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琥珀色の少女の話

「そうして、この森に来る直前に、私はこの少女を拾ったのだ」

ドラゴンは娘に抱かれて、眠そうにしている少女を愛おしそうに見つめた。

「拾った?」

「ああ、この森の前に住んでいた霧深い森でな。この少女は、今にも死にそうに森を彷徨っていた」

ドラゴンが顔を近づけると、少女はまた瞳を輝かせて、ドラゴンの顔に抱きついた。

「この少女は、魔女一族の娘らしい。魔女一族は知っているか?」

「ええ。まあ」

魔女一族とは、この世界で希少な一族であると聞いていた。

魔女一族にしか伝わらない薬や魔法があり、それを目当てに王族から貴族まで、多くの人々が各地から集まっていたらしい。

しかし、それも三百年くらいまでの話。

三百年程前、とある魔女が王族の願いを叶えられず、首を刎ねられた。

それをきっかけに、魔女一族は嘘吐きだ。悪魔だ。と言われて、迫害を受けたーー魔女狩りが起こった。

ある者は投獄され、ある者は処刑された。

そうして、魔女一族は減り、生き残った魔女一族も人から隠れるように暮らすようになった。

「魔女一族の特徴は、金色の髪とオレンジ色の瞳だ。魔女一族は長らく、一族内での婚姻と出産を繰り返した結果、その特徴を持つ者は魔女一族以外には居ないとされている」

娘はドラゴンに懐く少女を見つめた。

先程、娘が洗ったおかげで、少女の髪は金色に輝き、琥珀の様な瞳は爛々と光を受けて輝いていた。

「これは、この少女から読み取った記憶なのだが」

ドラゴンは少女の内にある魔力を通して、記憶を読み取ったらしい。

「この少女は、本来は一歳になるかならないかの少女らしいな。いや、赤子か……」

「一歳? でも、どう見ても、五歳くらいじゃ……」

娘は驚いて少女を見た。少女は不思議そうに、琥珀色の瞳で娘を見つめ返してきたのだった。


「この少女は、母魔女が目を離した隙に、成長薬を飲んだようだ。成長薬が存在する事は、本で読んで知っていたが、あれは植物や家畜に使う物だと聞いたが……。少女はたどたどしい歩き方で母魔女を見つけると、背中に抱きついたらしい」

ドラゴンは悲しげに目を細めた。

「……母と、言って」

「母……」

「ああ。しかし、母魔女は成長した少女と、量が減った成長薬を見て、少女が何をしたのか悟った。そうして、言い放ったのだ」

ドラゴンは目を閉じると、少女に擦り寄った。

「気持ち悪い、とな。そう言い放って、森に娘を捨てたのだ」

「そんな……。だって、この子は自分の娘でしょう?」

娘は手で口を覆う。娘には理解出来なかった。

ただの悪戯で、成長薬を飲んだだけなのに。それだけで自分の娘を捨てるものなのか。

「普通はありえない。だが、母魔女は理解出来なかったのだろう。子供の悪戯に、自分の思う通りにならない子供に」

「そういう、ものなのかなあ……」

「さあ。私は子供が居ないからわからないがなあ。そうして、森を彷徨っていた少女を私が拾った。何も知らない、わからない少女に、私が教育を施した。言葉、文字、礼儀、作法、わかるものは全て。少女は吸収が早かった。そうして、私は少女を託した。貴方に」

「私に……?」

今度は娘が首を傾げる番であった。

「貴方が人里を離れて森に暮らしている事は、この森に来た時から知っていた。いや、貴方がこの森にやってきて、暮らし始めたところから見ていた。だから、貴方になら娘を託せると思ったのだ」

「どうして? 私も子供が居ないから、どう育てたらいいかわからないわ。それなのに、どうして私が……?」

ドラゴンはまた悲しそうに、自分の身体を見下ろした。

「……私が、人間じゃないからだよ」

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