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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
75/101

#75 開かずの間


~ウルド 官邸~


 官邸の警備は厳重態勢だった。

 当然だ。

 俺達が来るのが分かっているんだからな。

 目の前にA(アサルト).A(アーミー)や戦車、銃を持った兵士がこれでもかとばかりに官邸の門を守っていた。

「敵A(アサルト).A(アーミー)三体!! こっちに向かってるよ!!」

『了解!! 応戦する!!』

 ディグが警告したのも束の間、A(アサルト).A(アーミー)が此方に向かって来ながら肩に背負った大型の大砲を俺達に向かって構える。

 そして俺達の軍勢に向かって容赦なく撃って来る。

 弾は俺達に当たると派手に爆発して大きな爆炎を巻き上げる。

 しかし・・・。

「へっ、ナイスだ。」

 ライがほくそ笑むのも無理もない。

 俺達は無傷だったからだ。



「・・・させません!」

 


 犯人はティルだ。

 手を目の前に翳しているのは明らかに何かをしたせいだ。

 敵のA(アサルト).A(アーミー)は操縦者が動揺したのか、少し上半身を引かせるような動きをする。

 だがそれでも予想外の事態に気圧されまいと一体がまた砲弾をこちらに向かって撃って来る。

 それが無駄に終わるとも知らずに・・・。



「くっ、うぅ・・・!」



 ティルがまた手を翳し、力むように全身を強張らせると、砲弾はまるで見えない壁に阻まれたかのように何かに衝突して独りでに爆ぜた。

「・・・。」

 『何したんだ?』って普通聞く所だろうが既に手品の種は知っている。

 実は前もってライ達の能力は聞いていた。

 連携を取りやすくするためだ。



---会議から数分後。


「ティル姉の物体を動かすサイコキネシスの力は物体に思念による架空の力圧を加えて動かすんです。しかもそれを瞬間的に発動させれば物体を殴るように衝撃を与える事も出来るんです。」

 ディグは端末を操作して移した立体映像のティルの横で学校の授業で教師が使うような銀の棒を持って説明していた。

「つまり衝撃波的な物で殴るって事か?」

「まぁ、そう思って頂ければ大丈夫ですよ。」




―――『でかしたティル!!』

『あとは任せろ!』

 通信機から二人の男の声がするとその声の主が操縦してるらしきA(アサルト).A(アーミー)が俺達の車を追い越して銃を連射する。

 両手持ちの割に相手の大砲に比べて小振りの銃だがそれでもその巨体が持つ銃なので大きく、それに見合った威力もあるようだ。

 敵のA(アサルト).A(アーミー)に結構な大きさの風穴を何発も開けると敵のA (アサルト).A(アーミー)はそこから火花を上げ、爆発が起こると大破して動かなくなる。

 だが他の敵もただやられようとはせず、背中から青白い炎を噴射させるとホバーバイクのように足を動かさず一気に前進し、此方のA (アサルト).A(アーミー)に詰め寄る。

 そして手に持った大砲で一気に殴りかかる。

 味方も銃を盾のように構えて大砲を防ぐが・・・。

『くっ!』

『このぉ・・・!』

 防戦一方、どうやら此方のA (アサルト).A(アーミー)は接近戦に向いてないようだ。

 だが・・・。



「お邪魔虫入りまぁす!!」



 ふざけた声がしたかと思えば銃声が響く。

 すると敵のA (アサルト).A(アーミー)の目の辺りに張り巡らされたガラス板に弾丸が貫かれ、顔の部分がさっきのように爆発する。

『よしッ!』

 敵が目を潰されて怯んだ隙に味方のA (アサルト).A(アーミー)は立て直して押し込まれた大砲を往なして捌き、敵の胸元に銃弾を撃ち込む。

 敵は先程の奴と同じく上半身を爆発させて動かなくなった。

 さらに敵を撃破した味方のA (アサルト).A(アーミー)は同じく押されていた味方を押し込んでいた敵A (アサルト).A(アーミー)に銃を撃ち込んで倒した。

 サンが狙撃用の銃を構えていた。

 だがサンはホバーバイクを運転中、そんな状態で銃を使おう物なら事故りそうだが・・・。

「おい早くしろ!! きついんだからなこれ!!」

 ホバーバイクのハンドルはサンの後ろに掴まっていたグラが支えていた。

「くそっ、何で俺がこんな地味なこと・・・!」

「メンゴメンゴ~、あとで骨あげるから~。」

「犬じゃねぇッ!! あとくれるなら肉よこせ!!」

「肉ならいいのかよ・・・。」

 サンとグラのやり取りに呆れつつ再度前を見る。

「門の前でA(アサルト).A(アーミー)二体、戦車五台、兵士二十!!」

 ディグが状況を案内(ナビゲート)する。

 数が多い、なら・・・。



雷光(フード) (エペ) 座標(コードニ)

業火(リフュー) (カーン) 座標(コードニ)

 


 俺が剣を抜いて魔法を詠唱すると通信機の向こうからルタの詠唱も聞こえる。

 打ち合わせもしていなかったのにほぼ同時だ。

「何かする気だッ!!」

 敵達はすぐに状況を察して銃で撃って来る。

 だが・・・。

「ティルッ!!」

「はいッ!!」

 ライがティルに合図するとティルが手を前方に翳して押し上げるように上に上げる。

 すると地面の瓦礫が盛り上がって壁の様に立ちはだかり、弾丸の進行を拒む。

 しかし敵の戦車やA(アサルト).A(アーミー)の砲撃には壁も耐え切れず数発当たると粉々に砕け散る。

 だがそれでも()()()()()()



拡散(ラディフュージョン) (リパラディ) 降下(ドロップ)

集束(フォーカリゼッション) (リパラディ) 降下(ドロップ)



 敵の頭上に巨大な炎の球体が現れ、さらに上からどす黒い暗雲が立ち込める。



天怒招来(ラースオブヘブン)!!」

隕炎降来(メテオストライク)!!』



 俺とルタが魔法の詠唱を完了させると敵の戦車と兵士達の頭上には炎の球体と同時に無数の雷とが落ちる。

 落ちた地点は派手に爆発し、巨大なクレーターが出来る。

「おっしゃぁ!!」

「あとは任せろッ!!」

 獣人達は気合を入れて咆哮すると車やホバーバイクから身を乗りだす。

「『大砲』はおめぇらの専売特許じゃねぇぞ?」

 獣人達は二人一組でまるで組体操のように片方がもう片方の腕に乗ると乗せた側は思いっきり投げ飛ばした。

 普通に考えてそんなに跳ぶ筈はないがとんでもない飛距離を跳んでいる。

 彼らの言った通りの『大砲の砲弾』のように・・・。

 恐らくは上昇(ライズ)を使っての投擲と跳躍だ。

 その勢いに乗って敵の兵や戦車に向かって一斉に飛びかかった。

 先程の俺とルタの魔法で散り散りになっていた兵士達は銃で応戦するも勢いづいた獣人達には敵わず、蹂躙されるように殴り倒されていく。

 戦車も照準を定めているうちに乗り込まれて動きが止まる。

 中に乗ってる奴らが何をされているかは・・・うん、想像しないようにしよう。

 A(アサルト).A(アーミー)に至っては一体だけなんとか魔法を回避して生き残っていたが・・・。



「こないだの雪辱戦(リベンジ)だああぁぁッ!!」



 ゾルガを始めとして数人が飛び掛かった勢いで体当たりして転ばせる。

 しかもL字の奇妙な鉄の道具を使って胸の扉らしき場所の隙間に突っ込んでこじ開ける。

 前に武器を貰った成り行きでディグに聞いていたがどうやら『バール』とかいう工具らしい。

「オラァッ!! 出て来いコラァッ!!」

「ひぃぃッ!!」

 中から操縦していたと思われる兵士が引きずり出され、獣人数人にボコられる。

 いや、『ボコられる』で済まされる光景じゃないな。

 周囲にはすぐに血が飛び散り、兵士はゾルガに覆いかぶさられて足しか見えないが暴れる様子もなく力なく脱力した状態でびくびくと動いている。

 多分意識を失っても殴られているのだ。

 ある意味恐ろしい光景だ。

 とにもかくにもこれで敵はほぼ壊滅。

 俺達の車は颯爽と阿鼻叫喚の戦場の中を駆け抜けて門の柵を破り、中庭に突入する。

「おし、いいか!?」

「いいよぉ!」

「マジやんのかよ・・・。」

「バッカお前人ん家に入る時のお作法だろうが! 行くぞぉ?」

 官邸に突入する際、俺達は作戦とは関係ない、ある打ち合わせをしていた。

「せーのッ!」

 それは・・・。


 


「『「「「「おっじゃまっしまぁすッ!!!」」」」』」




 俺、ライ、サン、メロ、ルタ、グラ、以上六名が掛け声をかけるとガシャァァァンと派手にガラスやら瓦礫やらが派手に砕ける音が辺りに響く。

 俺達を含めた数台の車やホバーバイクで一気に体当たりを仕掛けて官邸の壁を派手にぶち壊して侵入したからだ。

さてと、パーティーのお出迎えは~? って、あれ?」

 車から降りて銃を取り出し、居丈高にいつもの様な軽口を叩くライだが奴を含め俺達全員は違和感に気づく。

「誰も、いない???」

 そう、人の気配がない。

「闇討ちか?」

「おいディグ!」

「もうやってる!」

 ライが催促するがすでにディグは端末を開いて辺りを調べていた。

「生体反応がない・・・本当に誰もいないのかな?」

「油断するな。ジャミングの可能性もある。」

 ディグが困惑しているとフレッドが油断しないように諭す。

「だったらアナログだな。」

「あなろぐ?」

 ライがまたロキウス特有の専門用語を言うとメロがそのキャラに違わず間抜けそうな顔で首を傾げる。

 まあ仕方ないな。

 俺だって分からん。

 分からんが大体雰囲気で察した。

「ウルド!」

「ああ。」

 目を閉じて米噛みに指を当てて意識を集中する。

 『魔覚』だ。

 自分達の周囲に生物の魔力がないか索敵する。

 だが・・・。

「居ない・・・?」

 本当に敵が居ない。

 伏兵が居たとしても魔力の類にはド素人のロキウスの連中だ。

 魔力鎮静で居場所を眩ませているとは考えにくい。

 ただそれが逆に不気味だ。

 門の前で俺達の侵入をあれだけ拒んでいたのに中に入った途端に兵の一人も配置しないなんてどう考えてもおかしい。

「どういう事だ?」

「まぁ良いんじゃねぇの?」

 考え込む俺を尻目にライは歩き出す。

「敵が居ないなら進むしかねぇよな?」

 グラも槍を両肩に乗せて歩き出す。

「案外、『かかって来い』って事かも知れないし♪」

 サンも小柄な身体に合わない長い銃の小さなレバーを引きながら歩き出す。

「・・・はぁ。」

 確かに考えても仕方ないか。

 そう思って歩こうとした瞬間・・・。

「ッ!!」

 一瞬ある映像が脳裏を過ぎった。

 かつての仲間が今のライ達の様に歩き出す光景だ。

「ッ・・・。」

 目を閉じ、思考を紛らわす。

 こんな時に何考えてんだ俺は・・・!

「ん!」

「?」

 ルタが俺の前に立って手を差し出す。

「行こう♪ 『お兄ちゃん』!」

「・・・。」

 ルタの手を取らず俺は歩き出す。

「いらねーよ。」

「あらら。」

 わざとらしく間抜けな声を上げるルタの横を通り過ぎるが・・・。

『無理すんな。』

 念話で誰にも聞こえないようにルタに囁く。

「・・・。」

 ルタは振り向きざまに一瞬だけ寂しそうな笑みで俺を見た後・・・。

「お兄ちゃんのいけずー!!」

「ちょ、おい!! くっつくな!!」

 ルタは俺の腕を両手で抱きつくように捕まえてくる。

「おうおう敵地でイチャつくとはえらく余裕だな!!」

「リア充死スベシ。」

「サ、サンだめだよ! そんな言葉使っちゃ!」

 ライが俺たちをおちょくるとサンはギギギと機械のように首だけこちらに向けてグールの様な目で呪いのような言葉を発し、それにティルが慌ててなだめるように諭す。

「イチャついてねぇ!!」

「へぇへぇ! バカップルは口を揃えてそういうんですよね~。」

「だからイチャついてねえっつうのッ!!」

「アーナンデダロウ。銃口ガ勝手ニソッチニ・・・。」

「おい馬鹿!! 冗談でもやめろッ!!」

 ライが引き続きおちょくるのに抗議しているとサンが狙撃用の銃をこちらに向けてきた。

「大丈夫だよ! サンにもそのうちいい相手見つかるから!」

「男に女装させる変態趣味さえ直せばな。」

「よし撃つ!」

「馬鹿やめろッ!!」

「お兄ちゃん早く謝ってッ!!」

「ルタッ!! お前が離れたらいいだけだろッ!!」



『緊急報告ッ!!』



「「「「!!?」」」」

 馬鹿なやり取りをしている最中にいきなり通信機から連絡が来る。

 おそらく門の前の敵の残党を鎮圧していた部隊だろう。

「どうした!」

 ライが通信機に手を添えて通信機の向こうの男に問いただす。

「後方より敵勢接近!! おそらくはこちらの基地に制圧に来ていた奴らだ!!」

「ほう、思ったより早かったね。」

 フレッドが場違いに呑気な声を上げる。

「感心してる場合じゃねえだろ!!」

「うん、そうだね。」

 俺が突っ込むとフレッドは相変わらずな生返事をして通信機に手を添える。

「とりあえず門の前に残っている制圧部隊はそのまま奴等を迎撃、こちらにいる部隊の半数も応援に よこす。無理に撃ち合うな? 危なくなったら戦線を下げてもいい。出来るだけ時間を稼ぐ形でなんとか持ちこたえてくれ。その間にこちらで敵地を制圧する。」

『了解!!』

 フレッドが的確に指示を出すと通信機の向こうの男は返答して通信を切った。

 指示を聞いていた 味方の兵隊の一部は フレッドが指示した通り走って門に向かって行った。

「さて・・・。」

 フレッドは俺たちに視線を移す。

「見ての通りだ。時間はない、急いで奴らの基地を潰そう!」

 そう言って右拳を握りながら頭の高さまで上げる。

「オーライ! さっさと行くぞお前ら!」

 フレッドに続いてライが指揮を取ると俺たちは急いで開かずの間に走って行く。



―――「これが『開かずの間』・・・?」


 扉は古い古城の大扉の様だがロキウスにしては珍しい。

 機械のような構造も一切なしの扉だ。

「『開かずの間』って名前おかしくないですか?」

 突っ込んできたのはメロだ。

「私、普通に開けられたんですよ?」

 メロの言うことはごもっともだ。

 こいつの言うことが本当ならこいつは基地から出る際、中にある転移装置から出てきて扉を開けて出たらしい。

 それで『開かずの間』って話はおかしい。

「じゃあ開けてみたら?」

 フレッドが意地の悪そうに笑いながらメロに言う。

「?」

 不審そうにフレッドを見た後、メロは扉のドアノブに手を掛ける。

「ん?」

 ドアノブを捻ったようだが回らないようだ。

「ん~~~~~!! んぎぎぎぎ!!」

 強引に押したり引いたりするがドアが開く気配はない。

「ゼェ・・・ゼェ・・・なんでですか?」

「どいてな。」

 そう言うとグラは拳を握り、一気に扉を殴った。

 力任せにぶち壊す気だ。

 だが・・・。

「・・・・・・・・・痛ってぇ!」

 数秒固まったが何を観念したのか急に弱気になって殴った手を痛そうに殴った手をひらひらさせる。

「その扉の木の原料は『コクヨウ樹』、一部の国の軍艦で船の心臓部である竜骨に使われる木だ。獣人の打撃でも無理だろうね。」

 フレッドは手を痛めるグラを尻目に解説する。

「お、おかしいのです・・・()()()()()は簡単に開いたのに・・・!」

「!」

 息を切らしながら言うメロの台詞で俺には一つ仮説が浮かんだ。

「まさか・・・!」

「ん? 気づいた?」

 勘付いた俺にフレッドは楽し気に問いかける。

「『出る時にしか開かない仕組み』・・・?」

「五十点!」

「は?」

 何言ってんだこの男・・・。

「正確には『出る時は無条件で出られる』って事だ。」

「なんだよ、何が言いたいんだよ?」

「君が言う通りだったら奴らだってこの中には入れない。」

「あ、そっか。」

 つまり『入る時は条件が必要』ってことか。

「そう、例えばこういう所に・・・。」

 そう言いながらフレッドは拳の裏で扉の近くの壁をコンコンと叩く。

 世間話しながらに見えるが、その叩き方は何かを探す様に一発ごとに位置が徐々にずれている。

「?」

 六~七発叩いたあたりか、壁を叩いた音がちょっと低い音がした。

()()()()とか・・・。」

 フレッドがその部分を軽く親指で押すと押した部分がまるでドアの形をしたフタの様に開く。

 中には抵抗組織(レジスタンス)の基地で見たようなカードキーを差し込むような溝付きの装置があった。

「カードキーが必要ってことか?」

「うん、でも残念ながらカードキーなんて私達が持ってる訳がない。」

「じゃあ入れねぇじゃん!」

「そのために優秀な人材がいるんだよ。」

「優秀な人材?」

「ディグ!」

「はい。」

 そう言うとディグが割って入るように端末を持って扉の前に立つ。

 そして装置の下の部分のネジを細い工具で取ると装置の下の部分の蓋のような板が取れる。

 中に何か差し込むような穴があり、ディグはひも状の機械の部品を差し込み、同じように自分の端末にそれを差し込んで端末と繋ぐ。

「有線接続なら一分もかかりません。」

 そう言いながらカタカタと音を立てながら端末を操作する。

「そりゃいい!」

「え?」

「どういう事です?」

「シーッ。」

「「「???」」」

 フレッドが人差し指を口の前に立てて『静かに』のポーズを取ると俺とメロ、ついでにグラも訳が分からず頭にハテナを浮かべる。

 そうこうしているうちに『ピー」と独特の機械音が鳴ってガチャリと鍵が開く音が聞こえる。

「よし。」

「開いたのか?」

「はい。思ったより楽勝でした。」

「・・・。」

 素人目で見ても分かる。

 ディグのやっている事は例えロキウスだろうと子供の出来る範囲の事を超えている。

 頼もしいとは思えるがそれと同時に気味が悪いとも思える。

 まぁ、今はそんな事言っても居られんが・・・。

「さぁて、B.R.A.I.Nのお宅訪も~・・・!」

 ライがドアを開けて急に立ち止まって固まる。

「兄さん? 一体何があぅッ!?」

 ティルが続いて入ろうとするとライが急にティルを捕まえて目を塞ぐ。

「??」

 何が起こった?

 ライの行動の意味が分からない。

「一体何が・・・・・・ッ!!!?」

 『おいおい嘘だろ!?』

 中を見た瞬間に思ってしまった。

「ひぃ!?」

「嘘・・・!」

 続いて部屋に入ったメロとサンも驚愕する。

 なんと部屋の奥に大きな十字架が立っており、それに貼り付けにされていた人物がいた。

「マルク・・・!」

 大統領だ。

 だが奴は言葉を一言も発しない。

 死んでいる。

 何故なら全身のあらゆる場所を銃弾で撃ち抜かれたような穴があり、血まみれで十字架を濡らし流れた血が下まで落ちて十字架の端で滴っていた。

「ふむ、『役立たずは消す』か。ついでに我々に『自分達に逆らってこうなる覚悟はあるか』って見せしめだろうね。無駄がないことだ。」

 丁度入って来たフレッドが冷静に状況を分析するように大統領を眺める。



『レディィスエェェンジェントルメェェェン!!』



「!!?」

 急に声が聞こえたかと思うと急に何かが俺達の目の前に現れる。

 褐色肌の金髪の女だ。

 ティルやルタと同い年くらいで見た感じライやサンに違わずやんちゃそうに見える女だ。

「歓迎セレモニーは喜んで・・・」

 そう言うのも束の間、銃声が三、四発と聞こえる。

「・・・いただけたようねぇ?」

「ああ、てめぇのツラ拝めるなんて最高に最低なクソイベだぜ、『レッサ』。」

 撃ったのはライだ。

 だがレッサと呼ばれた女は無傷だ。

 しかし何故という疑問はすぐに薄れる。

 彼女の姿がおかしいからだ。

 若干転移装置のような光の様に青みががって見える上に若干姿がブレたりしている。

 恐らくは映像だろう。

 ライの口ぶりからしてお互いに知り合い。

 恐らくは奴も輝ける人類(グロリアス)だろう。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

「?」

 ティルの様子がおかしい。

「あ~らティル~? お元気してたぁ? メロちゃん取り戻して何とか持ち直したみたいだけどぉ、またこっちに連れて来るなんて何? また私に取られたいの?」

「ッ・・・!」

 ティルの顔がますます青くなる。

 いつもびくびくしたような子だがいつにも増して怯えているように見える。

「このアバズレ!! ティルを脅すのはいい加減やめるのですッ!!」

「はっ、アバズレアバズレって、ボキャ貧なの? 頭悪い子はこれだから・・・。」

 メロがティルの前に立ってレッサに吠え掛かるがレッサは呆れるようにネイルを付けた爪を眺める。

「じゃあ『ビッ●』ってのはどうだ?」

「ああ?」

 ライが口を挟むとレッサは片目を開いてライを睨む。

「今だから教えてやるよ。あの時俺がティル連れて脱走した時の目的な? 『お前に対する嫌がらせ』だったんだよ。」

「はあ? 私に対する嫌がらせ? 何それ?」

「お前、その傲慢不遜が過ぎて友達一人もいなかったろ?」

「それが何?」

「そんなお前から『思い通りに出来る唯一の友達』を奪ったらどうなるか・・・ちょっと興味があったんだよな。」

「はっ、何を言い出すかと思えば、負け惜しみの嫌がらせにしか聞こえないんですけど~? しかもティルはどうせあの時成績不十分で廃棄寸前だったのよ? そんなゴミが居なくなったってどうってこと・・・。」

「知ってんぜ? お前の力の『欠点』。」

「あ?」

「能力が強力な反面、精神が不安定。そのせいでストレスが過剰に働いた結果ヒステリックを起こしやすくなっていた。けどある時を境に精神が安定した・・・それっていつだったかな?」

「・・・。」

 ライが何やら嫌味ったらしく説明するとレッサは黙り込む。



「ティルとお前の言う『お友達関係』になった途端にだ。」



「黙れッ!!」

「それからお前は能力を開花させて戦闘成績を上げていった。天狗になってティルを足蹴にしていた時にはもう自覚が消え失せていただろうがな。」

「だぁまれぇッ!!!!!」

 ライの挑発にレッサは激怒する。

「おーおー、俺を殺すかぁ? でも目の前に映ってるお前じゃ無理だろうけどなぁ?」

「フゥ・・・! フゥ・・・!」

 レッサは怒りを抑えるように頭を抱えて息を落ち着かせる。

「・・・ハッ、けどライ? ひとつ忘れてない?」

「あ?」

「あんたの脱出計画は『完全には成功していない』。」

「・・・。」

 そう言うと今度はライが黙り込む。

「逃げたあんた達は研究所で投薬を受けられず、脱出に成功した半数以上の奴らが死んだ・・・違う?」

「ああ、そうだな。」

 ライは冷静に答えるが銃を握る腕が震えている。

 怒っているみたいだ。

「しかも首謀者だった『あの女』も途中で捕まった。」

「おーおー、人の過去をよくもまぁほじくってくれますねぇこのクソアマ・・・!」

 ライは笑っているが米噛みから欠陥が浮き出ている。

 怒りがほぼ目に見える状態だ。

「そんなあんたに良い事一つ教えてあげる。」

「あ?」



「あいつ、今も生きてるよ?」



「!!??」

 ライは思いっきり目を見開く。

「あは♪ 何その間抜けな顔!」

「ッ!!!」

 ライはまた銃をぶっ放す。

 だが映像のレッサには効く訳もない。

「・・・つまらんハッタリはやめろ。」

「いや嘘じゃないし、此処で嘘言ってあたしに何の得があるわけ?」

「本当の事いう得もねぇだろ。」

「まぁそうかもね~、でも嘘か本当かなんてこの先進めば分かるっしょ? じゃね~♪」

 そう言うと映像のレッサは笑いながらまるで消える幽霊のように足からスーッと消えていく。

「・・・やれやれ、まんまと時間を稼がれたね。」

 フレッドが呆れるようにため息を吐いて俺達の前に出る。

「ライ、大丈夫か?」

「兄さん・・・。」

 フレッドが心配するとティルも同様にライに歩み寄る。

「へっ・・・心配されるとか俺もヤキが回ったか?」

「ライ・・・。」

「ッ!!」

「え!?」

 ライは信じられない行動に出る。

 銃で自分の足を撃ちやがった!!

「痛ってぇ!!」

「ライ!! 何やってんだ!!」

「心配ねぇよ。ただの『気付け』だ。それに、ほら・・・。」

「!」

 ライの足は血が出ていたがすぐに撃たれた部分が修復して元通りになる。

 ディグから聞いていた『再生能力』か。

 分かってても直に見るとヤバイ能力だな。

「ふぅ、切り替え完了っと!!」

 一息つくとライは上体を上げる。

「おら時間ねぇんだ!! さっさと行くぞ!!」

「お、おお・・・。」

 ライに先導されながら俺達は転移装置に移動する。

 抵抗組織(レジスタンス)の機動部隊も合わせて大所帯だったが、それでも転移装置のサイズはデカく、案外全員乗れる広さがあった。

 乗ってしばらくすると転移装置の光が強くなって俺達の視界も青い光で埋め尽くされる。

 数秒後、視界が戻ると大広間のような場所に出るが・・・。



「・・・ですよね。」



 B.R.A.I.Nの兵士と猟犬(ハウンド)がこれでもかと言う数で待っていた。

「さあ、今度こそパーティーの始まりだ!!」

「ああ!」

 俺達はそれぞれ武器を手に奴らに向かって行った。

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