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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
64/101

#64 追ってきた不幸


~ティル 医療区 個室~


「メロさん・・・。」

 部屋の真ん中で私は座り込み、茫然としていた。

 しかも()()()()()()()()()

「ごめんなさい・・・メロさん・・・ごめんなさい・・・メロさん・・・・。」

 私・・・何も出来なかった。



―――数時間前。

 敵襲の警報が鳴る前の数分前の話。


 私はメロさんが上昇(ライズ)(?)の使いすぎで足を痛めて動けない間の看病をしながら話し相手(になってたかは分からないけど・・・)になっていた。

 ただそれだけなのに・・・。

「あ・・・ぁぁ・・・!」

 目の前に現れたのは・・・。

「ティ~ル~♪ ひ・さ・し・ぶ・り☆」

 前屈みに二本指でピースをおでこに着けたのは金色のウェーブのかかった髪で袖無しの服にミニスカートの少し派手目な私と同い年くらいの女の子。

「誰ですか?」

「ぇ・・・ぇと・・・!」

「レッサ♪ そう言う貴方はだぁれ?」

「メロです! ティルの友達なのです!」

「メロさんッ!」

「? ティル? どうしたのですか?」

 震えが止まらない!

 汗が止まらないッ!

 吐きそうッ!!!

「そっかそっかぁ・・・()()、と・も・だ・ち、友達かぁ♪」

「あなたもティルの友達なのですか?」

「友達? うん、友達かな? うん、友達! で?」

 レッサさんは言いながらメロさんの前まで歩くと顔を覗きこむ。

「?」



「貴方は『上』? それとも『下』?」



「上? 下? 何を言ってるのですか?」

 メロさんは分かっていない。

 普通はそうかもしれない。

 当たり前の反応だと思う。

 でも私にはこの意味が理解できてしまう!

「・・・ふふ。」

「?? どうしたのですか?」

「あははははははははは!!! あんた馬鹿ぁ!?」

「な!? なんなのですか!? 会って早々人を馬鹿呼ばわりするとかなんて失礼な人なんですか!!」

「だってあんた馬鹿だもん!!」

「馬鹿って言う方が馬鹿なのですッ!!」

「最低限やっとかないといけない事も出来てないんだもの!! 馬鹿意外の何者でもないじゃない!!」

「なんですか最低限って、何をしなきゃいけないのですかッ!」



「『上下関係』、常識っしょ?」



「上下関係???」

「どっちが『主人』でどっちが『下僕』かって事! 友達関係だって付き合い出したらどっちかがマウント取り出して『上』か『下』か大なり小なり出てくるもんでしょ?」

「?? よく分からないのです。」

 メロさんは首を傾げる。

「も~鈍いな~。だからね? あんたはティルの『ご主人様』? それとも『下僕』かって話!」

「なんでそうなるのですか!」

「はあぁぁぁ、あんたって馬鹿過ぎて話にならない。」

 レッサさんは呆れて溜め息を吐くとメロさんから離れて私の方へ歩いてくる。

「ねぇティル?」

「ひっ!?」

 レッサさんは私の肩に腕を回す。

「私達、『友達』だよね?」

「は、はぃ・・・ヒィ!?」

 レッサさんは私の前まで顔をずらすと目を見開きにながら私の目を見る。

「と・も・だ・ち、だよね???」

「ッ!?」

 何がいけなかったの!?

 も、もしかして声が小さかったから!?

「はいッ! 友達です!」

「うんうん、友達!」

 レッサさんは満足気に笑みを浮かべて頷く。

「で?」

「ぇ?」

 レッサさんの目が再び私を睨む。



「貴方は私の『上』? それとも『下』?」



「・・・ッ!」

 息が詰まりそうになるッ!!

 言いたくない!

 でも言わなかったら・・・!

「し・・・『下』です。」

「私は貴方の何?」

「ご、ごご・・・。」

 言いたくないのに・・・言いたくないのに・・・!



「『ご主人様』・・・です。」



「はぁい、よく出来ました♪」

 そう言うとレッサさんはメロさんの方を向く。

「分かった? これが『友達』ってこと♪」

「・・・。」

 メロさんは私達を見て目を伏せる。

「・・・分かったのです。」

「あらあら、意外と賢いね♪ 偉い偉い♪」

 レッサさんは私から離れてメロさんの元へ行き、頭を撫でようと手を伸ばす。

「ッ!」

「?」

 突如メロさんはその手を両手で鷲掴みにする。

「・・・なぁに?」



「つまりお前は・・・ティルを虐めているのですねッ!!?」



「!!」

 考えないようにしていた。

 たとえそうかもしれないと思っていてもレッサさんしか友達がいなかったあの頃はなけなしの友情に縋って考えるのをやめていた。

 でもメロさんがハッキリ言ったから認識した。

 私は・・・!

「虐めてる? 私が? ティルを?」

「そうです!!」

「そうなの? ティル?」

 レッサさんは私の前まで歩み寄る。

「ねぇ? ティ~ル~?」

「ッ!!」

 レッサさんが顔を覗き込むと背筋が凍る。

 駄目だ。

 この眼には逆らえない・・・!

「ティル!!」

 メロさんが叫んだその時だ。



『緊急警報発令!! 緊急警報発令!! 基地入り口より襲撃!! B.R.A.I.Nの襲撃を確認!! 直ちに戦闘員は戦闘配備、作業員及び保護市民は緊急通路より避難区へ退避!! 繰り返す!! B.R.A.I.Nの襲撃有り・・・』



 警報が鳴り響き、アナウンスが流れる。

「あ~あ、始まっちゃったか。」

「お前・・・B.R.A.I.Nだったのですね!?」

「え? 今更?」

「レッサさん・・・!」

「所でさっきの話の続きなんだけど・・・。」

「ッ!?」

 レッサさんは私の両頬を掴む。

 そして顔を近づけ、真っ直ぐに私を見る。

「貴方、私の友達だよね?」

「・・・!」

 目を逸らせない。

 顔を押さえつけられて目線を変えられない。

「ねぇティル?」

 レッサさんは尚も呼びかける。



奴隷(ともだち)・・・だよね?」



「・・・ぅぅ。」

 言葉が出ない。



『言ってしまえ、『はい』と。』

『言ってはいけない、認めてはいけない。』



 喉の奥で言葉がせめぎ合って気が狂いそうだ。



「ティル!!」



「ッ!!」

 メロさんの声が聞こえて我に返る。

 すぐにレッサさんの手を払い除けて身体を入れ替えてメロさんの側に立つ。

「ふぅん、そっちの方がいいんだ。」

「もう・・・私は



「ああいいよもうッ!!」



「ッ!!?」

 レッサさんは怒鳴る。

「ああ悲しい!! 悲しいわあッ!! ティルが裏切った!!」

 レッサさんは両手を広げてくるくる回りながら大げさに叫ぶ。

 まるで舞台の悲劇のヒロインのように。

「いや、違うか・・・。」

 突如ぴたりと止まり、そのポーズのまま目線だけ私に移す。

()()()()()()()もんね! ()()()の口車に乗せられて! 逃げちゃったもんね!! 私を置いて!!」

「あの女・・・?」

 メロさんはレッサさんの言葉に首を傾げる。

「ふふ♪」

 レッサさんは急にポーズを解いて笑い出す。

「いいよ、別に。」

「いい、って・・・?」

「最初からあんたがそう来るつもりでどうしてやろうか色々考えてたんだけどぉ・・・。」

 急にレッサさんは左手の平に右ひじを着いて頬杖を突きながらくねくねと悩まし気にくねくね動く。



「すごくいいこと思いついちゃった♪」



「ッ!!?」

 レッサさんは物凄く邪悪な笑みを浮かべる。

 しかもその視線の先はメロさんを捉えていた。

「ふふ♪」

「ダメッ!!」

 レッサさんが右手をかざした瞬間に彼女の行動を察してメロさんの前に出て私も両手をレッサさんに翳す。

 すると私と彼女の間の空間が歪み、その辺りの床と天井がみしみしと音を立てて歪み、徐々にクレーターが出来始める。

「な、なんなのですか!?」

 メロさんは状況が飲み込めず困惑する。

 無理もない。

 答えは私とレッサさんの能力が全く同じ能力、物体を脳の思念のエネルギーを加えて動かすサイコキネシスの能力だからだ。

 今のこの状態はお互いの物体を押す力がせめぎ合って押し合っている状態だ。

「いいの? 押し合いばっかに気を取られてると・・・。」

「ッ!!」

 レッサさんは翳していない左手の人差し指を立てると彼女の後ろにあった額縁が浮く。

 すぐに攻撃の意図を察して私もメロさんの近くにあった椅子に意識を飛ばして操って宙に浮かせる。

 そして互いに浮かせた物体は何度もぶつかり合う。

「ふふ。」

「くっ!」

 レッサさんはその上で彼女の傍にあった植木鉢を操り始める。

 私もそれに負けじとベッドの傍にあったテーブルで応戦する。

 操った物体同士がまたぶつかり合い、部屋の中は私とレッサさんだけが戦っているのにまるで複数人が戦っているかのような荒れっぷりだ。

「ティル~、あんた学習出来ないの? あんたは絶対私には勝てないの!」

「・・・ッ!」

 レッサさんの言葉の意図が分かる。

 研究所で訓練の一環として模擬戦闘をすることがあったが私はレッサさんに()()()()()()()()()()()

 何故なら・・・。

「あんたは()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()でしょ?」

「ぅぅ・・・!」

 その言葉の意味は、彼女の『もう一つの能力』だ。

「ふふふ♪」

 彼女が笑うと彼女の上にガラスの様な半透明の物体が現れる。

 その物体は徐々に変形して手の平程の大きさの棘のような形に変わる。

 そう、これが彼女にあって私には無い能力。

 彼女は何もない所からも物体を作り出して操る事が出来る。

「はいこれで終わり♪」

「くぅ・・・!」

 万事休すと思ったその時だ。

「ティル!! 私も手伝うのですッ!!」

「!」

 メロさんがベッドの近くに置いてあった剣を取り出して鞘から剣を抜く。

「ティルの邪魔はさせないのですッ!!」

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ぁ・・・!」

 駄目!!

 そんなことしたら・・・!

「あぐッ!?」

 メロさんが私とレッサさんの押し合っている磁場に入ると宙に浮いたまま呻き声を上げる。

「うあああッ!!」

「ウッソでしょあんたッ!! 馬鹿じゃない!?」

 苦しむメロさんを見てレッサさんは笑い出す。

 今メロさんは私とレッサさんのサイコキネシスに前後から押されている極めて危険な状態だ!!

 その圧迫力は凄まじく、このままだと数秒とせずにプレス機に潰される廃棄物(スクラップ)の様にメロさんは潰れてしまう!

「ッ!!」

 私はレッサさんと押し合っていたサイコキネシスを解く。

 こんな事をすれば私もメロさんもただじゃ済まない。

 でも・・・!

「あはは!」

「うあッ!」

「ぐぇッ!?」

 レッサさんは容赦なくサイコキネシスの力で私とメロさんを壁に押し込む。

「うああああぁぁぁぁぁああッ!!」

「ぐうぅッ!! うああぁッ!! なんなのですかこれぇッ!!」

 途轍もない重力が加わった様に壁に押し込まれる。

「ははは、ティル! あんたもついてないねぇ! こんなアホな奴が()()なんて!」

「ぐぅッ!! アホって言うなぁッ!! このアバズレぇッ!!」

「あれ? こんな状況で強がり言っちゃう? いいの? ほら。」

「うああああああがああああああぁぁぁぁッ!!」

 メロさんがより強く壁に押し込まれ、壁に大きなクレーターが出来る。

 骨が折れてもおかしくない恐ろしい程の力だ!

「うぅッ、やめてッ!! もうッ! やめでぇッ!!」

 なけなしの言葉でレッサさんに懇願する。

「やめてほしい? う~ん、でもなぁ、私ってさ特殊性癖持ちでさ? 『他人の大事な物壊す』っての凄くゾクゾクして興奮しちゃう質なんだけど~?」

「メロさんは・・・メロざんは許じでッ!! やめでぇッ!!」

「お願いされても~? 性癖だからどうしようもないと言うか~?」

「なんでも・・・なんでもじまずがらぁッ!!」

「んん?」

「!?」

 突然信じられない事が起きる。

 前方からの重力のような圧迫が解け、私は床に足を着いた。

 レッサさんがサイコキネシスを解いたのだ。

「あぁぁぁッ! ぐぅぅッ!」

「ッ!」

 隣の声を聴いてハッとする。

「メロさんッ!!」

 メロさんには攻撃を解いていない!?

「今()()()()()って言ったよね?」

「!!」

 こんな人には言ってはいけない事を言ってしまったのは分かる。

 けど・・・。

「はい・・・。」



「じゃあ服脱いで?」



「ッ!!?」

「どうしたの? 何でもするんでしょ?」

「・・・ッ!」

 嫌だ・・・そんなの恥ずかしい!

 しかもメロさんが居る前でそんな事・・・ひどい!

「ティル・・・! そんな奴の言う事

「はい外野は黙る~!」

「あがああああぁぁぁぁああああッ!!!」

「メロさんッ!!」

 メロさんがまたサイコキネシスを強めに掛けられて・・・!

「ほらティ~ルぅ~? は~や~く~!」

「・・・。」

 思えば慣れてる・・・。

 レッサさんには散々やらされたことだから・・・。

 恥ずかしくて躊躇いながらも言われたとおりに服を脱ぐ。

「ふ~ん。」

「ッ?」

 下着姿になるとレッサさんは私の身体をまじまじと見る。

「五年も見てなかったからどんなものかと思えば・・・ブラもパンツも白とか清純気取り? しかも胸は生意気に成長しちゃってまぁ~。」

「・・・!」

 見られてる・・・恥ずかしい・・・!

「まぁいいや、続けて?」

「え・・・?」

()()()()()って言ってんの!」

「そんな・・・!」

「あ~いいのかなぁ~? 愛しのメロちゃん壊れちゃうかも~☆」

「やめてッ!」

「だったら脱げよッ!!」

「・・・。」

 言われたとおりに下着も脱いで裸になる。

 恥ずかしくて胸と下の部分は隠す。

「ふふ、ホントに脱いだ! バカみたい! まぁいいや、じゃあそのまま土下座して?」

「はぃ・・・。」

 そのまま跪いて両手を床に着ける。

「ほら、言う事あるんじゃないの?」

「え、何・・・ッ!?」

 急にレッサさんは私の前髪を掴んで持ち上げる。

「謝って! 今すぐにッ!」

「ッ!」

 言わないとメロさんは・・・。

「ごめんなさい・・・すみませんでした。」

 すぐに頭を地面に着けて謝る。

「ん~?」

 レッサさんは笑顔で私の前にしゃがみ込む。

「何に対して、『すみませんでした』?」

「・・・。」

 きっとレッサさんは・・・。

「レッサさんを見捨てて・・・研究所から逃げて・・・すみませんでした。」

「そ~そ~そ~そ~分かってるじゃない!」

「ぎっ!?」

 レッサさんはゆっくり立ち上がったかと思うと急に私の頭を踏みつける。

「分かる!? これが私を裏切ったあんたの末路なの!! あはは!!」

 蔑むように見下ろしてレッサさんは高らかに笑い出す。

「あんたは一生私にこびへつらって仕えるしかないの!! オーケー?」

「・・・はぃ。」

 私はもう・・・。

 結局こうなるんだ・・・。

「あなたの元に戻ります。そして一生ご奉仕いたします・・・。」

「ん~?」

 レッサさんは私の言葉に眉を顰める。

「やけに()()()()ない?」

「・・・。」

 これ以上何を・・・?

「あ、分かった! あんたが私の元に戻ればぁ、このメロって子が助かると思ってるんだ!」

「ッ!?」

 それって・・・!

「約束は・・・! 守り、ました・・・! だから・・・!」

「うんうん♪ 約束は守るよ♪ メロちゃんは壊さない♪ けどそれとは別に気が変わった・・・。」

「え?」

 何を言ってるの?

「あんたを連れ戻そうと思ったけど、それはナ~シ♪ その代わりにぃ・・・。」

 そう言うとレッサさんは突き出していた右手の構えを解き、人形を操るように人差し指を立てる。

 するとメロさんへの攻撃が止み、代わりにメロさんの身体がふわりと浮いてレッサさんの元に運ばれて彼女の傍で止まる。

「ぁ・・・ぅ・・・!」

 先程の攻撃のせいか、メロさんは力なくぐったりとして気を失っていた。

「この子を連れてく♪」

「そんな・・・話が違ッ、あぅ!!」

 思わず上体を起き上がらせ、レッサさんの服の裾を掴むと蹴り飛ばされる。

「違わない。」

「なん、で・・・?」

()()()()()()()()()()♪ ね? 約束は破ってないでしょ?」

「どういうことですか・・・?」

「『冒険者の格好した小さい女の子』って多分こいつだよね?」

「何を言って・・・?」

B.R.A.I.N(うち)の技術部門にさ、この子がどうしても欲しいって言う変態が居たのよね~! そいつに渡したらなんか面白そうだし~! この子どうなっちゃうのかな~?」

「やめて・・・やめてッ!! ぁぐ!?」

 首に強力な圧力がかかりながら身体が宙に浮く。

 まるで首を掴んで持ち上げられたかのように・・・!

 レッサさんのサイコキネシスだ!

 手で掴んで引きはがそうとしても実態のない力ではどうしようもなく、只苦しい首を押さえることしかできない。

「やめで・・・! メロざんは・・・! 許じで・・・!」

「ふふ♪」

 私の様子を見て満足したのか、レッサさんは満足気にサイコキネシスを解く。

「かはっ! すぅ、げほッ! けほっ!」

 喉に滞っていた酸素を精一杯入れた拍子にむせながら息を落ち着かせる。

 でもそれ所じゃない!

「お願いですッ!! メロさんには何もしないでッ!!! 土下座でもなんでもしますッ!! 貴方にもう二度と逆らいませんッ!! だから・・・だからメロさんは解放してあげてッ!!」

「ふふ、あはははははははははは!!!!」

 必死に懇願する私を見てレッサさんは楽し気に笑い出した。

「最高ッ!!! あんたのその絶望を前にして不様に泣き叫ぶ顔ッ!! ずっと見れてなくてつまんなかったのよ!! そうそうそうそれそれそれそれッ!! その顔がずっと見たかった!!」

 レッサさんの顔はまるで純粋な子供の様に目をキラキラさせていた。

「メロさんは・・・メロさんは許してッ!!」

 目から涙が止まらず、泣きながら懇願する。

「んふふふふふ♪」

 レッサさんは楽しそうに含み笑いをしながらしゃがみながら私に顔を近づける。



「だぁ~め☆」



「ッ!!」

 その言葉を聞いた瞬間に胸の奥の何かがガラスの様に砕け散ったのを感じた。

「覚えててねティル♪ 私からどんなに離れようとも・・・。」

 言いながらレッサさんは立ち上がる。



「必ずあんたの大事な物を壊しに来るから。」



「・・・。」

 途轍もない絶望感が私の胸の中を覆いつくし、途轍もない虚無感が私の頭の中を支配した。

 そんな私を尻目に、レッサさんは楽し気に鼻歌を歌いながらメロさんを連れて部屋を出て行った。



―――そして現在。


「メロさん・・・ごめんなさい・・・メロさん・・・ごめんなさい・・・。」

 只々己の無力さを呪っていた。

 何処に行ったって『不幸』は私を追ってくる。

 それならいっそ・・・。

「?」

 突然何か布のような物を背中から掛けられる。

「・・・風邪ひくぞ。」

「・・・。」

 ライ兄さんだった。

 後ろから上着を着せてくれていた。

「何があったかは想像がつく。『元気出せ』とか無責任な事も言わねぇ。」

「兄さん・・・。」

「落ち着いたら外の空気でも吸え。じゃあ・・・ッ?」

 兄さんはその場を後に立ち上がろうとするが私は兄さんの服の裾を掴む。

「・・・なんだ?」

「兄さん・・・。」

 兄さんなら、今の私のお願い・・・聞いてくれるかな?



「私を殺してください。」



「・・・。」

 兄さんは少し立ち止まったあと、ゆっくりと腰を下ろすと銃を取り出す。

 そして銃を私の側頭部に突きつける。

「・・・分かった。」

 兄さんの返事の直後、一発の鈍い銃声が部屋中に響き渡った。

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