表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/39

第020話 魔神①

 俺の再生は完全に完了している。

 その姿を今、目の前に浮いている鏡状のモノに映して確認している最中。


 確かに強化の許可を求められて、それを快諾したのは俺だ。

 なんなら「脆弱な身体で申し訳ないな」などと、強化を煽ったともとれる発言をしたことも認めよう。


 それにしても()()はさすがにやりすぎじゃないのか。


 こんなの俺じゃない。

 いや(ベース)は間違いなく俺であることだけははっきりわかるだけに、よりキツい。


 それに姿見代わりにミステルがあっさり出しているこの鏡状のモノ、俺の記憶に間違いがなければ、神話に語られる古代魔法『三角縁神獣鏡(ラフノール)』じゃないのか。

 もしもそうだとすればその階梯は最上位とされている十を超える超階梯魔法。

 魔力が続く限り鏡の()()にいる術者に対するあらゆる魔法を無効化し、その意志に従って空すら飛ぶ防御系魔法の究極である。


 その消費魔力量から言っても、鏡だからって鏡代わりに使っていいような魔法ではない。

 ミステルはなんでもないことのようにしれっとしているが。


 そんなことよりも、その『三角縁神獣鏡(ラフノール)』に映し出されている俺の姿こそが問題だ。


 まずシルエットがおかしい。

 普通の人には『竜角』なんて生えていない。


 獣人(セリアンスロープ)の中では最強種の一角とされている『竜人(ドラゴアニール)』であっても、ちょっと変わった髪飾りだと言えば通るくらいのものが生えている程度だ。

 実際元仲間の一人であり『剣聖』の(ジョブ)を持つ竜人(ドラゴアニール)、アイナ・ヴァイセルもそうだった。

 その程度の大きさであっても、実質無限ともいえる外在魔力(アウター)を吸収し己が魔力とする魔導器官(オルガナ)である『竜角』を持つアイナは、武技の使用回数上限がほぼ無いに等しかった。

 外在魔力(アウター)の満ちる場所であれば己の内在魔力(インナー)が底をついてからでも、『竜角』による吸収速度がそのまま武技を発動できる間隔となるからだ。

 サラなどは膨大な内在魔力(インナー)持ちではあったが、アイナのその特性をひどく羨ましがっていたものだ。

 確かにアイナの武技のような勢いで治癒術を連発可能なら、一撃で殺されさえしなければ実質無敵のパーティーの出来上がりだからな。


 その『竜角』のちょっとおかしいくらい大きいVerが、再生された俺の頭に生えている。

 竜の角と言いつつ、ぶっとい捻じくれた山羊角にしか見えないのはミステルの趣味なのだろうか?


 これが本当に飾りではなく、アイナから聞いていたような魔導器官(オルガナ)としての機能を備えているのであれば、俺はほぼ無限に外在魔力(アウター)を吸収できる存在になったということだ。


 それに今『三角縁神獣鏡(ラフノール)』に映る自分自身を視ている眼。

 審神者(さにわ)の眼球は特別なモノらしく、こればかりは本来の俺の両の瞳があるべき場所に収まっている。

 ちなみに聖シーズ教の誇るであろう拘束術式などミステルにしてみれば紐で縛られている程度に等しいらしく、あっさり第一()第二()第三()共に弾き飛ばしてくれている。

 

 いやそうじゃなくて額。


 額にあろうことか第三の眼ができている。

 自然すぎて逆に気持ち悪いくらい、自分の眼のひとつとして機能していてなんかアレだ。


 『三角縁神獣鏡(ラフノール)』に映し出されている額の灼眼は、間違いなく『竜眼』の特徴を備えている。

 光に満たされた場所でも、真の闇でもすべてを見通し、魔力の流れすら可視化すると伝説にいわれているとおり、額に集中すればこの場の魔力の流れが映像として捉えられる。

 

 ――あー、ホントに俺の頭に生えている角に、魔力吸収されて行ってるわ。


 しかしこれ『覚醒態勢(モード)』だけに開眼するようにとかできないのかな?

 そうじゃなきゃ街に紛れるなんてこのままじゃ絶対に不可能だ。

 額飾りとか付けたらいけるか?

 

 とにかく再生に入る直前にミステルが不穏なことを言っていたとおり、己の片目と片角を俺にくれたということらしい。

 ということは()ではなくて()の方が言っていた『神の血(イーコール)』とやらもこの『三角縁神獣鏡(ラフノール)』に映る精悍な身体には流れているということか。


 頭が痛くなってきた。


 それだけではなく、どう考えても俺の人生でこんなに精悍な体つきをしていた時期など一度もないと断言できるほど細マッチョに仕上がっているし、年齢はどう見ても肉体的に最盛期となるであろう十代後半にしか見えない。

 その引き締まった身体を包むぴったりとした漆黒の衣装は真紅の古代文字と魔石で装飾されており、本当にどこぞの魔神みたいだ。

 なんか妙な黒焔みたいな視覚効果(エフェクト)も出ているし。


 背に羽織る長外套(ロング・コート)のカッコよさと言ったらちょっと笑ってしまうくらいだ。

 無意味に広く開いた胸元には、素材代だけでいくらするのかわからないような豪奢な飾りが首から掛けられており、妙にセクシーでこれもまた笑うしかない。


 これはおそらく、()()の理想の(あるじ)像を、好きなだけぶち込んだ結果なのだろうなあ……


 というか受肉しミステルとなった元である『大いなる(わざわい)』は、神話によると確か八大竜王の一柱『黒竜王焔帝こくりゅうおうえんてい』をその器とし、『封印の聖女アイナノア』をその縛鎖として、ここ『(マガツ)封じの深淵』封じられていたはずだ。


 つまり()が『黒竜王焔帝こくりゅうおうえんてい』で、()が『封印の聖女アイナノア』ってことだろう、まず間違いなく。

 器と縛鎖としての意識が『大いなる(わざわい)』を統べ、その後千年を閲する過程でその両者が混ざったってあたりか。

 話題や意識の向け先によって、そのどちらかがより強く表層化するのだ。


 基本はどうも()っぽいが。


「あのこれ……ミステルの趣味?」


 聞いてみた。


『左様。我が主となられるからには内在魔力(インナー)のみならず外在魔力(アウター)も使えねば格好がつくまいし、竜眼を以て人の扱う魔法など児戯としてもらわねば使い魔(ファミリア)たる我の立場がない。審神者(さにわ)であられるからには人の御姿であることは止む無しとしても我が『竜角』と『竜眼』をお持ちいただくのは最低限だと考えた。なんとなれば竜の翼を背に持ってもらうのもありだが、そこはそれ、長外套(ロング・コート)とは合うまいしな。引き締まった躰にぴったりの衣装と、常に流していないと床につくくらいの長外套(ロング・コート)は外せませんよね? そこは絶対(マスト)です。それに薄着でありながら超高階梯の魔法が付与(エンチャント)されているのは基本ですし、薄着に似合うのは高身長かつ細身で引き締まった体躯ですよね? ね? それに私の御主人様なんですから身につけるモノの基本色(ベース・カラー)は漆黒で、補助色(アクセント・カラー)は金や銀も捨てがたいんですがやっぱり真紅は外せません。何より体幹部分は薄着系で、両腕両脚が重装備系なのが一番シルエットが綺麗でカッコいいんです。主武装は創造してもよかったんですが、そこはやはり伝説に謳われる実在の『神遺物級武装(アーティファクト)』を迷宮(ダンジョン)で入手して装備するのが王道なので、ここから出たら浮遊迷宮(ダンジョン)箱舟(アーク)』まで取りに行きましょう。我の基本的な竜言語と私の神聖魔法は使用可能にしてありますが、これも冒険の果てに手に入れるのが浪漫なので世界に八か所ある『竜の巣』と五か所ある『聖女の試練』も回りましょう。そうしましょう。それにだな(あるじ)殿、『神の血(イーコール)』のみならず『竜の血』も併せ持った御身は――』




 ――怖い。怖い。怖い。怖い。


本日中に第021話『魔神 下』を投稿予定です。

→すみません、明日に投稿に変更させてください。地上へ帰還も明日に投稿予定です。


明日はやっとこさ地上へ帰還します。けっこう派手に。

そこからはアディを取り戻しつつ元仲間→枢機卿と決着をつけ、物語のはじまりの地における着地点へ向かいます。

そこまでお付き合いいただければ嬉しいです。


よろしくお願いします。


※書きあがっている着地点までは基本的に毎日1話以上投稿します。


楽しんででいただけると嬉しいです。


【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】

ほんの少しでもこの物語を


・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひともお願い致します。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をスマホの方はタップ、PCの方はクリックしていただければ可能です。


よろしくお願いいたします。


書き貯めて投稿開始した本作ですが、面白いと思っていただければ最初の着地点を越えて続けていきたいと思っております。ぜひ応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] XXX年後……。 主の姿を見るたびに(あのときの我、やらかしたー)とか、 (カッコいいですけど、すごく恥ずかしいですっ!)とか 黒歴史を突きつけられるファミリアが……。 とかなったらウケ…
[一言] 黒龍さんの『ぼくのかんがえたさいきょうのあるじ』(笑) 黒龍さんはちうにびょうだったんだ
[一言] >「あのこれ……ミステルの趣味?」 ONE&ONLYの元仲間たちに会えない理由がまた増えたなw いろいろな意味で説明できない姿だw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ