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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
81/101

#81 起死回生


~ウルド B.R.A.I.N基地~


 状況は最悪だ。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 俺は身体の至る所が切り傷と刺し傷だらけになっている。

「くそぉッ!!」

 ライが若干自棄(やけ)気味に銃を撃ってテルに突っ込んで行くが・・・。

「学習しなよ。」

 テルは顔色一つ変えずに自分の真横に(ゲート)を作って移動して弾丸を躱す。

「ッ!! ライ!! (かが)めッ!!」

 俺は魔覚で炎の発生位置を感じ取ってライに警告する。

「うぉッ!!」

 ライが慌てて頭を下げるとライの頭上で突然爆発が起こる。

 やったのは言うまでも無くビルドだ。



「ハイ油断した。」



「ッ!!」

 気づいた時には俺の右側の空間が歪んでいた。

 ライに警告して注意が逸れた隙を突かれた!!

「ぐっ! うぅ・・・!」

 (ゲート)から短剣(ナイフ)の手が現れて俺の右わき腹を狙った突きだったが僅かに後ろに跳んで回避し、なんとか急所は避けた物の、僅かに右肩を掠めて切られる。

「チッ、くそが・・・!」

 さっきからこの調子だ。

 ビルドがライを狙うから魔覚の使えないライに俺が警告したり庇ったりして、その隙をついてテルが俺を狙って来る。

 完全に俺達の作戦に合わせられている。

「汚ねぇぞてめぇッ!!」

 グラが激昂して後ろからビルドに襲い掛かる。

「へっ! あらよっと!!」

 ビルドは頭を狙ったグラの槍の突きを顔をずらして回避して槍を掴む。

「な!? うわぁッ!!」

 そのまま槍を持ったグラを天高く持ち上げる。

「からの~?」

 さらにビルドは跳び上がってグラの顔面を掴むと、そのまま落下の勢いを利用してグラをコンクリートの床に叩きつけた。

「さっき足刺されてから動き鈍いぜぇ?」

「ぶ!?」

「へへへ。」

 ビルドは仰向けに倒れるグラの上に四つん這いの姿勢でのしかかりながら右手でグラの両頬を掴んで覗き込むように顔を近づける。

「おーおー、獣人だけど中々の上玉じゃねぇか。それに身体つきも悪くねぇしぃ?」

「ッ!!」

 品定めするように観察してくるビルドをグラは嫌悪の視線で睨む。

「知ってんぜ? 獣人ってのは(つえ)ぇ奴と交尾したいんだろぉ? じゃあ俺とも交尾しねぇと損じゃねぇかぁ? いいガキ産めるぜぇ? んん?」

「ぺッ!!」

「ッ!?」

 下品な身体の強要にグラはビルドに唾を吐きかける。

「ロキウスの男なんざ死んでもゴメンだッ!!」

「へへへ、気の(つえ)ぇ女をヒィヒィ言わせんのも大好きだぜぇ? それに最初(ハナ)からてめぇの許可なんざ

「いつまでも汚ねぇ手で触ってんじゃねぇッ!!」

「ッ!!」

 俺が斬りかかるとビルドはグラから離れて横に転がりながら回避して距離を取る。

「んだよ。他人(ひと)の情事に手ぇ出すんじゃねぇよ。」

「お前のは『強姦』って言うんだよ。」

「知らねぇなぁ、んな言葉!」

「・・・。」

 メロ達の方が気になって来た。

「オラ休んでるヒマねぇぞ!?」

「くっ・・・!」

 奴の攻撃を回避しつつメロ達の方を見る。



「ほぉらほらほら!! あたしに勝つんじゃないのぉ?」

「くぅ・・・!」

「このぉッ!!」

 二人も防戦一方だった。

 会議で言っていた通り、手数で負ける分メロがガラスの棘を弾き落してカバーしているが、防ぐのがやっとで全然攻撃に移れていない。

「さっきあんだけ大口叩いてそのザマぁ!?」

 レッサはさっきティルとメロが励まし合っていた光景に苛立っていたせいか、優勢の勢いに任せて二人を捲し立てるように煽る。

 ジリ貧みたいだ。

 さっさとビルドとテルの二人と決着つけて援護に回らないとキツそうだ。



「ッ!! チッ・・・!」

 テルはまた(ゲート)で移動する。

 銃弾がまた色んな方向から飛んで来るからだ。

 そうだ。

 まだ希望がない訳じゃない。

 こっちだって一方的に攻撃できる奴はいる。

 サンだ。

 姿が見えない上に跳弾で攻撃しているので何処から撃ってるか分からないので位置の特定は不可能。

 俺達が引き付けている内にテルとビルドのどちらかに当たれば・・・。



「位置分かったしもういい? いい加減ウザいんだけど。」



「?」

 なんだ?

 テルが明後日の方向を向きながら(ゲート)に手を突っ込んだ?

「!」

 急にテルが見ていた方角からドサッと音が聞こえてそっちを見ると僅かにサンの物らしき足が見えた。



「報告、右腹部損傷、任務(ミッション)成功率四十パーセント低下。」



 淡々としたサンの声が聞こえてその見えた足の近くから血が流れてきた。

 テルの短剣(ナイフ)を喰らったみたいだ。

「くっ・・・!」

 こうも手を潰されるものなのかよ・・・!

「てめぇら俺らの事嘗めすぎだって。」

 俺達の劣勢を察してかビルドが口を挟んでくる。

「僕らは『選ばれた輝ける人類(グロリアス)』・・・ママが選んだ存在。」

「そーそ!! てめぇらの手元に輝ける人類(グロリアス)がいるからって輝ける人類(グロリアス)の事知った気になってんじゃねぇよ!! 俺らはそんなゴミと違うんだよぉ!!」

「分かる!? 分かるティル!? 私たちはねぇ!! 『天才』なの!!」

「くそ・・・!」

 ディグとルタは・・・。



「右側弾幕強めて!! 近づいてきてるよ!!」

業火(リフュー) (カーン) 分解(ディモンタージュ) 展開(ディプロイメント) 広域(ヴァスティゾン) 射出(エジャキュレーション)・・・彗星矢一斉射(コメットレイン)!!」



 駄目だ。

 機動部隊共々猟犬(ハウンド)達の対処に当たっていてとてもこちらに援護出来るほどの余裕がないみたいだ。

 いよいよマズイな・・・!

「もう諦めろよ!! どうせ何やったって勝てねぇんだから!!」

 んな事言われて諦められるかよ!!

 せっかく仲間が時間を稼いでくれてんのにこんな・・・!

 仲間・・・!



『パクパク口開けて餌を待つ雛鳥にでもなったつもり?』



「!!」

 不意に仲間の言葉を思い出す。



『いつでも誰かが考えてくれて状況がどうにかなるとでも思ってんの? 本当にどうしようもなくなったら自分自身で考えて切り抜けるしかないの、そんな事も分からないとかあんたホント馬鹿。』



「・・・。」

 俺がヘマした時に言ってきたキツい言葉だったけど()()()なりに同じ失敗しないように叱咤した言葉だったんだよな・・・ムカついたけど。

 そうだ。

 甘えてんじゃねぇよ考えろ俺!!

「・・・。」

 息を落ち着かせて目を閉じる。

 脳をフル回転させて思考を巡らせる



ーーー奴らは能力が強いし知恵も回る 直接戦闘や頭脳戦は不可能 けど奴らだって完璧じゃない 奴らにだって弱点はある筈だ 奴らの弱点 戦闘じゃない 頭を使うことでもない それ以外で戦えそうな手段は



「おお? どうしたぁ? 諦めたかぁ?」

 目を閉じて脱力する俺を見てビルドは挑発気味に俺を捲し立てる。

 だが俺は・・・。



「ああ、そうだな。諦めた。」



「はぁ!!?」

 俺の突然の発言に近くで戦っていたグラは声を上げる。

「ウルド!! こんな土壇場で何いってやがる!!」

 グラは俺の両肩を掴んで揺さぶるが俺は振りほどく。

「だってしょうがねぇじゃん? 強すぎる上にこっちの作戦なんていくら立てても潰されるし、もう俺ら打つ手ないじゃん?」

「何言ってんだ!! 諦めてんじゃねぇよ!! 俺らが死んだら外で戦ってる俺の仲間たちの頑張りが無駄になんだぞ!!」

「しょうがねぇじゃん。」

 グラが慌てて捲し立てるのを他所にライに視線を移す。

「・・・。」

 ライは静観するように俺を見ている。

 どうやら()()()()()()()()()()みたいだ。

「なーんだ、つまんね。じゃ、お前から死ぬか?」

 ビルドは冷めきったように俺に向けて手を翳すと俺の周辺から魔力が渦巻くのが魔覚で分かる。

「あー、その前にいいか?」

「あ?」

 俺が待ったをかけると魔力の渦は治まる。

 ビルドが攻撃をやめたようだ。

「なんだよ。」

「どうせ死ぬんだからさ。最後に言いたいこと言うわ。」

「ああ? 遺言か? 良いぜ? 恨み事言われながら殺すのも乙だしな!!」

 ビルドが楽しそうに言うのを尻目に視線を他所に移す。

「まずはそこの刈り上げ!」

「?」

 相手はテルだ。

「テル、だっけ? さっきからお前にどうしても言いたいことがあったんだ。」

「!!」

 そう言って俺が次の一言を発しようと息を吸い込んだ瞬間、レッサが目を見開く。

「テル兄!! 耳塞いで!! 聞くなぁッ!!」

 レッサが警告するがもう遅い。



「いい年して『ママ』ぁ!? ッハ!! まだお母さんのおっぱい恋しいの!? キメぇんだよこの『マザコン』ッ!!!」



「・・・!」

 その言葉、いや、最後の単語でテルの目は人間とは思えない程見開かれる。



「僕をマザコンって言ったかあああああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!!!」



 テルは激昂して(ゲート)を開いて手を突っ込む。

「!!」

 出口の(ゲート)は俺の左胸、心臓に零距離で刺すつもりか!?

「けど・・・。」 

 攻撃が来るのは分かっていた。

 すぐに後ろに跳んで手を避ける。

 しかしそれでも手には短剣(ナイフ)が握られており、何としてでも俺の心臓を刺そうと手が伸びてきている。

 けどそれがこいつの()()だ。

「ッ!!」

 テルは顔を歪ませる。

()()()()。」

 俺はテルの手を掴んでいた。

 無論奴も手を引っ込めようと力を込めているがガッチリ掴んで逃がさない。

「くっ、放せぇッ!!」

「やだね。って言うかさ・・・。」

「ああ!?」



「これ()()()()()()どうなんの?」



「・・・!」

 俺の一言にテルの顔が凍り付く。

「どうなんのかな? なあ?」

「や、やめろぉッ!!」

 テルは必死に手を引っ張って腕を戻そうとするが腕力が弱いせいか、いやそもそも片腕だけなので両手でガッチリ掴んでいる俺の拘束からは全然逃れられない。

「ハイ解答がないみたいなので自分で確かめマース。」

 そう言って思いっきりテルの腕を引っ張る。

 すると・・・。

「う、うわああぁ!! うわああぁ!!」

 テルは入口の(ゲート)に引きずり込まれるように入って行ったかと思うと俺が腕を掴んでいる出口の(ゲート)から出て来る。

「はい答えは『マヌケが引きずり出される』ッ!!」

「うげッ!!」

 テルの後ろから伸し掛かって腕を極めて逃げられないようにする。

「そらどうする? (ゲート)使って逃げるか? 『掴んでる俺から逃げられる』ならな!」

「くぅッ!!」

 こいつの能力の弱点は『掴まれたら終わり』って事だ。

 こうやって捕まえておけば何処に行こうが捕まってる相手もついてくるから逃げられない。

 しかもひ弱そうだから掴んでの殴り合いに持ち込めればそれこそこいつに勝ち目はないだろう。

 まぁそれはさておき。

「てめぇッ!!」

 当然ながらビルドが止めに来る。

「!」

 俺の身体の中心辺りから魔力が渦巻く。

 発火能力(パイロキネシス)だ!

 だが俺は敢えて動かない。

 一人、『信用出来る奴』に心当たりがあるからな。

「なッ!!?」

 ビルドが声を上げると発火能力(パイロキネシス)の予兆の魔力の渦が止まる。

 それもそのはずだ。

 何せビルドには・・・。



「よぉ兄ちゃん、良い身体してんなぁ?」



「くっ!!」

 ライが背中から虫の様に腕と足で抱き着く様にビルドにくっついていた。

「離せてめッ!! 頭吹っ飛ばされてぇのか!!」

「おおやるならやってみろよ、『俺ごと一緒に燃える』覚悟があるんならな。」

「うッ!」

 ライもビルドの能力の弱点に気づいていたみたいだ。

 奴の弱点は、つまるところ能力が炎である事だ。

 あんな風に密着されれば燃やせば自分に燃え移るし爆破しようものなら自分も巻き込まれる。

「くそッ!! 離れろこのッ!!」

 ビルドは力任せにライを引き剥がそうとするが・・・。

「なあ兄弟(ブラザー)。」

「あぁ!?」

「昔漫画でこんなキャラ見た事なかったか?」

「何が言いて・・・ッ!!?」

 急に話しかけて来たライをがなり立てようとしたビルドだが突如ライの()()を見て表情を凍らせる。



「『敵にしがみついて自爆する奴』。」

 


 ライの手には手榴弾が握られていた。

 しかも既にピンが抜かれている。



「やめろてめえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!!」



 ビルドの悲痛な叫びも空しく無慈悲に爆破が起こり、辺りは黒い煙に包まれる。

「まぁ、『自己犠牲』なんて俺は美徳とは思わんからよ。」

 次第に煙は晴れる。

「こうして生き残っちゃう訳なんだなぁこれが。」

 服は黒焦げでボロボロだがライはピンピンしていた。

 言わずもがなライの『再生能力』だ。

 一方ビルドは・・・。

「ぉ・・・ぅぁ・・・!」

 そのガタイの良さのせいか五体が吹き飛ぶなんてグロい事にはならなかったがライよりも爆発を諸に喰らったため、全身が黒焦げで胸元が爆破の影響で抉れるように削り取られていた。

 正直生きているのが奇跡と言えるレベルの重症だ。

「さて・・・そんじゃあッ!!」

 俺はテルの腕を極めている手を片方話して拳弓銃(ハンドボウガン)の矢を放つ。

「!!」

 相手はレッサだ。

 だが・・・。

「・・・?」

 矢はレッサの頭上を通り抜ける。

「ッハ! 何外してんのダサッ!!」

「ちッ・・・()()()か。」

 レッサはティルとサイコキネシスの撃ちあいをしながら嘲笑うが奴は気づいていない。

 俺は別の理由で悔しがっている。

 何故なら・・・。

(フラム) (カーン) 放出(ホレッシ)・・・炎球(フレイムボール)!!」

 ルタが不意にレッサの元へ魔法を放つ。

「!!?」

 レッサは目を見開く。

「くっ・・・!」

 慌てて炎の球体をサイコキネシスで停止させる。

 だがおかしい。

 炎の球体はレッサの右側を素通りしようとしていたのだ。

 なのに奴は止めていた。

 それは何故か。



ーーー「奴らは能力は強いが性格には難ありな奴らばかりだ。」


「ああ、こいつらに協調性なんて欠片もねぇ。」

 会議室で三人の説明をしたあと、フレッドは三人の共通点について説明するとライが皮肉の籠った相槌を打つ。

「じゃあ、連携が全く取れないって事か。」

 だったらこっちの作戦にまんまと乗せられる可能性も・・・。



「いや、奴らは連携も上手く取れるし恐らくはこちらの作戦にも上手く合わせて来るはずだ。」



「え?」

 いやいやおかしくないか?

「ちょっと待てよ! 今の説明でどうやってその結論に納得出来るってんだよ!」

「奴らには四人目、『司令塔』がいる。」

「!」

 俺が驚くのも束の間、映像が切り替わると黒い挑発の陰湿そうな顔をした女が映し出される。

「エベッカ、能力は『念話(テレパシー)』と『魔覚探知』、『魔力鎮静』、『体温変化』だ。」

「の、能力欲張りすぎじゃね・・・?」

「まぁ、どれも戦える能力じゃなさそうだけどね。」

 顔が強張る俺の横でルタが冷静に考察する。

「恐らくは隠れながら状況を見て索敵をしながら念話(テレパシー)で指示を出して戦っている三人に情報共有をさせるだろう。まぁ、言うなれば情報伝達係だ。放っておけば恐らく戦っている内に後方で見ている彼女に作戦を見抜かれて筒抜けになるはずだ。」

「だったら最初にこいつを叩けば・・・!」

「いや、彼女は恐ろしく隠密性が高い、索敵しようにも魔力鎮静と体温変化で魔覚にも生体センサーにも引っ掛からない。先に話した三人との戦闘中に見つけ出すのは不可能だろう。」

「じゃあどうすんだよ。」

「いくら隠密性が高いとは言えドンパチ撃ちあう戦場の中にいる。であれば『流れ弾に当たる』って可能性もある。」

「はあ!? 『運任せ』かよ!!」

「はは! まさかまさか!」

 俺のリアクションにフレッドは笑いながら諭して来る。

「奴らだってその危険性(リスク)は織り込み済みだ。必ず対策してくる。」

「じゃあ無理じゃん!」

「恐らく先の三人の中のうち『番人』が一人いる筈だ。」

「番人?」

「そ、流れ弾から彼女を守る番人がね。」

「じゃあそいつに守られてる限り倒せないって訳じゃねぇか!」

「いや、逆にそれが付け入る隙でもある。」

「え?」

「守っているならある程度は傍に居る必要があるだろう?」

「あ・・・。」

 そういうことか!

「そう、番人さえ分かればその位置から彼女の位置は特定できるだろう。」

「でも三人のうちの誰かは分からないんだろう? それに戦いながらだったらそれを特定するなんて・・・。」

「ああ、大丈夫だ。彼女と『戦う』のは・・・。」



---「『番人』はレッサだッ!! ライ兄!!」


「あいよ。」

 ()()()が叫ぶとライが銃を二発撃つ。

「くっ! ・・・!?」

 レッサが弾丸を止めるが銃声がもう一発聞こえる。

 すると銃弾がレッサの横を通り過ぎる。

「ぐがぁッ!!」

 少し小汚い悲鳴が聞こえたかと思うとレッサの背後で何かがドサっと落ちる。

 よく見るとその辺りの風景が少し歪んでおり、覆った布から顔を出すかのように何者かがいた。

 会議の時に映像で見ていた女の顔と一緒・・・恐らくこいつがエベッカだ。



「光学迷彩・・・B.R.A.I.Nも開発してたか。」

 


 分析するように言葉を発するディグの手には煙の上がった銃が握られていた。

「はい、ではディグ先生? 解説をどうぞ。」

 ライが何かの進行係のようにディグは眼鏡の淵に手を当てる。

「他の二人が動き回っていたのにレッサだけ同じ場所から動かなかったって所だね。潜伏しているなら迂闊に動いたりしない。それを守る番人も動かないはずだからね。まぁ、ティル姉とサイコキネシスの撃ち合いってのがカモフラージュになってただろうけど。」

「ねぇねぇディグ。」

「はい?」

 ルタが何故かディグに声をかける。



「既に二人伸した状態からそんな推理染みた言っても格好つかないと思うよ?」



「・・・!」

 ルタに水を差され、ディグは状況を見て顔を真っ赤にする。

「う、ウルドさんやライ兄の仕事が早すぎるからですよ! 喜ばしいことですけどねッ!!」

「ふふふ。」

 顔を真っ赤にして視線を逸らすディグを見ながらルタはなんか可愛い子供を見るように微笑ましそうな笑いをこぼす。

「さて。」

 そんなルタ達を尻目に俺は既に首を絞められて泡を吹いて気絶しているテルを放り捨てる。

 周囲の猟犬(ハウンド)達もすっかり倒した後だ。

「あとはお前だけだな。クソビッ●。」

「せこい真似ばっかりしやがって、覚悟は出来てんだろうなぁ?」

 ライは銃口を向け、グラは槍の穂先を正面に構える。

「レッサさん・・・!」

「ようやく年貢の納め時なのです、このアバズレ!」

 ティルは両手を正面に構え、メロも二本の剣を構えなおす。

「『大勢で一人を嬲り倒す鬼畜展開』。お兄ちゃん? 大好物なシチュエーションですよお?」

「なんでこの展開が俺の大好物なんだよふざけんな。」

 馬鹿な事を言うルタにツッコミを入れつつルタの杖と一緒に俺も剣を構える。

「く、来るな!」

 レッサは慌てて両手を構える。

「ッ!!」

 ティルが踏ん張るとまたティルとレッサの間で空間が歪んで周囲に巨大なクレーターが出来る。



(フラム) (カーン) 放出(ホレッシ)・・・炎球(フレイムボール)!!」

(グラス) (エペ) 放出(ホレッシ)・・・氷弾(アイシクルバレット)!!」



 ルタとメロが同時に魔法を唱えると炎の球体と氷の弾丸がレッサに襲い掛かる。

「くッ!」

 レッサが片手を翳すと炎と氷が止まる。

「ほらほらぁ!」

「ほれほれぇ。」

 ライが銃を撃つと俺もそれに乗っかって矢を放つ。

「くそぉ!」

 レッサはそれもサイコキネシスで阻止する。

 だが先程の硝子のような棘は出して反撃してこない。

 いや、出来ないんだろう。

 防御にサイコキネシスの集中を割いているから攻撃できないんだ。

「オラァッ!!」

 グラがサイコキネシスの磁場を避けて横からレッサに襲い掛かる。

 俺もそれに続いて距離を詰めていく。

「く、来るな!! 来るな来るな!! いやあああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

 レッサは泣き顔で泣き叫ぶ。

 だがこんなクズな女に慈悲をくれてやる奴なんてこの場に誰もおらず、無慈悲に俺の剣とグラの槍が今にもレッサに襲い掛かる。

 だが・・・。



「なぁ~んつって☆」



「!!?」

 レッサが何故かペロリと舌を出してウインクする。

 その瞬間に事が起こった。



「「「「「「な!!!??」」」」」



 なんと部屋全体の床がまるで二枚扉が開く様に開いた。

 何が起こったか分からないまま俺達は重力に逆らえないまま深い闇の中へ落下した。

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