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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
90/101

#90 セイブオアキル


~ウルド 廃棄場~


「おいッ!! 自分が何言ってんのか分かってんのか!?」

「分からねぇッ!!」

「はぁッ!!?」

 ライは意味不明な事を言いながらティルに跳びかかる。

「あはははぁッ!! 殺し合い(ダンスごっこ)なんてさっきレッサさんとやったばっかりなのにぃ!」

 そう言いながらティルは手を翳して死体をけしかける。

 今度は不死族(アンデッド)のような動きはさせず、死体はまるで操り人形のようにライに襲い掛かる。

「ハハァッ!!」

 またライは狂気に満ちた笑みで死体の一体の首を掴むと手榴弾を口に突っ込む。

 そしてすかさずその手榴弾に銃口を突きつける。

「バァイ☆」

 そう言って容赦なく引き金を引くと手榴弾は爆風を死体たち共々ライを巻き込む。

 無論、ライは無傷だ。

「あははぁ! 壊れない人形!! 最高ですねぇぇ!! レッサさんが見たら喜びそうでぇすよぉぉ?」

 ティルは尚も楽しそうに手を翳してライに死体をけしかける。

「ハハハァ!!!」

 ライはまた笑いながら銃を死体たちにぶっ放しながら走り回る。

「ティルゥ!!」

 メロが声をかける。

「ん~?」

 ティルはまた不気味な動きで首だけメロの方を向く。

「どうしちゃったのですか!!?」

「あらぁぁ、可愛らしいお人形さんですねぇぇ?」

「な、何を言ってるのですか!?」

「でも服があまり可愛らしくないですねぇぇ? 舞踏会にはドレスって相場が決まってるでしょぉぉ?」

「ッ!?」

 ティルは手を翳すと今度はメロに向かって死体をけしかけてきた。

「くっ!!」

 メロはすぐに死体に向かって剣で斬りつけるが死体はティルがサイコキネシスで操っているだけの物体だ。

 怯むわけもなくメロの剣を持った腕を掴む。

 今にも首筋を噛まれそうになったその時だ。

「はぶッ!?」

 何故かメロは吹き飛ぶ。

 ライが蹴飛ばしたからだ。

「舞踏会? そりゃ違うぜ?」

 そう言って手榴弾を取り出してそれに銃を突きつける。



「これは『サーカス』。現在の演目は『自爆ショー』だ。」



 いつもの軽口を言いながら死体共に組み着かれながら手榴弾を銃で撃ち抜いて自爆する。

 死体達が吹き飛ばされる中、ライは煙の中からゆっくりと歩いて現れる。

「舞踏ぉ会の横でサぁーカスでぇすかあぁ? 面白い催しでぇすけどぉ、無粋でぇすよおぉ? あははははぁ!!」

 そう言うとティルは思わぬ行動に出る。



「るぅ~らぁ~~ららぁ~あ~~ららぁ~~♪」



 歌いながら急に両手を広げてくるくる回って踊り出す。

 その歌はまるで酔っぱらいが歌うような、曲調もいい加減な、喜劇的な響きも悲壮感もない明らか即興な適当もいいとこな歌だ。

「ティル・・・本当にどうしちゃったのですか・・・?」

 メロはわなわなと震える。

 当然だな。

 仲の良かった親友があんなに狂って乱れた姿を見れば誰だってそうなる。

「分かっただろ?」

 ライが銃弾を装填しながらメロの横に立つ。

「あいつはもう、お前や俺が知ってるティルじゃねぇんだよ。」

「ライ・・・ティルは・・・!」

 メロはライの服の裾を掴む。

「ティルはどうやったら治るのですか!?」

「おいおい、俺さっき答え言った筈なんだけど?」

「答え? 何を言ったのですか!? 知らないのです!!」

 メロはライにせがむように叫ぶ。

 だがライの口から出た言葉は・・・。



「あいつはもう治らねぇんだよッ!!」



「・・・ッ!!」

 あまりに残酷な言葉にメロは目を見開いて絶句する。

 さらに恐ろしい現実が叩きつけられる。



『ライ兄の言っている事は本当です。』



「ッ!?」

 通信機からディグの声がする。

「どう言うことだディグッ!!」

 通信機に手を添えて俺は叫ぶようにディグに問いただす。

『ティル姉の物体を自在に操るサイコキネシス。あれは脳の負担において主に精神面に負担がかかるものなんです。無理に使うのは勿論、強い精神的なダメージを受けると脳波が不安定になって精神が壊れるんです。今のティル姉は・・・言いたくないですけど、精神の壊れた『廃人』です。』

 ディグは淡々と説明するが、段々辛くなってきたのか、最後の辺りは言葉が弱弱しかった。

「ッははははははぁッ!!」

 突然ライが笑い出す。

「ひひぃ!」

 一頻り笑うとライは全開のガンギマリの目で首だけ俺に向けて真っ直ぐに俺を見る。

「そゆことだぁ!! だから・・・だからさぁ・・・!!」

 そう言ってライは走り出す。



「あぁれは俺の獲物だぁぁぁぁぁぁッ!!!」



「あ~ららぁ~らぁ~♪」

 ティルはライの事などお構いなしにでたらめな振り付けで舞踏会でもやってるつもりの優雅ぶった適当な踊りを踊ってくるくる回っている。

 しかし踊っている死体がまるで踊るかのような動きでライの前に立ちはだかる。

「ひひひはは!!」

 ライは死体に向かって銃を乱射する。

 だが死体はお構いなしに前に出て来て・・・。

「ぶがぁッ!!」

 舞踏会のダンスの要領でつないだ手でライを殴り、片方が身体を後ろ向きに逸らすともう片方がその腹に手を乗せ、逆立ちしたかと思うとそのままライの方へ倒れ込み、脚を振り下ろす。

「ぎひぁッ!!」

 ライは何故か避けようともせず脳天にそれを受ける。

 死体の攻撃はそれだけで終わらない。

 二体の死体はその蹴り下ろした体勢から互いに向き合って抱き合うように体をくっつけながらお互いの腰に手を回すとそのまま脚を水平にしたまま回転してライに蹴りを食らわせ、身体を放したり、くっつけたりを繰り返しながら優雅に踊り、華麗に回転に乗せた蹴りのラッシュをライに食らわせ続ける。

「っはははぁ!!」

 それをライは笑いながら敢えて受け続ける。

 その姿はまさに狂人のそれだった。

 だが何発喰らったか分からくなって来たぐらいに蹴りを受けた瞬間だった。


「・・・捕まえたぁ!」


 ライは死体の脚を左手で掴んでいた。

 そして右手には手榴弾が握られている。

 爆破する気だ!!

 だが・・・。

「ッ!?」

 ライは突如別方向から何かに殴り飛ばされるように吹き飛ばされる。

 犯人は別の死体の二人組だ。

 同じように片手を繋いで相手の腰に手を添えた舞踏会のダンスのような態勢で脚を振り上げていた。

「あはは!!」

 ティルはぐりんと首だけライに向けて笑い出す。

「だぁめでぇすよぉ? 踊り子にお手を振れるのはご遠慮くださぁい!」

「ははぁッ!! てめ見えてんじゃねぇかバァカ!! はははッ!!」

「舞踏会のマナーでぇすよぉ?」

 マナーの悪い客に対する怒りかは定かではないが、ティルの意思に呼応するかのように死体の二人組(ペア)達は踊るようにさり気なくライを囲んで包囲した。

「マナー違反にはペナァルティィィ!!」

「ぐがぁッ!!」

 死体たちは一斉に襲い掛かってきて踊るように回転しながら四方八方、縦横無尽にあらゆる方向からライを蹴り続ける。

「がぁッ!! ぐがぁッ!!」

 ライは良いように蹴りつけられ、よろけ、転げてもそれでも容赦なく蹴り続けられている。

 死体たちは尚も舞踏会の様に優雅に踊っているが、この光景は誰がどう見てもリンチだ。

「あー、でもぉ・・・。」

 ティルはそんなライを尻目に悩まし気に顎に人差し指を当てて天を仰ぐ。

「これって舞踏会のマナーでしたっけぇ? まぁいいやぁ♪」

 そう言ってっくるくると回り出す。

「ねぇ~くろまんさぁ~♪ ねくろまぁんさぁ~♪ わぁたしぃはねぇくろまんさぁ~♪」

 意味不明な歌を歌って両手を広げて適当に踊りだす。

「ねぇくろまんさぁ~かぁらはにげらぁれなぁい♪ たぁおせぇないぃ~♪ ご~しめ~いさ~れればご~しょおたいぃ~♪ ぶと~ぉかぁいのすてぇきなげぇすとさまぁ~♪」

「ぐぅっ!! がぁッ!!」

 愉快そうにくるくる回るティルの傍らでライは尚も死体たちに蹴られている。

 だが・・・。



「ふぅぅぅざぁけぇんなああああああぁぁぁッ!!!」



 ライが突然叫ぶと死体の一組が何かをぶつけられたかのようにのけぞると爆発する。

「ッハハァ!」

 狂ったように笑うライの手に握られた拳銃の銃口から煙が上がっている。

「な、なんでだ・・・?」

 銃弾じゃあの死体には負傷(ダメージ)を負わせるどころか怯ませることすら不可能のはずだ!

「ヘヘェ・・・!」

 ライが銃弾を一つ取り出すと指で弾いて宙を舞わせ、六発銃(リボルバー)を振りながら弾倉(シリンダー)を開けてその穴に落とすように弾を込めると弾倉(シリンダー)を閉じる。

「あはぁ☆」

 ティルが手を翳すと死体の二人組(ペア)が一組ライに襲い掛かる。

「ッハァ!!☆」

 ライが楽しそうに死体に銃弾を放つと命中したと思われる死体の一体が爆ぜる。

「ひひひ!!」

 ライはその隙に銃をくるくると回しながら背中に移動させて左手を添えて放り投げると回している内に操作したのか弾倉(シリンダー)が空いていた。

「ハハァッ!!」

 その状態で落ちて来る銃に向かって腰の高さの落下地点に丸い留め金に固定された六発の銃弾を添えると銃の弾倉(シリンダー)の部分が上手く落ちて銃弾が装填される。

「イィッツ・・・。」

 もう一丁の銃も左右逆の手で同じようなパフォーマンスで綺麗に銃弾を装填する。

「ショォウタァイム・・・!」

 銃を持った両手をバツ字に交差させて前かがみの状態でライはガンギマリな台詞を吐く。

「なにがぁ?☆」

 水を差すようにティルは四方八方死体を消しかける。

 だが・・・。



「イィィィィハアアアァァァッ!!」



 ライは腕を交差(クロス)させたまま銃弾を連射させながら腕を徐々に広げて思いっきり後ろに上半身を仰け反る。

 あまりにふざけた撃ち方だが射撃は正確で、全方位から襲い掛かった死体たちは銃弾の謎の爆発によって肉片を飛び散らせた。

「ヤァベ・・・超気持ちいい・・・!」

 汗ばみながらも恍惚の表情を浮かべながらライはイカれた台詞を吐く。

『炸裂弾。』

「!」

 突如ルタから腕輪の念話が聞こえて来る。

『なんだそれ・・・!』

『着弾すると爆ぜて弾頭の爆薬や破片が飛び散るように設計された銃弾。普通の弾丸よりも殺傷力の高い銃弾だよ。』

『なんだよ、銃ってそんな芸当も出来んのかよ・・・!』

 狙撃用に長く設計された銃、連射できるように機械ギミックで改良された銃など、銃その物の改造は見たことあるが銃弾に改造が加えられたものなんて知らなかった。

「なぁ、おい! ティルよぉ!!」

「なぁんでぇすかぁ~?」

 ライが仰け反った状態から戻ったかと思ったら前屈みになって問いただすと珍しくティルが聞き返す。

「言うに事欠いててめぇが死霊使い(ネクロマンサー)? 寝言は寝て言えや!!」

「あぁ~れぇ~? なんでそんなに怒ってるんでぇすかぁ~?」

 ティルはすっとぼけたような顔で顔を傾けながら挑発気味にライを見る。

死霊使い(ネクロマンサー)はぁ、俺だぁ!!」

 ライは顔を上げると舌を出しながら目をガン開きにして銃を持ったままの両手の親指を自分の首元に当てる。

「何言ってるんでぇすか~? 私でぇすよ? 死霊使い(ネクロマンサー)はぁ~! ほらぁ!」

 ティルが手を翳すと地面の様に敷き詰められた死体のうちの数体が起き上がってまた二人組(ペア)を作る。

「こうやって死体を操って~!」

 ティルが死体を消しかけるとまた死体が踊るようにライに襲い掛かり、ライを殴り、蹴るなどして痛めつける。

「自分の手足のように使役してるぅ!! どっからどう見ても死霊使い(ネクロマンサー)でしょおおぉ!! あははははは!!!」

「・・・。」

 ティルに操られている死体に痛めつけられながらもライは何故かよろけも倒れもせず直立不動のまま攻撃を受け続けている

 だが・・・。

「はぁぁぁぁ・・・。」

 ライはわざと呆れてますとアピールするかのような大袈裟なため息を吐く。

「分かっちゃいねぇ・・・お前マジ分かっちゃいねぇわ。」

 そう言いながら左手に持った銃を半回転させて銃口を持つとそのまま銃を宙に放り投げる。

「死霊使い(ネクロマンサー)が操るのは死体じゃねえ。」

 そう言うとその言葉に反応するかのように銃が消える。



「亡霊だ。」



 言葉に反応するかのように銃声が鳴り響いて死体たちが撃たれて爆ぜて飛び散る。

「あははぁ☆」

 ティルはまた地面の死体を操り、今度はなりふり構わず操って宙を舞った死体たちがライに組み付いて至る所に噛みつく。

「そして冥府の神と契約した その体はぁ・・・!」

 そう言って取り出したのは手榴弾だ。

 しかもピンを抜かずまた銃で撃ち抜いた。

 瞬時に轟音と共に爆発が起こり、ライの周囲一帯が轟音と共に爆炎を巻き起こす。

「例え爆弾でぶっ壊しても死にはしねえ。」

 そう言いながら颯爽と爆発後の煙を歩いて現れる。

「だぁかぁらぁ・・・。」

 そう言うとまた気味の悪い笑みを浮かべる。



「おぉれが死霊使い(ネクロマンサー)だぁぁぁぁぁぁッ!!!!」



 ライは狂ったような笑みでまたティルに襲い掛かる。

「いやんケダモノぉ~☆」

 ふざけた台詞を吐いてティルはまた死体を消しかける。

「これでも喰ってろやぁ!!」

 そう言ってライは三つの手榴弾を死体に投げつける。

 手榴弾は死体に当たる寸前に何かに撃ち抜かれて爆発する。

 恐らく撃ったのはサンだろう。

「ハハハハハ!!」

 死体を突破するとライは間髪入れずに突撃してティルに向かって銃を連射する。

 だがティルの姿が消える。

 いや・・・。

「あははぁ☆」

 ティルは空中に浮かんでいた。

 恐らくはサイコキネシスで自分を操って飛んでいるんだろう。

「いいダンスですねぇ~☆」

「ッ!?」

 そう言って手を翳すと今度はライのすぐ下の死体が六体、ライの脚を掴み、そのまま這い上がるようにしてライを羽交い絞めにして噛みつく。

「へっ・・・。」

 ライは不敵に笑って何かを腰から取り出す。

 また手榴弾でも使って自爆するのかと思ったらそうじゃない。

 手榴弾とは違う銀色の小さい筒状の何かだ。

 それを羽交い絞めにされながらもティルに向かって思いっきり投げる。

「また爆弾でぇすかぁ~?☆」

 そう言ってティルは手を翳す。

 サイコキネシスで操って弾き飛ばすつもりだ。

 だが・・・。

「!?」

 小さな筒はすぐに銃弾で撃ち抜かれる。

 サンが撃ったのだろう。

 また手榴弾のように爆発するのかと思ったが予想外の事が起こった。

 破裂はしたが爆発はせず、まぶしい光を放った。

「ああぁッ!!」

 ティルは悲鳴を上げて両腕で顔を覆って怯む。

 当然だ。

 あの途轍もない光を間近で見てしまったのだ。

 瞬間的な物だが目が眩んだんだろう。

 そんな事を考え切る前に更に予想外の事が起きる。

 先程の光で怯んだせいなのか、ティルは何故か空中から死体の地面に背中から落ちる。

 しかもライを羽交い絞めにしていた死体たちは糸が切れた操り人形のように力なく地面に落ちる。

 すかさずライはティルに跳びかかり、馬乗りになると銃をティルの米噛みに突きつける。

「チェェック・・・!」

 そう言ってライは引き金(トリガー)を今にも引こうとするが・・・。

「ッ!!?」

 ライは横殴りに吹き飛ぶ。

 俺が後ろから顔を殴ったからだ。

 しかも上昇(ライズ)を使って思いっきりだ。

「あは☆」

「ッ!!」

 その隙にティルは先ほどの眩暈(スタン)から復帰したのか、手を俺に翳す。

「ぶがぁッ!!」

 殴られたわけでもないのに思いっきり衝撃を喰らって俺は吹き飛ばされる。

 恐らくはサイコキネシスを使った衝撃波だろう。

「飛び入り参加でぇすかぁ~?☆ でもマナーは守って貰わないとぉ~。」

 ティルは俺に向かって手を翳す。

 明らかに戦闘態勢だ。

 だが・・・。

「・・・。」

「・・・? あれぇ?」

 俺は立ち上がり、ティルの言葉を無視してあらぬ方向へ歩き出す。

 向かう先はライだ。

「ッ!」

 俺は思いっきり右手を突き出すとまだ起き上がる前のライの胸倉を掴んで引き寄せる。

「へへへ、なんだよ。お前も混ざりたかったのかぁ?☆」

 ライは相変わらずのガンギマリな眼で俺に向かって問いを投げかける。

 明らかに挑発的な言い方だ。

「・・・おまえ今なにしようとした?」

「あぁ?」

「なにしようとしたって言ってんだッ!!!」

 ライを更に引き寄せて眼を零距離まで近づけてメンチを切る。

「へ。」

 俺の怒号に一切動じず、ライは不敵に笑う。

「決まってんだろぉ? 仲間を・・・家族をぶっ殺そおとしたんだよぉ!!」

「ふッざけんなッ!!!」

 ライを思いっきり殴る。

「『家族』だぞ!!? なんでそれを平気で殺せるッ!!!! ふざけるなッ!!!」

「あー・・・そういう感じ? はは・・・ははは!!」

 ライは何故か笑い出す。

「何がおかしいッ!! ッ!!?」

 ライが突然俺の顔を鷲掴みにしてくると力任せに死体の地面に叩きつけて来た。

「お前こそわかっちゃいねぇ、輝ける人類(グロリアス)がどんなものなのか・・・。」

「何!?」

輝ける人類(グロリアス)はな、普通の人間が使わない脳の機能を酷使する事から定期的に能力ごとに決まった投薬を受けなきゃいけないんだよ。」

 ライは笑ったまま淡々と説明し始める。

「で、脱走した俺たちはそれが受けられなかった。それがどういうことか・・・分かりますかぁウルドくん!?」

「・・・!??」

 何を言ってるんだ?

 ライは・・・!

「沈黙は『分かりません!』ってことでぇ、話し続けるぞぉ? 脳の酷使で暴走した脳の機能はなぁ、能力者を色んな症状で長く苦しめた後に殺すんだぁ。家族がそんな目にあって苦しんでる姿をただ指咥えて見てると思ってんのかぁ?」

「・・・!!」

 ライの言いたいことが想像できて血の気が引く。

「まさかお前・・・!!」

「そうだぁ!! みんな殺した!! 俺が全部介錯してやった!! お前は知らないだろうけどもっといたんだよ!! 一緒に脱走した家族!! けど俺が全員殺してやった!! はははははは!!!」

「・・・!」

 狂ったように笑うライを見て恐ろしくなった。

 けどそれと同時に怒りがあった。

 どうしてそんな事が平気で出来るのかと・・・。

 理由があればやっていいのか?

 俺にはとても理解できない!

「俺とティルが生きてんのはなぁ、抵抗組織(レジスタンス)に保護された後に当時輝ける人類(グロリアス)の研究チームの一員だったディグになんとか接触して投薬を受けられるようになって助かった。その時も間に合いそうな奴いたんだけどさ・・・コンマ数秒の差で助けられなかった・・・はは、そいつも殺した! ははは!」

「・・・。」

 今の話を聞いて少しライに対する怒りが薄れた。

 そうだ。

 何も好きで殺した訳じゃない。

 助けられるなら助けたかったんだな。

「けぇどぉ!!」

 ライは俺を地面に押さえつけたまま仰け反るように天を仰ぐ。

「ティルがああなったらもうどうにもなんねぇぇぇ!!! だから俺がやるんだよぉぉ!! ははははは!!」

「・・・。」

「何も言えない? だったら邪魔すんなぁ、加勢する気がないんなら指くわえておとなしく見てな! 俺がティルを殺すところをなぁ!!」

 そう言ってライは立ち上がり、ティルの方を見るが・・・。

「はは。」

「あ?」

 ライは俺に視線を戻す。

「ははは、はははははは!!」

「あ? 何がおかしいんだ?」

 急に笑い出す俺を訝しげにライは見る。



「お前にできるわけがなぁいッ!!」



 先程の狂ったライやティルのような口調で馬鹿にしたように言ってやる。

「何言ってんだてめぇ。話し聞いてまぁしたぁ!? 俺今まで他の家族全員殺してんだよ!! 実績があるの!! 躊躇うとでも思ってんのぉ!? 躊躇うわけねぇぇじゃぁぁん!!? ははははははは!!!」

「はははは!! そうかそうかぁ今までだってやってたんだよなあ!! はははははは!!」

「そうだよ!! 今度だってやってやんよぉ!! はははははは!!」

「じゃあ一つ聞いていいか?」

「あ? んだよ。」

 起き上がりながらの俺の問いにライは笑うのをやめて俺を睨む。



「他の家族殺すときもそうやって狂って馬鹿みたいな声出してたのか?」



「あ? くくく・・・。」

 俺の問いにライはまた腹を抱えだす。

「何言ってんだよ急に・・・はははははッ!!」

「馬鹿が。」

「ぶッ!?」

 俺は即座に立ち上がってライを殴り飛ばす。

 そしてすぐに駆け寄ってライの胸倉を掴む。

「シラフで出来ねぇからそうやって()()()()()してんだろうがッ!!」

 ライを掴んでいない方の左手で拳を固めて殴る。

「ディグに薬作ってもらえるようになってッ!! 殺さないで一緒に居られるようになった家族なのにッ!! それを殺そうとしてるッ!! そんな自分に耐えられなくなったんだろうがッ!!」

 何発も連続で殴りながらライを罵倒する。

「カッコつけてねえで言えよッ!! 本当は殺したくないんだろうッ!!? 助けたいんだろッ!!?」

 一頻り罵声を浴びせて両手で胸倉を掴む。

「どうなんだクソ兄貴ッ!!」

「へ。」

「? がはッ!?」

 ライの不敵な笑みに油断している隙に右手で思いっきり殴り飛ばされる。

 すると今度はライが駆け寄って俺の胸倉を掴んで引き上げる。

「お前に何が分かるッ!!!」

 またライは俺を殴って来た。

「たった一人残った家族なんだぞッ!! そりゃ助けてぇに決まってるだろッ!!! でもどうすりゃいいんだよッ!!!」

 俺と同じように何発も罵声を浴びせて殴って来た。

 その声はいつもの人を食ったような余裕を持ったこの男らしからぬ悲痛な声だった。

「もうあいつ戻れないところまで来てんだよッ!!! なんでもかんでも綺麗事で片付けられると思ったら大間違いなんだよッ!!!」

「・・・!」

 殴られながらライの表情を見て一瞬自分の目を疑った。

「俺がやるしかねぇんだ・・・!! 俺がやるしかねぇんだよぉッ!!」

 ライは歯を食いしばりながら泣いていた。

 その涙の量は尋常じゃない。

 滝のように流れており、その表情はいつもの不敵さなど微塵も感じない程弱弱しい人間染みた顔だった。

「だから・・・外野はすっこんでろッ!!!」

 そう言って問答無用で拳を振りかぶり、その拳を容赦なく俺に振り下ろす。

 だが・・・。

「!?」

 俺はライの拳を左手で掴んで止める。

「ざけんな・・・ふざけんなぁッ!!!」

 立ち上がってライと同じように胸倉を掴んで殴る。

「俺がそんなこと許すわけねえだろッ!! 俺だっていたんだッ!! 慣れない貧乏生活の中でも必死に育ててくれた父さんと母さんがッ!!」

 目に涙を浮かべ、先程と同じように罵声を浴びせながら何発も殴る。

「何年もずっと一緒に旅してッ!!  家族同然だった仲間だっていたッ!! そいつらが死んでッ!! ずっとずっとつらかったんだッ!! 俺の目の前でッ!!! 『家族』を殺すんじゃねえッ!!!」

「そんなのてめえの都合だろうがッ!!」

 ライも殴られながら言い返して俺の顔を殴り返して来る。

「人様の家族事情にッ!! 口出しすんじゃねえッ!!」

「うるせえッ!! 泣き言言ってッ!! 目の前の手段に縋ってッ!! それで早めに物事片付けてしたり顔かッ!!? 情けねえと思わねえのかッ!!」

「じゃあどうすんだよッ!! お前あいつ助けられるのかッ!!?」

「・・・!」

 言葉が詰まった俺の目の前に拳が迫り、俺はあっさり殴り飛ばされて無様に転ぶ。

「ほら見ろ、何も言えねぇんじゃねぇか。」

「・・・く。」

 殴られて切れて出た口元の血を拭いながら起き上がるがライの言葉に何も言えない。

「考えなしにモノ言ってんじゃねぇよ。正義感振り回すだけのガキはすっこんでろ。」

 そう言ってライはティルへ歩を進める。

「・・・。」

 俺は起き上がった身体を立ち上がらせることが出来なかった。

 奴にかける言葉も、出す拳も見つからなかった。

「よぉ、待たせたな。ティル。」

 ライは涙を拭って銃を取り出し、弾を込める。

「青春ドラマの撮影は終わりまぁしたか~?」

「なるほどな、それでさっき殴り合ってた時に手ぇ出さなかったわけか。」

 ライが何を納得しているかは分からないがどうやらティルは俺達が殴り合っているのを何かの茶番と勘違いして手を出して来なかったみたいだ。

 確かにさっきの殴り合いのうちに横やりで手を出してきてもおかしくない状況だったから、そんな事情が無ければ不思議な行動だろう。

「遊ぶ前にひとついいでぇすかぁ~?」

「あ? なんだよ。」

 ティルが何かライに質問を投げかける。



「あなたぁ・・・どこかで会いましたぁ~?」



「・・・!」

 ティルの質問にライは顔を伏せる。

 恐らくライは質問の言葉に相当こたえているんだろう。

 無理もない。

 ティルはもはやライを認識出来ないほどまでにイカれてしまっている。

 そのティルの姿はまるで死ぬ寸前にボケてしまった老人の様にも思えた。

「どうしたんでぇすかぁ~?」

「さぁな!」

 ライは笑って顔を上げて応える。

 だがその顔は明らかに無理のある笑みだった。

「他人の空似だろ! 気にすんな!」

「そうですかぁ! ごめんなさぁい!☆」

「ごちゃごちゃ考えんのだりぃだろ! お互い!」

「そうですねぇ!☆」

「んじゃ・・・。」

 そう言ってライは銃を前方に向ける。



「やるかッ!!」

「ええ!! 楽しみましょぉ!!」



 その言葉を合図にお互いに動き出す。

 ライは先ほどの様に特攻の勢いで突撃する。

 ティルも周りで踊っていた死体をライに消しかける。

 だが・・・。



「「!!」」



 二人は互いに目を見開く。

 その目の前には・・・。

「メロッ!!」

 メロがライに向かって両手を広げて仁王立ちしていた。

「くっ!」

 ライは前方に向けていた銃の銃口を引っ込めて攻撃を躊躇する。

 だが・・・。

「あはぁ☆」

 ティルは攻撃をやめない。

 当然だ。

 今のティルにとってメロはライと同様、『知らない敵』なんだ!

「くっ!」

 ライはメロと身体を入れ替え、メロを抱きしめるようにして死体たちに背を向ける。

「ぐっ! くぅ・・・!」

 死体たちはライに向かって容赦なく打撃を与え、数体が組み付いてライの背中に噛みつく。

「ライッ!!」

 メロが声を上げる。

「あははぁ☆ カッコいいお兄さんでぇすねぇ☆」

 ライの様子を面白そうにティルは反応しながら尚も死体による攻撃を続ける。

 だが・・・。

(フラム) (カーン) 放出(ホレッシ)・・・。」

「ッ!!」

 ルタが魔法を詠唱する声にティルは気づいてそっちを見る。

炎球(フレイムボール)!!」

「あははは☆」

 ルタが炎の魔法を放つとティルは手を翳す。

 するとすぐさま死体が地面から起き上がって炎の前に立ちはだかり、炎にぶつかると粉砕される。

 傍から見れば無意味に終わったみたいに見えるがそうじゃない。

 ティルが意識をルタに持って行ったせいか、ライを攻撃していた死体は倒れて元の動かない死体になっていた。

「ッ!!」

 その隙にライはメロを抱きかかえたまま距離を取る。

「ん~。」

 ティルはルタとライを交互に見る。

「んふっ♪」

 ティルは鼻で含み笑いをすると両手をそれぞれライとルタに向けて臨戦態勢を取る。

「くっ・・・!」

 俺はルタの傍で剣を構える。

 ライ側はそれぞれ自衛出来るから良いが魔法役のルタは自衛手段が乏しいからだ。

 それぞれでティルに対して応戦しようと思ったその時だ。

「ッ!!」

 ライはメロを思いっきり引っ叩いた。

「馬鹿がッ!! 死にてぇのかッ!!」

 メロの胸倉を掴んでライは罵声を浴びせる。

「だって・・・だって・・・!」

 メロは罵声を浴びせられる恐怖に押されながらも言葉を必死に押し出している。

「さっきの話聞いてなかったのか!!? ティルはもう手遅れなんだよッ!! 殺すしかねぇんだよッ!!」

「それでも・・・それでも・・・。」

 メロはライの胸倉を弱弱しく掴み返す。



「ティルが・・・ディルが()ぬの嫌・・・嫌なのでずぅ・・・!!」



 大粒の涙を流し続け、鼻水を垂らしながらみっともなくメロは泣いていた。

「っ・・・!」

 ライはその言葉に怯む。

 メロの・・・子供の言葉に心が揺らいだんだろう。

 だがそれで状況が好転するわけじゃない。

「くそッ・・・!」

 俺も悔しくて仕方がない。

 どうしようもない状況が歯がゆくなってくる。

『おいルタッ!! なんとかなんねぇのか!!?』

「・・・。」

 念話でルタに話しかけるがルタは何も答えない。

『腕輪の力でなんとかならねぇのか!?』

『無理。』

『なんでだよッ!!』

『この腕輪はあくまで私がお兄ちゃんを守るための手段。腕輪を付けた家族や恋人同士の間でなら様々な恩恵がある。けど腕輪を付けてない、ましてや赤の他人にまでは干渉する手段はない。』

「くっ・・・!」

 考えろ。

 何かある。

 何かあるはずなんだ!!

 ティルを助ける方法が・・・!

 俺は思考を回転させる。


ーーー説得をしようにも親友だったメロの声ですら届かなかった、不可能。だとしたら精神に直接干渉出来る何かがあれば、いや、さっきルタが言ったように他人には干渉できない、不可能。だったら物理的に気絶させるか、いや、可能性が曖昧だ、そもそもティルの能力は手加減して勝てる相手じゃない、不可能。

「くっ・・・!」

ーーー不可能。

ーーー不可能。

ーーー不可能。

「不可能じゃねぇッ!!」

 必死に自身の思考をフル回転させる。

 何かあるんだ!!

 考えろ・・・。

 考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ!!



 考えろ!!


ーーーの間でなら様々な恩恵がある。けど腕輪を付けてーーー

「・・・!」

 会話の記憶が蘇って来る。



ーーー腕輪を付けた家族や恋人同士の間でなら様々な恩恵がある。けど腕輪を付けてない、ましてや赤の他人にまではーーー



 先程のルタの言葉だ。

「ライッ!!」

「あ!? なんだよッ!!」

 ライは苛立っているのか、荒々しく返事を返して来る。



「あるかもしれない・・・ティルを助ける方法が・・・!」




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