は一番端の部屋にします」


「部屋は決まったな。あとはメイドか。いいか、家を見てわかったと思うが連れてくるメイドの数が十人や二十人なんてのは絶対に無理だ。ティアとローゼル、それぞれ一人までにしてくれ。それ以上の場合は通いにしてもらうしかないからな」


「この広さでしたらそれで十分だと思いますわ。わたくしのブルーベルと、ローゼルのペチューニアの二人でいいのではないかしら」


「ローは、それで、いいよ」


「よし。じゃあ、あとは引っ越しの荷物を運びこむだけだな。ササンクアはそんなに量がないんだったか」


「はい。宿に置いてある荷物だけですから」


 聖女様は慎ましい生活を送られているようだ。


「問題はティアとローゼルだな」


 話を聞いている限り、平民の俺からは想像もつかないような生活をしているのは間違いない。


「仕方がない。生活に必要なものを一緒に買いに行くか」


「ショッピングですのね! とても楽しそうですわ!」


「ローは、かわいい、ふくが、ほしー」


「いや、服は引っ越しに必要ないだろう。とりあえずは生活に必要なものを最優先で揃える必要があるんだからな」


 男の俺ではわからないところはササンクアに頼らせてもらおう。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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