#91 腕輪
~ウルド 廃棄場~
「あははぁ☆」
ティルが死体を放つ。
「くっ!」
「ぬぅんッ!!」
俺とメロは死体の突撃を回避するが死体はまるで誘導弾のように襲い掛かって来る。
「うわっ、とっ!」
「くっ!」
死体の攻撃は相変わらず優雅に踊りながらも容赦がない。
回転に乗せた蹴り、二人組なのを利用して片方を利用した遠心力による体当たり、相方に持ち上げて貰ってかかと落としなど、攻撃の多様性も様々だ。
だがそれでも俺達は避け続ける。
こちらからは攻撃を仕掛けない。
何故なら分かっているからだ。
剣で攻撃を加えた所でこいつらは怯まない。
攻撃をした所で掴まれて終わりなのだ。
だが攻撃手段がない訳ではない。
「業火 杖 放出・・・。」
ルタが横歩きで移動しながら杖を前方に向けて魔法を詠唱する。
自衛手段が乏しい分出来るだけ距離を取りながら魔法を撃つように立ち回っているのだ。
「爆炎榴弾!!」
ルタが魔法の詠唱を完成させると杖の先から巨大な炎の砲弾が放たれ、俺達が逃げ回っている現場に飛ばされる。
「退散ッ!!」
「ふぬぅん!!」
俺とメロは左右に散って死体たちから距離を取る。
俺達の元居た場所に炎が飛んで爆発するように炎を巻き上げると死体数体を巻き込んで燃やす。
「う・・・!」
偶々爆炎の近くに居たティルも流石に火の手を嫌がって腕を翳して軽く顔面を覆う。
だがすぐに・・・。
「危ないじゃないですかぁ☆」
ティルが手を翳すと死体が地面からまた数体起き上がり、ルタに向かって走って行く。
「こっちをッ!!」
「見るのですッ!!」
「ッ!?」
ティルが声に気づいてハッとする。
俺とメロが左右から襲い掛かる。
「あらぁ☆」
ティルが左右に手を翳す。
するとルタに襲い掛かっている死体が倒れて動かなくなる。
「「ッ!!」」
俺とメロは腕を縮めて跳び上がりながら空中で脚を畳み、全力の防御の姿勢になる。
ティルの動きが何の予兆か分かっているからだ。
「ぐぅッ!!」
「ぐくぅッ!!」
前方から物凄いデカイ何かがぶつかって来たかのような衝撃が走り、俺とメロは吹き飛ばされる。
傍から見れば奇襲に失敗した姿だ。
だが・・・。
「へっ・・・!」
俺は吹き飛ばされながら不敵にほくそ笑む。
何故ならこうなる事は既に織り込み済みだからだ。
俺達のこの奇襲はあくまで陽動。
本命は・・・。
「ガラ空きィ!!」
後ろからライがティルに向かって手を伸ばして跳びかかる。
だが・・・。
「ふふ!」
「!!」
ティルが振り向きざまに笑うとライの伸ばした手は空を切る。
「だぁからぁ~!」
「くそ!!」
ライは天を仰いで悔しそうに歯軋りする。
ティルが空中に浮かんでいる。
サイコキネシスの浮遊だ。
「おさわり禁止でぇすよぉ~?」
ティルが手を天に翳すと死体がまるで磁石で吸い寄せられるようにティルの頭上に集まって巨大なボール状の形になる。
「来るぞッ!!」
鬼気迫る状況に俺は思わず声を上げる。
「あははぁ☆」
ティルが笑いながら手を振り下ろすと巨大な死体の肉団子は容赦なく落ちて来る。
「くっ!」
俺達は散り散りに逃げる。
すると俺達に向かうはずだった死体の塊は地面に叩きつけられるとまるで巨大な爆弾が爆発したかのように部品になっていた死体が飛び散る。
「当たるな!」
「ハイです!」
ティルが操っている以上ただ飛び散って来るしたいな訳がない。
俺とメロは感覚上昇を使って回避する。
だが・・・。
「くっ・・・!」
先程言ったように死体はティルが操っている物体だ。
やはりというか回避してやり過ごした死体がまるでブーメランのように軌道を変えて俺達を追って来るように飛んで来る。
「くそぉ!!」
「ひえぇッ!!」
俺とメロは上昇を使った足で逃げ回る。
だがいつまでも上昇が持つ訳も無い。
いずれ限界が来る。
だが手がない訳でもなかった。
「業火 杖 放出・・・。」
「!!」
ルタが魔法を詠唱していた。
すぐにそれがナイスな判断だと理解した。
「メロ!! 固まれ!!」
「え!?」
走りながらメロに指示を出す。
「こっちに来るんだ!!」
「な、なんでですか!?」
「いいから!!」
「うぅ・・・!」
メロは訳も分からずヤケ気味に俺の方へ走って来る。
当然メロを追って来る死体共もメロを追って来る。
だがそれがいい。
「よし!!」
メロが近くに来ると俺はメロと背中合わせに剣を構える。
「何が『よし』ですかぁ!! うああぁ!!」
死体達が俺とメロの前後から挟み込むように飛んで来る。
今にも俺達をその数で飲み込もうかとした瞬間・・・。
「爆炎榴弾!!」
ルタが俺達に向かって魔法を撃って来た!
「散れぇッ!!」
「ひえぇッ!!」
俺とメロは感覚上昇を駆使して死体の群れを縫うように躱して移動して散らばる。
集まった死体共は急に曲がり切れないせいで前後からぶつかり合って先程の肉団子のような状態になる。
そこへ先程ルタが撃った炎の砲弾が当たり、死体は全て粉砕された。
「ライは・・・!」
上昇を使えないライにあの死体を躱す事は不可能だ。
心配になって見てみると・・・。
「おい・・・。」
「あれ、もしかして・・・!」
俺とメロは顔を青くする。
ライがいたと思われる場所には先程のより少しサイズが小さめの巨大な死体団子が転がっていた。
まさかあの中にライが・・・!
だが・・・。
(・・・い術は・・・。)
「!!」
死体団子の中からライらしき声が何かを言っていた。
と思っていたら・・・!
(爆発だあああぁぁぁ!!!)
くぐもった叫び声が聞こえたかと思うと死体団子は爆発した。
「ふぅ~さっぱりしたぁ!」
煙を縫うように歩いてライは颯爽と現れる。
また無茶な自爆をしたらしい。
「自爆自爆って・・・お前の身体は無事かもしれないけどな・・・。」
ライの服に目をやる。
こんな事をし続けているから言うまでもないがもうボロボロだった。
「男前だろ?」
「ポジティブ過ぎるのです・・・!」
「何枚あっても足りねぇだろそんな戦い方したら。」
開き直るライにメロと俺はげんなりする。
「そうだな! 服の出費も馬鹿になんねぇよ! それに俺はデザインにも拘るからな!」
「服屋が泣いてるぞ今頃。」
「はっはっは!! バレなきゃいいんだよ!」
「言いやがったよこいつ・・・!」
馬鹿言って笑い返すライに対し、苦笑いで返してやる。
だがちょっと安心した。
先程の自棄を起こして狂ったような顔で戦っていた姿からすっかり元に戻っていたからだ。
「兵隊さぁん♪ 兵隊さぁん♪」
「あ?」
歌声が聞こえるとティルが浮いたままくるくると回りながらまた適当なダンスを踊っていた。
「一列二列ぅ♪ さぁん列ぅ♪ おくにのためにぃ並びましょぉ~♪」
ティルの歌に反応するように死体が地面から浮き上がり、ティルの周りにまるで列を作るように横並びに綺麗な隊列を作る。
「第一射ぁ~は~だぁれの手ぇ~はじまりの合図だぁれの手ぇ~♪」
「・・・?」
相変わらず意味不明な歌を歌っているが・・・。
「!!?」
俺だけが違和感に気づいた。
浮いて並んでいた死体のうちの一体、一番下の列、左から二番目の死体だけが手を前方に翳していた。
本能的に気づく。
『こいつだけが何かを仕掛けて来る』と!
「散れッ!!」
すぐにライ達に警告する。
「うおッ!?」
「なんですかッ!?」
ライ達は訳が分かってないがとりあえずとばかりに適当に跳んで俺達は散らばる。
「バン☆」
ちょっと可愛げにティルが声を上げるとその死体の手がまるで弾丸のように放たれ、俺達が散らばる前にいた場所に落下すると地面になっている死体の一体にその手の大きさの風穴を開けていた。
こんなものが当たっていたら一溜りもなかっただろう。
と言うかさっきより殺意高くなってないか?
「おい・・・なんかさっきより本気じゃないか?」
「触ろうとして怒らせちまったか? 女ってセクハラに敏感だからな。」
「言ってる場合ですかッ!!」
ライが場違いにふざけているとおっかなびっくりで真っ青なメロがツッコミを入れる。
「一人が撃ったら戦争だぁ~♪ みんな~構えて戦争だぁ~♪」
先程手を撃った死体同様、今度はティルの周りの死体全員が手を前に突き出して構えた。
つまりは、そういうことだよな?
「散れッ!! 散れぇッ!!」
ライがそう叫ぶと俺たちは一斉に散らばる。
すると期待通りに手の弾丸の雨が襲いかかってきた。
俺とメロはただひたすら上昇を使って走り続け、弾丸を避け続ける。
ライも上昇が 使えないなりに走りながら回避する。
何発か被弾はしているみたいだが再生能力で問題はなさそうだ。
しばらく弾丸の雨は続くが一向に治る気配はない。
気になってティルを見てみると・・・。
「まじかよ・・・!」
弾丸は手だけじゃなかった。
脚や胴体の一パーツ一パーツ事を弾丸として飛ばしているみたいだ。
体中の全てのパーツを飛ばした後頭だけになると、ようやくその死体は役目を終えたかのようにティルのそばを離れて地面に落ちていく。
どうやら体のパーツをちぎって飛ばすことによって勢いをつけて加速させているようだ。
「リぃロぉード☆」
ティルがふざけ気味にそう言うとまた死体がティルのそばまで飛んでいき、隊列を作る。
「くそ・・・!」
俺たちの足元は死体だらけ。
つまりは弾丸は無限にあるってことだ。
弾切れは期待できない。
「まだまだ行きます一斉射~☆♪」
ティルがまたふざけた歌を歌うと弾丸の雨は再開する。
「くっそぉぉッ!!」
俺たちはまた逃げ回る。
だかただ逃げ回るわけじゃない。
俺は拳弓銃の矢を装填する
ティルの攻撃には明確な弱点がある。
それは死体の弾丸を打ち切った直後だ。
弾丸打ち切った後、ティルはまた死体を用意しないといけない。
その時にスキができる。
そこを突ければ・・・。
「もう一かぁ~い♪」
また死体の弾丸を撃ち切ったティルは自分の周囲に死体の隊列を組む攻撃の準備をする。
その最中に割り込むように俺は矢を放つ。
だが・・・。
「危ないじゃないでぇすかぁ~☆」
無情にも矢はティルの近くで止まっている。
サイコキネシスで止められたみたいだ。
しかしそれは無駄じゃない。
ライが先ほどの缶詰上の光る爆弾をティルに向かって投げていた。
光爆弾はティルの近くでまたどこかに隠れていたサンの弾丸によって撃ち抜かれると、眩しい光を放つ。
「きゃあぁッ!!」
ティルが悲鳴を上げる。
ーーー先ほどライに作戦を伝える時になぜこんな物を使うのか聞いたところ、サイコキネシスは視界外の物体は著しく操作性が悪くなるらしい。
つまり眩しい光によって一瞬でも目を潰されたティルは先ほどのように浮遊ができなくなり、操っていた死体も動かなくなっていたようだ。
---今度もうまくいくかと思ったその時だ。
「なぁんちゃってぇ☆ あははは☆」
ティルはふざけたように笑っていた。
何故なら隊列を組む途中だった死体が割って入って光を遮っていたからだ。
「まだイタズラする悪い子さんがいるんでぇすかぁ~?☆」
怒ったようなセリフを笑いながらティルが吐いていると死体の隊列は完成してしまった。
「ちきしょぉ・・・!」
またあの攻撃が来る!
そう思っていると・・・。
「業火 杖 分解 展開広域 射出。」
「!」
後ろから声が聞こえてそっちを見るとルタが既に魔法の準備しておりその頭上には無数の火の玉が漂っていた。
そして・・・。
「彗星矢一斉射!!」
ルタが魔法を唱え切ると火の玉は一斉にティルに襲いかかった。
「あはは☆」
ティルは笑いながらしたい死体の弾丸で応戦する。
互いの弾丸がぶつかり合い、せめぎ合いになっている。
つまりは今、俺達は無警戒・・・またとない好機だ!!
「メロ!! 魔法だッ!!」
「は、ハイですッ!!」
メロは返事をすると剣を前方に構える。
「氷 剣 放出・・・。」
「まだ飛ばすなよ?」
「ッ!!」
俺が指示を出すとメロは続きに出しそうだった言葉を紡ぐ。
その間に俺は矢を取り出す。
「雷 矢 接続 秒刻 五 解放・・・爆雷の矢。」
魔法を唱えると矢は雷を纏う。
それをすぐに装填する。
そのままティルに向かって構える。
そして・・・。
「撃てぇ!!」
「氷弾!!」
メロに合図すると、すぐにメロは氷の魔法を放った。
「ふふ・・・!」
ティルはすぐにそれに気づき、体のパーツを撃ち切った死体の頭を集めて防御する。
氷の弾丸がその死体の頭等に当たると、頭がみるみるうちに凍っていく。
そこへどさくさ紛れに飛ばした俺の矢が飛んできて凍った死体の頭に刺さる。
すると矢から爆発するように雷が爆散し氷が砕け散ってティルに襲いかかる。
「うああぁッ!!」
ティルが悲鳴を上げて腕で顔を覆う。
氷の破片は一つ一つが小さい物の、何発かティルの身体に突き刺さったり掠って引っ掻いたりなどして僅かながら負傷を与える。
無論、俺とメロはこうやってティルを傷つけることが目的じゃない。
『驚かす事』が目的だ。
何故なら・・・。
「こっちだ!」
「?」
ライが声をかけるとそこには・・・。
「!!」
例の光爆弾が投げ込まれていた。
ティルが一瞬目を見開き、対処しようと体を向けるがもう遅い。
爆弾は隠れていたサンの銃弾に撃ち抜かれ。
眩しい光を放つ。
「ああぁッ!!」
ティルが悲鳴を上げると隊列を組んでいた死体と一緒にティルは落下する。
「ッ!!」
すかさずライが駆け寄る。
そしてそのままティルの肩を掴んで抑え込むと懐からあるものを取り出す。
銀の腕輪だ。
それをティルの腕に嵌める。
「今だ!! ルタッ!!」
ルタに声をかける俺だが腕には本来あるはずの腕輪がはめられていない。
ルタにも腕輪がない。
そう、俺とルタは二人ともライに腕輪を渡していた。
その理由は・・・。
「・・・。」
ライは自身の左腕を顔の高さまで上げ、右手で握りしめながら祈るように目を閉じる。
左腕には既に俺が渡した腕輪が付けられていた。
「感応開始!!」
「感応開始!!」
ルタが声を発するとライは復唱する。
腕輪の効果を発動させるためだ。
そのためには発動に必要な暗号を読み上げなければならない。
作戦をじっくり伝える時間も無かったため、暗号を教えられなかったため、暗号を知っているルタが腕輪を付けたときに伝える算段を着けていた。
暗号の第一声を発するとライの腕輪とティルの腕輪が光り出す。
「これ・・・!」
思わず俺は息を呑んだ。
正直賭けだったからだ。
腕輪の発動条件は『腕輪を付けた双方が家族、または恋人の愛情を向けていること』だからだ。
ライがいくらティルを家族として大事に見ていたとしても錯乱してライを認識していなかったティルにその感情があるか、それが曖昧だったからだ。
腕輪が互いに光りだしたって事は・・・!
「ルタ・・・!」
「うん・・・!」
明らかな手応えを感じて俺とルタは互いに目を合わせる。
「早くしろッ!」
「あ、ああ・・・!」
ライに催促されてすぐに作業を再開する。
「聖なる主に乞い願う!」
「聖なる主に乞い願う・・・!」
「親愛なる君を助けんが為!」
「親愛なる君を助けんが為・・・!」
「よし・・・!」
順調だ、このまま行けば・・・!
そう思った瞬間だった。
「ッ!!?」
視界が急に高くなったかと思って下を見ると自分が空中に浮かんでいる事に気づく。
しかもそれは俺だけじゃない。
「な!?」
「ちょ!!?」
「ほえ!!?」
ライ、ルタ、メロも一緒だった。
だがこの場にいた俺達全員がこの元凶が何者であるかすぐに理解する。
「ふふ、はは、あははははははは☆」
両手を翳したティルがその長い前髪の隙間から見える不気味に見開かれた眼で俺達を見ながら笑っていた。
サイコキネシスで俺達を操っているみたいだ。
「くっ・・・!」
俺はとにかくもがいてなんとかしようとしたが身体が関節はおろか、指一本まともに動かせず、体全体が空中に固定されたように動けなくなっていた。
「うぐ・・・!」
「この・・・!」
ルタ達も同様みたいだ。
「お人形ごっこ楽しかったでぇすよぉ~♪ でぇもざぁんねぇん・・・お人形さんたちはぁ~・・・人間様には勝てませぇん☆」
「くそ・・・!」
今この時、ティルの性格の悪さを理解する。
最初からこうやって俺達にサイコキネシスを使っていたら俺達に勝ち目は無かった。
なのに敢えてそれをしなかったのは遊んでいたからだ。
必死に戦う俺達を嘲笑いながら傍観していたのだ。
俺達そっちのけで一人遊びの様に踊っていたのは、俺達なんて最初から眼中になかったからだったんだ。
「もっと遊びたかったでぇすけどぉ~・・・。」
ティルは翳した両手を自分の目の前に移動させてボールを両手で持つように翳す。
すると・・・。
「ぐぇッ!!」
「うぎゅっ!!」
俺達はまるで引き寄せられるかのように一点に集められて互いに背中合わせでくっつけられる。
先程と同じように脱出しようにも見えない力によって固定されて動けない。
「じかぁん切れぇ~♪ お遊戯しゅうぅ~りょぉ~!!♪」
ティルが手をゆっくり閉じるように互いに引き寄せ始めると・・・。
「ぐああああぁぁぁぁ!!」
「うあああぁぁッ!!」
「ああああああぁッ!!」
「ひぎあああぁぁッ!!」
俺達は一斉に悲鳴を上げる。
空中で見えない壁のようなものに挟まれて四方から押しつぶされそうになっているからだ。
その痛みは恐ろしく、自分のものはおろか、周りの骨がミシミシ言っている感覚も生々しく伝わって来る。
「あはははは☆ 壊れろ・・・壊れろ壊れろッ!! こぉわれぇちゃえぇぇぇぇ!! あははははは☆」
「ぐっ・・・うぅ・・・!」
このままだとヤバイ!!
だが手がない訳じゃなかった。
「我が・・・心・・・!」
ルタがつぶやきながら片目を開いてライを見る。
「・・・!」
ライも声に気づいてルタを見ると意図に気づく。
「我がここ・・・ろ・・・!」
暗号の読み上げを続行する。
「我が・・・身・・・!」
「我・・・が身・・・!」
「早・・・く・・・!」
「マジで・・・死ぬ・・・!」
読み上げの最中、俺とメロはつい弱音を吐いてしまう。
仕方ないんだ!
内臓が潰されてきたせいか、口や目から血が出て来るんだ!
マジで死ぬ数秒前なんだ!
「彼の地へ・・・送り届・・・けん・・・!」
ルタが最後の暗号をライに伝える。
「彼の・・・地へ・・・ゴホッ!!」
「ラ、ライ・・・!」
ライが吐血する。
「しっかり、しろぉ・・・! お前に、かかってんだぁ・・・!」
「・・・。」
ライは『うるせぇ』とばかりに忌々しそうな視線を俺に送ったあとにティルを見る。
「・・・!」
ライに釣られてティルを見ると・・・。
「あははははは!!」
ティルは相変わらず苦しそうな俺達を楽しむように笑っているが・・・。
「はははは・・・あははははは!!」
片目から涙が雫のように一筋流れた。
「はは、は、あははははは!!」
ティルは笑いながら泣いていた。
「ッ・・・!」
すぐにその理由が分かって俺は苛ついて歯を食いしばる。
「助けろよ・・・! お前の『家族』だろうがッ!!」
精一杯の言葉でライを叱咤する。
「ッ・・・!」
俺の言葉を鬱陶しそうに苛ついた感じで歯を食いしばるとライは口を開く。
「送り・・・届けんッ!!!」
ライが最後の暗号を読み上げると・・・。
「ッ!?」
ティルが異変に気付く。
自分に取り付けられた腕輪が先程より強力な光を放ったからだ。
「うっ・・・くっ・・・!」
ティルは慌てて腕輪を外そうとしたがなかなか外れない。
それどころかすぐに光が強くなり、その光が当たりを埋め尽くして何も見えなくなる。
~ディグ 廃棄場~
『うわぁッ!! 死体がッ!!』
『ちょ!! ぬわああぁッ!!』
「みんな! 大丈夫!?」
通信機からウルドさんやメロの声が聞こえたかと思うと何か柔らかい物が当たったかのような音が立て続けに聞こえて二人の声が聞こえなくなる。
「くそっ・・・!」
作戦が上手く行ったのか分からない!
ライ兄達は無事なのか・・・!?
「お、おい・・・!」
機動隊員たちがどよめく。
死体達の動きがおかしいからだ。
どれだけ銃弾を浴びようと痛みも気にしないかのように前に進んでいた死体たちが段々歩く歩幅が少なくなり、足が鈍くなっている。
しかも少しすると完全に止まり、まるで支えを失ったかのようにバタバタと倒れて行った。
「どうやら、上手く行ったみたいだね。」
そう言うとフレッドさんは銃をしまってハンカチを取り出すと額や頬に流していた汗を拭う。
普段涼しい顔してるみたいだけど内心焦っていたみたいだ。
「け、けどみんなは・・・!」
「あの雰囲気なら大丈夫だよ・・・多分。」
「多分って・・・!」
いつものこの人らしくない曖昧な言い方が逆に不安になって来る!
本当に大丈夫なのかなぁ・・・!
~ウルド 廃棄場~
「うぶッ・・・ぶはぁッ!!」
俺は死体の山の中から顔を出す。
「ぷはぁッ!! げほっ、けほッ!! うえっほッ!!」
メロも出て来て顔を出すと、死体の腐敗臭に咽て軽く吐きそうになる。
ざっとさっきの状況を説明するとだ。
ライが腕輪の力の発動を成功させると、ティルが完全に気を失った。
そのせいか、サイコキネシスの力が無くなってティルが周りにドーム状に作っていた死体の肉壁たちが一気に崩れて一斉にどぼどぼ落ちて来てあっという間に俺達は埋められたわけだ。
「だぁッ!! くそぉッ!!」
身をよじって身体を全部死体の山から出すとヤケ気味な声を上げてあるものを引っ張り出す。
それはライだ。
気を失ったのか、自分で出て来る様子はなくぐったりと脱力しているようだった。
「ライ、どうしたのですか・・・?」
「・・・。」
そうだった。
メロは腕輪については知らないんだよな。
あー、なんか説明めんどくせぇ。
いやそれどころじゃない!!
「ティル!! ・・・とルタ!!」
「なんで私はついでなのかなぁ?」
「ッ!!」
なんか地雷を踏んだような悪寒がしたかと思うとその元凶の声の主は死体をかき分けて頭を出して来る。
「へ、変なタイミングで聞いてんじゃねぇ!!」
「開き直っちゃう!? まずは言うべきことあるんじゃないかなぁ!?」
「悪かったっつの!! それよりティルは・・・!」
俺達が埋まる時、少し離れた所で埋まっていたはずだ。
いくら気絶しているとはいえ、すぐに掘り出さないと最悪命が危ない!
「ああ、だいじょう・・・ぶっ!!」
「え?」
ルタが死体の山から出て来ると同時に何かを引っ張り出したかと思うとその手にはティルが掴まっていた。
「お前、よく見つけたな・・・!」
「死体の山に紛れ込んで襲って来る刺客とかに襲われたこともあるからね。死体の中から生きてる人間の魔力嗅ぎ分けるのも得意だよ!」
「そーっすか・・・。」
改めてルタがどんな世界で生きて来た奴か再認識する。
「・・・にしても。」
俺は気を失っているライとティルに目をやる。
「これ・・・大丈夫か?」
二人は魂が抜けきった人形のように動かない。
「ティル・・・! 師匠! 二人はどうなったのですか!?」
メロは心配そうにティルと俺を交互に見てあたふたする。
「だぁもう! 待ってろって! 二人とも元に戻るから! ・・・多分。」
「『多分』じゃ不安なのですッ!!」
「だぁからッ!! 今俺らには何もしてやれねぇっての!! ・・・だよな? ルタ。」
恐らく事実であろうことをメロに強く言うが正直自身が無いのでルタに確認する感じで視線を送りながら声をかける。
「うん・・・私達に出来ることは此処まで・・・。」
そう言いながらルタは二人の元へ歩み寄るとしゃがんでライの米噛みに手をそっと乗せる。
「あとは・・・ライ次第。」




