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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
76/101

#76 死霊使い


~ ウルド B.R.A.I.N基地~




「サン、起きろ(アウェイク)!!」

「うっ・・・!」

 


 ライがサンの能力を呼び起こす言葉を発するとサンは急にうめき声をあげて倒れる。

「えぇ!?」

 いやいやいやこれから戦うって時にこの状態はマズイだろ!!

「ウルド、頼みがある。」

「あ?」

「ガアァッ!!」

「ってうおッ!?」 

 ライの意味不明な言動を理解する間もなく猟犬(ハウンド)が襲い掛かって来る。

 奴が振るって来る斧を剣で止める。

 その隙にライが猟犬(ハウンド)を撃って仕留める。

「なんだよッ!!」

「ちょっち時間稼いでくんね?」

「ちっ・・・しゃあねぇ、なッ!!」

 続けて来る猟犬(ハウンド)の鉈を止めて拳弓銃(ハンドボウガン)で仕留めた後、さらに迫って来る武器を止める。

「!」

 短剣(ナイフ)だ。

 しかしおかしい。

 獣人が使う武器は大振りの剣や斧や鉈、こんな武器を使うのは・・・。

「うぶるるぉあぁッ!」

「!!?」

 B.R.A.I.Nの兵士!?

 にしたって様子がおかしい!!

「このッ!!」

 すぐに蹴り飛ばして引き剥がす。

「おおごぁぶぉおおぉぅぁあ・・・!」

「おいおいおい・・・!」

「なんなのですか・・・!?」

 なんだこれ・・・!

 キマってるとかそんなレベルじゃねぇぞ!?

 なんか墓場で戦うグールやリビングデッドみたいな不死族(アンデッド)みたいに立ち方がまともじゃないし、目も右と左があっちこっち別の方向を向いて一つも焦点が合ってない!!

 明らかに普通じゃねぇ!!

「くそっ!! なんなんだこいつらッ!!」

「ふむ、恐らくは頭数を増やす為に猟犬(ハウンド)の改造を此処の警備員にも使ったって所か。さしずめ劣化版(インフェリア)猟犬(ハウンド)ってところかな?」

「冷静な解説どうもありがとうッ!! あんたももう少しやる気出せッ!!」

 壮絶な数の猟犬(ハウンド)達の猛攻を捌いて反撃をしては避けてを繰り返す俺を尻目にフレッドは冷静に状況を解説しつつ、自分は機動隊員が銃で弾幕を張っている後ろで援護射撃していた。


業火(リフュー) (カーン) 分解(ディモンタージュ) 展開(ディプロイメント)


 ルタが魔法の詠唱を始める。

 するとルタの頭上で火の玉が無数に現れる。

「ガアァァァッ!!」

 猟犬(ハウンド)の一体が察してルタに襲い掛かる。

「ッ!!?」

 しかし猟犬(ハウンド)()()()止まる。

「ぐっ・・・むむむ・・・!」

 ティルが手を前に翳して踏ん張っている。

 サイコキネシスで猟犬(ハウンド)を止めているみたいだ。

「ナイスですティル!!」

「グァッ!!」

 ちゃっかりメロがそれに跳びかかって猟犬(ハウンド)の横腹部を切り裂いた。


広域(ヴァスティゾン) 射出(エジャキュレーション)


 そうこうしている内にルタの魔法の詠唱が終わる。



彗星矢一斉射(コメットレイン)!!」



 ルタの最後の詠唱を合図に火の球の雨が一斉に猟犬(ハウンド)達に襲い掛かる。

 着弾地点で小規模だが爆発が起き、その数も先程ルタの展開した炎の数なので至る所で炎の矢が爆ぜる。

「グゥ!?」

「うぼぁぁッ!!」

 猟犬(ハウンド)の数が多く、奴らを殲滅するほどの威力は無いが奴らを攪乱するのには充分だった。

「ありがとさん。もう充分だ。」

 ライが突如礼を言ってくる。

 だが。

「・・・はっ、やっとかよ。」

 俺にはその意図は分かった。

 何故なら・・・。



「起動完了。ご命令を(マスター)。」



 サンが目覚めた。

 前は通信機越しで能力が発動して実際の姿を見ていなかったが今のサンは目が虚ろであの喋り方から薄々想像はしていたがやはりと言っていいか、まるで表情と言う表情もない。

 まるで感情の無い人形の様だ。

 いや、今はそんな事はどうでもいいな。

 こいつの能力は大体知ってる。

 ディグに聞くまでもなく、獣人を収容所から救助する時に聞いたからな。

 脳の半分が機械の改造人間。

 ライの命令で機械の脳を起動すると人間に不可能な精密射撃、計算などを機械の脳でやってのける能力・・・。

「・・・。」

 ・・・いや待て?

 ()()()()()でどうやってこの多勢に無勢の状況を打破するってんだ!?

 いやいや狙撃とは訳違うんだぞ!?

 バリバリ敵の射程内じゃん!!

 どうやって戦うつもりだよ!!



()()()。」



「了解。迷彩(カモフラージュ)展開。」

 そう言うとサンは腰から筒状の何かを取り出す。

 そしてその横についているボタンを押すと筒からボンと言う音がしたかと思うと何やら布が飛ぶような音が聞こえる。

 するとサンの姿が突如消える。

 いや、正確には透明な何かがサンを隠したような感じだ。

「曲名は・・・。」

 意味深な言葉を発してライが銃を一丁宙に放り投げると銃が突如消える。

「ガアァァァッ!!!」

「おぶるぁぁぅぁッ!!」



「『Can't be seen by idiots. ~悪夢~』だ。」



 猟犬(ハウンド)達が一斉に襲い掛かるがライは無謀にも真っ向から真っ直ぐに突っ込んでいく。

 しかしいきなり身体を閉じるように腕を交差させる。

「おら踊れ。」

 再び腕を広げて出て来たものは意外にもと言うかやはりと言うか、手榴弾だった。

 五個ほどの手榴弾がばら撒かれると周囲は爆風を巻き上げる。

「グゥ・・・グガッ!?」

「ガァッ!!」

「うぼぁッ!!」

 爆発から逃れる形で怯んだ猟犬(ハウンド)が一体、また一体と銃声と共に倒れていく。

 撃ったのはライじゃない。

 恐らくだが先程銃が消えたのと何か関係があるんじゃないのかと思う。

「まさか・・・サンが?」

 透明になってライから一丁銃を受け取ったサンが撃ってるのか?

 しかしそれにしてもおかしい。

 撃たれて倒れていく猟犬(ハウンド)の順番と位置がおかしい。

 ライに向かって右側の猟犬(ハウンド)が後ろから撃たれたかと思うと、今度は左の猟犬(ハウンド)が側頭部を撃たれ、その次は斜め右前の少し離れた猟犬(ハウンド)が背後から撃たれる。

 弾の軌道が全く持ってでたらめだ。

 位置を変えて撃つにしてもこんな短い間隔でこんな順番で倒すのは仮に上昇(ライズ)を使ったとしても不可能だ!

「サンの能力は『機械の脳による高速計算から撃ちだされる精密射撃』。」

「!」

 フレッドが語り始める。

「その精密射撃は弾丸が障害物に当たって変わる軌道すら予測出来る。此処まで言ったらこの射撃のトリックは分かるかな?」

「『跳弾』・・・!」

 銃弾を壁に飛ばして跳ね返して当ててるってのか・・・!?

「そう。それを迷彩の外套(マント)で透明になった状態、かつ移動しながらやるんだ。彼女の位置の特定は不可能。で、そんな彼女より彼らが相手にしないといけないのは・・・。」

「どうしたッ!! 殺してみろやッ!!」

「グァァッ!!」

「おぼぅぁぁッ!!」

 ライはいつの間にか短剣(ナイフ)を取り出しており、敵の攻撃を受けながら銃で撃ち、短剣(ナイフ)で急所を刺したりして倒しながら派手に戦っている。

「『不死身で殺しきれない男』だ。」

「・・・。」

 再生能力で殺しきれない身体を利用して派手に立ち回るライ。

 そのライの影で特定困難な隠密と精密射撃で確実に敵の数を減らすサン。

 確かに完璧な連携(コンビネーション)だ。



死霊使い(ネクロマンサー)の銃が片方消えたら諦めろ。奴を倒すことも逃げる事も叶わず『冥府の舞踏会』へ招かれる。』



「!」

 突然ルタが念話で意味不明な言葉を話し始めた。

『なんだそれ?』

(こっち)じゃ有名な言葉だよ。いくら攻撃しても死なないし、あり得ない方向から何発もの銃弾が飛んでくる。その姿はまるで『冥府の神と契約して不死身の身体を手に入れ、亡霊を操る死霊使い(ネクロマンサー)』だってね。』

死霊使い(ネクロマンサー)って・・・。』

 一番ロキウスに似つかわしくない通り名だな。

「うし! 終了!」

 そうこうしている内に猟犬(ハウンド)達はライ達によって全滅した。

「次の命令を、(マスター)。」

 サンがライの近くで迷彩と思われる外套(マント)を取って現れる。

眠れ(スリープ)。」

「了解。機能、停止します。」

 ライが命令するとサンは倒れる。

「なあ、あれってやらないとダメなのか?」

「ん?」

 俺はフレッドに疑問を投げかける。

「機能を停止させないとマズイのか?」

「いや、特に不利益(デメリット)は無いし、解かなくても問題はない。」

「じゃあそのままでも良いんじゃ・・・。」

「ただし解除しなきゃ彼女はずっとあの機械の脳に意識が移ったままで本来のサンは眠り続ける事になる。それは

「もういい。」

「いいのかい?」

「ああ。」

 察した。

 恐らくはサンを人間として扱いたいんだろう。

 確かにずっとあの淡々としか物を言わないサンよりはあの感情豊かなサンの方が彼女らしいし、ライもそっちの方が良いんだろう。

 ・・・あの変態趣味さえなければだが。

「さて、行くか!」

 意気揚々とライがサンを背負いながら部屋の奥へ進もうとした時だ。



『同じゴミと戦う気分はどうだ? ゴミ共が。』



「!」

 室内に女の声が響く。

 抵抗組織(レジスタンス)の基地で襲撃された時に聞いたようなアナウンスの音声だ。

 声の主は・・・聞いたことのない女の声だ。

 声の感じからして三十は軽く超えてそうな大人の女の声だ。

「ラベスタ!!」

『お前も出張ってここまで来るなんて気がふれたか? ディグ!!』

「?」

 ディグは知り合いみたいだ。

猟犬(ハウンド)を作ったかと思えば自分の兵士まで手を出すなんて・・・ここまで堕ちたか!!」

 ディグはライやサンにからかわれていた時とは比較にならない程怒っている。

『使えないゴミを再利用したまでだ。研究対象(モルモット)を逃がす無能な警備員共を改造して兵にした。生憎と使える資源は搾りかすになるまで使わないと気が済まない質でな。』

「他人の命を軽んじる所は相変わらずみたいだな。()()()()()として恥ずかしいッ!!」

「え!?」

 科学者!!?

「ああ、そう言えば教えていなかったね。」

 驚く俺に気づいてフレッドが話始める。

「ディグは元々飛び級で大学を卒業して研究所に配属された研究員だ。」

「えぇ・・・!」

 てっきりディグも輝ける人類(グロリアス)だと思ってた・・・!

 つまり素の人間であそこまで頭がいいって事かよ・・・!

「じ、じゃあ双子のサンも・・・!」

「いや、彼女は正確には双子じゃない、ディグの遺伝子を利用して作られた複製(クローン)だ。」

「おいおい・・・!」

 二重(ダブル)で驚愕の事実・・・!



「よぉ、久しぶりだなぁ()()()~?」



「え”!?」

「マ、マミィ・・・!」

 ライの突然の呼び方に俺とルタは引いた。

 だが挑発的で遊び半分な言い方からして本気でその呼び方で呼んではいないみたいだ。

 ・・・本当に違うよな?

『・・・誰だお前は?』

「ッハッハッハ!!」

 ラベスタが怒りの籠った声で他人の様に扱いをしてくる様子にライは爆笑する。

「おいおい自分が手塩にかけて育てた子供が家出した途端に『家族じゃない』って? 寂しいな~。」

 この口ぶり。

 どうやらライ達・・・いや『輝ける人類(グロリアス)』を育てていた科学者みたいだな。

 しかもこの言い方だと奴は親代わりにライ達と接していたのか?

『黙れ、お前のようなゴミの事などもう知らん。わざわざ廃棄されに来たのなら都合がいい。』

「あーあー、相変わらず両極端だよな~? 他人が『愛しの我が子』と『ゴミ』の二極端、その物の見方で廃棄決定のあいつらに対して今まで優しかった態度が一変して豹変、姉ちゃんが仲間連れて脱走決め込んだ一番の理由がてめぇのそういうとこだぞクソBBA(ババア)!!」

『ふん、あんな親の気持ちも分からない親不孝の小娘の事なんぞもう知らん。』

「なぁにが『親の気持ち』だ笑わせるぜッ!! 自分(てめぇ)の利益に子供(ガキ)を利用する奴が親なもんか!!」

『なんとでも言え。どうせお前たちは



「なぁ、教えてくれ。」



「『・・・あ?』」

 突如口を挟んだ俺にライとラベスタの声が被る。

「『親』ってなんなんだ?」

『何?』

「俺、小さい頃に親が死んだんだ。」

『だからなんだ。』

「だからさ、俺の知ってる『親』ってその時の物しか知らないんだけどさ。」

「・・・おいおいなんだよ急に。」

 ライまで呆れるが俺は話を続ける。

「俺の親、元々は父さんが結構上手くやってる商人だったんだよ。けどある日友人に騙されて破産して王都を追いやられたんだ。その時一緒になってた母さんが俺を身籠ってたらしいんだ。」

『だから何が言いたい!』

 ラベスタが捲し立てるが俺は話を続ける。

「今思えば馬鹿な話だよな。母さんも父さんと別れて俺なんか産まなきゃ食い扶持も減って少しは楽出来たのにさ・・・それでも父さんと別れずに俺を生んで辺境の村で俺を二人で大事に育ててくれた。話に聞いただけでホントかどうかは知らないけどさ・・・でもある時、二人に聞いちゃったんだ。『なんでそんな苦しい状況で俺を産んだのか』って・・・そしたら何したと思う?」

「何したんだよ。」

 ラベスタとは対照的にライは鼻で笑いながら面白半分に聞いてくる。

「殴られた。生まれて初めて父さんにだ。しかもグーで思いっきり・・・そんでその後、母さんと一緒に俺を抱きしめて言ったんだ。『家族だからだよ』って・・・。」

『話が見えん!! もういい!! このままお前たちを・・・。』

「なあ。あんたにも本当はいたんじゃないか?」

『!!?』



「『損得関係なしに愛した子供』が・・・。」



『・・・。』

 ラベスタは黙り込む。

 しばらく沈黙が続き、辺りが静まり返るがすぐに静寂は破られる。




『ああああああああああああああああぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!!』




 ラベスタの怒号とも錯乱とも取れる声によってだ。

 しかも何か硬い物がぶつかる音や紙状の物がビラビラと舞い散る音が聞こえる。

 アナウンスの向こうで暴れているようだ。

「あー、これはやっちゃったね。ウルド。」

「え?」

 フレッドが呆れ気味に俺の肩を叩く。

 え?

 俺、何か変な事言ったか?

「お兄ちゃん。」

「?」

 ルタもフレッドと反対から肩に手を置く。

 表情がなんかおかしい。

 呆れなのか嘲笑なのかよく分からない感じの微妙な笑みだ。

「お兄ちゃんってさ・・・。」

「なんだよ。」

「『真性』だよね?」

「は?」

「何でもない。」

「なんだよ、何が言いたいんだよ・・・。」

 こいつの考えがいまいち分からん。

 ホントになんだ?

 みんなの反応が変だ。

 メロやティルに至っては抱き合って怯えながら俺を見てるし・・・。

 俺、別に変な事言ってないよな?

「・・・ッ!!」

 ライが急に腹を押さえて蹲る。

「どうした? ライ?」

「ぷっくっく・・・!」

「え?」

 ライの様子がおかしい。

「はっはっはっは!! ナイスよナイスぅ!! グッジョブウルドちゃぁん!!」

 ライは愉快そうに大笑いしたかと思ったら俺の背中をバンバン叩く。

「バッチリ図星みたいだなラベスタ!!」

「うああああああぁぁぁッ!!! あああああぁぁぁッ!!」

 ライが皮肉を吐いているみたいだがラベスタは相変わらずアナウンスの向こうで暴れているようだ。

「・・・ダメみたいだな。行こうぜ?」

「あ、ああ。」

 俺達は先を急ぐことにした。

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