#68 狂気と陽気
~メロ B.R.A.I.N基地~
しばらく鉄パイプの通路を通っていくと壁も床も真っ白な通路に出たのです。
「・・・?」
通路の脇から何やら向こうが異様な窓があったのです。
薄暗いけど僅かな明かりがあるようで完全に真っ暗じゃないので人がいるような気になる雰囲気の窓なのです。
「?」
暗殺者の男が止まったのです。
男も中が気になったみたいなのです。
「中、見る・・・です・・・?」
ちょっと話づらいながらも男に話掛けたのです。
「・・・。」
男は数秒私を見た後、私と繋いだ手を離さないまま窓の方へ行くのです。
・・・なんでわざわざ手を繋いだままなのですか?
男は窓の向こうをじっと見たまま動かない。
けど・・・。
「?」
男の様子がおかしいのです。
何か震えているのです。
「ぅっ!?」
男の握る手が急に強くなったのですッ!!
「痛いッ! 痛いのですッ!」
「!」
手を引き剝がそうとする私の手を払うけど男は手を握る力を元の力に緩めたのです。
「? 何が見えるのですか?」
窓を覗こうとすると男が急に手を引いたのです。
「え? え?」
男の方を見て私と視線が合った男は首を横に振るのです。
『見るな』って事ですか?
「ッ!!」
男の手を強引に振りほどいたのです。
「訳が分からないのです! なんなのですか!」
男の忠告を無視して窓を覗きこむのです。
「?」
中は広い空間だったのです。
卵のような機械の装置が数えきれないほど並んでおり、その傍を数人の白衣の人間がうろうろして何かを記録するように手元の四角く薄い平らな物を指でタッチしながら操作しているのです。
「んん?? ッ!! んんッ!」
男が手を掴んで私を窓から引き剥がそうとするのを強引に中の様子を見るのです。
気になる物があったからなのです。
「? あれ、なんなのですか?」
中に何故かひと際大きな卵の装置があったのです。
その何かに何かがいるのです。
「んん?」
何か動いているのです。
「!!!!!」
目を凝らしてよく見ると中身を理解してしまったのです!!
中には巨大な・・・!!
「うっ・・・! お、おぇッ!!」
思わず吐きそうになったのです!!
なんなのですかあれは・・・!
「ッ!?」
男が強引に私を引っ張って立たせるのです!
「え?」
急に男が走り出したのです!!
なんなのですかこいつ!?
仮にも女の子が吐きそうになって動けないのに強制的に走らせようとかどういう神経してるのですか!?
「ハァ・・・ハァ・・・!」
しばらく走ると体力的にきつくなってきたのです・・・!
「ちょ・・・もう、キツイ・・・のです・・・!」
「・・・。」
男は私の様子を察したのか、走る足を緩めて立ち止まるのです。
私も先程の吐き気も相まってその場にへたり込むのです。
「ゼェ・・・ハァ・・・うっ・・・おぇ・・・!」
先程見たものと走った時の気持ち悪さも重なってまた吐きそうになるのです。
「??」
背中に何かすりすりと触られる感触に気づくと男が背中を摩ってくれていたのです。
「貴方は・・・。」
本当にこの人なんなのですか?
優しい人・・・なのですか???
~ライ ロキウス市街地~
「あははははは!! 兄さんッ!! 楽しいッ!!!!」
「そうかそうかぁッ!! まだまだ行くぞオラぁッ!!」
ティルが瓦礫を飛ばし、それを躱しながら俺はティルに向かって撃ちまくり、ティルは操った瓦礫を潰して変形させながら壁にして俺の弾丸を防ぐ。
さっきからこの壮絶な攻防を続けながら俺とティルは笑い合っていた。
「なぁ知ってっか? 機動隊員のブライアンなぁ、酒場のルビアに告ったんだぜぇ!?」
銃を四発ティルにぶっ放してすぐ様隠れる。
銃弾はティルに真っ直ぐ向って行くがティルに当たる直前にティルの姿が消える。
「ブライアンさん思い切りましたねぇ!!? 返事はどうなったんですかぁ!?」
ティルは空中に浮いていた。
サイコキネシスの応用だ。
自分を操って空中に浮かせているのだ。
「ルビアも突然の事にビビッてたぜぇ!? ッ!!」
俺が銃弾を装填している間にティルは瓦礫の物陰を潰す程の瓦礫を上から落とす。
即座に落下地点から逃げてすぐさま銃弾を三発撃つがティルは宙に浮いたまま、まるで糸で吊られた操り人形のように左右に動いて銃弾を躱す。
「あらあら乙女ですねぇ~? でもあんまり答え濁すの良くないですよねぇ!?」
ティルが右手の平を俺に向けて翳すと、俺の周りの小さな瓦礫が浮き上がり、俺を囲むように包囲する。
「ああ、お互いあんまり固まってたからよぉ!!」
ティルが握り潰す様に手を翳すと俺は敢えて仰向けに倒れる。
すると小さな瓦礫は銃弾の様に俺が元いた場所へまるで弾丸が飛んでくるような速さで集まり、互いにぶつかって砕け散る。
「俺、ブライアンの後ろからズボン下ろしてやったんだよ!!」
すぐに後転して起き上がり、左手の銃で二発撃つ。
ティルはまた自分をサイコキネシスで操りながら回避するが一発、頭に被弾しそうだった弾丸があったので頭を傾けて回避する。
「茶化しちゃダメじゃないですか兄さぁんッ!!」
ティルは片手で何かを目の前まで持ち上げるかのように翳すと俺の足元のアスファルトの地面が大きな人の手の様に変形して俺の全身を包み込むように握りつぶしてくる。
「でもよぉ、ズボンだけ脱がそうとしたらよぉ。」
巨大なアスファルトの手が突如爆ぜる。
俺が中で手榴弾を爆発させたからだ。
無論普通の人間がやったらただじゃ済まない。
だが俺は再生能力がある。
服はボロボロだったが俺自身は無傷の状態まで戻っていた。
「ミスってパンツも脱がしちまった!!」
俺はティルの元まで走る。
遠くから撃っても躱され続けるからだ。
「したらルビアの奴悲鳴上げてブライアンもキレて俺に殴りかかってよぉ!!」
「あはははは!! 怒られて当然じゃないですかぁ!! 最低ですよ兄さぁんッ!!」
俺の狙いを理解したティルはサイコキネシスで操った自分を逃がしながら小さな瓦礫を弾丸のように飛ばしてくる。
先程の大きな瓦礫を飛ばしてくる気配はない。
いや、そう出来ないのを俺は知っている。
サイコキネシスは一度に多くの物を操ると精度が落ちる、いや、正確に言うと一つにつき操れる質量が少なくなるからだ。
「褒めんなって!! けどしばらく俺とブライアンが言い合いながら殴り合ってんの見てたらルビアの奴どうしたと思う!?」
「どうなったんですかぁ!?」
俺は頭に飛んでくる瓦礫のみを銃で弾き飛ばす。
ほかの瓦礫を受けると身体がえぐれるように瓦礫に貫かれるがすぐさま再生する。
「何故か笑い出して告白にオーケー出したんだよぉ!!」
撃てるだけの銃弾を撃つ。
「おかしな人ですねぇルビアさんってぇ!!」
だがティルは攻撃に使おうとした瓦礫の破片を自分の前に移動させて防ぐ。
しかしその破片も散らばっているため壁になる訳ではなく、いくつか弾丸は防ぐが二発ほどすり抜けた弾丸が右肩と左わき腹を掠める。
銃弾を撃ち尽くしたのを察知した俺は銃弾を装填するために引き返して物陰へ逃げる。
「でもいいんですかぁ!?」
逃げる俺にこれ幸いとばかりにティルが手を天に翳すと瓦礫が収束して巨大な瓦礫が出来上がる。
「ルビアさんのお店兄さんもよく行くじゃないですかぁ!!」
巨大な瓦礫は容赦なく逃げる俺に襲い掛かる。
俺はなんとか横に跳んで回避するが不幸にも足が当たり、吹き飛ばされて転びながら左足がちぎれ飛ぶ。
しかしなんとか起き上がり片足のまま跳ねて物陰へ逃げ込む。
「ああ、そうだなぁ!!」
物陰に隠れて腰を下ろしている間に左足は再生する。
「兄さんもルビアさん狙ってたんじゃないんですかぁ!?」
「ああ!? バーカ!! 狙ってねぇしッ!!」
会話の間に銃弾を装填し終えて物陰から出て銃弾を撃ちながら迎撃する。
「怪しいですねぇ!?」
ティルが目の前で両掌を自分に向けながら突き上げる動きをする。
「ルビアさん綺麗ですからぁ!!」
すると俺の地面のアスファルトが今度は無数の棘の様に突き出て俺に襲い掛かる。
「ぐふっ・・・! ぐぼぁッ!!」
全身を貫かれて吐血する。
だが・・・。
「はは、俺はこれでも紳士なんだよぉ!!」
全身を貫かれたまま強引に前進する。
「他人が唾飛ばした女には手ぇ出さねぇんだよぉ!!」
身体の彼方此方の肉が引きちぎれるがすぐに再生する。
「飛ばしちゃ汚いですよぉ!!」
「だろぉ!? だから手ぇ出さねぇんだよぉ!!」
再びティルの元へ走る。
「ふふ、知ってますよぉ?」
「あ?」
ティルは突如攻撃の手を止め、それに気づくと俺も攻撃の手を止める。
「ブライアンさんとルビアさんが両片思いなの知ってて後押ししたんでしょ?」
そう言ってティルは優しく笑う。
「兄さん、優しいですから。」
「・・・へっ。」
ぐうの音も出ず俺は皮肉を込めて鼻で笑う。
「兄さぁん。」
「あ?」
ティルに声を掛けられてティルを見ると、ティルは既に指を天に掲げていた。
「うえ。」
「ッ!!」
ティルの警告、いや、既に自分の辺りに日の光を遮った影が出来た時点で気づいた。
上にティルが作り出した巨大な瓦礫があった。
「うおっと!!」
すぐに右に跳ぶと俺の元いた場所は降って来た瓦礫によって潰される。
「てめっ! 汚ねぇぞ!! あんな顔したあとに攻撃とか!!」
「兄さんだって人の事言えないですよぉ? わざわざ戦いから気を逸らす為に関係ない話してぇ!」
「ぐっ・・・!」
バレてる。
「兄さんがズル賢いのよく知ってるんですからねぇ? あはは!」
「ふっ・・・はははははははは!!」
「あははははははははははは!!」
俺とティルはお互いに大笑いしている。
傍から見れば狂気の沙汰だろう。
何せ死ぬか殺すかの殺し合いをしている最中だ。
そんな中で笑ってんだからな。
「ははははは・・・ああ、ティル。」
「あははは!! ・・・? なんです?」
「猿芝居はもうよせよ。」
「・・・猿芝居ぃ?」
ティルは狂気の籠った笑みで首を傾ける。
「お前が何もかも俺の考えお見通しな様に俺にだってお前の考えはお見通しなんだよ。」
「何が言いたいんですかぁ?」
「しらばっくれるんならお前のシナリオを此処で暴露してやる。」
「・・・。」
俺が指さしながら言うとティルが黙り込む。
「このまま市街地で暴れてりゃお前は『気の狂った化け物』として通報される。」
「それがどうしたんですかぁ?」
「で、通報がありゃ国の防衛部隊が動く。」
「そうですねぇ~、そうなりますねぇ~!」
「そんでお前がそいつらに鎮圧され、殺されりゃめでたしめでたしだ。」
「なんでめでたいんですかぁ~? 私が殺されてめでたしとかひどくないですかぁ~?」
「とぼけんなよ、この『死にたがり』が。」
「・・・。」
俺が指摘するとまたティルは黙り込む。
「お前が本当にただ頭がイカれてんのなら出来るよな?」
「何をですかぁ~?」
「俺を殺してみろ。」
「・・・。」
ティルはまた黙り込む。
「どうした? 俺は抵抗しないぜ? やれよ。」
俺は銃を捨てて両手を広げて全身をさらけ出す。
「ふふ・・・あはは・・・あはははははははははははははははは!!」
ティルは笑い出すとまた天に向かって手を翳す。
するとまた瓦礫が集まって巨大な物体になる。
「そんなに死にたいなら殺っちゃいますよぉ!?」
それを俺の真上まで持っていくと容赦なく落とす。
「・・・。」
俺は一切避けない。
何かを使って防御もしない。
自分の不死の能力を過信しているからじゃない。
というか脳を潰されれば能力は発動せず死んでしまう。
だが一切防御しない。
「あはははははは!!」
瓦礫は無慈悲に俺の脳天に向かって落ちて俺を潰す。
「・・・で?」
・・・ように見えたが違う。
俺は瓦礫をかき分けて出て来る。
「俺一切抵抗してないんだけど?」
そう、俺は一切抵抗していない。
普通に考えてあんな瓦礫に頭から潰されれば死んでいる。
しかし生きている。
理由は・・・。
「なんで瓦礫の下に俺が入れるほどの隙間があるんだ?」
「・・・ふふ、あははは!」
俺の指摘にティルは笑い出す。
「ちょっとはビビッて下さいよぉ! そのために寸止めしてあげてたんですからぁ!」
「へっ! 減らず口を・・・。」
「!」
俺は一歩前へ出る。
それを見てティルは一瞬ぴくりと反応する。
「じゃあ今度こそやれよ? やらないと俺、お前をどうするか分かんねぇぞぉ?」
舌を出して下品な笑みをティルに向けて両手をわきわきさせる。
「あははは!! 何されるんですかねぇ!!」
ティルが手の平を自分に向けて翳して突き上げる。
すると地面のアスファルトが変形して無数の棘になって俺を貫く。
「・・・なあティル。知ってんだろ?」
吐血しつつ俺は先ほどと同じように強引に強引に前に出る。
「俺を殺したきゃここ! ここをやれよ!」
挑発するように俺は親指で額を三回ノックする。
ティルだって俺と同じ輝ける人類だ。
俺の能力の弱点はちゃんと知っているはずだ。
「あはははははは!!」
ティルは笑いながら手を前方に翳す。
すると小さな無数の瓦礫の破片がティルの前に浮き上がる。
更に手の形を変えて人差し指を此方に指しだすと破片が俺に襲い掛かる。
「あははははははは!!」
破片に身体を貫かれ、斬られたりしている俺を見ながらティルはさらに笑う。
「痛いですかぁ!? 兄さん!! 痛いですかぁ!?」
挑発的に俺に言ってくるが俺には分かる。
ティルに余裕が無くなってきている事が。
「ああ、痛てぇよ。」
「あはははは!! 痛いでしょ!? 痛いですよねぇ!!」
「だぁからッ!!」
「ッ!!」
ティルの前まで立つと俺は怒鳴る。
「なぁんでここを狙わないわけ? なぁ。」
また人差し指で米噛みをノックして挑発する。
そう、ティルは頭を外している。
他の身体の部位は切り刻まれ、貫かれてるのに頭だけは綺麗に外している。
明らかに意図的だ。
「くッ!!」
ティルは自信を操って距離を取る。
「はは、あははは!!」
また笑いながら瓦礫を飛ばしてくる。
「あははは!!」
さっきと同じように瓦礫になます切りにされている俺を見て笑っている。
手も使わず無数の瓦礫を飛ばし相手をなます切りにしながらそれを嘲笑うかのように高らかに笑う女。
傍から見れば常軌を逸した化け物だが、俺から見ればその姿は真逆。
ただ怯え、目の前の得体の知れない化け物に泣きながら必死に石を投げている哀れな一人の小娘にしか見えない。
「おぉい。さっさと殺せよ。痛てぇんだから。」
俺は余裕のツラで一歩、また一歩とティルへ向かっていく。
「兄さん!! 痛い?」
「ああ、痛てぇよ。」
「あははははははは!! 血だらけなのに死ねない兄さん、面白い!! あははははは!!」
「ああ、そうかい。面白いか。じゃあさ。」
俺はティルを真っ直ぐに指さす。
「なんで泣いてんだ?」
「あははは! え? はは、あははは!!」
ティルは笑いながら涙を流していた。
「痛いでしょぉ!? だから・・・。」
「だから?」
「いい加減逃げてよぉッ!!!!」
「・・・。」
ティルの顔は先ほどの狂気に満ちた顔から泣きながら強張った怯えた恐怖の顔に変わる。
「兄さんッ!! もう来ないで!! 逃げてよぉッ!!!」
ティルは尚も瓦礫を操って俺を切り刻むが俺は止まらない。
「もう・・・いやだッ!! うああッ!! 兄さんを傷つけるの、嫌だ、嫌あ!! ほっといてよぉ!!!」
ティルは翳した手を降ろさないが泣きながら悲痛な叫びをあげる。
だが俺はその泣きながらの懇願を受け入れない。
「来ないでぇぇぇぇッ!!!」
必死に泣き叫びながらティルは破片を銃の弾幕の様に飛ばしてくるが俺は構わず跳びかかるように宙に浮いているティルに向かって跳躍する。
「やだね。」
俺はティルに飛びつくと同時に抱きしめる。
その勢いでティルと俺は地面に向かって落ちるが俺はぶつかる直前に身体を入れ替えてティルを庇って地面に激突する。
「・・・。」
突然の出来事だというのにティルは驚いた様子も見せずに無表情のまま黙り込んでいる。
「よぉ。おはようさん、狂気のサイコ悪夢から目を覚ました気分はどうだ?」
いつもの口調でティルに話しかける。
「・・・なんで? ・・・どうして?」
「さあな。」
ティルの意味不明な質問にも軽口で答える。
「私・・・死にたいだけ・・・どうして邪魔するんですかぁ・・・!」
すぐに涙目になるティル。
「死にたきゃ首くくって死にゃいいだろ。」
まぁ、そんなことすぐに気づいて止める自身あるけどな。
「なんでわざわざ殺されることにこだわる?」
「それは・・・。」
ティルは目を逸らす。
「自分で死ぬ勇気が無かったからで・・・。」
「バーカ、俺相手に嘘なんて百年早ぇ。」
「え? う、嘘なんかじゃ・・・!」
「当ててやろうか。」
「え?」
身体を起き上がらせてティルの上体も起き上がらせる。
そしてティルの額に小突くように人差し指を突きつける。
「『誰かに罰してもらって死にたい』からだ。」
「・・・!」
ティルはハッと俺を見た後すぐにまた申し訳なさそうに視線を逸らす。
「兄さん、私・・・。」
「分かってるよ。あのチビ助だろ? 随分仲良かったじゃねえか。」
「め、メロさん・・・う、うあぁッ!! メロさんッ!! うああああぁッ!!」
禁句を言われて自分のトラウマを思い出したか、ティルは頭を抱えて叫びだす。
「ッ!?」
ティルは突然の事に目を見開く。
その細い身体が潰れる程俺が力強く抱きしめたからだ。
「諦めんなッ!!!!」
「!!」
耳元で叫ぶ。
「今、みんな全力で敵の基地を探してる。仲間を助ける為にな。」
「あ・・・!」
ティルはようやく自分のやってる事に気づいたみたいだ。
それを確認して俺はティルから上体を放す。
「お前が諦めたらダメだろ。あのチビ助の友達なんだから。」
「う、ううぅ・・・うぅ・・・!」
ティルはまた泣き出す。
今度は自分の涙を拭いながらめそめそと泣き出す。
慰めにもならんがとりあえず頭を撫でてやる。
「ちとスタートが遅れちまったがまだ挽回できるさ。」
「それよりも・・・私・・・あの人に・・・あの人に酷いことを・・・!」
「ああ、ウルドか?」
「あの人だってメロさんを必死に探してたはずなのに・・・それを・・・私・・・!」
「大丈夫だって!!」
「ッ!」
撫でる手を強めてわしゃわしゃとティルの髪を撫でまわす。
「俺があとで一緒に謝ってやるって!! あー、ダメだったらその時はその時で色々手段あるし・・・。」
「・・・。」
ティルは俺をみて数秒固まる。
「ティル? どした?」
「ぷっ、ははは!」
ティルは涙の残った目で急に笑い出す。
「んだよ。」
「怒らせちゃダメですよ?」
「・・・善処する。」
バレてるな。
いざって時のとっておき、『わざと煽って怒らせて怒りを俺に集中させよう作戦』が。
「動くなッ!!」
「!!」
声のする方を見るとそこには武装したロキウスの兵隊が銃を俺達に向けていた。
「『市街地で暴れている白髪の人型の化け物』だな!? 身柄を拘束させてもらうッ!!」
「あーらら。」
こいつら防衛部隊の連中だな?
やっぱ通報されてたか。
「さてと。」
俺とティルは一緒に立ち上がる。
「ティル。」
「はい。」
俺が合図するとティルは応戦する意図を察したようで手を目の前に突き出すとひっくり返すように手の平を自分の方へ向ける。
「な、なんだ!?」
地響きがして防衛部隊の連中はどよめく。
するとアスファルトの地面が変形して俺と連中の間に巨大な瓦礫の壁が出来る。
「おぉら持ってけ!!」
俺は手榴弾を三つ、ピンを抜いて壁越しに連中の方角へ適当に投げ飛ばす。
「うわああぁッ!!」
爆発する直前に奴らは気づいて逃げ惑う声が壁越しに聞こえて来てから手榴弾が爆発する。
「くそッ!!」
爆発から逃れて壁の横から回り込んだ兵達は状況に気づく。
俺達が元いた場所はもぬけの殻だった。
「あ!!」
奴らは気づく。
俺達は既にかなりの距離を離して逃げていた。
「くそぉ!! 追えぇ!!」
連中は俺達を追跡する。
「ティル!!」
「はい!」
走りながらティルに声をかける。
「とりあえず捜索は連中を撒いてからな?」
「はい♪」
ティルは子供の様に無邪気な笑みで返事を返した。




