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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
94/101

#94 黒い光と白い闇


~ウルド 廃棄場~


「うぶッ!! ぶはぁッ!!」

「お、へんたいがあらわれた。」

「会って第一声がそれ!?」

 死体をかき分けて出て来たサンに皮肉を吐くと期待を裏切らずサンが食って掛かる。

「なんだお前、元に戻ってんのか。」

「ん? ああ、気が付いたらこんなくっさい死体の中で生き埋めになってたから自分も死体になっちゃうかと思った!」

「笑えねぇジョークだな。」

「あれ? 心配してくれてる? だったら・・・。」

「おおっとそれ以上言うな? 俺の敵の討伐数を1カウント増やしたくないならな。」

「その1カウントって何~?」

「知らない方が幸せだぞ?」

「え~わかんな~い!」

「はっ・・・。」

 サンの減らず口にいよいよ鼻で笑うしかなくなってしまう。

 本当に元のサンに戻っている。

 恐らくはライが気を失ったことに関係があるのかもしれない。

「ライ兄とティル姉!! どうしたの!?」

 サンはライ達の様子を見ると慌てて二人の元へ駆け寄る。

「今ちょっとな。」

「???」

 説明がめんどくさいので省くとやはりと言うべきか、サンは首を傾げる。

 だが・・・。

「ッ!!」

 ライ達が急に眩しい光を放つ。

「・・・。」

 正直驚きはしなかった。

 恐らく何が起きているのか薄々想像できるからだ。

 光が治まると・・・。



「よぉ!」



 ライがいつの間にかティルと一緒に立ち上がっており、手を繋いだまま気さくに俺に片手をあげて挨拶して来た。

「はっ・・・。」

 俺は呆れ気味に鼻で笑いながらライの元へ歩み寄る。

「帰ったぜ熱血バカ!」

「うるせぇよクソ兄貴。」

 皮肉たっぷりの俺に対する呼び名に俺も皮肉を返しながらお互いに拳をこつんと合わせる。

「あ、あの・・・。」

「ん?」

 ティルが話しかけてきたっぽいのでティルの方を向く。

「その・・・ご、ごめんなさい・・・!」

 ティルはライの後ろに少し隠れそうになったが必死にライの横に出て来て頭を下げて来る。

 どうやらあの時の事を覚えているみたいだ。

「ああ、そういうの良いって! それより・・・。」

 謝るティルの言葉を跳ねのけて俺はとある奴の方を向く。

「ティル・・・。」

「メ、メロさん・・・!」

 ティルはメロを見ると申し訳なさそうに視線を逸らす。

 無理もない。

 メロにも手を出したことを負い目に感じているんだろう。

 だが・・・。



「ティィィィルゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」



 メロは今にも泣きだしそうな顔でティルに飛びついて抱き着く。

「メ、メロさん・・・!」

「よがっだぁ!! よがっだでずぅぅ!! ディルウウウ!! うあああぁ!!」

 物凄く大袈裟に泣きながらメロはティルを強く抱きしめる。

「メ、メロさんその・・・ごめ・・・あうッ!?」

 ティルが謝ろうとするとティルは変な声を上げる。

 ライがでこぴんしたからだ。

「・・・。」

 ライは眉を潜ませながら一瞬だけ首を横に振る。

 『やめろ』と言いたげなジェスチャーだ。

「・・・! ・・・。」

 ティルは一瞬目を丸くしたがすぐに落ち着いて笑みをこぼす。

 何かを察したみたいだ。

「ただいま、メロさん・・・。」

 ティルは優しくメロを抱きしめながら言った。

「ティルゥ・・・ううぅ、うあぁ・・・!」

「メ、メロさん・・・その、痛い・・・!」

 メロは余程嬉しかったのか未だにティルを強く抱きしめる。

「・・・。」

「・・・。」

 ライが鼻で笑いながら俺に呆れ気味の視線を向ける。

 恐らくは俺に向けられたものじゃないだろう。

 俺も鼻で笑いながら同じ視線を返す。



「やーやー、どうやら終わったみたいだね!」

 


「!」

 声がする方を見るとフレッドが機動隊を引き連れて立っていた。

 無論ディグも傍にいる。

「感動の再会もいいが今はまだ作戦中だ。ここから脱出する手段を考えないとね!」

「あ、ああ。そうだな。」

 せっかくいい状況なのに非情な気もするが確かにフレッドの言うことは正しい。

 基地の外では未だに仲間が敵を足止めするために戦い続けているんだから・・・。

「あ! その・・・!」

 ティルが何かに気づいたかのように声を上げる。

「どうした? ティル、言って見なさい。」

「その・・・レッサさんが言ってました・・・『廃棄場に出口はない』って。」

「なんだって!?」

「入ったらそのまま、この廃棄場の中に入れられたままだって・・・。」

「くそっ、どうすりゃいいんだ!」

 このままじゃシャレにならんぞ!

 作戦どころか此処にいる全員が朽ち果てて死ぬぐらいの大問題だ!

 考えろ・・・何かいい手は・・・!

「スマーッシュッ!!」

「痛ったぁッ!!」

 何故かルタが後ろから俺の頭を思いっきり平手打ちしてきた。

「お兄ちゃん? 冷静になりなよ!」

「はぁ? 何言ってんだ!」

「全く、お兄ちゃんって意外と抜けてるよね。」

「なんだよッ!! 何が言いてぇんだ!!」

 ルタの言いたいことが全く理解できん!

「私達、上から落ちて来たんだよね?」

「あ? ああ、そうだけど?」




「だったら()()()()()()いいじゃん?」




「・・・・・・・・・は?」

 何が言いたいんだこいつは・・・?



~ロベルト 路地裏(五年前)~


「ッ!!」

 フレッドや仲間が見守る中、ライに思いっきりぶん殴られた。

 当然だ。

 それだけのことをしたんだ。

 研究員として命を弄んだ。

 こいつらはその犠牲者だ。

 研究所で命を弄ばれ、自由を手にしても長く生きられない。

 それらの理不尽なシステムを作り出したのがまぎれもなく私だ。

 殺されても文句は言えない。

 死ぬことは恐ろしかったがそれを受け入れると決心したのだ。



 いや、待て?



 何故()()()()()()のだ私は・・・?

「ッ!?」

 考える間もなくまた殴られる。

 二発、三発・・・続けて殴られる。

 散々痛めつけて殺すつもりか?

 まぁ当然だろうな。

 それだけの事をしてただの一瞬だけで苦しみを終わらせるなんて生易しい事を考えてくれるはずもない。

「・・・はは。」

 殴られながらも思わず乾いた笑いが零れる。

 どうとでもしてくれ。

「・・・。」

 ライが突如殴るのをやめる。

「・・・?」

 訳が分からずライを見るとライは既に拳を降ろしており、それでも私の前に立ちはだかるように仁王立ちしていた。

 だがすぐに銃口を俺に向ける。

「・・・。」

 いよいよか、考えてみればろくでもない人生だった。

「なぁ、一ついいか・・・?」

「・・・なんだ?」

 殴られて切った口から出た血を拭いながら問い返す。

「あんたいつまで、あの研究所にいた?」

「なんだ? なんでそんなことを・・・?」

 質問の意味が分からない。

「いいから言えってッ!!」

「・・・一年前だ。」

「・・・そうか。」

「ッ!」




 一発の銃声が辺りに児玉した。




「・・・?」

 痛みを感じない。

 何処を撃たれた?

「・・・じゃあいい許す。」

「!?」

 銃口が右に傾いて居たのでもしやと思って右後ろを見ると瓦礫に銃弾らしき穴が空いていた。

「どういうことだ!?」

「俺達があの研究所に集められたのは半年前だ。つまりあんたは直接俺たちに手を下したわけじゃない。」

「そんなことで私を許すのか!?

「親父。」

「私が 輝ける人類(グロリアス)の研究を始めなければ お前たちは実験ネズミ(モルモット)にならなかっ

「お~や~じ?」

「!!?」

 ライは銃の遊底(スライド)の部分を私の口に押し付ける形で口を塞いでくる。

「考えてもみろよ。あんたが研究所を辞めてから半年だぜ? 輝ける人類(グロリアス)がくそったれな研究って分かって、改心してやめようと思えばいくらでもできたんだぜ? それなのに研究者共(あいつら)は・・・あのババアは俺たちみたいな 実験ネズミ(モルモット)を作り続けたんだ。」

 そう言ってライは私の口から銃を話すと手を広げて後ろを向いて数歩歩き出す。

「確かに元はといえばあんたが悪い、それは認める! 俺だってそれは許せない。 だから殴った。」

 ライは振り向く。

「けど殺したいほど憎いのは今だって、俺たちみたいな実験ネズミ(モルモット)を作り続けてるあのババアだ!」

「・・・。」

 あくまで私よりもあの女を恨んでいるってことか・・・だがあの女があそこまで歪んだのも元はと言えば・・・。

「それにあんた・・・なんで今ホームレスなんだ?」

「奴に・・・ラベスタに研究所での地位や権力を全て奪われた。奴にはいろいろ恨まれていたからな。」

「?」

 私の言葉にライは片眉を顰める。

「恨まれてる? どういうことだよ。」

「あの女を愛人にするためにあの女の夫を殺した。」

「愛人!? あのイカれババアを!?」

 ライは片目を全開にして信じられなさそうな声を上げる。

「ああ、信じられないかもしれないが、彼女は元々 輝ける人類(グロリアス)に手を染めるようなことはしない程の善良な研究員だった。それが私には眩しくてな、なんとしても彼女を手に入れたいと思っていた。」

「マジかよ・・・。」

「あいつがぁ?」

 ガスとエルがどよめきながらお互いを見る。

「工作員を使って事故に見せかけて夫を殺したあと、 輝ける人類(グロリアス)の研究に引き入れようとした。だがあの女がそれを拒んだから娘も実験に使って殺した。」

「うえぇ・・・。」

「嘘でしょ・・・。」

 ウィズとネマが顔を青くして片手で口を覆う。

 かなり引いているみたいだ。

 無理もない。

「あいつは訴えたが、当時権力を持っていた私は法定に圧力をかけてあいつを泣き寝入りさせた。恨まれるには十分なことをしただろう。それでこのザマだ。わかっただろ?」

 正直言っていて自分がどれだけの異常者か嫌と言う程思い知らされる。

 これが教会などでする『懺悔』なんだろうな。

 あまりいい物じゃない。

 だが続ける。

「私は権力にあぐらをかいて徳を捨てた挙句、その権力も失った。何も残されていない、何の価値もない人間だ。今のこの姿は、私にはお似合いだろ?」

「・・・ふ。」

「ははははは!!」

「あははははは!!」

「おいみんな聞いたか!?」

「ははははは!!」

 ライが噴き出すとそれに釣られるように周りの仲間たちは笑い出す。

 当たり前だ。

 目の前の悪党を絵に描いたような男が物の見事に天罰を喰らっている喜劇だ。

 笑わない方がおかしい。

「あんた最低なクズ野郎だな!!」

「なんとでも言え。」



「けど最高だ!」




「・・・は?」

 今なんて言った?

「・・・最高?」

「ひぃ!! ひひ! ちょっと待ってろって!!」

 ライは余程爆笑したのか、笑いが収まるまでほんの少し時間をかけて息を落ち着かせる。

「あいつ俺たちには最初、幼稚園の子供でも扱うかってぐらい甘い声出してたんだぜ!? あんたの話が本当ならそれって子供に飢えてイカれてたってことだよな!?」

「そうなるのか?」

「そうだろうぜ! どうせてめえのガキが死んだ心のスキマを埋めたかったんだろうよ!! それで俺達に依存しまくってあんな甘々の親演じてたんだぜ!? 滑稽すぎて笑えてくるぜ!! マジでバカだなあのババア!! ひひ、笑いが止まらねぇッ!!」

「何処に笑う要素がある!! 私がやった事の経緯があればそうなるのは・・・。」

「分からねぇのか!? つまりあのババアは死んだ子供の代わりに俺ら使った人形遊びでオナ●ーしてたってわけだ!!」

「ッ!!?」

 こいつ、成人してもないのになんて言葉を・・・!

 何処で覚えるんだそんな言葉・・・!

「イカれてるのかお前・・・!」

 流石に私も引き気味に言う。

「親父が言えた口かよ!! あんたも相当いかれてるぜ!? 女寝取るために旦那と娘殺すとかさぁ!!」

「・・・そうかもな。どうかしてたよ。」

 今の私に誰かを非難する資格もないな。

「だからよ! そんなイカれた者同士だからやっぱ俺たち家族だ!! なあアンタ!!」

「私かい?」

 ライは急にフレッドに話を振る。

「あの研究所の敵なんだろあんたら! だったら目的は『俺らの保護』。で、その見返りにあんたらの兵隊になるって事だよな?」

「そこまで察しがいいとは思わなかったけど、うん、まぁ大体そんな感じ。」

 フレッドは呆れ気味にため息を吐きながら鼻で笑い、淡々と答える。

「じゃあ追加条件!!」

 ライは指を一本突き出す。

 如何にも『一つだけ』と言いたげなジェスチャーだ。

「親父も俺たちの家族なんだ! 一緒に保護してくれよ!」

「と言ってますが・・・どうします? 室長?」

 やれやれとばかりにため息を吐きながらフレッドは私を見る。

「いいのか?」

「じゃあ多数決! 親父が保護されずこのままのたれ死ねばいいと思う人ぉ!」

「・・・。」

 ライの言葉に子供たちは手を上げる気配はない。

 ミアとシラはちょっとふざけて手を上げるフリをしたが最初から上げる気がなかったような感じだ。

「・・・じゃあその逆の人!!」

「はい!」

「はい!」

「はい!」

 子供たちは息を揃えて手を挙げた。

 ある者は『賛成!』とばかりに元気よく、ある者は『やれやれ』とばかりに呆れながらだが上げた手を下げる者は一人としていなかった。

「満場一致。」

「親父? 拒否権はねぇぜ? 来いよ!」

 ライは屈託のない笑みで私に手を差し伸べる。

「・・・お前ってやつは。」

 呆れながらその手を取る。

 だが嬉しくて仕方がなかった。

 何もなくなった私にも『居場所』という物が出来るのだな・・・。



~ロベルト 官邸前(現在)~


「ここは通さんッ!!」

 戦車の脇に取り付けられた副砲の機関砲(ガトリング)を乱射させながら迫りくる敵に応戦する。

 『ラベスタへの復讐』なんかじゃない。

 私が今此処で戦っている理由はただ一つ。

 ライから貰ったこの居場所を守る為だ!!

「ッ!!」

 銃からカラカラと金属めいた音が聞こえると同時に銃から弾丸が出なくなる。

「戦車の弾薬はもうないのか!?」

 戦車の操縦員に声をかける。

「最後にあんたに渡した奴で最後だ!! 後ろの防衛ラインの味方まで下がらないと補給は無理だ!! この戦線はもう維持できない!!」

「くっ・・・!」

 先程戦車の主砲も撃ち切ったばかりだ。

 戦車が戦えないとなると火力負けして戦線に立っている部隊が全滅するのは必至だ。

「くそ・・・戦車を下げるぞ!!」

「しゃあないか!!」

「第三ライン後退!! アントン!! 部隊に後退指示を出せッ!!」

『ちっ、了解!!』

 戦車の乗組員は総意で歩兵の仲間にも後退指示を出すと戦車は向きを変えないまま真後ろに向かって走り出す。

 だが・・・。

「ぐわああぁッ!!」

 突然爆撃を受けて戦車が大きく揺れる。

 敵の戦車の主砲が当たったのだ。

 だが幸いに直撃はしていない。

 恐らくは爆風で揺れたのだろう。

 だが・・・。

「おいどうした!? 戦車を下げろ!!」

「だ、駄目だ・・・!」

「なんだ!? どうした!!」

「操縦してるけど下がれない! 多分脚立(キャタピラー)がやられた!!」

「なんだと!?」

「もうコイツを後ろの戦線(ライン)まで持って帰るのは無理だ!!」

「くそぉ・・・!」

 私たちは止む無く戦車を放棄する為に出ることにする。

 いざという時の為に持ってきていた機関銃(マシンガン)を背負って一人一人出ていく。

「くっ・・・!」

 数人出た後にハッチから顔を出すと凄まじい程の弾幕の雨が横殴りに襲ってきていた。

 急いでハッチから出て行って戦車の陰に隠れ、そのまま仲間と一緒に走って逃げる。

「・・・!」

 状況が落ち着いて来て後ろを見ると敵が既に迫っていた。

 銃を持った兵士と文字通り『猟犬』として一緒に武器を持って迫りくる獣人の実験体。

 本来戦闘員ではない私からすれば化け物の群れだ。

 幸い戦車は先ほどの私たちが乗っていた戦車が道を塞いでいるのもあって通れないみたいで、件の連中はその道の隙間を縫って追跡しているようだが目の前の敵勢だけでも我々の部隊を全滅させるには充分な規模だった。

 恐らく逃げ切るのも不可能だろう。

 だったら・・・!

「くっ・・・!」

 私は振り返って銃を構える。

「ロベルトさん!!?」

「何やってる!!」

 仲間が私の行動をすぐに察知して声をかけて来る。

「ここは私が足止めする!! お前たちは早く戦線(ライン)を下げろ!!」

「何言ってんだ!!」

「こんな年寄りが生き残ったってしょうがないだろう!! 戦力として使えるお前たちが生き残るべきだ!!」

「ロベルトさん!!」

「早く行けッ!! うおおおおぉぉッ!!」

 私は咆哮しながら敵に向かって銃を乱射する。

「くそぉッ!!」

 仲間は私の決意を知ってか悔しそうに叫びながらも下がっていく。

「かかって来いッ!! 仲間に手を出したいなら先に私を殺せぇッ!!」

 自身を奮い立たせながら銃を乱射する。

 敵達はその弾幕と気迫に気圧されてか、物陰に隠れる。

 だがそれでいい。

 奴らがもたもたしている内に仲間が戦線を立て直せればそれだけでこの殿(しんがり)にも意味が出て来る。

 だが・・・!

「ぐぅッ!!」

 一発の銃弾と共に足に激痛が走る。

 敵の中に狙撃手(スナイパー)がいたんだろう。

 私の弾幕が逸れた隙に撃って来たのだ。

「くっ・・・!」

 だが私は倒れなかった。

 これしきの負傷(ダメージ)で動けなくなってたらせっかく此処にとどまった意味がないんだッ!!

「ここは通さんッ!! 通さんぞぉッ!!」

 私は銃の乱射を再開した。

 だが現実は非情だった。

「ガアアアァッ!!」

「ッ!?」

 猟犬(ハウンド)の一体が隙を見て跳びかかって来ると私の両肩に足を乗せてその体重で押し倒してきた。

「ガアァッ!!」

「ぐがっ!!」

 猟犬(ハウンド)は棍棒で私の頭を殴って来た。

 物凄い鈍い痛みが頭全体を駆け巡る。

 今にも気を失いそうだった。

 だが・・・。

「ッ!!」

 猟犬(ハウンド)の喉元に銃を突きつける。

「失せろッ!!」

「ガアアアァッ!!」

 猟犬(ハウンド)の喉に何発も銃弾をお見舞いする。

 まともに喰らって奴は白目を向いて横向きに倒れる。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 立ち上がろうとするが立てない。

 銃弾と殴打の負傷(ダメージ)のせいだろう。

 戦えもしない老人の身なら当然だろう。

「ジジイ一人が手こずらせやがって・・・!」

 自分の状況を悟っている間に敵の兵士が目の前まで来ていた。

 動けない私にとどめを刺そうと銃を構える。

 いよいよか・・・。

「ライ・・・ありがとよ・・・!」

 お前にもらった命、ちょっとでもお前のために使えてよかったよ・・・。

 自分の死期を悟り、私は目を閉じたーーー。



ーーーだが。

「ぐあああぁッ!!」

「・・・!」

 何発もの銃声が聞こえて敵の嬌声が聞こえて目を開ける。

 信じられない光景が目の前に広がっていた。

 敵が銃弾を受けて倒れていく。

 無論私が撃った訳じゃない。

「しっかりしろ!! ロベルトさんッ!!」

 先程下がらせた仲間が倒れた私の上から声を掛けながら手を取って私を引き上げる。

「お前たち・・・どうして・・・!?」

「死なすわけねぇだろ!!」

 そう言って仲間は二人で私の腕をそれぞれ肩に回して運び出す。

「ロベルトさんを死なせるかぁぁッ!!」

 私を運んでいない仲間は銃を乱射させながら残りの敵を牽制する。

「みんな・・・どうして・・・!」

「見届けるんだろう? ライ達の未来を見届けながら隠居生活を送るんだろう!?」

「こんなところで死なせるか!!」

 仲間たちは必死に役割分担をして私を運び出してくれている。

 こんな事をされてあんな格好をつけた私が馬鹿みたいだ・・・だが。

「うっ・・・うぅ・・・!」

 涙が出て仕方がない。

「何泣いてるんだよッ!!」

「泣いてる暇あったら歩けよッ!!」

「そうだな・・・すまん・・・!」

 ライ・・・どうやらお前から受けた恩はこの先の一生かけても返せそうにない。

 どうやら私は自分にはもったいないほどの居場所ができてしまったみたいだ。



~ラベスタ ???~


「おかあさん!」

「ラベスタ!」

「ん・・・!」

 声が聞こえて目を開けるとそこは・・・。

「やっと起きたかこの寝坊助め!」

「おかあさんおねぼー!」

 いつもの家のリビング。

 ケヴィンが呆れ気味にやれやれと言った苦笑いを浮かべる傍らでアリスが無邪気な笑みを浮かべている。

「ったく、今日はお前がご飯の当番だろ? あんまり起きないから俺が作ったんだぞ?」

「あ、ごめんごめん!」

「おかあさんおつかれー?」

「ああ、うん。ちょっと機材のメンテとかね・・・。」

「めんてー?」

「・・・ごめん、難しいよね。とにかくお母さんは忙しかったの!」

「どうでもいいって! さっさと食えー! わざわざ待ってやったんだぞ? 冷めるぞー!」

「「あーい!」」

 ケヴィンの催促にちょっと調子よさげに応えるとアリスの返事と被る。



ーーーそれから食事を囲みながらなんて事の無い話をしていた。


「ラベスタ? いくら主任の仕事忙しいからって無理すんなよ?」

「ケヴィンだって対して仕事量変わらないでしょ? あんたの方こそ無理しないで!」

「全く、上に掛け合って労働環境改善の直談判でもした方がいいかな?」

「じかだんぱんー?」

 子供用のスプーンをナイフの逆手持ちのように行儀悪く持ちながら米粒いっぱいの口でアリスは首を傾げる。

「『私たちの働く場所をもっとよくしろー!』って偉い人に文句いうの!」

「んー!」

 アリスの口を拭きながら私は問いに答える。

「えらいひとにもんくいってだいじょうぶなのー?」

「大丈夫! パパもママもそれなりに『偉い人』だからちょっとくらいは文句言えるの!」

「そうなのー?」

「まぁあんまり偉い人になりすぎるのもよくないけどな。」

 ケヴィンはやれやれとばかりにため息を吐く。

「あれ? あんた出世とか興味ないの?」

「そりゃ給料上がって労働待遇よくなるのはいいけどさ、俺だって今の職場でやりたいことあって仕事してる訳だからあんまりポストに収まり過ぎて身動き取れなくなるのもさ・・・。」

「えー? 偉くなったら出来るって事もあるんじゃない? とにかくあんたも私もまだ上に上がったっていいくらいなんだからさ! お互い頑張ろうよ!」

「・・・はは、そうだな!」

「?」

 ケヴィンが私の肩に手を置く。

「学生時代にお前と競い合ったからこそ、今の俺がいる。だからこれからもお前に負けないくらい俺も頑張るよ!」

「ケヴィン・・・。」

 前向きなケヴィンの言葉に自然と笑みがこぼれる。

 そこで不意に・・・。

「ッ!」

 ケヴィンはそのまま顔を近づけて唇を合わせて来た。

「おー! おとうさんとおかあさんなかよしー!」

「「!!」」

 不意に聞こえたアリスの声で我に返った私とケヴィンはすぐにぱっと離れる。

「ご、ごめんアリス! 行儀悪かったよね!」

「ちゅーだめなのー?」

「駄目! 今のは絶対真似しちゃだめだから! 好きな人が出来ても食事中とか誰かが見てる所でちゅーとか駄目だからね!」

「好きな人・・・ね? ふふふふ。」

「ケヴィン?」

「もしアリスに好きな人出来たらまずはちゃんとお父さんに教えるんだぞアリス~?」

 ケヴィンは黒い笑みを浮かべている。

 どう考えても快く考えてない父親の顔だ。

「すきなひと?」

「ちょっとケヴィン! まだアリスこんな子供でしょ! 何もう今から父親ムーブかましてんの!」

「ふふふふ!」

 私が叱咤してもケヴィンの黒い笑いは治まらない。



「わたしがすきなのはおとうさんとおかあさん!!」



「「!!」」

 アリスは突然椅子から降りて私とケヴィンの手を繋ぐ。

「おとうさんとおかあさんすきー!」

「ケヴィンー?」

「ま、まいったなー! ははは!」

 アリスの穢れの無い回答に罪悪感があるのか、気まずそうに笑うケヴィンを睨みつつ、私もつられてちょっとだけ穢れていた自分に気まずくなる。

 けど・・・。

「ふふ、ほんと! 馬鹿!」

「なんだよぉ!」

 自然と笑いが出て来る。

 だが・・・。

「・・・?」

「おかあさん?」

 突如ケヴィンとアリスが不審そうに私を見る。

「ラベスタ?」

「え? 何? ケヴィン?」

 何故二人が私をそんな目で見るのか分からない。

「アリスもどうしたの!」

「おかあさん・・・。」

「何、アリス?」



「どうしてないてるの?」



「・・・・・・え?」

 アリスに言われて目元に触れて気づいた。

 何故か涙が流れていた。

「あれ・・・? え・・・?」

「ラベスタ・・・何か嫌なことあったのか?」

「え、なんで・・・これ・・・はは、なにこれ!」

 眼鏡を外し、涙を拭っても涙が溢れ、次第に見えなくなる。

 ぼやけて完全に周りが見えなくなると視界は突如暗転していったーーー。



ーーー「・・・?」


 目を開けると自分が夢を見ていた事に気づく。

 丁度モニター前の座席に腰掛け、機材にもたれかかる形で寝ていた。

 辺りには散らかされた書類の山。

 それを見て自分が自棄になって暴れていた事に気づく。

「おかあさん!」

「!」

 自動ドアの開く音と共に声がして振り向く。

 そこには心配そうに歩いてくるアリスがいた。

「おかあさん、どうしたの?」

「ああ、なんでもないよアリス。」

 私の元まで歩いてくるアリスを優しく抱きしめて頭を撫でる。

「おかあさんないてたの?」

「あ、ああ。これ? ちょっと嫌な夢見ただけ!」

「わるいゆめ?」

「だいじょーぶ! アリス!」

 精一杯強がってアリスを抱きしめる。

「大丈夫だよアリス・・・。」

「おかあさん?」

 アリスの頭を優しく撫でながらアリスを元気づける。

「どうしたの?」

「今ね? 悪い人たちがこの基地に入っちゃったの。」

「わるいひと!?」

 アリスがびくっと身体を跳ね上げる。

「わたしたちつかまっちゃうの!?」

「大丈夫・・・。」

 アリスの頭を撫でながら優しくアリスに囁きかける。



「悪い人たちは『セルケト』がやっつけてくれるから。」



「せるけと?」

「お母さんの心強い仲間!」

 アリスから身体を放して顔を正面に向き合わせる。

「そいつが守ってくれるから大丈夫!」

「そうなのー?」

「そうなの!」

「わう!」

 アリスのほっぺを両方から挟むように手の平にくっつける。

「お母さん嘘つかないの知ってるでしょ?」

「うん! おかあさんうそつかない!!」

「よろしい!」

 アリスが元気いっぱいに返事をするとえらい子を褒めるために頭を撫でる。

「・・・。」



『なあ。あんたにも本当はいたんじゃないか?』



 黙れ。



『『損得関係なしに愛した子供』が・・・。』



 五月蠅い。

 いるんだよ。

 今此処に・・・。

「・・・。」

 護って見せる。

 誰にも壊させない。

 私にはもうこの子しか残っていない。

 この子は私の希望。



 アリスは絶対に誰にも渡さないッ!!!!!!



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