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第008話 使い魔①

 黒猫のアディはイツキの相棒である。

 

 驚異的な速度でS級まで駆け上がった新進気鋭、唯一職(ユニーク・ジョブ)だけで結成された有力パーティー『ONE&ONLY(スプリーム)』のイツキ・ツチミカドといえば、冒険者業界ではちょっとした有名人だ。


 とくに『ONE&ONLY(スプリーム)』が活動拠点としている迷宮都市ヴァグラムにおいては、知らぬ者がいたらそれは駆け出しか自称冒険者(ニセモノ)だと断言できる。


 本人はわかりやすく強力な唯一職(ユニーク・ジョブ)を持つ仲間たちのお荷物だとばかりに今一つ自己評価は低いようだが、周囲はそんなことを露ほども思っていない。


 リーダーが『勇者(ダイン)』、副官が『賢者(フィン)』、攻撃役(アタッカー)が『剣聖(アイナ)』で回復兼支援役(ヒーラー&バッファー)が『聖女(サラ)』となれば、普通であれば卑下するのも無理なからぬことと気の毒がる者もいるだろう。

 だがイツキの持つ唯一職(ユニーク・ジョブ)審禍者(さかわ)』に一度でも関わったことのある者であれば、二度と見くびることなどできはしない。


 イツキの――『審禍者(さかわ)』の詳しい能力を知る者は誰一人としていない。


 だが怖い。


 理屈ではなく、本気で敵対すれば絶対に勝てないと()()確信させられるのだ。


 イツキは極悪人だけが自分を恐れると思っていたようだが、その特性は実はその身に(マガツ)を憑かせた存在すべて――つまりは生まれたばかりの子供か湧出(ポップ)したばかりの魔物(モンスター)を除く、すべての存在に適用される。


 この世でイツキを怖いと思わない者など、一人もいないということだ。


 それは元仲間であったダイン、フィン、アイナ、サラとても例外ではない。

 だが他ならぬイツキ自身が恐れの原因となる(マガツ)を定期的に取り除いていたので、「本気で怒ると怖い」程度でなんとか仲間として振舞えていたのだ。

 イツキ本人の見解とは大きく異なる部分であるが、それが事実である。


 その正体不明の『恐れ』を自分だけではなく、イツキと関わったすべての人間――ずっと強者である先輩とも、まだ駆け出しである後輩とも共有できるとなれば、イツキが有名人になるのはごく自然なことだろう。

 

 それこそ人にとっては恐怖の具現であるはずの、本人たちも()()()()ことを旨としている裏社会の人間たちですら()()となればなおのことである。

 それどころかその手の極悪人の方が、頭を布団に突っ込んで震えるレベルでイツキを恐れているとなれば、侮れる者などいなくなるのも当然だ。


 イツキこそそうは思ってはいないが、もしも敵対すれば精神集中が大前提となる武技(スキル)や魔法など、まともに使うことができない者がほとんどだ。

 そもそも歯の根が合わないような状態で、武技発動言語(トリガー・ワード)や、魔法発動呪文(スペル)を口にできる者などいはしない。

 それ以前に、イツキと今自分が敵対しているという事実の重圧(プレッシャー)に精神を圧し折られて、戦闘どころではなくなるだろう。


 それほどの存在だったのだ、傍から見た客観的な『審禍者(さかわ)』――イツキ・ツチミカドとは。


 例の名付(ネームド)が逃げ出した事件一つをとってみても、『ONE&ONLY(スプリーム)』が関わっているとなればみな「あぁ……」と納得してしまい、ことさらに原因を分析するまでもなかったほどに。

 逆になぜ普通の魔物(モンスター)どもがイツキから逃げ出さないのか、不思議に思われているくらいなのだ。

 イツキは連れている黒猫のアディをはじめとして動物たちには異常に懐かれるので、魔物(モンスター)もやはり動物の一種なのだななどと、おかしな納得を一部でされていたりする。

 そうなるとなぜ名付(ネームド)が逃げ出したのかと整合性が取れなくなるが、冒険者ギルドなどでの真面目な議論というよりは、酒場での酒の肴になりがちであった。


 そういった本人の耳に()()は届かない数多の武勇譚めいたものが積み重なった結果、聖シーズ教の『奇跡認定局(プロディギウム)』がイツキの存在――『審禍者(さかわ)』の再誕を知ることになったのかもしれない。


 ただ少々出来すぎの()が、確かに存在する。


 ここまでの対応を即座にする必要があり、それが可能――つまりは常に備えていたことが伺える脅威を、十年単位で『奇跡認定局(プロディギウム)』が見逃すことなどあり得るのか? という単純な疑問。

 『聖シーズ教』を、『奇跡認定局(プロディギウム)』という組織をよく知っていればいるほどに、その疑問は疑惑と呼べるほどに深くなる。

 少なくともアンジェロ・ラツィンガー枢機卿はそれを心の片隅で感じている。


 だが彼は賢者なので、それを他言にすることはない。


 神罰を代理執行する者が、神のなさりように疑問を持つことなどあってはならない。

 それはほとんどの場合、よくない結末を呼ぶことになる。

 疑問を持ち、考えもなくそれを他言した賢者ならざる小賢しい者にとって。


 だからこそ、アンジェロ・ラツィンガー枢機卿は粛々と神敵滅殺を執行した。


自分なりに追放、報復もののプロットを考えていた物語です。

コロナでお盆の予定がすべて吹っ飛んでしまったのでその時間を有効活用? して一応の着地点まで書けたので、投稿開始いたします。


※着地点までは基本的に毎日投稿します。

 明日は状況次第ですが、『使い魔』最終まで投稿予定。


楽しんででいただけると嬉しいです。


【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】

ほんの少しでもこの物語を


・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひともお願い致します。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップしていただければ可能です。


書き貯めて投稿開始した本作ですが、面白いと思っていただければ最初の着地点を越えて続けていきたいと思っております。ぜひ応援よろしくお願いします。

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