#98 狙撃
~ウルド 抵抗組織基地(前日)~
「ファアアアアァァァァァァァァァァック!!!!!!」
突然汚らしい叫び声が基地の研究室に響く。
信じられないと思うが声の主はこの基地内で数少ない常識人でお馴染みのディグだ。
「チッキショゥッ!! 僕もこれ完成させようと思ってたのにぃッ!!!」
「あの・・・ディグさん?」
ディグの様子がおかしい。
いや、何か悔しそうなのは分かるんだけどそれとは別に何かがおかしい。
そしてもっと不可解な点が一つ。
なんか見覚えがある。
「異国人の上昇の原理までは分かっていた、それに組み込む神経に干渉する理論まで出来てたのに神経に接続するのに適してかつ人体に影響の出にくい部分が分からなかった、だって仕方ないだろ人体実験するわけにもいかないしその点奴らは人体実験し放題だから優位性があるわけで、でもそのハンデありで出来てこそ奴らより僕が優れてる証明にもなったのにあのクソ科学者共めずるいぞ、けど歯か、確かに歯として組み込めば施術のコストも低いし神経に接続するにしても脳に近いから効果も高いし
「ディグさん!! おぉいッ!!」
「ハッ!!」
物凄く長い独り言をブツブツ言い始めて止まる気配が無かったので大声で止めるとディグはハッと我に返る。
今のやり取りで思い出した。
確か俺の新しい剣の能力を実験した時もこんな変な感じになってたなぁ。
なんなんだ一体・・・!
「で? 結局なんなんだこれ。」
ようやく本題に移るが、俺達が話題にしているものはテーブルに置いてある一本の歯だ。
で、なんでこんな汚ねぇものを置いてんのかと言うと、グラが見つけたからだ。
事の発端はB.R.A.I.Nがこちらの基地を襲撃してきた際、ビリーが突然戦闘放棄して逃げていったことだ。
当事者の俺、ライ、グラ、三人全員不審には思っていたが、核心的な部分にいち早く気付いたのはグラだった。
奴が逃げ出す直前のやり取りは確か、俺がビリーを羽交い締めにした隙にグラが襲いかかり、ビリーに抵抗されながらも奴の顔を槍で思いっきり殴った。
その状況を一番覚えているグラだからこそ気づいたんだろう。
殴り飛ばした際に奴の口から歯が飛んでいったことを。
そして奴がもう一度こちらに仕掛けようとした時に何もせず、急に慌てて逃げ出した。
これを不審に思ったグラは奴の飛ばした歯を探して見つけた。
それを見たライもどういうものか知っていたようだが俺にはさっぱりだった。
---そして現在。
「これは上昇の能力を魔覚が使えない人間の為に作られた、『疑似上昇装置』といったところです。」
「要するに上昇を誰にでも使えるものにするための装置ってわけか。」
「端的に言えばそうなります。歯の先端に取り付けたスイッチを押すことによって神経に働きかけて脳に魔覚と同調したような誤作動を起こさせて上昇を誘発する、といった原理です。」
「ちょっと待てよ! 聞く話によるとそいつはただ上昇を誰でも使えるようにするってだけじゃねえか!」
そう、ディグの説明では納得できない部分がある。
「あのオカマ野郎が使ったら上昇の動きは明らかにおかしかったぞ!? 上昇でも普通あんな動きは不可能だ!」
「そういうと思ってましたよ。」
ディグは俺の知りたいことが理解できていたようで質問を待っていたかのように得意気な雰囲気で眼鏡をクイッと上げる。
「おそらくビリーのケースは特殊なんだと思います。」
「特殊?」
「奴は魔覚が使える上で疑似上昇装置を使っているからですよ。」
「なんだよそれ! 元々魔覚か使いこなせて上昇が使えるならこんなもの必要ないだろ!」
「ところがどっこい!!」
「!?」
そこにが口を挟む。
「普段上昇が使えるやつが上乗せでさらに上昇が使えるようになったらどうする?」
「!!」
ライの指摘にハッとする。
「まさか・・・!」
「そう、単純な『足し算』だ。」
「本来の魔覚と同調した上昇、擬似上昇装置で脳から誘発された上昇、それらを同時に使った結果、驚異的な超加速を実現できた。こう考えれば奴の能力に全て説明がつきます。」
「二倍掛けの上昇なんて、どうやって対策すんだよ!」
実体験だから分かる。
奴の速さは驚異的だった。
あの速さに対抗する術があるとしたら・・・。
「やっぱ火神か、任せろ!」
グラは意気揚々と両拳を合わせる。
「痛ッて!!」
グラが声を上げる。
後頭部に俺がチョップしたからだ。
「ウルドてめッ!! 何しやがるッ!!」
当然ながらグラは俺の胸倉を掴んで食ってかかる。
「アホ! お前忘れたのか!」
「何がだよ!!」
「火神使って死にかけたろお前!」
「だったらなんだ!! 俺は別に構わねえぞ!?」
「却下だ! そんなにポンポン使える切り札じゃねぇし、使うたびにいちいち国に帰って泉に飛び込んでちゃ世話ねぇぞ?」
「だったらどうすりゃいいんだよ!」
「それは・・・。」
さすがに答えに迷う。
並みの上昇で立ち向かうにはおそらく歯が立たないだろうし、魔法や銃を使ったところで躱されるのはオチだ。
確かに他に対策はないけど、さすがに命に関わるグラの火神を使わせるわけにはいかない。
さてどうしたものか・・・。
「それなら僕に考えがあります。」
ディグが得意気に眼鏡をクイッと上げながらグラを見ていた。
~グラ B.R.A.I.N基地~
「あんたまさか・・・私が落とした疑似上昇装置を口の中に組み込んだっての!?」
「へっ!」
俺は奴に向かってほくそ笑んでやると見せつけるように口を大きく開ける。
「便利だよなぁこれ! 上昇使ったらいつも以上にすげぇ動けるぜ!」
「人が口に入れたもの口に入れたワケ? あんたそういうのに抵抗ないの?」
「へっ、汚ねぇもの口に入れるのとレガの仇討てねぇで泣き寝入りするの比べたら答え、言うまでもねぇだろ!!」
「ま、確かにスケールは違うわよ、ねッ!」
「ッ!!」
俺とオカマ野郎は同時に加速してぶつかる。
だが・・・。
「ぶべっ!!」
加速が溶けた瞬間、俺は後ろの壁に吹き飛び、思いっきり叩きつけられる。
オカマ野郎はと言うと・・・。
「全然ダメね。」
俺を殴った右拳を前にしてほくそ笑む。
「くそッ! 何でだ!?」
何でやられたのかさっぱり分からなかった。
速さで負けたわけじゃなかった。
あいつの動きは残像が見えてもいない。
目で追えていた。
奴と俺の速さはほぼ互角だった。
奴の一挙手一投足は全て見えてたし覚えている。
俺は拳打を三発、左右で放った。
だが奴は拳を固めたまま冷静にいなし、軌道を反らして捌いた。
更に上段蹴りを放ったが、それも頭を下げられて躱される。
体勢が低くなったところに足払いの下段蹴りを放つがそれも跳んで躱される。
相手が空中に浮いて回避不可能になったところを土手っ腹に思いっきり右拳を放つが、その瞬間逆に俺が吹き飛ばされた。
「くそ・・・まだ何か隠してんのかてめぇ・・・!」
「何も隠しちゃいないわよ。」
「じゃあなんで・・・!」
「速度と膂力は 確かに跳ね上がってあんたも私と同じぐらい動ける。けど戦いはそれだけじゃないわよ? それがあんたと私の差、お分かり?」
「くそッ!!」
何言ってるのかさっぱり分からねぇ!!
~ウルド B.R.A.I.N基地~
「ハァ・・・ハァ・・・!」
俺はとにかく走った。
走りまくった。
道を塞ぐ猟犬の腹部を切り裂き、時には殴り飛ばし、時には麻痺毒の矢を使ったり、とにかく切り抜ける事を優先に進み、無駄な戦闘は避けている。
「ハァ・・・ハァ・・・!」
こうやって敵の波の中を走っていると思い出す。
『オラ倒せ倒せ!! 倒さなきゃ死ぬぞぉ!?』
かつての仲間の言葉だ。
あの男はとにかく無茶が好きだった。
それに付き合わされていたせいで何度も何度も地獄のような戦場を駆け抜ける羽目になった。
それを考えるとたとえ一人であってもこんな敵の波戦わずに抜けるだけなら朝飯前だ、ってそんなこと考えるぐらいに余裕ができてしまうのがそのおかげだと言うから皮肉にも程がある。
それにしたって長い。
結構な距離走ってるが未だに狭い通路を抜ける気配がない。
「・・・!」
来た!!
魔覚で察知する。
右から来る!!
俺はすぐに通路の左に跳んで壁を蹴り、跳び上がる。
すると奴が壁を食い破って現れ、運悪く道に立っていた猟犬を攫うように喰って行った。
「・・・ハァ・・・ハァ・・・!」
奴が通り過ぎた所で着地し、奴が通り過ぎた後の惨状を眺め、息を切らしながら冷や汗が流れる。
もし自分があの場にいたらどうなっていたか。
手足がバラバラになって頭だけの肉片になって、それでも意識を保ち恐怖に飲まれながら意識を奪われ無の存在になるのか。
はたまた手足がついたまま体を潰され肉塊になった己が、おぞましい存在の恥肉の一部となって自分が何のために存在しているのかさえ分からなくなるのか。
『死』という言葉で簡単に説明できてしまうが、その言葉にはそれぐらいの意味がある。
そして今まで俺が味わったこの世界は、そんなものと隣り合わせ。
未だに『死の恐怖』というものはつきまとっているのだ。
だが皮肉にも味わった経験に慣れてしまうのが人間だ。
「・・・。」
顔から自然と表情が消える。
上昇を使って壁を走る。
「グアァッ!!」
「!!」
捕まえようと手を伸ばしてくる猟犬の手を拳弓銃で払いのけて壁を蹴り、天井に移って更に蹴り、向かい側の壁に映る。
「ガァッ!!」
跳び上がって道を塞ぐ猟犬がいたが無視して跳んで地面に戻り、また走り出す。
「「「ゴアアァッ!!」」」
三体の猟犬が前方から飛びかかってくるが・・・。
「グガァッ!!」
「・・・。」
真ん中と右側の猟犬の間が少し空いているので右の奴を切り払いながら突破する。
「ッ!!」
魔覚で奴の動きを察知する。
奴はこちらの進行方向を読んで前方の床から飛び出そうとしていた。
俺が止まると奴の攻撃は空を切ったように前方の床から天井にかけて突き抜けた。
「・・・。」
体が覚えている。
頭の中が覚えている。
死の恐怖に対する対処法を。
それは余計な考えを捨て、死と向き合うことだ。
恐怖を受け止め過ぎれば恐怖に飲まれて冷静さを失い、己の身を死と言う沼に放り投げる。
恐怖を受け止めず逃げるように思考を放棄すればそれは『蛮勇』となり、自ら死に飛び込んでしまう。
だからこそ余分な恐怖を拭い去り、死に直結する必要な情報を与えてくれる恐怖のみを受け入れて思考し、対処する。
それが死地を生き残る最善の選択。
今までの人生で魔王を倒すために切り抜けてきた戦場の中で培った、確かな知識だ。
「「「「ガアアァッ!!」」」」
また猟犬が襲い掛かってくる。
今度は四体だ。
四方向から一斉に飛びかかってくる。
だが瞬時に感覚上昇で状況を見極める。
一番左の一体が隣と比べて微妙に出遅れている。
なので左に体をずらし勢いよく地面を蹴って低い体勢のままそいつに跳びかかり、剣で腹部を切り裂く。
「グゥッ!!?」
猟犬を怯ませると右隣の奴との間をすり抜けるように入って跳び上がり、そいつの後頭部を蹴って思いっきり跳躍して一気に距離を稼ぐ。
だが・・・。
「ッ!!?」
魔覚で察知する。
奴が来る!!
しかもものすごい速さで右から・・・まるで俺が空中で避けきれないのを狙っていたかのように!
今にも目の前に死が迫っていたその時俺の体は考えるよりも早く動いた。
上半身を揺すって空中で体を半回転させ 天井を地面のように蹴って床に跳び上がる。
着地と同時に蛙の様に地面にへばり付く。
すると奴が俺の頭上ギリギリを通り抜けていった。
俺はそのまま身体を起き上がらせるとすぐに走り出す。
「!」
数十メートル先に狭い通路を囲んでいた壁と天井の終わりが見えた。
フレッドの言っていた広い空間だろう。
今にも目的地が見えたその瞬間だった。
「ッ!!」
再び魔覚で察知する。
妙な方角だった。
斜め上から来ている。
まさか後ろから追って来る気か!!
物凄い速度だ!!
だったら・・・!
「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉ!!!」
足に全力の上昇を掛け、一気に走る。
「ッ!!」
バキバキと硬い天井を食い破る音が聞こえるが振り返らない。
全力で逃げているんだ!!
振り返れるわけないだろ!!
壁を走るなんて小細工も一切無しに一気に走る。
だが奴の方がスピードが上だ。
バキバキと鉄片を破る音でも分かる。
今にも俺の目と鼻の先まで来ていた。
だがそれでも負けるかッ!!
「死んでたまるかあああああああぁぁぁッ!!!!」
もはや意地だけで駆け抜けた。
その意地の差が勝敗を分けたのか・・・。
「・・・!」
奴の魔力が止まり、地面を潜ったかのように下へ沈んで行った。
「ハァ・・・ハァ・・・!」
奴が追って来ないのを確認して足を止め、息を切らす。
フレッドが言っていた『広い空間』に出たからだろう。
何故此処を目指していたのかも自分で理解していた。
「来いよ、モグラ野郎・・・!」
米噛みに手を当てて魔覚に意識を集中しながら剣を構え、奴を待ち構える。
奴の当て逃げ戦法は狭い通路を自分しか出来ない移動手段で横殴りにするから出来た。
だがここではそれは通用しない。
こちらを仕留めよう物ならその姿を晒す羽目になる。
だが通路で相手していた時から分かるが物凄い巨体だ。
五分の状況に持ち込めたからと言ってそんな相手に勝てるかは微妙だが、時間稼ぎくらいは出来る。
その間にみんなと合流出来れば勝算は充分に・・・。
待て!!
「なんで・・・!」
魔覚で奴の反応を探るが近くには居ない。
「くそッ、どこだ・・・!」
魔覚の感知外に出たか、だったらちょっと負担は大きくなるが・・・!
「ぐっ・・・!」
より強く魔覚に集中する。
負担が大きくなるが仕方ない・・・ってちょっと待て!!
「おいおい嘘だろ・・・!」
奴の反応はどんどん遠ざかっていく、その行先は・・・!
「まずい!」
ルタ達の方だ!!
~ルタ B.R.A.I.N基地~
「彗星矢一斉射!!」
詠唱を完了させると炎の雨が一気に猟犬達へ襲いかかる。
「!! 生体反応!! 奴だッ!!」
「えっ!?」
突如ディグから警告が来る。
「上からだ!!」
「後退!! 急げッ!!」
ディグの警告と共にフレッドが指示を出したことにより、全員一斉に後ろに下がる。
すると例の大型の化け物が目の前を通り過ぎていく。
「くそっ!! ウルドを狙ってたんじゃねぇのか!?」
「どうやらこちらの作戦がバレたみたいだね。囮役のウルドを無視して我々から喰おうって訳だ。」
「冷静に言ってる場合ですかッ!!」
「・・・。」
まずい事になった。
ウルドが引き付けていればその間にこの道を切り抜けるのは楽だったがこうなってしまっては寧ろウルドと私たちが分断されただけの状況だ。
どうすれば・・・。
~ウルド B.R.A.I.N基地~
「・・・へへ。」
自然と笑いが出て来る。
こんな時になって思い出す言葉があるからだ。
『君、虚仮にされると結構根に持つタイプだろ。』
フレッドの言葉だ。
「へへ、ははははは!!」
確かにそうだ、否定は出来ない。
本能のままに食い散らかすだけの獣畜生みたいな奴の分際で一杯食わせたような味な真似しやがって・・・!
言うまでも無くこの笑いはこの状況が面白い訳じゃない。
フレッドの言葉が当てはまった自分が滑稽だからでもない。
単純にムカついたからだ。
俺を小馬鹿にしたように放置したこと・・・後悔させてやる!!
「雷 剣 放出・・・。」
魔法の詠唱を始める。
「雷の矢。」
剣から雷が撃ち出される瞬間、剣の柄に取り付けられたスイッチを押すと雷が剣に吸収される。
「見せてやるよ・・・俺流の『狙撃』って奴をな。」
俺は剣の切っ先を先程俺が切り抜けた通路に向かって構える。
普通の狙撃は目標に向かって狙いを定める為に瞬きもせず目を開け続ける物だろう。
だが・・・。
「・・・。」
俺は目を閉じる。
魔覚に意識を集中する為だ。
「・・・。」
意識が擦り切れそうな程集中するとルタやライ達、前方の猟犬、それに奴の物と思われる魔力を捉える。
地面を掘り進んでいるのにまるで鳥が獲物の周りを旋回するかのように通路の周りを大回りでぐるぐる動きながら攻撃の機会をうかがっていた。
だが一通り動き回ると動きを止める。
攻撃する位置を決めたみたいだ。
俺から見て左からだ!!
奴は僅かに動いて狙いを定めたのか、一気にルタ達へ襲い掛かる。
俺の雷の砲撃はこの通路の壁を突き抜けるほどの威力はない。
出て来た瞬間を狙うしかない。
だがそうすればルタ達に当たる。
だからこそ・・・。
『ルタ!! 全員伏せさせろ!!!』
腕輪でルタに向かって呼びかけた。
~ルタ B.R.A.I.N基地~
「ッ!!」
腕輪からウルドの言葉を受け取った。
「生体反応!! 右から来る!! 下がって!!」
「違うッ!! 伏せて!!」
ディグが警告するがすぐに指示を変えるように呼び掛ける。
「え?」
「早くッ!!」
「ほぇ!?」
「あぅ!!」
近くのメロとティルを捕まえて強引に頭を下に押し込みながら伏せる。
「なんなんだ!!」
ライを始めとして他のメンツも一斉に伏せた。
ディグが予告した通り、奴は右から現れ、私たちの頭上スレスレを通り過ぎていく。
何故ウルドがこんな指示を出したか。
それを考える間もなく答えは前方からやって来た。
「ガアァッ!!」
前方にいた猟犬が次々と吹き飛ばされていく。
その正体は光の球体だった。
あれは雷、おそらくウルドの物だ!
光の球は猟犬の身体を突き抜けて突き進み、私たちの頭上を通過する化け物に襲い掛かるように飛んで来る。
「うわぁッ!!」
ディグが声を上げる。
奴に命中したようで、打ち砕いたと思われる奴の黒い外殻の一部と共に血と思われる赤い液体が辺りにぶちまけられたからだ。
「お、おい見ろ!」
奴が通り過ぎたのを確認出来た時、ライがすぐに状況を理解して皆に呼びかける。
あの雷の球体が蹴散らしたせいか、猟犬は生き残った奴が僅かにいる物の、ほぼ全てが通路を絨毯になって塞ぐほどの死屍累々の屍になっていた。
「チャンスだ!! 一気に切り抜けろッ!!」
フレッドがこれ幸いにと号令を出し、全員で敵の殲滅に向かって走り出す。
~ウルド B.R.A.I.N基地~
「へへ・・・ざまぁねぇぜ。」
狙撃が終わると俺は目を開けて後ろに倒れ込むように尻餅を着く。
奴の位置、俺の砲弾の魔力の進み具合も魔覚で把握している。
間違いなく当たった。
まぁ、奴に当てるのはおまけで猟犬を一斉に蹴散らすってのが本命だったんだけどな。
これであいつらも・・・!
「お兄ちゃん!!」
「師匠!!」
ルタとメロの声が聞こえると通路の向こうから全員走って来るのが見えた。
「はは、上手く行っ
「「チェェストォ!!」」
「ぶぁッ!!?」
心配そうに駆け寄って来るルタとメロの表情に油断していると左右のストレートを綺麗に顔面に貰って後ろに転がる。
「何しやがる!!」
「それはこっちの台詞!! 勝手にあんな無茶して!! 自分でも分かってるでしょお兄ちゃん!?」
「ぐっ・・・!」
殴ってきたことを非難するが正論で返されてぐうの音も出ない。
「師匠はアホです!!」
「お前にだけは言われたくねぇ。」
「なんですかそれぇ!!」
ルタの説教で調子に乗って非難してくるメロに言い返すと更にメロは食って掛かって来る。
「勝手にやった事は褒められたことじゃないが、お手柄だよウルド君。」
「ああそうですかい。」
フレッドが説教と称賛を同時に投げて来て反応に困りつつも軽口を返す。
「ッ!!」
足元から奴の魔力の反応を感知する。
「メロ! ルタ!」
「うん。」
「はいです!!」
メロとルタはすぐに理解して俺と一緒に急いでこの場を離れる。
すると俺が元いた場所から奴が飛び出す。
広い場所なので天井まで突き抜ける事も出来ず、奴は留まる。
ようやくその姿を俺達の前に晒した。
・・・・・・いや、ちょっと待て!?
「おいおい、嘘だろ!?」
なんでこいつが・・・!?
「セル・・・ケト・・・!」




