#92 光の道
~ライ ???~
「・・・んっ・・・!」
二日酔いでも決め込んだかってぐらいの朦朧とする意識の中、目を覚ますと自分が異様な状況な事に気づく。
地面を踏んでいる感覚がない。
いや、目を覚ましたんなら普通は身体は寝てんだよな?
いやいや、そうでもねぇ。
なんかおかしい。
身体が何にも当たっていない。
「・・・おいおい。」
段々意識がはっきりしてくるとそれこそ夢か? って感じだ。
違うな、もう夢じゃねぇかってくらいの奇想天外な体験してんだもんなぁ俺は。
「これがティルの心の中・・・で、いいんだよな?」
簡単に説明するとだ。
俺は今宙に浮かんでるような状態だ。
で、周りは青やら赤やら白黒、セピア色も交じってるか?
とにかく色んな色が混ざり合っては離れてみたいな不思議空間を無重力の状態でさまよってるような感じだ。
他人の心の中に入るなんて体験なんざ経験あるわけないからな。
覚悟してなかったわけじゃねぇけどこれは・・・うん、なんて説明すりゃいいんだ?
ハッキリ言ってよく分からん!!
「つーかよ・・・。」
うん。
ルタに聞けばよかったんだよな?
「・・・どこ行けばいいんだよ、マジ。」
こんな宇宙かお母ちゃんの胎内かも分からん空間をただ遊泳体験ツアーするためにわざわざあんな呪文みたいなこと唱えてやって来たわけじゃねぇぞ?
いや、落ち着け。
あのウルドが出来ると豪語した以上、この空間に放り出されてすぐに『ハイ詰みクソゲー』なんて事はまずあり得ない。
どこかしらゲーム攻略の糸口があるはずだ。
とりあえずまずはこの状況を打開することから先だ。
まず目的が『ティルを助ける』って以上、ティルを探すのが先決だ。
探す・・・うん。
まわりはよく分からんカラフル空間、こんな場所にティルいたら逆に驚きだ。
探しても見つからない?
じゃあ・・・。
「出てこいティルウウウゥゥゥゥ!!!」
呼べばいいじゃんってノリで呼んでみたは良いけど・・・。
「・・・うん。」
詰んだな。
マジでどうすればいいんだこれ!!
あーもう!!
マジどうすればいいんだよ!!
すぐにでもティルを助けなきゃいけないってのによ!!
「あ?」
マジふざけんなって思ってた時、不意に状況に変化が起こる。
腕輪の光が妙に強くなっている。
だが・・・。
「え、ちょっと・・・!」
すぐに元の光に戻る。
どういうことだ?
一瞬気のせいかとは思ったけどどうも何かがある気がするんだよなぁ~俺の勘が。
ん?
そういえば腕輪を渡してくる時にルタのやつが何か言ってたな・・・。
『この腕輪は家族や恋人に対する絆に効果を発揮する腕輪。だから何かあったらティルとの思い出、二人で過ごした時間のことを思い出して。』
「思い出ね・・・。」
とりあえず思い出せるだけ思い出してみるか。
目を閉じて余計な視覚情報を遮断してティルに関する事を思い出してみる。
基地の中でのあいつの事だ。
とにかく不器用なくせに一生懸命な奴だからみんなの役に立ちたがって色々無茶してたっけ?
サイコキネシスの能力もあって物運ぶ仕事とかよくやっててみんなに喜ばれるのが嬉しかったのか、それ以外の救護とか食料関係の仕事とかもやろうとして色々無茶してたっけ?
よくコケて物落とすし、料理とかもお世辞にも上手いとは言えない。
けど実働部隊の連中はあいつがドジ踏むのも微笑ましく見守る中、寧ろ可愛いとか密かに言われてて狙ってる奴結構いたもんで、なんかよく分からん殺意沸いてたな。
うん、よく分からん殺意だったな!!
「お!」
腕輪が反応した
だが・・・。
「・・・あれ。」
また戻った。
効果があるにはあるけど薄いみたいだな・・・。
じゃあ別の事考えてみるか!
だったら・・・路地裏での事かな?
とにかく弱ってた奴を放って置けなくて最後まで看病してたんだよな。
薬も無いから死ぬのも時間の問題だったけど・・・。
『家族が死んでも笑って過ごす』って俺達でルール決めてたけど、それでもみんなに隠れて死んだ仲間の前で手を合わせて泣いてたっけ。
まぁ、良くも悪くもあいつのいい所だよな。
「おぉ!」
さっきより光が強い!!
これいけんじゃねぇか!?
「・・・あ。」
ダメみたいですね。
光がまた元に戻りやがったよ。
くっそ、まだダメか・・・!
じゃあ・・・!
---研究所にいた時だ。
最初の印象は前髪で目が隠れた、暗くて無口で誰とも関わらないような部屋の隅っこで一人でいるような奴だった。
そのせいか大して印象にも残らなかった。
だがある日だ。
俺は知ってしまった。
研究所での訓練が終わってみんなが部屋に戻って行く時だ。
誰も気にも留めないことをいいことに研究所をこっそり抜け出していた。
まさに影の薄さが功を奏した結果だろう。
正義感の薄かった俺は捕まえて咎めるなんてことは考えず、ただ面白半分の興味本位で後をつけていた。
街の路地を何の迷いもなく歩いて行く。
ティルの姿は明らかに目的があるやつの動きだった。
それで目的地に着いたかと思えば小さな猫が一匹寄ってきて小さな鳴き声をあげていた。
そこでティルは研究所から持ち出したと思われるお菓子を猫にあげていた。
最初は研究所を抜け出していたことをネタにからかってやろうと思っていた。
「・・・。」
だがこの光景を見ると何故か水を差す気になれず、見守っていた。
で、気が付けばあいつが研究所を抜け出して子猫に餌やりに行く姿をこっそり尾けていくのが日課になっていた。
いや、今思えばマジもんのストーカーだなこれ・・・。
と、まぁ、それがしばらく続いたある日、子猫が衰弱していた。
けどそれは当然だったかもしれない。
箱に入っていた猫だったし、おそらくは捨て猫か何かだったんだろう。
それがティルがあげたお菓子程度で食いつないでいけるはずがない。
どうにか助けてやろうとあれこれ考えていた時だった。
ティルが思いがけない行動に出た。
子猫を抱えて持って帰ったんだ。
恐らく部屋に連れ帰って面倒を見るつもりなんだろう。
「・・・。」
俺はそれを静観していた。
それを馬鹿な行動だとすぐ思った。
何せ就寝用の部屋は二人一部屋体制。
つまりはルームメイトがいるわけだ。
猫は生き物だ。
隠してたって勝手に動くし鳴き声だってバレる。
しかもそのルームメイトはよりにもよって誰も寄り付かない程性格の悪い女だ。
だが現実は思いもよらない方向へ行く。
数日経ったある日だ。
「あ~、今日も訓練めんどくさかった! ね、ティル!」
「は、はい・・・。」
そのルームメイト、レッサは何故かティルと仲良さげに部屋に向かって行った。
それが妙だと思ったが、部屋に入られると中を確認する手段がない。
何せドアは隙間の無い自動ドアだし、聞き耳を建てようにもご丁寧に防音設計だ。
しばらく放って置いたが、やはり気になって二人がいない間にこっそり部屋に入って確かめた。
すると・・・。
「・・・!」
「なぁん・・・。」
部屋の隅に檻に入った例の子猫がいた。
その時安堵した。
恐らくはバレた上でレッサは誰にも言わなかったんだろう。
つまりは二人で飼う事にしたわけだ。
「なんだよ、あいつも結構いいとこ・・・。」
そう言って何気なく猫の顎でも撫でてやろうと檻に手を伸ばしたその時だ。
「フシャアアアアァァッ!!」
「いッ!!!???」
猫は急にびくっと身体を震わせながら鬼のような剣幕で俺を威嚇していた。
どうにもよく分からないが機嫌を損ねちまったのか?
そう思っていつまでも此処にいて猫の気を立たせたらそれこそ俺が部屋に入った事がバレるかもしれない。
そう思った俺はすぐに部屋をあとにした。
この時気づくべきだった。
あの子猫の威嚇が意味する事は別の意味だったと・・・。
その時全て解決して猫の事はもう二人の事だと思って忘れ、別の仲間とバカやったりして笑い合っていた。
その時、視界の片隅にあの二人が見えたが特に気にも留めていなかった。
だが少し経つと違和感を覚えた。
レッサといるティルが段々と暗くなっていた。
最初は気のせいかと思ったがそれがすぐに気のせいじゃない事に気づく。
何故なら異常に気付いて数日後、ティルがまるで抜け殻のような人形になっていたからだ。
それに気づくと居ても立っても居られず、また部屋をあの時のように調べた。
「・・・なんだよ、これ。」
部屋は途轍もなく散らかっていた。
と言うより、破れた本や、壊れた鳥の模型の置物など、何かしら破壊されたものが部屋に散乱していたような感じだ。
しかも二つあったベッドのうちの一つが無残にも切り刻まれ、ぐちゃぐちゃにされていた。
その散乱している物の中に見覚えのある物があった。
子猫が入れられていたと思われる檻だ。
それも異常だった。
檻の骨組みはぐちゃぐちゃにねじ曲がっており、赤黒い染みがあった。
すぐにそれが血だと分かり、あの時の子猫が今どうなっているのかすぐに察した。
恐らくとっくの昔に事は終わって廃棄されて跡形も無いんだろう。
その時に気づいた。
あの子猫が俺を威嚇した理由が・・・。
怯えていたんだ。
そりゃそうだ。
怯えるような事を俺と同じ『人間』にされていたんだから。
そして恐らく部屋に散乱されている破壊されたもの・・・これらはラベスタが子供達全員へ配ったプレゼントだ。
だがティルが受け取った物は全て子猫と同じ末路を辿ったんだろうな。
此処までくればティルがレッサにどんな扱いを受けて来たのか想像するのは容易かった。
その時だった。
腹の中で何かドス黒い物が沸々と沸き上がっていた。
まるで自分の中に魔物でもいるんじゃねぇかってくらい、自分の心の中がドス黒くなったのが身に染みて分かった。
それが恨みや殺意、憎しみだと分かるのに数秒と掛からなかった。
けどそれが逆に不思議にも思った。
ティルは研究所の同じ被検体だが、やはり赤の他人だ。
その他人の事なのにどうして俺は此処まで怒れるのかと・・・。
だが今思えば分かる---
---「なんだよ。」
思い出したら自分がどんだけアホだよって思った。
自分にとってティルがどんな存在だったのか。
なんで無断で研究所抜け出してるのをからかおうと思ったのに猫の面倒見てるの見て見守ろうと思ったのか?
そんなもの決まってらぁ。
小さい生き物に優しいあの姿が可愛くて癒されたからだ!
子猫が無事な事を確認出来て安心したのなんて考えるまでもねぇ。
ティルを理解し、傍にいてやれる奴がいて安心したからだ!
それを裏切られて怒った理由なんてそれこそ論外!
自分が見守ってきた奴が理不尽に傷つけられたからだ!!
「ハンッ・・・。」
鼻から笑いが出る。
なんでこんな状況になるまで気づかなかったのかねぇ・・・。
ホント、大事な物って手元に置きすぎると価値に気づかなくなるもんだな。
だぁ、くそ!!
いつになくセンチになってんなぁ俺!!
らしくねぇ!!
「なぁ、ティルッ!! 聞こえてんだろッ!?」
俺は何処を向いているのかも分からない正面に向かって叫ぶ。
「もううんざりなんだ!! お前が泣く姿を見るのは!!」
ひねくれ気味な自分のクソ台詞で想いを伝える。
「けどお前が泣く理由はお前が悪いからじゃねぇ!!」
虚空に向かって思いっきり自分の想いを吐き出すように叫ぶ。
「あのクソ研究所ッ!! あのクソ女ッ!! この腐った国ッ!! そんで俺もだ!!」
胸の内に溜まった黒い想いも吐き出す。
「俺はマジで馬鹿だよ!! いつだって肝心な時にお前の傍に居てやれなかったんだからな!!」
居てもたっても居られず腕輪を握りしめる。
「ティル・・・もう俺に汚名返上の機会はねぇのか・・・なぁ?」
目を閉じて祈るようにティルへの想いを念じる。
「戻って来いよ・・・なぁ、ティル・・・! 戻ってきたら今度こそお前を守ってやっから・・・! だって俺は・・・!」
強く腕輪を握りしめる。
「俺はお前の『兄貴』だからな!!」
その言葉に反応したのか、腕輪はまた光り出す。
今度は先ほどの光なんて比じゃないってぐらいの凄い光だ。
だが眩しい光はすぐにまた大人しくなる。
またダメかと思ったがそうじゃない。
腕輪の光がまるで何かを指し示すかのように細く伸びていき、まるでレーザーのように俺から見た斜め上を指し示した。
「おいおい、まさか泳いでいけってのか・・・?」
ぶっちゃけかなりしんどい。
何せ光が射した方角は何も見えない上に遥か遠くを指してるわけだ。
それをこんなよく分からん無重力で移動手段も曖昧な状態で行けってかなりの鬼畜ゲーだぞ?
「ん?」
そう思った瞬間だった。
無重力の中、身体がふわっと動いたかと思ったら光の指す方角へ引っ張られていく。
「お、おおお!?」
まるでワイヤーで巻き取られてるみたいな感じだ。
にしたって・・・。
「・・・おいおいおいおい!!」
速くねぇか!?
ちょっと前に遊びで乗せて貰ってたA.A並みの速さだぞこれ!!
ってちょっと待てぇ!!
なんか光で出来た道みたいなのが見える!!
あれ地面じゃねぇか!?
ぶつかったら死・・・にはしねぇけど俺は、それでも痛いってぇとまれぇごめんなさいごめんなさいまじ勘弁してぇぇ!!
「ッ!?」
現実は想像より良心設計だった。
道にぶつかる寸前に急にスピードが落ちてしかもご親切に足が吸い込まれるように道の地面について綺麗に着地させてくれた。
「・・・なんだよ、意外とサービスいいじゃねぇか。」
道に足が着くとようやく重力を得て歩けるようになる。
光の道は一本道みたいだな。
まぁ、これはどう考えてもこの道を歩けって事なんだろうな。
---で、ちょっと歩いた訳だが・・・。
「おいおいなんだこりゃ・・・。」
歩いている途中、どうしても目が行ってしまう物がある。
それは横にある映像だ。
一つや二つぐらいだったら即スルーで楽勝なんだが、その映像ってのがもう十や二十なんて生ぬるいもんじゃない。
まるで商店街のアーチみたいに道を囲みながらすさまじい数で圧倒してくるわけだ。
そんなものあったら目に入れない方がおかしいっての。
しかもその映像ってのが・・・。
一つあげるとだ。
一人称視点の人間が扉を開け、その部屋にはディグとサンがいて何か照れくさそうな顔をして何かを言っているのを尻目にサンが満面の笑みで胸に飛び込んでくる映像だ。
しかもサンはそれだけじゃなく、飛び込んだ胸に顔を埋め、その大きな胸の感触を確かめるように顔をぐりぐりさせて来ていたのを一人称視点の主が必死に引き剥がそうとしていた映像だ。
「これ・・・。」
名探偵の推理もいらない。
どう考えてもこれはティルの記憶、そりゃティルの心の中なんだから当たり前だよなぁ?
「ふむ。」
普通に考えればプライバシーの侵害だ。
こんなものを率先して見るなんて最低の行為だ。
だが敢えて俺はやる!!
こんな機会、滅多にないからな!
「さぁてぇ?」
目を細めてにやにやしながら色々見る。
着替えの途中で鏡でも見てる映像でもあれば最高なんだが・・・。
そう思って色々映像を見漁るが・・・。
「?」
つい目に入ってしまったのは俺が映った映像だ。
基地の中か?
ティルの目線と思われる映像のちょっと上の辺り・・・多分おでこの辺りを指で小突きながら小馬鹿にしたように笑ったあとに楽しそうに笑いながら頭を撫でて来る映像だ。
「・・・。」
自分の行動を他人の目線で見るってなんか恥ずいな・・・。
パスだパス!!
別の映像!!
「ッ!?」
また俺が映った映像だ!
休憩室で笑いながら他の仲間と話している映像だ。
映像がガラス越しでガラスの縁で映像が見切れてる辺り、多分覗いてるんだろう。
話している途中にテンションが馬鹿みたいに上がったせいか、俺が仲間の一人に笑いながらヘッドロックをかましているが、技を掛けられている奴そっちのけでティルの視線と思われる映像は俺を真ん中に捉えていた。
てかまた俺かよ!
大した事してなかったにしても自分がめっちゃ見られてるって恥ずいわッ!!
「くそ・・・次だ次・・・!」
咄嗟に別の映像を見る。
この際ティルじゃなくていい!
うっかり見てしまった他の誰かの恥ずかしい秘密とかでもいい!!
俺以外ならなんでもいいから・・・!
「・・・。」
また俺だ。
なんか台所にいるな。
ん?
いやちょっと待て?
「・・・・・・・・・あ。」
待て・・・!
待て待て待て!!
この映像は・・・うわやめろぉッ!!
鏡の前で三角巾のチェックするな俺ぇッ!!
エプロンの後ろの紐まで念入りにチェックしてんじゃねぇッ!!
そんで『よし!』って感じでなに両肘引いて気合入れちゃってんの俺!?
あああ・・・米とか計量カップで念入りに計ってんじゃねぇよマジやめろ!!
味付けとかしてる最中に念入りに味見して確認してんじゃねぇッ!!
必死すぎかッ!!
恥ずい恥ずい恥ずい!!
「くっそぉ・・・あいつ見てたのか・・・!」
これアレだ・・・!
ティルが風邪で寝込んでた時にタマゴ粥作ってやった時の奴だ・・・!
普段台所とか立たないから慣れない調理器具とかの使い方覚えながら必死にやってた奴だ・・・!
ティルが完全に寝てると思ってて油断してた・・・。
あいつ途中で起きて見てやがったな・・・!
そんでなんとか作ってティルの前に出すときだけ『別にお粥くらい余裕だし?』みたいなすまし顔してた奴じゃねぇかッ!!
イタいッ!!
マジでイタいからッ!!
こんだけ無様晒したあとにあんな顔してたの完全にバレてんじゃねぇかッ!
「ちきしょぉ・・・!」
ティルの面白い秘密でも探ってやろうかと思ったら見事にカウンター喰らっちまった・・・!
つうか・・・!
「・・・。」
周りの映像を見るが、サンやディグ、フレッドにメロ、基地の中の連中やストリートにいた時の仲間の映像もある。
けどどの映像にも必ず俺が出て来るんだけど!?
どんだけ俺ばっか見てんだよ!!
俺の事好き過ぎかッ!!
ブラコンかッ!!
「・・・いや。」
実際俺も人の事言えねぇんだよなぁ・・・。
ティルのこと大事だしあいつが笑うの好きだし泣かすやつ許せねぇし。
シスコンだった自覚はあるが此処まで重度とは思わなかったし今更それを思い知らされるのはキッツいわぁ・・・。
もうやめだッ!!
さっさと行こう!
ティルの記憶の映像がどんなものか分かった所でさっさと目的地を目指す。
すると・・・。
「・・・なんだなんだぁ?」
相変わらず映像だらけのアーチの一本道を歩くが、辺りが段々夜みたいに暗くなっている。
「・・・。」
ちょっと気になって周りの映像を見てみた。
だがそれは見たらダメなもんだってすぐわかった。
レッサに殴られ、蹴られをしている所。
物を壊されている所。
ストリート時代の仲間が苦しみながらのたうち回り、最後には俺に銃で撃たれて死ぬまでの下り。
その仲間に一人で手を合わせて映像が涙でぐしゃぐしゃになっていく所とか・・・。
そりゃ当たり前だよな。
ティルは人一倍繊細だ。
寧ろ記憶なんてこっちの方がメインの筈だ。
で、なんとなくだがこの道を進むに連れてこんな風景が悪くなって周りも胸糞悪い映像ばっかりになる理由も分かって来た。
要するに心の奥底へ進んで行っている訳だ。
で、忘れようとして表面の意識から捨てた記憶がこの奥底、深層意識に溜まってるって事だよな?
辺りが暗いのも納得だ。
そりゃこんな暗い記憶が集まってたらな・・・。
「・・・くそッ。」
見るんじゃなかった!!
さっさと行こう。
此処に長居はしたくない!!
俺はただひたすら奥を目指して走った。
すると・・・。
「お!」
どうやら終着点にたどり着いたみたいだ。
如何にもな入口を見つけた。
俺はそれに向かって歩を進めた。




