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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
70/101

#70 兄妹喧嘩


~ウルド ロキウス市街地~


「ハァ・・・ハァ・・・!」

 相も変わらず魔覚でメロの魔力を探しながら捜索を続けていた。

 町中探してるけど全然見つからねぇ!!

「くそッ!!」

『・・・。』

「ルタ! メロの魔力あったか!?」

『お兄ちゃん・・・。』

「あったかって聞いてんだ!!」

『もう・・・メロは・・・。』

「おいルタッ!! あったかって聞いてんだ!!」

『・・・。』

「ルタッ!!」

 腕輪のルタに叫ぶがルタの答えは返って来ない。

「ルタッ!! 答えろよッ!!」

 尚も叫ぶ。

 すると・・・。

「ッ!!?」

 腕輪が突然光ると光が移動して目の前まで来るとルタの形になり、光が治まるとルタが目の前に現れる。

「おい、どうしたんッ!!?」

 問いただそうとすると頬に鈍い痛みが走って身体が横にずれて転びそうになる。

 ルタが殴ったからだ。

「ッ!? てめ、何しやがッ!?」

 食って掛かろうとするとルタにまた殴られる。

「おい、ルタッ!! ふざけうぉッ!?」

 更にルタを非難しようとすると今度は胸倉を掴まれて足払いを掛けて転ばされ、更に起き上がれないように馬乗りに乗られる。

「ぶがっ!? ぐッ!! ルタッ! ちょ、待、ぶぇッ!!」

 制止を掛けようとしてもルタは問答無用で殴りまくる。

「くっ!!」

 流石に殴られ続けるのも御免なので殴って来る拳を止める。

「やめろッ!! なんなんだよッ!!」

 俺が問いただすとルタは何故か一瞬ふっと鼻で笑う。

「・・・?」



「頭は冷えましたか?」



「!?」

 ルタはいつもの口調とは違い、素の裏の顔の口調で俺に語り掛けていた。

 馬乗りになって俺を見下ろすその眼は凍りつくような冷たい視線だ。

「・・・どういうつもりだ。」

「貴方も分かっているはずでしょう?」

「何がだッ!!」

 俺がまた食ってかかろうとしたのに気づいて殴ろうとしたが今度は反応して止める。

「てめっ!! 何が言いたいッ!!」

「『頭を切り替えろ』って言ってるんです。奴らの猟犬(ハウンド)の技術は知っているでしょう?」

「てめぇ・・・意味分かって言ってんのか・・・?」

「分かって言ってます。『メロはもう助かりません』。」



「ッ!!!」



 薄々思っても考えないようにしていた。

 口にはしないようにしていた。

「魔覚も抵抗組織(レジスタンス)の生体レーダーにも反応しない場所まで逃げられ、数時間が経過しています。生存の可能性はあっても、『貴方の知ってるメロ』に会える可能性はほぼ『ゼロ』です。」

 それをルタ(こいつ)は言った。

 それを言った瞬間、俺の中の何かが()()()



「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!」



 咆哮し、ルタを押し返そうとする。

 だが俺は指輪を外していない。

 上昇(ライズ)が使えず、ルタを押し返すことは出来ない。

 けどそんなことは関係ない。

「!?」

 感情のままに力を腕に集め、押し返すと逆にルタを押し倒す。

「ふぅ・・・ふぅ・・・!」

「・・・。」

 獣の様に息を荒くする俺を見てもルタは冷めた目をやめなかった。

「そうやってッ!! 人を見透かして楽しいかッ!! ふざけんなッ!! なんで簡単に他人を切り捨てられんだッ!!」

「・・・。」

 ルタの腕を握りつぶすくらい握る。

 上昇(ライズ)が使えれば本当に潰れそうなものだが今の俺にはそれほどの威力は無いがそれでも痛いくらい握っている。

 だがルタは尚も俺を冷めた眼で見ていた。

 それが俺の怒りを更に煽る。

「答えろッ!! てめぇッ!!」

「・・・逆に聞きたいんですが。」

「?」



「なんでそんなに他人に思い入れが出来るんですか?」



「ッ!?」

 こいつ・・・何言ってんだ?

「・・・答えられないんですか?」

「・・・ そんなの 決まってんだろ。あいつは 仲間だからだ!」

「でも彼女は私たちの旅に勝手に付いてきただけですよ?」

「それがどうしたッ!! あいつは家族のことを思って夢を追ってたんだッ!!」

「それが何ですか? あなたには関係ないでしょ?」

「関係あるんだよッ!!」

「何が関係あるんですか?」

「あいつに家族がいるからだ・・・!」

「なんでそれが理由になるんですか?」

「俺にはもうないからだよ・・・。」

「・・・。」

「十年前のあの日・・・俺は霧魔(ミストエビル)に家族を全て奪われた。どんなに焦がれても・・・俺にはもう父さんと母さんの顔を見ることができない・・・けどあいつはまだ希望がある。だからあいつの夢はここで終わっちゃだめなんだッ!!」

「家族・・・? 夢・・・?」

「・・・?」

 真顔だったルタの口元が少し緩む。



「家族だって所詮は他人でしょう?」

「!?」



 ルタの顔は急に変わる。

 笑っているがいつも俺をからかって楽しそうに笑っているこいつの顔とは違う。

 悪魔のような邪悪な笑みだ。

「ルタ・・・何言ってんだ・・・ッ!?」

 動揺し油断したせいか力が緩んでいた手を押し返され。

 また体を入れ替えられてのしかかられる。

「それでその他人を助けるために自分が犠牲になったら何が残るんですか?」

 言葉で俺を殴りつけるルタの顔は相も変わらず口元は笑っているが目は魔物の様に恐ろしいほど俺を睨みつけていた。

「なんで・・・なんでそんなこと言うんだよ・・・!」

 急に恐ろしくなった。

 こんな顔になったこいつが怖いからじゃない。

 あまりに理解の追いつかない言葉を発するからだ。

 俺が当たり前に思っていることをさも当然かのように否定するこいつの考えが全く持って理解できない。

「夢だって言って見ればただの『目的』、目標でしょう? それが果たされたらその先に何が残るんですか?」

「それは

「知ってますよ? 魔王に故郷を滅ぼされてからの貴方の事は・・・。」

「なんだと・・・!」

 こいつ・・・!

「憎しみから聖女の旅に同行を志願したけど断られ、孤児院に預けられたんでしょう? けどその復讐の念は消えず、孤児院の中で魔王への復讐を一心に思い続け、一人で修行をしていた。」

「くっ・・・!」

 そんな事まで調べてやがったのか・・・!

「それからもずっと魔王への復讐のために生きていた・・・でもその復讐が果たされてから貴方に何が残りましたか?」

「・・・!!」

 それを言われてふと思い出すことがある。

 魔王倒した後、しばらくアルトの名で冒険者を続けていた時だ。

 胸にぽっかりと穴が開いた感覚か抜けなかった。

 とてつもない虚無感。

 何をやっても楽しくない。

 自分が何のために生きているのかとすら思ったことがある。

「・・・。」

 それを思い出すと何も言い返せなかった。

 けど・・・。

「・・・分かった。」

 俺が一言発するとルタは悪魔のような笑みをやめ、また無表情になる。

「・・・頭は冷えたみたいですね。」

 そう言って先ほどの邪悪な笑みとは違う無垢な少女の意味になる。

 だが俺の返答は、恐らくこいつの思っていたこととは違う。

()()()()()。」

「?」

 ルタは違和感に気づく。



「『お前』という人間は、俺とは全く違うってことだな?」



「!!」

 ルタは俺のやろうとしていたことに気づく。

 俺は指輪に手をかけていた。

 そして指輪を外しかけたところで跳び退いて距離を取る。

「ッ!!」

「おいおい何ビビッてんだよ。」

 俺が立ち上がるとさらに杖を構えて臨戦態勢を取る。

「・・・口で勝てないからって実力行使ですか? 仕方ないですね。貴方とこうなるのは任務上あまりよろしくないんですが・・・。」

「だったら俺の邪魔しなきゃいいだろ?」

 皮肉を返しながらもルタを観察する目は緩めない。

 一つ違和感があった。

 こいつは基本的に魔法を使うが杖を構えるにしては()()()()()()()

 左手で杖を俺に向けているがもう片方の右手が、こちらに見えないように隠されている。

 俺の知らない武器を何か持ってるのは確かだ。

「へっ。」

 だが今の俺には関係ない。

「あとお前一つ勘違いしてるぞ?」

「・・・?」

 俺の言葉にルタは目を細める。


「いつお前と戦うって言った?」


「は?」

 声をあげたりたルタは眉を片方吊り上げる。

 表情には出さないが、『何を言っているんだこのアホは?』って思っているのが見て取れる。

「お前に協力意思がないって言うんなら・・・。」

 そう言いながら俺は目を閉じ、両手で耳を塞ぐ。



「勝手にやらせてもらうッ!!」



「何を・・・!」

「うるせえッ!! 黙ってろッ!!」

「やめてください!! 正気ですか!?」

 目を閉じて見えないがルタが俺の服の肩の裾を掴んで揺さぶっているのが分かる。

 俺のやろうとしていることを完全に理解しているからだ。

 何故俺が視覚と聴覚を絶っているのか。

 それは魔覚に意識を集中するためだ。

 魔覚を利用した索敵だ。

 勿論さっきでやっていることは変わらないが今回は全然違う。

 魔覚に意識を全て集中させることにより索敵範囲を限界以上に伸ばしている。

 索敵範囲は半径数百メートルにも及ぶ。

 だがそれほど強力な力には当然だが代償が伴う。

「ぐっ・・・うぅ・・・!」

 閉じた目と塞いだ耳の隙間から血が流れ始める。

 『魔覚』、魔力を感じ取る第六感とはいえ所詮は脳の機能に過ぎない。

 つまりはそれを限界以上に使うというのは脳を死ぬほど酷使する訳だ。

 であれば脳とつながりの深い目と耳にはすぐ影響が出る。

 もちろんこの出血もやばいがそれ以上にやばいことはもっとある。

 最悪の場合、脳が破壊され機能が停止して脳死。

 もしくは廃人になるか、無事に済んだとしても後遺症が残る例もある。

「何やってるんですか!! 死にますよ!?」

 ルタのそれが分かってか少しでも魔覚から意識をそらそうと必死に俺を揺さぶる。

 だがそれでも俺はやめない。



「うあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁッ!!!」



 無駄に終わるかもしれない。

 死ぬかもしれない。

 けどそれでもいい。

 かつて魔王と戦い、仲間を失ったあの時の思い。

 あんな思いをするくらいなら死んだ方がマシだッ!!


 だが奇跡が起こった。


「ッ!!」

 俺は目を見開く。

「!?」

 俺が魔覚に意識を集中したのをやめたのを察したのか、ルタは俺を揺さぶる手を止める。

「どうしたんですか?」

「・・・あった。」

「え?」

「此処から少し離れた西に数十メートル先・・・。」

 そこに確かにあった。

 俺を尾行するときにも駄々洩れさせていたあの青白い魔力、間違いなくメロの魔力だ!!

「嘘・・・!」

 ルタは目を見開いて俺から後ずさる。 

「行くぞ!!」

「え、ちょっと・・・!」

 ルタの制止を無視してすぐに走った。



~???~




「ふぅ・・・さて、どう転ぶかな?」




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