#89 突破
~ウルド 廃棄場~
「おい!! どうなってる!!」
「遅いよライ兄!!」
ディグ達の元へ着くなりライはすぐに状況を知りたかったのだろう、開口一番にディグに問いただす。
だがすぐに状況を理解する事になる。
「近づけるな!! 弾幕張り続けろ!!」
機動隊の奴らが必死に弾幕を張り続けている。
その目の前には俺達が地面にして踏んでいた死体たちだ。
立ち上がってまるで不死族の様に迫ってきている。
「はは・・・今まで踏んづけてて怒ったのかな?」
「はっ、だったらもっと早くアクション起こしてるだろうが。」
ルタが場違いに軽口を叩きつつ苦笑いで杖を構えると、俺もそれを皮肉で返して剣を抜いて即座に走る。
「炎 杖 放出・・・炎球!」
ルタが魔法を唱えて炎を放つと俺の顔の横をすり抜けて死体の一つに当たる。
「オラッ!!」
すかさずそこへ俺が剣で斬りつける。
だが・・・。
「接近戦は駄目だッ!!」
「え?」
ディグの警告が聞こえた時、すでに事が起こっていた。
「な!?」
剣撃を受けた死体は怯むどころか剣を持った俺の腕を掴んでいた。
そして今にも噛みつこうと口を開けている。
「え、ちょ!!」
首筋にその歯が迫った時だ。
「!?」
首筋に痛みが走らない。
だがその原因はすぐに理解できた。
「てめぇら何俺のアイデンティティ奪ってくれてんだ?」
ライが腕を噛ませて俺を庇っていた。
「ライ!!」
「ぼへっとすんな!!」
「わ、分かってるっつの!!」
すぐさま死体を蹴り飛ばす。
上昇で強化した蹴りだったので流石に軽く吹き飛ぶ。
だが・・・。
「・・・はあ!?」
突如あり得ない光景が俺の目に映る。
なんと蹴り飛ばされた死体は重力でもないかのようにふわっと宙に浮かんだかと思うとそのまま、まるで何かにそっと地面に降ろされたかのようにゆっくりと着地する。
「なんですかあの動き!!」
俺に続いてメロも目を丸くしている。
「・・・はっ、そう言うことか。」
「あ? ライ、なんだよ!!」
「ライ兄は気づいたみたいだね。」
ライが気づくとディグは後ろから眼鏡をくいっと上げて冷静に語る。
「ふわっと動く死体! ティル! はい、ルタちゃん分かっちゃいましたー☆」
「・・・。」
わざとらしくヒントを振りまきながら場違いにはしゃぐルタのせいというかおかげというか、からくりを理解する。
「なんなのですか!! ティルがなんなのですか!!」
「アホ!!」
「はぶッ!!」
未だに分かっていないメロを横からチョップする。
「師匠!! 意味が分からないのです!!」
「いい加減分かれッ!! この死体共はティルが操ってるって事だ!!」
「なんでそんな事を!?」
「そこなんだよねぇ~。」
メロにごもっともな質問をぶつけられ、ルタは腕組みをしながら右手の人差し指で米噛みを付いてわざとらしく悩まし気な顔をする。
「へっ! んな事、此処でうんうん悩んでるくらいなら本人に聞いた方が早ぇだろ!!」
「・・・同感。」
ライが銃弾の装填を終わらせている間に首をこきっと鳴らして気分を落ち着かせる。
「話は纏まったかな?」
「!」
後ろから声がしたかと思えばフレッドがこれまたルタとは別のベクトルで場違いに落ち着いた笑みで微笑みかけるように話しかけてきた。
そういえば妙に大人しかったな。
「フレッド、あんたいたの?」
「はは、言うようになったね!」
俺の皮肉も何処吹く風の様に軽く笑い飛ばすフレッド。
ホント掴みどころがない。
「いつも通り頼んますよ! 『総司令』!!」
「はいはい。」
ライがはやし立てるとフレッドは呆れ気味に笑う。
「ディグ。目標の位置は?」
「生体反応はライ兄を十二時にして十時の方向、その奥の一番死体の群れが集中してる場所です。」
「うむ、このまま迎撃し続けていてもジリ貧だが回り道も無い。拠点防衛を機動隊のみにして正面から強行突破だ。」
「ま、そうなるよな。」
「けどこんな倒しづらい死体どもの相手なんか無理だぞ!?」
「無視だ。」
「!」
一瞬突拍子もないことを言っているような気がしたが、確かに現実的だ。
俺達の目的はあくまでティルの元への到達。
道中の死体共を相手にする必要は何処にもないのは確かだ。
「ウルドとメロは上昇を使えるだろうから機動力で突破は訳ないだろう。」
「じゃあ俺達二人しかいけねぇってか?」
「いや? 行き方によってはライとルタとサンも参加できる。ライは攻撃を受けながらの強行突破。サンは迷彩で姿を隠しながら移動。ルタは・・・。」
---「・・・で?」
うん、抗議させてくれ。
「なんでこうなるんじゃああああぁぁッ!!」
「なぁにぃ? 照れくさいの? お兄ちゃ~ん?」
ルタが背中から俺の肩に顎を乗せて耳元で囁く。
これだけでも勘のいい奴なら分かるかもしれない。
そう、何故か俺はルタをおぶっている。
「つうかルタは遠距離攻撃なんだからどっちかというと防衛側の戦力だろがッ!!!」
「いいや、彼女は寧ろこの強行突破の『要』だ。しっかり守ってやってくれよ、騎士くん♪」
「・・・あんたから茶化されると思わなかったよ。さっきの仕返しか?」
「そう捉えて貰ってもかまわないよ♪」
フレッドの冷やかしに苦笑いが自然と浮かんで目頭がぴくぴくなってくる。
「嬉しいくせにぃ♪」
ルタはここぞとばかりに茶化して頬擦りしてくる。
「だぁもうくっつくなッ!! 女なら少しは恥じらいを持てッ!! あんまりくっついたら背中に色々当たったらまずいもの・・・。」
言ってる間に色々と手遅れだ。
既に色々とくっつけてきている。
「とか・・・。」
だが『ある部分』が当たっているのを背中で感じ取ると・・・。
「・・・ハァ。」
思わずため息が出た。
「ぐぇッ!?」
急にルタが首に腕を回して締め上げて来た。
「おぉ兄ぃちゃぁん???」
ルタの口からドス黒い声が上がる。
「ルタ、ちょ、ぐるじ・・・!」
「何かなぁぁ?? 今の『ため息』ぃ。」
「ずみまぜ・・・うげぇッ!!」
「なんで謝るのかなぁぁ???」
「な、なんでもねぇ・・・っす・・・ギブ・・・ギブギブ・・・!」
「ったく、緊急事態なのにイチャついてんじゃねぇよ。」
ルタに絞められてる最中にライがため息混じりに茶化してくる。
「ごれのどごがイヂャづいでんでずがね・・・!」
「最重要破壊対象《リア充》を感知、推奨、『完全なる撃滅』、主、破壊許可を。」
サンが無表情で狙撃用の長銃を向けて来る。
「おい、サンの本来の人格浮き出てんぞ!」
機械の人格なのは分かるが無表情なのが怖い!!
「はいはい、君らはほっといたらいつも脱線するね。」
「ッ!」
フレッドがパンパンと手を叩くと俺達は我に返る。
くそっ、また乗せられた・・・!
もはやお約束になりつつある状況に何も言えない。
「早くしてくれ!!」
「俺らも持ちこたえるの限界なんだ!!」
機動部隊の人達が必死に銃を乱射させながら抗議してきたら物凄く申し訳なくなってきた。
「悪りぃ悪りぃ! んじゃ、おっ始めっか!!」
ライは気さくに謝罪しながら銃を抜いて足元の死体に手を添えるようにして態勢を低くして今にも走れるように姿勢を整える。
「では、これより・・・。」
フレッドが手を前に突き出す。
「作戦『暗闇の舞踏会破壊作戦』を開始する!!」
あ、前より作戦名まともだ。
「作戦開始ッ!!」
「おう!!」
ライが開口一番に駆け出す。
「任務を遂行します。」
サンの声がするが姿が見えない。
ライと一緒に戦ったように迷彩の布を被ったようだ。
「ティルを助けるのです!!」
メロも元気よく駆け出していく。
「ったく、俺だけおぶって出撃かよ。」
「よろしく!! 騎士くん!!」
「気に入ってんじゃねぇよ! ・・・ったく、舌噛むなよ?」
「うん! ぎゅってするから問題なし!!」
そう言って調子よくルタはがっしり摑まってくる。
「はいはい、行くぞッ!!」
呆れ気味にため息を吐きつつ走り出す。
先程文句は言った物の、正直人一人背負って走ることくらいなら訳はない。
それに死体たちはティルがサイコキネシスで操っているにしては動きが鈍い。
俺を見つけるなり襲い掛かって来るが掴まれることも無く脇をすり抜けて行く。
間をすり抜けて行くので自然とジグザグ走行になって走る。
「きゃぁ! こわーい! お兄ちゃぁん!!」
周りの動く死体共を見ながら騒ぐ、というよりはしゃぎながらルタはしがみついてくる。
「こんな時にふざけてんじゃねぇッ!!」
相変わらず場違いにふざけているルタにツッコミを入れていたその時だ。
「ッ!!?」
突如左後方から派手な爆発が起きる。
「ったく、掴んできたら進めねぇだろうが。」
聞きなれた減らず口で煙の中から現れたのはライだ。
恐らくは手榴弾を使って自爆して死体共を爆破したのだ。
相変わらず狂った事をする。
そう思っていると銃声が聞こえて死体が銃弾を受けて数体ライから僅かに怯む。
「ナイスぅ!!」
ライは何処も見ずに死体をすり抜けながら走りつつ、左手で適当な方向に親指を立てる。
恐らくやったのは迷彩で身を隠したサンだろう。
そんな様子に気を取られていた時だ。
「お兄ちゃん、前ッ!!」
「ッ!? しまった!!」
丁度目の前に居た死体に掴まれてしまった!!
だが・・・。
「とぉう!!」
ふざけた掛け声と共に俺を掴んでいた死体が蹴り飛ばされる。
その瞬間を逃さず奴の脇をすり抜けて走って行く。
「師匠! 何油断してるのですか!!」
「・・・。」
横を走りながら俺を叱咤してきたのはメロだ。
「まさかお前に助けられる日が来るなんてな・・・。」
「なんですかそれぇッ!!」
ため息を吐きつつ呆れて自虐をかますとメロがそれに食って掛かる。
その時だ。
『そろそろ目的地に着くよ。ルタ、デカい一発を準備しておいて。』
「あ? デカい一発?」
通信機からフレッドの指示が来るが意味が分からない。
何があるんだ?
「業火 杖 放出」
俺の疑問もなんのそのでルタは杖を手に持って前方に構えながら魔法を詠唱する。
「な!?」
ルタが詠唱している間に状況とフレッドが何故あんな指示を出したのかすぐに理解する。
なんと死体が固まるようにして丸いドーム状の塊になっていた。
まさに『肉壁』と言う形だ。
「なるほど。」
確かにルタを抜いたら突破できるか怪しい状況だな。
あれは生半可な火力じゃ破壊は不可能だろう。
「・・・。」
ルタは魔法の詠唱を止めて黙っている。
恐らくはライ達が合流するまで待つつもりだ。
なら・・・。
「雷 剣 放出」
微力ながら加勢だ。
「雷矢!」
雷の魔法をすぐに詠唱して放つ。
しかし、それを今あの肉壁に当てるつもりは無い。
俺は銃の取っ手に取り付けられているスイッチを押す。
すると雷が戻って来て俺の剣に吸い込まれて消える。
ディグに造ってもらった剣の能力だ。
放った魔法を剣に取り込んで凝縮して放つ機能だ。
これで俺も準備が整った
「む! 氷 剣 放出・・・。」
メロもすぐに俺達の意図を理解して魔法の詠唱を始める。
「おお! もう準備万端ってか!!」
声がしたかと思ってそっちを見るとライが結構ボロボロの状態で現れた。
首筋とか腕からひっかき傷やら歯形があることから攻撃を受けながら強引に突破してきたんだろう。
まぁ、再生能力があるから大丈夫なんだろうけど。
「んじゃ俺らも・・・。」
そう言ってライは手榴弾を取り出す。
「7.62mm炸裂徹甲弾、装填完了。発射許可を。」
ライの横から迷彩を取って現れたサンは既に狙撃用の銃を構えていた。
「いいぜ!! せーのッ!!」
ライが手榴弾を投げるのと同時に合図するとサンは銃弾を放つ。
それと同時に・・・。
「爆炎榴弾!!」
「氷弾!!」
ルタとメロが魔法を同時に放つ。
「ぶっ壊れますようにッ!!」
成功を祈った願掛けを込めて俺も剣の引き金を引いて雷の砲弾を放つ。
ルタとメロの魔法が当たると凍って脆くなった部分が炎に爆破され、同時に手榴弾が爆発し、俺の砲弾とサンの弾丸が肉壁に当たると同時に雷と炎の爆炎を上げ、死体の肉壁は巨大な大穴を開けた。
「よしッ!!」
「やったのですッ!!」
「油断しないでッ!! 見て!!」
俺とメロが成功に喜ぶ間もなくルタが大穴の端を指さす。
「マジかよ・・・!」
なんと死体がまるでパズルのピースを埋めるかのように徐々に肉壁が元に戻りつつある。
「くそっ!!」
さらにはすり抜けた先程の死体共も迫ってきている。
「急げッ!!」
ライが声を掛けると俺達は揃って肉壁の向こうへ走り出す。
死体の肉壁が完全に収縮すると中は急に暗くなる。
だが・・・。
「炎 杖 発現 停滞・・・赤の灯火。」
ルタがすぐに察知していたようで魔法の火で灯りを付けてくれた。
「で? こりゃ一体どういうことだ?」
状況に早速ライがツッコミを入れる。
中はティルが操っていると思われる死体で溢れかえっている。
しかし、それらは俺達に襲い掛かる雰囲気はない。
というか異常だ!!
先程の不死族の様な動きの死体共とは違い、まるで生きた生身の人間のように貴族のパーティーのような二人一組で優雅に踊っている。
「あぁ~れぇ~?」
踊っている死体の間からまるで操り人形のようにひたひたと歩いてくる一人の影・・・。
「ッ!!?」
急に背中からぞくっと寒気がした!
なんでだ!?
「照明の取り付けなんてぇ頼んでなぁいでぇすよぉ~?」
現れたのはティルだ!
いや、それより・・・!
「おい、ティルの様子が何か・・・!」
うん、おかしいのは分かる。
でもそうじゃない!!
なんか見覚えがあるような・・・!
「おぉ~かぁ~しぃ~いぃ~なぁ~? 勝手に動くお人形さんがいますねぇぇ?」
その長い前髪の間から見える眼は開ききっており、首がほぼ九十度曲がった狂気に満ちた笑みと組み合わせると一層不気味さを引き立たせる。
「・・・。」
あー、覚えてる。
このティル覚えてるわ。
たしかメロ探しに行ったときに突然現れて・・・。
「うぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
口からトラウマを吐き出すように叫ぶ。
このティル突然問答無用で俺を殺しにきたあの時のサイコ状態のティルじゃないですかヤダァッ!!
「あーあー、完全にトラウマになっちゃってるねぇ。よしよし。」
背負っていたルタがあやすように撫でて来る。
「師匠!? ど、どうしたのですか!?」
突然の俺の叫びにメロは目を丸くする。
「メロ? 人には思い出したくない過去の一つや二つあるんだよ? そっとしてあげて?」
「あのティルですか!? なんで師匠そんなに怯えてるのですか!?」
ルタの忠告もおかまいなしに傷を抉るように質問を掘り下げるメロ。
空気読めアホォ!!
「あのティルはやべぇんだよ・・・もう色々と・・!」
「よくしゃべるお人形さんでぇすねぇぇ? ちょっとアドリブ効きすぎじゃないでぇすかぁぁ? わたしぃぃ、そんな台本用意してなぁいでぇすよぉぉ?」
「ひぃ!!」
やめろぉ!!
俺に話しかけて来るなぁ!!
「そんな悪いお人形さんはぁぁ・・・ッ!?」
ティルが手を翳した瞬間、突然銃声が聞こえる。
「ヘイヘイヘーイ、お兄ちゃん抜きで盛り上がるなんて寂しいじゃん、ティルよぉ。」
銃声の犯人は勿論ライだ。
真上に撃っていたようだがすぐに銃口をティルに向ける。
いつもの減らず口だが、顔は至って真面目にティルを睨みつけていた。
「あぁれぇぇ?」
ティルは体の向きを変えず、首だけぐるんと動かして力のない視線をライに向ける。
「どこかで聞いたことあるような声のお人形さんでぇすねぇぇ? どこかでお会いしまぁしたぁぁ?」
「・・・。」
ティルが相変わらず訳の分からない事を言っているがライは銃を向けたまま黙って静観していた。
「んふっ、まぁいいやぁぁ・・・。」
そう言ってティルはライに向かって手を翳す。
「言うこと聞かないお人形さんはあぁぁ・・・。」
そう言うと地面が盛り上がるようにして死体がライを囲うように這い上がって来る。
「手足をちぎってはいきしょぶぅぅん♪」
そう言って翳した手を握りこむと死体が一気にライに襲い掛かるように張り付き、噛みつき、引っ掻き、肉を引きちぎり、ライをぐちゃぐちゃにしようと蹂躙する。
「ライッ!!」
慌ててライの名を呼ぶがライもただやられはしなかった。
最初こそ死体共の良いようにさせていたが懐から手榴弾を取り出すと、それを撃ち抜いた。
すると手榴弾が爆ぜ、ライと死体たちを爆風が巻き込む。
無論、ライは再生能力があるので平然とその場に立っていたが、死体共はバラバラに砕け散り、サイコキネシスで操るには使い物にならないようなただの肉片になっていた。
「はは・・・ははは・・・。」
「・・・?」
ライの様子がおかしい。
「はははは・・・ッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!」
「ライ・・・?」
急に笑い出した・・・意味が分からない。
しばらく笑っていたがそれで終わりじゃなかった。
「ウェェェェアアアアアアアアアァァァア!!!」
急に魔物のような奇声を上げて駆け出す。
勿論向かう先はティルだ。
更には銃を二丁ともティルに向けて乱射する。
「ほぇ?」
ティルはとぼけたような声を出すがすぐに死体が二体、くっつくようにして壁になって銃弾を防ぐ。
「イィィィィハアアアアアァァァアァッ!!!」
ライは更に奇声を上げると走ったまま手榴弾を壁になっている死体に投げつけてぶつけた瞬間に銃でそれを撃ち抜く。
瞬間的に爆発した手榴弾の爆風は壁の死体をバラバラに吹き飛ばす。
爆煙が辺り一帯に漂って消えないうちにその煙を塗ってライはティルの前に現れる。
そしてそのまま左手でティルの頭をわしづかみにして押し倒す。
「ッハァァァ・・・!」
ライはその時、銃をしまって短剣を取り出していた。
今にそれをティルに向かって突き刺そうとした瞬間・・・。
「あははぁッ!!」
「グガァッ!!」
ティルが突然笑い出したかと思うとライは何かに殴られたかのように弾き飛ばされる。
「ヘヘ、ハハハハハハハ!!!」
何故かライも笑い出して銃を取り出してティルに向かって撃ちまくるが、また死体が割り込んで壁になる。
お互いに距離が離れ、如何にも仕切り直しのような状態だ。
だがそこで・・・。
「スゥゥゥゥ・・・ハァァァァァ・・・。」
何故かライは空気を深く吸って吐き出す。
「おい、ライ・・・!」
なんとなく話が通じそうだったので声をかける。
「ん?」
「・・・。」
鼻で声を出して俺の方を向く。
良かった。
どうやら話は通じるみたいだ。
「何やってんだよ。」
「ああ、すまん、ちょっとな?」
「お前らしくねぇ・・・。」
「『らしくねぇ』、か。はは、そうかそうかぁ、あははははは!!」
「・・・。」
まだおかしいみたいだ。
不自然なほどにテンションが高い。
「なぁ、ウルド。」
「あ?」
「今からティル殺すぞ?」
「・・・・・・は?」
今、なんて・・・?




