#71 思わぬ助っ人
~ロキウス市街地~
壁に隔たれ、独自に文明が発達した異世界のような国、ロキウス。
道は舗装され、アスファルトの道路を人が歩き、車が通り、ホバーバイクが行きかい、ビルが立ち並ぶ。
ビルにはテレビ用のモニターが設置されており、ニュースが流れている。
『続いてのニュースです。』
モニターに映し出されたスーツの女性はニュースを伝えるアナウンサーだろう。
カメラと思われる此方の視線と読み上げるニュースペーパーを交互に見ながら淡々とニュースを伝える。
「二日前、東の国境の関所を破り、攻め入って鎮圧された獣人についてマルク大統領は、『只人に対する獣人の攻撃性は異常であり、これは世界に伝えるべき重大な事件である』とし、聖堂教会に獣人の危険性を伝え、獣人を害獣指定するべく、各国要人を集め、緊急国際会議を開く意思を表明致しました。こちらが先程入った記者会見の映像です。」
そう言うとモニターの映像は変わる。
映像は背景が青一色で統一された無機質ともいえる場所でマイクの設置された壇上に立っている人物が今かと演説をしようとしていた。
「先日の獣人襲撃の一件に関しては国民も周知の事だと思われる。確かに我が国は獣人の国、アステリオンと国交険悪の末、戦争中となっているがこの理由はそもそも獣人が我が国に不法侵犯を犯している為だからだ。歴史を顧みても、そもそもアステリオンの獣人は他国に無法な攻撃を行い、強引に国土を広げた為に周りの国は関所を設けることでそれを阻止している。」
前方のあらゆる方向からカメラのフラッシュが瞬く中、更に大統領は何かの資料と思わしき紙をマイクの傍から取り出し、見えるように顔の高さまで持ち上げる。
「さらに軍からの報告に依れば獣人はルヴァーナへも不法侵犯を犯しているとの報告がある。これは我が国の主張を証明する獣人の行動と言える。このまま獣人の暴挙を許せば、これは我が国だけの問題にはならないだろう。これは我々、『只人』の尊厳を掛けた戦いである。」
パシャリパシャリとカメラのフラッシュが飛び交う中、大統領は演説を続けていたが映像はそこで終わってまたモニターの映像は先ほどのアナウンサーの映像に戻る。
『これに対し、各政党では敵国に領土侵犯を受けた事から多数の賛成がある中、一部対立政党では『戦争中に無暗に聖堂教会に一方的な主張をしてもただの一国家の主張だとされ、聞き入れられない可能性がある、戦争をいち早く終結させたのちに改めて獣人についての見解を聖堂教会に示すべきだ』としてマルク大統領の判断を早計であるという懸念を示しているようで、僅かながら、論争の火種があると思われます。』
そしてアナウンサーはニュースペーパーを取り出す。
『では次のニュースです。数日前、不倫が発覚した俳優、イーグル=バードマン氏(47)は記者会見での冒頭で『そんなことより面白い話があった。昨日、キャバクラに行ってたら・・・』』
アナウンサーは淡々とニュースを読み上げていた。
~マルク 大統領官邸~
「ふむ、まぁこんなものか。」
官邸のロビーで先日取り寄せたばかりの豆からひいたコーヒーを片手に、テレビでの自分の演説に対する国の反応を見ていた。
「全く奴らめ、我が国が攻め込まれて一大事だと言うのにつまらん難癖をつけおって。」
対立政党の発言に関しては恐らくは適当に揚げ足を取って此方の発言力を弱め、あわよくば失脚させようとしているだけだろう。
愚か、実に愚かだ。
ロキウス全体が獣人を憎んでいるこんな時にまで揚げ足を取ろうとしていては国民に『自分達は椅子が欲しいだけの汚い野心家だ』と言っているような物だ。
「馬鹿共め。」
そう言ってコーヒーに口を付けようとした瞬間・・・。
「た、大変ですッ!!」
スーツを着た男が一人入って来た。
「なんだ?」
「官邸に正体不明の侵入者が・・・!」
「侵入者? 警備は何をしていた! 何故侵入を許した!!」
「そ、それが・・・。」
「なんだ、早く言え!」
「官邸の中心部辺りで発見されたようで、侵入の痕跡も見つかりません、私には何が何やら・・・。」
「・・・。」
「大統領?」
黙り込んだ私を見て部下は眉を曲げる。
「そいつは官邸を抜け出したか?」
「い、いえ・・・現在警備員と交戦しながら邸内を逃げ回っています。」
「ならば捕らえろッ!! なんとしてもだッ!!」
「ッ!? は、はいッ!!」
急に声を荒げた私に部下は驚いたがとにかくとばかりに返事をして部屋を出ていく。
邸内の中心には『開かずの間』と呼ばれる国家機密の部屋がある。
その部屋の中は一部の者しか知らされずさっきの部下も恐らくは知らないだろう。
禁断の『開かずの間』、そこには転移装置があるだけだ。
行き先は・・・。
「不味いな。」
あの転移装置の先から来たと言うならその『侵入者』は生きて帰す訳にはいかない!!
~メロ 官邸~
「止まれぇッ!!」
「ひぃぃぃぃッ!!」
唐突ですけど私、絶賛大ピンチなのですッ!!
今の状況は言わずもがな最悪なのですッ!!
なんか銃を持ったスーツの男たちに追い回されてるのですッ!!
---数分前。
何やらお城みたいに豪華な建物かと思ってさっきの装置の部屋から出て、中を探索していたのです。
スーツの男が何人か通路を歩いていたので魔覚で相手の位置を把握しながら出口を探していたのですが・・・。
(むぅ・・・。)
さっきから出口らしき場所も見当たらないのです。
しかも隠れながら探すって意外と難しいのです。
人がいる所とかどうしても探索出来ないですし、あの時の暗殺者さんみたいに不意打ちで強行突破とかも多分無理なのです。
「!!」
マズイのです。
今魔覚で感知したら前後から複数の反応なのです!
この道は一本道、お互いにこっちに向かって来てるのです!
何処か隠れる場所は・・・!
ーーー数秒後。
「む!」
「おお!?」
前後からスーツの男の集団の中心にいた男同士が同時に声を上げるのです。
「これはこれは、ランダル殿!」
「キャンベル議長、先週の会食以来ですな!」
二人は挨拶がわりに軽く抱き合う様にしてお互いの背中を軽くポンポンと叩いてから離れるのです。
お互いに仲が良さそうなのです。
あ、私なのですが・・・。
(ふぅ・・・ふぅ・・・!)
丁度植木鉢が何個も乗っている大きな鉢置きがあったのでその後ろで猫みたいに丸まって隠れていたのです。
「いやはや、この間は災難でしたな! まさか獣人が攻めて来るとは!」
「全くです、私の傘下の店も何件か潰されたようで、お陰で修繕に予算を割かなくてはならないわけですからな!」
「迷惑な連中ですな獣人と言うのは、異常に好戦的で野蛮な連中と聞きます。外獣指定して排除されればよろしいかと。」
「そうですな、大統領も早くあの法案を可決してくれなければ我々もオチオチ寝てもおれん。」
「全くですな、はっはっは!」
しばらくスーツのジジイ共は長々と世間話を始めるのです。
あー、ウザいのです。
さっさとどっか行って欲しいのにペラペラペラペラとよく喋るのです。
「所でこの間話してくれたピザのお店なんですがな?」
なんで獣人の話からピザの話になってるんですかッ!!
「いやいや私的には前に話していたカレードリアンクレープの方が・・・。」
何ですかカレードリアンクレープって!!
カレーなのかドリアンなのかクレープなのかはっきりしろです!!
っていうかクレープにしてるせいでゲテモノ確定じゃないですかッ!!
なんでも混ぜればいいってもんじゃないのですッ!!
ていうかさっきから何で食べ物の話ばっかりしてるのですかこいつらッ!!
「そういえばあのお店は行かれましたかな?」
「ああ、あのお店ですか!」
お店って何ですか!!
また食べ物関係ですか!??
「いやはや行ったのは行ったんですかな、その、No1の子には会えませんでしたな! 何やら有名な俳優が数日前から予約を取っていたようで。」
「それは残念でしたな! しかしその俳優と言うのも好きですな!」
『No1の子』ってなんですかッ!!
一体どんなお店ですか!!?
あーもうどうでもいいし早くどっか行ってくれです!!
さっきから鼻がムズムズして・・・ホント、なんかやばいのです!
「議長、そろそろ・・・。」
片方のジジイの側近らしき男が声をかけるのです。
「おお! そうだったな! すまないランダル殿! 客人を待たせていた!」
「そうでしたか、いやはやもう少しゆっくり話していたかったんですがな!」
「仕方ありませんな! 今度会った時にでもゆっくり話しましょう!」
「そうですな! はっはっは!」
そう言って男の集団はすれ違うように去っていくのです。
・・・あーよかった、ぶっちゃけ鼻のムズムズはもう限界だったのです。
安心したら・・・は・・・は・・・!
(ヘクシュッ!)
くしゃみが出たけど極力小さな声に押さえたのです。
あの集団には聞こえてなかったみたいで全然振り向かないのです。
ひとまず危機は脱し・・・。
カシャンッ!!!
「・・・。」
植木鉢の一つが鉢置きから落ちて派手に割れたのです。
きっと私がくしゃみした時にお尻が思いっきり鉢置きに当たって揺れたからです。
あー・・・。
私頭が良いからこの先の展開が読めるのです。
たぶん次の瞬間・・・。
「「誰だ貴様はッ!!」」
バレたのですッ!!
どうすれば良いのですかこんな時・・・どうすればどうすればッ!
「あ・・・あはは・・・。」
取り敢えず笑っとけですッ!!
---現在。
「待てぇ!!」
「止まれぇッ!!」
「いぃぃやぁぁでぇぉすぅぅぅ!!」
黒いスーツを着た怖い男たちから逃げまくっていたのです。
「ハァ・・・ハァ・・・くっ!」
こいつら結構足速いのです!!
なんとか途中途中に上昇を使って距離を取ってるけど長くはもたないのですッ!!
とにかく今は・・・!
「ッ!! ハァ・・・ハァ・・・。」
適当に見つけた部屋に入ってドアにカギをかけて息を落ち着かせるのです。
「ぃッ!?」
最初にドアの向こうでスーツの男が開けようとドアノブをガチャガチャする音が聞こえて来たけどすぐに『ドンッ!!』という音が聞こえて来たのです!!
多分蹴破る気なのです!!
けどそんなの無駄なのですッ!!
「氷 剣 放出・・・氷弾ッ!!」
すぐに剣を抜いて切っ先をドアに向けて魔法を詠唱するのです。
氷の弾丸が剣から放たれるとドア一面が凍り、まるで接着剤をぶちまけたかのように氷が張られたのです。
(おいッ!! なんで蹴破れない!!)
(分かりません! このドア、何故か硬くて蹴破れません!!)
ドアの向こうから男たちの声が聞こえるのです。
ドアの破壊に手こずっているのが分かるのです。
「見たか!! これも冒険者の兵法なのです!!」
父と母からの教えなのです!!
冒険者は時に逃げることも大事だから逃走の技術もないと生き残れないのです!!
だから逃げ方は上昇でも魔法でもやり方は叩きこまれてるのです!!
「居たぞぉッ!!」
「な!?」
丁度前の向かいのドアからも来たのですッ!!
「包囲しろ!!」
指揮を取っている男が合図するとあっという間に囲まれるのです。
「ふふ。」
「何がおかしい!!」
男達には悪いけど思わず鼻で笑ってしまったのです。
こいつら馬鹿なのです。
私を逃がしたくないのなら入口を塞ぐべきだったのです。
「冒険者を嘗めるなですッ!!」
そう言うと私は上昇を使った脚力で跳びあがり、半回転して天井を蹴って飛んで行くように落下して正面の男の後ろに着地したのです。
「逃がすなッ!!」
「氷 剣 放出・・・。」
逃げながら魔法を詠唱して剣を構えるのです。
「氷弾ッ!!」
ドアを閉めた瞬間に魔法を唱え終えてドアに向かって魔法を放つのです!
すると先程と同じようにドアが凍ったのです!
(くそッ!! 開かない!!)
ドアの向こうから男の声がするけどまた開けるのに手こずってるみたいなのです。
けどそれだけじゃないのです。
(向こうのドアはどうだ!)
(ダメです! 開きません!)
さっきの部屋は出入口がさっき私が入ったドアとこいつらが入ったドアだけなのです。
つまりあいつらは閉じ込められたのです!!
けどまだ安心できないのです。
「居たぞ!!」
「くッ・・・!」
休む間もなく追手が来るのです!
さっきドアの外の男達が後ろから追ってきたのです!!
「こっちだ!!」
「いぃ!?」
前からも来たのです!!
前後から囲まれたのです!!
けど・・・!
「うあああああぁぁぁぁ!!」
私は敢えて前の男たちの方へ走って行ったのです!
「くっ!」
列の先頭に居た数人の男が格闘技の様に構えたのです。
多分私が剣を手に持ってて戦うと思ったんだろうけど飛んだお門違いなのです。
「上昇の力を思い知れですぅッ!!」
そう言って跳び上がり・・・。
「な!!?」
男たちは顔を上げて驚愕するのです。
無理も無いのです。
私は『壁』を走っていたのです。
男たちの長蛇の列を頭上の壁を走って抜けるとそのまま床に着地して走って行くのです。
「追えぇ!!」
「へッ。」
大分余裕が出て来たのです。
こいつら、思ったよりちょろいのです。
父や母と一緒に古城で屍人の大群から逃げてた時の方が遥かに至難なのです!
「あ。」
目の前を見ると私は足を止めるのです。
「行き止まり・・・!」
迂闊だったのです。
「・・・。」
黙ったまま後ろを振り向くのです。
「ふふふ。」
追いついてきたスーツの男たちが仁王立ちしていたのです。
「あ・・・ああ・・・!」
ヤバイのです。
戦おうにも数が多いし、さっき逃げる時に結構上昇と魔法使ってたからかなり消耗が激しいのです。
「さあ大人しくするんだお嬢ちゃん。」
男たちはじりじり近づいてくるのです。
「?」
っていうかなんかおかしいのです。
「ハァ・・・ハァ・・・!」
心なしか息が荒いような・・・。
いや、これ追って来たからですよね?
そうですよね!?
「抵抗しなければおじさん達ひどいことしないからねぇ~?」
「いやそれ絶対ヤバイことする人のセリフです!!」
もう嫌だッ!!
なんで毎回こんな変態共に迫られるのですかッ!!
マズイのです・・・!
このままだと父の部屋に隠してあった如何わしい本のような展開に・・・!
「へぶッ!?」
急に私の後ろの壁が吹き飛び私は男達の方へ吹き飛ぶのです!
「え!?」
けど何かに服の襟を引っ張られて引き戻されるのです。
「見つけたぞ。異国の冒険者。」
「お前は・・・!」
「あ・・・!」
男たちはざわつくのです。
当然私もこの爆発の犯人を見て驚いたのです!
「あなたあの時の・・・メガネ軍人!」
「変な呼び方はやめろ!!」
そいつは収容所で獣人と一緒に助けたあの時の女軍人なのです!
片手に銃をでかくしたような大砲を持っていたのでおそらくはこれを使って壁をぶち壊したのです。
「貴様ケディ少尉だな!? 官邸の壁に穴を開けるなんて重大な犯罪だぞ!!」
スーツの男達はメガネ軍人のことを知っているみたいなのです。
「はッ! 何を今更! 成り行きはどうあれ、もう私は反逆者だ。もうそんな事は関係ない。好きにやらせてもらう。」
男達がかなり立ててくるのに対してメガネ軍人は鼻で笑って開き直るのです。
「こっちだ、来い!」
「え、ちょっと!?」
メガネ軍事に引っ張られながら壁に空けられた穴を通るのです。
「こちらケディ、救出対象を回収した。」
メガネ軍人は通信機に現状報告するのです。
『でかしたよケディ少尉! そのまま正門の出入り口に向かって!! 扉のセキュリティはこっちでハッキングかけるから!!』
通信機の向こうからはディグの声が聞こえるのです。
「了解。」
メガネ軍人は返事を返すとそのまま走るのです。
「道わかるのですか!?」
ここを探索した私だからこそ分かるのです。
この建物、意外と広くて出口もどこなのか分からないぐらい迷路みたいで道が複雑なのです!
「大丈夫だここへは臨時で要人のSPをする都合上、何回か来たことがあるから地形も頭に入ってる。」 「『えすぴー』って何ですか?」
「説明する時間はない! ほら前を見ろ!」
「え? あ!」
メガネ軍人が指を指す方向を見ると目の前からまたスーツの男が走ってきたのです!!
「ちょっと、どうするのですか!?」
「問題ない。」
メガネ軍人は大砲を腰のベルトに取り付けて手から放すと懐から何かを取り出すのです。
丸いピンのついた缶詰状の何かなのです。
メガネ軍人は走ったまま口でピンを引き抜くとそのまま スーツの男たちに向かって投げたのです。
「うわぁぁッ!!」
「げほっ! ごほっ!!」
缶詰から煙が出てきて男たちは腕で顔を覆いながら煙にむせるのです。
その隙にメガネ軍人は私を引っ張りながら男たちの間をすり抜けていくのです。
「はあぁ~!」
なんかすごいのです!
このメガネ軍人、すごく手慣れてるのです。
感心している間にもメガネ軍人はドアを蹴破るように開けるのです。
すると庭園らしき場所に出るのです。
「こっちだ!」
メガネ軍人に引っ張られると背の高い外壁と建物の間の狭い道を走りながら建物の外周をぐるっと半周するのです。
「あ・・・!」
広い場所に出たかと思うと出入り口と思われる大きな門が目の前に見えてきたのです。
『ハッキングは済んでる! けど時間が経つとセキュリティが復旧しちゃう! だから急いで!』
ディグが通信機越し催促してきたのです。
「了解。もうすぐ 門を抜ける。」
まさに脱出しようとしたその時なのです。
「!! 待つのです!」
「な!?」
メガネ軍人の腕を引いて止めたのです。
「どうした!? 何を急に・・・。」
メガネ軍人が問い正そうとした次の瞬間に事が起こったのです。
何かが空から降ってきて私達と門の間に落ちてきたのです。
それはさっきのようなスーツの男たちなのです。
私がこいつらに気づいた理由は魔法感覚なのです。
建物の上から魔力を持った何かが跳躍して北を感知したからです。
「大統領命令だ。ここは通さん。」
三人のスーツの男は武器も持たずに身構えるのです。
「・・・素手で戦うなんて正気ですか?」
私は剣を抜いて構えるのです。
「いや、油断するな。こいつらはプロだ。武器なんて大した優位性にもならない。」
そう言いながらもメガネ軍人も小型の銃と短剣を構えるのです。
「ふッ!!」
先に仕掛けたのはメガネ軍人なのです!
右側の男に詰め寄って顔面目掛けて短剣を突き出すのです。
けど男は上半身を横にずらして躱し、さらにすぐに放った二撃目も躱して短剣の手を掴もうと手を伸ばすのです。
けどメガネ軍人もすぐにそれに気づいて短剣を引いて距離を取って銃を構えるのです。
「!」
それも別の男が対応してきたのです。
別の男が距離を詰めて左ジャブを連続で放って来るのです。
「くっ!」
メガネ軍人は咄嗟に両腕を顔の前で縦に固めて防御するのです。
「くぅッ!」
けど更に激しくなる連撃に押され気味でジリ貧なのです。
「このぉッ!!」
メガネ軍人に攻撃している男の横から私は斜め上から剣を振り下ろすのです。
けど・・・。
「ぃッ!?」
男は器用に上半身を振るようにずらして躱したのです。
しかも・・・。
「え!? ぶがっ!?」
残った三人目の男がすでに構えていて私の左側から強烈な体当たりを仕掛けてきたのです。
「おいっ!」
咄嗟にメガネ軍人は男達から距離を取って私の吹き飛ばされたところまで下がったのです。
心配かけちゃいけないからすぐに立ち上がるのです。
「だ、大丈夫です。」
男達も臨戦態勢の私達相手に迂闊に仕掛けまいと構えながら様子を見ているのです。
「こいつら、手強いのです。」
「だから言ったろ。迂闊に大振りで仕掛けるな。速度と技術は向こうの方が上だ。」
「速度・・・。」
「? どうした?」
「速さなら・・・!」
「お、おい!!」
メガネ軍人が止めるのを無視して走って前に出るのです。
「ッ!!」
男達も構えを強めて臨戦態勢を取るのです。
けど無駄なのです。
「な!?」
メガネ軍人は驚いて目を見開くのです。
男たちの周りを円を描くように走るのです。
けどその走る速度は普通の人間の速さじゃないのです。
上昇を使っての高速移動なのです。
「これなら・・・!」
このまま速度で引っ搔き回しながら・・・。
「・・・?」
男達の様子がおかしいのです。
私の速度に驚くどころか微動だにしないのです。
しかもどいつも口をあんぐり開けているのです。
そこから口を力いっぱい噛みしめたのです。
何をしてるのですか?
「え?」
男たちが消えたのですッ!!
「な!?」
男の一人が前に回り込んでいたのです。
なんでですか!?
「ッ!?」
前に回り込んだ男の姿が消えたかと思うと私の地面を踏もうとした足が急に浮くのです。
「あ!?」
下を見ると男が既に上体を低くして水面蹴りで足払いを掛けていたのです。
「うがっ!! うぐッ!?」
転んだかと思ったらすぐに上に伸し掛かられ、左腕を掴まれて地面に押さえつけられたのです。
「は、放せッ!! ぐぅッ!!」
「!!」
メガネ軍人も後ろから腕を回して首を締めあげられる形で拘束されていたのです。
持っていた武器はその周囲に散らばって、きっと弾き落されたのです。
「!!」
更に状況が悪くなるのです。
さっき追いかけて来てた男たちが走って来て取り囲んで来たのです。
万事休すなのです!!
「やれやれ、手こずりおって。」
「?」
年老いた男の声が聞こえると男たちが驚いて道を開けるのです。
その奥からなんか四~五十代くらいの男がこっちに歩いて来たのです。
「マルク大統領・・・!」
「だいとーりょー?」
メガネ軍人は知ってるみたいですけどなんですかそれ?
「この国のトップだ。」
「な!?」
「ふむ、自己紹介の必要は無いな。」
だいとーりょーは顎髭を触りながらゆっくりと左右を旋回するようにゆっくり歩き出すのです。
「『何処から来た』、『何が目的で官邸に侵入した』なんて質問はするつもりはない。」
そう言って右手を上げるのです。
「!!」
それが合図なのか、周りのスーツの男たちは一斉に小型の銃を構えるのです。
「『あの場所』を知ってしまったお前たちには死んでもらう。」
「ひぃ!!」
ヤバイのです。
わ、私、死ぬのですか!!?
嫌だッ!!
死にたくないのですッ!!
「な!? おい!」
「・・・え?」
男の一人が驚いて上を見て指さすと他の奴らもみんな一斉に上を見上げるのです。
「あ、あれは・・・!」
巨大な火の玉なのです!!
こ、これもしかして・・・!
「隕炎降来。」
聞き覚えのある女の声が聞こえたかと思うと火の玉が容赦なく振って来たのです。
「「「「「「うわあああああああぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」
男たちが一斉に嬌声を上げて散り散りに逃げる中に火の玉は轟音を上げて爆発して業火を巻き上げたのです。
「よお、久しぶりだな。大統領さんよ。」
「・・・あ。」
正門から声がしてそっちを向くと・・・!
「師匠・・・!」
師匠とルタがこっちに歩いて来ていたのです!!




