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47 英雄、心配する

 相変わらずギルドの食堂は混んでいる。

 夕食時になると酒の注文もできるから部屋全体がざわついていた。


 先に食堂に入っていた三人に手を挙げて知らせる。


 それで周囲の視線を少し集めてしまったようだ。

 何人かが俺たちに気が付いてヒソヒソと話をしている。

 これも有名税というやつだろうか。


「いつもギルドとの交渉をお願いしてしまってすみません」


「チームのキャプテンとしては当然のことだから気にしないでくれ。それより今回の報酬だ。ちゃんと四等分しておいたからな」


 いつものように小袋にわけた報酬をそれぞれの前に置く。


「それから一つ朗報だ。ササンクアとローゼルがそれぞれ一ランクずつあがって6級になったそうだ。おめでとう」


「わーい」


「ありがとうございます」


「おめでたいですわね。これでわたくしたち、そろって全員が6級ですのね」


「お祝いしないとな。今日の食事は俺の奢りだ。なんでも注文してくれ」


「ふふ。大丈夫ですか。かなりお腹が空いてますからたくさん頼んでしまいますよ」


「いいぞ。受けて立とう」


「ローは、シショーのが、いい!」


「それは却下だ」


「ぶぅ」


 そんな風に唇を尖がらせてもダメなものはダメだからな。


「そういえばティアの具合はどうだ」


「問題ありませんわ。聖女様の癒やしの力はやはりすごいのですわね。わたくし、感動いたしましたわ。よければまたしてくださいな」


「それはもちろんですけど、できればケガはしない方がいいんですよ」


「ローも、とっても、心配した」


「それはわかっていますわ。ですがあれはわたくしにとって初めての経験でしたもの。意識も朦朧としていましたから、なにが起きたのかよく覚えていないんですの。ただ終わったあとはとてもすっきりした気分でしたれど……だから今度はしっかり感じたいと思っているのですわ!」


 ちょっと待って。今すぐその会話やめて。

 言い回しをもう少し考えて。

 周りの目が痛いから。俺がなにかしたわけじゃないのに!


「んんっ」


 咳ばらいをして会話を遮る。

 これ以上、不要なヘイトを稼ぎたくはない。


「ジニア様、具合がよくありませんの? もしや、わたくしを抱き上げた際になにかあったのではなくて?」


 やーめーてー。

 確かに俺がティアを抱き上げたのは事実ですけども、それも誤解を招くからね?


「あー、うん。みんな、配信で顔が知られているから身の回りの心配をした方がいいんじゃないかと思ってな。どうだ。怪しい奴を見かけてないか?」


「あやしい? どういうの、あやしい?」


「そうだなあ。やたらハァハァしてる奴とか、目がキョロキョロしてる奴とか、お菓子を渡して路地に連れ込もうとする奴なんかは怪しいだろうな」


「そんなあからさまに怪しい方なんて存在しますの?」


 いや、勿論いないに越したことはないんだが。


「ササンクアは宿で寝泊まりしているそうだが、どうだ。大丈夫そうか?」


「ええ。たぶん大丈夫なのではないかと。もともと宿は寝床として利用しているだけですし、ダンジョンへ行かない日は鏡会へ出向いているので宿にはあまりいませんから」


「あら。それでは宿代がもったいないのではありませんか。よければわたくしたちの屋敷へ来ていただいても構いませんのよ」


「お心遣いありがとうございます。ですがフォーサイティアさんたちのお屋敷は貴族エリアにあるんですよね。そこからですと鏡会まで距離がありますから」


「鏡会に戻る訳にはいかないのか」


「聖女がダンジョンに入ることを喜ばれない方々もいらっしゃいますので」


 ああ、そうか。

 禁足派とかいうのにいらぬちょっかいをかけられるのも面倒だしな。それを避けるために鏡会を出て宿で寝泊まりしていたのか。


「でもジニア様のおっしゃることも一理ありますわね。おじい様の本にもこうありましたわ。『一流の探索者は常に周囲に気を配っているもの』だと。わたくしも道を歩いていると気軽に声をかけられるようになったのですが、少し気を付けた方がよいのかもしれませんわ」


「ローも。おいしいもの、たべにいく?って、よくいわれる」


「いいか、ローゼル。そういうのには絶対についていったらダメだからな」


「うん」


 にっこり笑っているけど、大丈夫なんだろうか。心配だ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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