#86 悪夢、そして悪夢
~ウルド 廃棄場~
俺達の取った作戦は・・・。
「うわッ!! あぶねッ!」
迫りくる触手を俺は感覚上昇を使って躱す。
「オラぁ!!」
触手を回避する俺の後ろからライが二丁の拳銃で撃ちまくるが腐食者は硬化によって銃弾を弾く。
そして更にその後ろでは・・・。
「炎 杖 炎・・・炎球。」
ルタが魔法を詠唱して炎の球体を放つ。
だが腐食者はそれを巨体に似合わない俊敏な動きで躱し、ルタの灯りが届かない暗闇に姿を消す。
すると気持ち悪い程感じていたおぞましい色の魔力が消える。
また魔力鎮静で隠れたな?
「・・・ッ!!」
攻撃の直前に魔力の反応が現れる。
「ルタッ!!」
標的はルタだ!
「大丈、夫ッ!!」
ルタもそれが分かっていたようで、すぐに回避する。
攻撃の際に近づいたせいか、灯りの範囲に入っていたので奴は姿を現す。
「・・・。」
再び俺達は奴と対峙する。
先程フレッドが提示した作戦は至って単純。
『普通に戦うこと』だ。
俺が前衛で接近して奴の注意を引きつつ、ライが中距離から銃や手榴弾で攻撃、ルタが後方で灯りを維持しつつ魔法で支援射撃。
至ってオーソドックスな戦法だ。
だが・・・。
「・・・。」
奴は触手と顔の間にある目でぎょろぎょろと色々な角度に視線を動かしている。
何かを探しているようだ。
というか・・・。
「おい、敵さん気づき始めてんぜ?」
そう、こっちの作戦に気づき始めている。
奴が『そいつ』を探しているのも俺達の作戦を破る事に於いて最適解だ。
だがそうは問屋が卸さない。
「余所見してていいのか!? オラッ!!」
俺は大声を出しながら挑発的に罵声を浴びせながら奴に襲い掛かる。
無論わざとだ。
この作戦に重要なのは俺が・・・いや、俺達が奴の注意を引かなければならない。
「!!」
奴は右に視線を動かす。
その視線の先に『魔力』があったからだ。
「だから余所見すんじゃねぇッ!!」
奴に跳びかかり、斬撃を数発浴びせる。
奴はこちらに視線を戻しながら硬化で防御しつつ、魔力のある方へ触手を伸ばす。
「ッ!!」
ヤバイッ!!
奴が何か掴んで引き寄せてきた。
しかし・・・。
「・・・!」
奴が引き寄せて来たのは俺達の足場になる程散りばめられた死体のうちの一体だ。
「・・・。」
奴に気づかれないようにほっと息を吐く。
「あと『三回』・・・!」
自分に言い聞かせるようにつぶやく。
今俺達がやっている作戦を完遂する為には絶対に失敗出来ない工程がある。
それがあと三回だ。
「くっ、このッ!」
前衛の嫌な所だな。
思考する時間も貰えない。
奴は触手を伸ばして反撃してきた。
捕獲しようと絡めるように斜め上から伸びて来る触手を身を屈めて回避し、その状態の俺を貫こうと真っ直ぐ伸びて来る触手を剣で捌き、打撃を加えようと鞭のようにしなって襲い掛かって来た触手を左右に移動しながら回避する。
「!」
奴の視線が動く。
あの魔力じゃない。
その視線の先には・・・。
「贈り物だ。」
宙に舞った手榴弾だ!
奴の近くを待っているそれをライは銃で撃ち抜いた。
「うぉッ!?」
起爆の直前に頭から飛び込むように跳んで爆風から逃れる。
「おいライッ!! 危ねぇだろッ!!」
「ドン☆マイ!」
「いや謝れッ!!」
ここで開き直る!?
普通!!
お前から斬ってやろうか!?
「炎球。」
「ちょ!?」
「うおッ!?」
ルタの声が聞こえて俺とライは慌てて左右に跳ぶとその間を炎の球が通り過ぎて奴に飛んで行く。
「おいルタッ!! この馬鹿妹ッ!! お前もふざけてんじゃねぇッ!!」
「そうだそうだぁッ!!」
「ドン☆マイ!」
「「いや謝れッ!!」」
このクソ妹がぁッ!!
こんな時に悪ノリ被せて来んじゃねぇッ!!
「うおッ!!」
二人の馬鹿にキレてる隙に飛んで来た触手を伏せて回避する。
「おっとぉッ!!」
ライも同様に横に転がりながら回避して奴に銃弾を放つ。
回避できたのは偶然じゃない。
ふざけたやり取りをしているが俺を含め三人とも奴に注意を向けていた。
此方がいつでも臨戦態勢なのを察してか、腐食者の数々の目はようやくと言うべきか、俺達に視線を戻す。
「そうそう! ちゃんと私達見てないと!」
「あんまりあからさまに言うなよ。俺らの言葉理解してるかもしんねぇぞ?」
ルタの楽観的な物言いに水を差すようにツッコむ。
「ハッ! 何言ってやがる!」
ライは銃の弾倉を開いて空弾を捨てながら俺の言葉を鼻で笑う。
「どの道作戦バレてんだ。同じだろ?」
「ハァ・・・。」
弾丸を装填しながら言うライについため息が出てしまう。
まぁ、それもそうだよな。
「んじゃ、意地でも注意引かないとな!」
「うん! ゴリ押しだね!!」
俺達はそれぞれ奴に向かって武器を構える。
そう、出来るだけ奴が他所に注意が行かないようにしっかり引きつけなければ勝ち目はない。
なんたって作戦の要は・・・。
「しくじんなよ? メロ。」
あのアホだからな。
~レッサ B.R.A.I.N基地~
「あははははははははははは!!!」
「くっ・・・!」
ふざけてる・・・!
「どうしたんですかぁ~? レッサさぁん!」
「っけんな・・・!」
まじふざけてる・・・!
「いつも撃ち合いっこで勝ってるのに今日は調子わるいんでぇすかぁ~?」
「ざっけんなよコラァッ!!」
瓦礫同士がぶつかり合うがその瓦礫が徐々に押して私に迫ってきている。
認められる訳が無い!!
この私がッ!!
こいつに何もかも勝ってる私が・・・!
「『力負け』なんかするかぁッ!!」
「あはは!! くまさんとおすもうしてる人みたいですねぇ!! 私その話よく見てたぁんですよぉ!? 昔ぃ~!」
「うるせッ!! くっ・・・!」
必死にサイコキネシスで念を送るがちっとも私が操っている瓦礫は押し返す気配はない。
「うあぁッ!! クソガァァッ!!」
やむなく物体精製で刃を作り出して頭上に展開してティルに放つ。
「あらぁ~。」
迫る刃にティルは間抜けな声を上げる。
「ッ!?」
まただ。
ティルに当たる直前に刃が止まる。
「優しいですねぇこのガラスさん達ぃ! 私にぃ~、酷いことしたくないからとまってくれましたよぉ!?」
「黙れッ!! イラつくんだよぉその喋り方ぁッ!!」
「ねぇレッサさぁん。」
「あぁ!?」
「カッコよく戦う人ってぇ~、虫さんみたいに戦うらしいですよぉ~?」
「知るかッ!! 死ねッ!!」
刃にティルを切り刻むように念を送るが全然動かない。
「確かぁ。」
「!?」
ティルが手を翳すと私が操っている筈の刃が・・・!
ありえない!!
「蝶のように舞いぃ~・・・。」
刃がティルの周りをぐるぐると旋回するように回っている。
サイコキネシスの権限が奪われてる!?
「蜂のようにぃ~・・・。」
ティルが言うと刃が集まって大きな槍のように尖った塊になる。
「チクッと刺す♪」
槍は真っ直ぐ私の方へ向かって来る。
「うあああああぁッ!!」
瓦礫の操作を解いて自身のサイコキネシスに回し、精一杯操って槍を回避する。
「あぁれぇ? なんか違うぅ?」
「ッ!?」
ティルは相変わらず間抜けな喋り方をしているがその間にも事が起こる。
押し合いが解けて自由になった瓦礫が襲い掛かって来るがこれも自身を操って空中を移動しながら躱す。
だが瓦礫もそれに追従してどこまでも追って来る。
まるで誘導ミサイルだ。
「いい加減ッにッ!!」
サイコキネシスの念をティルの操る瓦礫に送って瓦礫を止める。
いわば武器を掴んで押し合っている状態だ。
「レッサさぁん。」
「今度はなんだゴミッ!!」
「虎さんやライオンさんってぇ~、鹿さん追い詰めるのは上手いですけどぉ~、追い詰められると鹿さんよりも自分の身を守るの下手なんですよぉ~? なんでだと思います~?」
「余裕出て来たからって煽り? あんま舐めてっとあとでどうなるか分かってんのか!? あぁ!?」
マジふざけんな!!
この私が遊ばれてる!?
こともあろうにティルに!?
んな事あるかぁッ!!
「答えはぁ~。」
「うるっせぇ喋んなッ!!」
「視野が狭いからですよぉ?」
「ッ!?」
ティルが手を此方に翳してきた事に気づいて。
瓦礫を押し返そうとするあまりに気が緩んでいた。
サイコキネシス同士で最も疎かにしてはいけない事、それは・・・!
「くっ!!」
右手を翳して念を送る。
サイコキネシスの押し合いで磁場が発生する。
しかし・・・。
「うぐぅ・・・!」
「あははははははははは!!」
天井のクレーターが徐々に此方に迫るように出来上がっていく。
ふざけんな!!
こんなのあいつが不意打ちしてきたからここまで押し込まれてるだけだ!!
単純に押し負けてるなんてそんな事は・・・!
「くそがぁ・・・!」
このままだと・・・!
「!!」
ふと後ろを見て気づく。
後ろには丁度奥に続くドアがあった。
好機だ!!
「!?」
いや待て!!
何が好機だふざけんな!!
この私が・・・!
ティルから逃げる!?
いつも逃げるティルを追い詰めていたこの私が・・・!
「くぅ・・・!」
今はそんな事考えてる余裕ない!!
すぐに左手でカードキーを取り出して扉の装置に通す。
すると何重にも閉まっていた硬い扉が一枚一枚開いていく。
「早く開けポンコツがぁッ!!」
「レッサさぁん?」
「うるっせぇ黙れッ出来損ない!!」
「なんでその扉開けるんですかぁ~?」
「ッ!!」
分かってて聞いてんのかこのクズッ!!
「もしかして・・・。」
「ぐっ・・・うぅ・・・!」
屈辱を歯噛みで押し殺して踵を返す。
尚もサイコキネシスで押し合いながら扉の向こうへ自身を操って移動する。
そしてそのまま扉横の操作盤を指で押して操作する。
すると先程開いた扉が徐々に閉まっていく。
だがティルのサイコキネシスの力と押し返された瓦礫が今にも迫っていた。
まるで巨大な化け物が迫ってくるようなおぞましい光景だ。
だがその光景も長くは続かず、扉は閉じられる。
しかし・・・。
「ひぃッ!?」
扉が奥から抉れるように膨らみ始める。
今にも壊れるかと思ったが少しすると治まる。
あの状態のティルでもこの扉は破壊しきれなかったみたいだ。
だが扉の向こうからガンガンと巨大な物がぶつかる音がする。
瓦礫でもぶつけて破壊を試みているようだが扉は頑丈で破壊される様子もない。
『レェッサさぁぁぁぁぁぁん!!』
扉越しのくぐもったティルの声が聞こえる。
扉で聞こえなくならないように大声で叫んでいるようだ。
『どぉして逃げるんですかぁぁぁあああ!!?』
「ッ!!!」
こいつ・・・!
『私ただレッサさんと遊んでただけですよぉぉぉぉおおお!!!!?』
「ぐッ・・・!!!!」
ティルの挑発を血が出そうな程の歯軋りで我慢しながら耳を塞ぎ、奥へ走り出す。
早くあいつの声が届かない所へ・・・!
でないと・・・!
ーーー「ハァ・・・ハァ・・・!」
しばらく走って近くにあった個室に入ると息を切らす。
「・・・ねぇよ。」
あり得ない・・・。
こんな事はあってはならない・・・。
「ねぇだろ、いくらなんでも・・・。」
『くまさんとおすもうしてる人みたいですねぇ!!』
「うあああああああああぁぁッ!!!!」
サイコキネシスで力負けした時のことを思い出して近くの薬棚を操って壁にぶつけて中身をぶちまける。
『蝶のように舞いぃ~・・・蜂のようにぃ~・・・。』
「あああああああああぁッ!!! ああぁぁッ!!!」
物体精製の刃の制御を奪われたことを思い出し、何脚もある椅子を竜巻のように巻き上げて天井に叩きつけまくる。
こんなのあり得ない!!
あのクソ雑魚ティルにそんなこと・・・あってたまるかぁッ!!
いや、そんな事はどうだっていいッ!!
「うあああああああああああああああぁぁぁぁぁッ!!!」
怒りに身を任せてサイコキネシスを部屋全体にぶちまけると壁や床、天井にひびが入り、部屋中の物と言う物が壁にへばり付いて何かに押しつぶされるように変形していく。
一番あいつに対して許せないのは・・・。
許せないのは・・・!!!
『ひぃッ!?』
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁッ!!!!!!!」
私を逃げ腰にしてあんな声を出させた事だぁぁぁぁぁッ!!!!!!
~ティル B.R.A.I.N基地~
「あ~あぁぁ・・・。」
レッサさぁん、行っちゃいましたねぇ~。
「一緒に遊んでただけだったのにぃぃぃ、何がいけなかったんですかねぇぇぇぇ?」
ちょっと考えてみるけど分からないですねぇぇぇぇ。
私ぃぃ~、レッサさんが大好きな石の飛ばし合いっ子してただけなのにぃぃぃ~。
大好きな事して遊べばレッサさんが喜んでくれると思ってたのにどうしてレッサさん怒ってたんでしょぉぉ。
「友達がやりたい遊びをやればぁぁぁ、友達ともっと仲良くできるはずですぅ~。私何かおかしいこと言ってますかねぇ~??? おぁかぁしぃぃいぃぃぃなああぁぁぁぁ?」
面白いこともしてみせたのにぃ~、レッサさん笑ってくれなかったんでぇすよぉぉお?
ひどいでぇすよねぇぇぇ?
レェッサさああぁんってぇぇぇぇぇぇ。
「ひとりぼっちでぇすかぁ~。」
寂しいなぁぁ?
レェッサさぁん、遊んでくれなくなっちゃいまぁしたぁぁ。
じゃあだぁれが遊んでくれるぅんでぇすかねぇぇぇ?
「あ! そぉだあぁぁ!!」
確かこの下の廃棄場にはぁぁ、捨てられた可哀想な子と遊んでくれるぅ~。
素敵な素敵なすてええええぇぇぇぇぇきなお友達がいるんでぇしたよねぇぇぇぇぇ?
「あはッ☆」
あかるぅい~おおぞぉらにむかぁってぇぇ~♪
りょおてぇをぉおおきくひらいぃてぇぇ~♪
じぶぅんのぉぉつばさぁぁでぇおそらをとぶのをやぁめたぁらぁぁぁ~♪
い~ざいざいざやぁみのぉなかぁのぉおぉともぉだちぃのもぉとへぇぇぇ~~~♪
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!」
~レレ ???~
「レレ!!」
「ッ!?」
急に声を掛けられて顔を上げる。
あれ?
私がいるの・・・ギルド?
ヤバイ、寝てた!?
「ったく、何寝てんだよ。昨夜夜更かしでもしてたのか?」
目の前でため息を吐きつつ悪態を付いてきたのは・・・。
「あ、ああ! ウルド! ごめん!! 寝てた!!」
「分かってるよ、んなことは。」
謝る私に呆れながらウルドは依頼の貼り紙を持ってきていた。
「ああ、依頼、それ? 今準備するから!」
「へいへい、せいぜい寝ぼけて書類書き間違えるなよ?」
「う、うるさいッ!!」
半笑いでからかってくるウルドに言葉で食って掛かりながら書類にペンを走らせる。
依頼は中型のホブゴブリンを親玉にしたゴブリンの集団で・・・。
「・・・え?」
あれ?
なんかおかしい。
依頼のこと?
いや違う!!
そうだ!!
「ウルド!? どうして此処に!?」
そうだ!!
今ウルドがカザに居るのはおかしい!!
「なんで!? あんた、魔王の残党を倒しに旅に出たんじゃ・・・!」
「・・・。」
私が問いただすとウルドは先ほど私をからかっていた半笑いの表情が消える。
「・・・ウルド?」
「・・・。」
「ッ!?」
私がウルドの名前を呼ぶとウルドは何故かにやりと笑う。
「ああ、旅に出てたっけな?」
「何やってんの!? まだ何も終わってないんでしょ!? なんで戻って来てんのよ!!」
ウルドの肩を掴んで揺さぶるがウルドはそのうすら笑みを止めない。
というか気味が悪い!!
これ、本当にウルドなの!?
ウルドはこんな気持ち悪い笑い方しない!!
「あんた・・・本当にウルド?」
「なあ、レレ。」
「・・・何?」
突然声をかけて来るウルド(?)に私はなんとか気持ちを落ち着かせて問う。
正直こんなあり得ない事態にこんな冷静に対処出来てる自分が信じられないと思うけど・・・。
「あの時言いかけた言葉、今教えてくれないか?」
「ッ!!?」
多分、こいつの言いたいことはカザを出ていくときの別れ際に私が告白しかけて保留にした事だ。
「・・・。」
けど、答えは決まっている。
「言わない。」
そうだ。
まだ全部終わってない筈だ。
魔王の残党が現れたという情報も無い。
そんな奴らが倒されればギルド協会から情報が流れて来る筈だ。
「あんた、まだやることが残ってるんでしょ!? それなのに戻って来て、わざわざそんな事の為に戻って来たの!?」
そうだ。
全てが終わって自由になるまでウルドは絶対に帰ってこない。
本人がそう誓った筈だ。
そうなるまで言わないって決めてたことなんだ!!
だから・・・!
「今言ってくれよ。」
「言うわけないでしょ!? あんたが全てにケリつけるまで絶対に・・・!」
「じゃないと俺・・・。」
「・・・!?」
目の前の光景に目を疑う。
突然ウルドが白目を向いて横に倒れた。
「ウルドッ!?」
慌ててウルドを抱きかかえる。
けど次の瞬間・・・!
「・・・え?」
更に自分の目を疑う。
いや、手の感触を疑う。
何かべちゃりとした液体のような感覚だ。
見るとそれは・・・。
「・・・血?」
それはウルドの背中から流れていた。
「ッ!!?」
気づくとギルド内部が血だらけで彼方此方に鮮血が飛び散っていた。
「何これ? 何!? 悪い冗談でしょ? っていうか冗談にしちゃ笑えないって!!」
そうだ!
きっとルッカ辺りが私をからかうために・・・!
「ウルド・・・どうせ死んだふりでしょ!? 馬鹿なことやってないで目を開けなさいよ!!」
「・・・。」
ウルドを揺さぶるが目を開けるどころか呼吸すらしていないし、ピクリとも動かない。
「嘘・・・嘘・・・!」
そんなはずない!!
ウルドは死ぬような奴じゃない!!
死ぬような無茶しないし実力だってちゃんとある私が見た中で一番の冒険者だ!!
死ぬわけない!!
「イヤ、イヤイヤ・・・!」
お願いだから目を開けてよウルド!!
「嫌ああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」
---「ッ!!」
目を目一杯開いて上体を起こすとシーツがベッドから零れるように床に落ちる。
自分の家の自室のベッドの上。
そう、夢だ。
日はまだ登っていない。
真夜中だ。
「・・・ハァ。」
胸に溜まった何かを吐き出すように息を吐く。
夢で良かった。
にしてもなんでこんな夢見たんだろう。
いや、確かに冒険者は危険と隣り合わせ。
決してあり得ない話じゃない。
けど・・・。
「ないない・・・ある訳ないから。」
そうだ。
絶対に戻って来る。
そう約束したんだ、ウルドは。
「・・・やっぱり夕方の。」
夕方、カザが獣人達に襲撃された時のことだ。
あの時、獣人に殺されかけて死と隣り合わせの状態を体験してしまった。
きっとあれがウルドが常に味わっている状況なんだ。
それを知った事で不安になっただけなんだ。
「私が弱気になってちゃダメ・・・!」
夜なので小声で両頬をパシパシと叩いて自分を叱咤すると、ベッドから落ちていたシーツを取って自分の身体に被せて再び眠る姿勢に入る。
明日も早いんだ!
早く寝ないと!
ギルド職員として!
ウルドの帰る場所を守る為に!
~ウルド 廃棄場~
作戦は上手くいった。
奴の注意を引き、メロは上手くやってくれた。
「くっ・・・!」
・・・はずだった。
「くそぉ・・・!」
全員奴の触手に捕まっていた。
「ったく・・・今日は厄日か・・・?」
腕ごと胴に触手を撒きつけられている状態でライは軽口を吐くがそんな余裕の出来る光景じゃない。
腐食者は品定めするように無数の目で俺達を眺めている。
状況は最悪。
まさに絶体絶命だ。




