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序 値引きのきく命の終わりに
世の中は生きづらいと言う人がいる。
言ってしまえばそれはただの贅沢で、あれが欲しいこれも欲しいと業突く張りな誰かが、満たされないと赤子のように泣いているだけで。
欲しがらなければ、喉が渇くこともない。
「……うん」
通勤ラッシュも終わり、駅のホームは随分と人がまばらになっていた。少女はローファーを脱ぎ、黄色い線の外へと出る。
「ん?」
目に入ったのは、向かいのホームに立つ青年だ。
影のような電車待ちの人々の中で、青年の困ったような表情だけが、最期の瞬間までよく見えた。
四月一日。早く咲いてしまった桜が、もう散り始めていた。
四月一日。晴れた空が、泣きたいほどに綺麗だった。
だから、死ぬにはいい日だと思った。