#62 Joke&Bullet
~ライ 抵抗組織基地 居住区~
俺達の基地は一見するとただの無人のビルに過ぎない。
だがその地下には何層にも分かれて横広に基地が展開されている物だ。
今襲われているのは地下二層目、抵抗組織の構成員及び、保護した一般人などが住んでいる居住区だ。
もちろんそこに通じる移動手段はエレベーターのみで、しかもエレベーターには特殊なセキュリティシステムを設けてこの基地の存在を知らない者には操作出来ないようパスワードを三重に設けている。
だが敵にも優秀なハッカーが居たようでハッキングを掛けられ、基地に侵入されていた。
エレベーターに入れる人数は多くて十人がせいぜいの広さだが奴らは用意がよく、数人をエレベーターで降りさせた後に転移装置を置いて移動できるようにしやがった。
つまり奴らは今その転移装置から移動して軍隊単位で襲撃しているわけだ。
「オラァッ!!」
「ごぁッ!!」
B.R.A.I.Nの兵士の一人の顔面に蹴りを食らわせてダウンさせ、その隙に左右から銃を構えていた奴を同時に銃で撃ち抜く。
「ガァッ!!」
「!」
猟犬が二体物陰から奇襲してくるが片方の得物の手斧を銃で止めてもう片方を銃で撃ちながら追い払う。
そしてすぐに鍔迫り合いになった方の猟犬の鳩尾に蹴りを食らわせて距離を取る。
そこからさらに一発撃って相手を牽制する。
猟犬は弾丸を躱して襲い掛かって来る。
だが俺は距離を取らず敢えて奴に突っ込む。
奴が迎え撃つように振り下ろしてくる手斧を止める。
「グガァッ!!」
そこへ先程追い払っていたもう片方も鉈を振り下ろしてくる。
攻撃の手を緩めていた為に来ることは分かっていたので反応して止める。
「グウウウゥ!!」
「くっ・・・!」
二体の猟犬は二人掛かりで俺に向かって得物を押し込んでくる。
もちろん獣人と只人の腕力差だ、二人掛かりで来られて勝ち目なんかあるわけない。
このまま押しつぶされるのがオチだ。
「・・・へっ。」
だが俺はほくそ笑んだ。
俺が一人だと思ってるこいつらがあまりに間抜けだからだ。
『発射。』
通信機からサンの声が聞こえると一発の銃声が聞こえ、俺の左右に居た猟犬二体は弾丸の弾道に沿ってそれぞれ後ろと正面から銃弾を受けて声を上げる間もなく絶命する。
「ったく。」
銃の弾倉を開き、懐から弾丸を取り出して装填する。
『次の命令を、主。』
既に機械モードのサンが俺に指示を仰ぐ。
「待機だ。」
『了解。』
「ぐぁッ!!」
「!」
近くにいた味方の兵が吹き飛ばされてこっちに飛んでくる。
「おい!」
すぐに駆け寄る。
「化け・・・もの・・・!」
そう言ってそいつは意識を失う。
「・・・。」
『奴』だ。
すぐに俺の頭は理解していた。
「あ~ら、思ったより来るの早いのねぇ。仕事が出来る子って素敵じゃない!」
味方が吹っ飛ばされて来た方角からゆっくりと歩いてきたのはあのオカマ野郎だ。
「そう言う褒め台詞はすぐそこの酒場の姉ちゃんに言われたいんだがね。」
「あ~ら素敵! 隠れ基地の癖に酒場まで用意してるなんて中々洒落てるじゃない! 良かったらあたしも今度お呼ばれしようかしら?」
「てめぇにはとっておきの酒があるぜ?」
「へぇ、何かしら?」
余裕ぶっこいて聞いてくるオカマ野郎に向かって俺は五本指を立てて見せる。
「五年物の赤ワインさ。」
「あ~ら、案外熟してないのねぇ。」
「いいや? 年月の割には結構熟してる上物だ。銘柄は・・・。」
俺は五本指を立てた右手に銃を投げてキャッチする。
その時既に銃口はオカマ野郎を捉えていた。
「『死神の鎌』だ。」
容赦なく三発オカマ野郎にぶっ放す。
オカマ野郎は身をよじって二発の弾丸の弾道から逃れ、最後の一発を手甲で弾く。
「何それ。」
そしてすぐさまフットワークを生かしてジグザグに動きながら接近してくる。
すぐにもう一丁の銃を構えて四発撃つ。
だが左右に位置を振られて上手く当たらない。
「チッ!」
奴の攻撃の射程内に入り、奴の攻撃を察知して銃で止める。
「五年も前の事引き摺ってるなんて案外あんた根暗なのね、モテないわよ?」
そこから更に連撃が来るのでなんとか銃で防ぐが徐々に押される。
「オカマからのモテ診断とかッ! 信憑性に欠けるんだけ、どッ!?」
左フックを体を下げて回避、右ストレートを身をよじって回避しながら一発ずつ撃つが奴も弾丸をよく見ており、左右に身体をずらしてどっちも回避される。
「あ~ら、オカマってッ! 女よりッ、女の目線を理解してるのよ? 女の子に言われるよりッ、参考になるとおもうんだけ、どッ?」
オカマ野郎の左アッパーを左にずれて躱して一発撃つがオカマ野郎も身体をずらして回避する。
そこから回し蹴りを放ってくるのを躱して水面蹴りで転ばせようとするが奴はそれを見切って一本足のまま跳躍してすぐさまその足を蹴り足に変えて俺の顔面に向かって蹴って来たのでなんとか銃で防ぐが押し切られて蹴り飛ばされる。
「ペッ、口の減らねぇオカマだな。」
負傷はあるがなんとか立ち上がり、転んだ際に口の中を切って出て来ていた血を吐き飛ばす。
多分感覚上昇って奴だ。
まともに戦っても勝ち目は無いな。
「お互い様でしょ? 皮肉屋のニヒル坊や。」
オカマ野郎は今度は蹴りと殴りを合わせたラッシュを放ってくる。
今度のはかなり早く、もはや銃で防ぐなんてことも難しく、腕で前方を防護しながら身を縮めて守りを固めて防ぎながら下がる。
「くっ!」
物資の格納庫の隅に追い込まれる。
「鬼ごっこは終わりのようね? 死になさい。」
オカマ野郎が一気に距離を詰めて俺のどてっ腹を殴る。
「ぐがぁッ!!」
拳の威力は凄まじく、俺の腹を貫いて風穴を開けた。
俺の死ぬ瞬間を見てオカマ野郎はほくそ笑んだがすぐに表情が変わる。
「!!!!?」
驚愕の顔だ。
それもその筈だ。
俺は手榴弾を取り出して手に持ったまま銃で撃ち抜いたからだ。
手榴弾は轟音と共に爆発して俺達を爆炎で包み込む。
だがオカマ野郎は危機を察知したのが早かったか、間一髪で爆風を逃れ後ろに飛び退いていた。
俺はと言うと・・・。
「あ~あ、逃げんじゃねぇよ。折角ホモ野郎のお熱いハグに嫌々応えてやろうとしてたってのによ。」
血まみれだが俺はピンピンしていた。
普通は五体が飛び散ってもおかしくない規模の爆発だが、俺には効かない。
いや、効きはするが死にはしない。
「初期実験体の能力、そういえばほとんどが『不死能力』だったわね?」
「へっ。」
一番爆発の影響を受けていた俺の左手は手が吹き飛び、骨まで露出していた。
だがその手は破損個所が液状化し、まるで人体が硫酸で溶かされるシーンを逆再生で見ているかのように元通りの手に再生されていき、手は何ごともなかったように元通りになった。
奴にぶち抜かれた腹も同様だ。
穴が小さくなるように塞がっていき、元通りの腹に戻っている。
そう、これが俺の輝ける人類としての能力だ。
「『どんな致命傷を負おうが脳が破壊されない限りは永遠に再生し続ける』・・・厄介な能力ねぇ。」
「ああ、ただこの能力は研究が難しく、俺以外の被験者は脳がイカれて様々な後遺症やらを持って廃人化、『死なないだけのデク人形』になっちまったがな。」
「ホント惜しいわよね? あんた、B.R.A.I.Nに残ってたら待遇良かったわよ?」
「悪いが俺は『選民思想』って奴が大嫌いでね。同じように被検体にされた奴で使えない奴が廃棄されるなんて知っちゃ我慢ならねぇんだよ。」
「それが研究所から逃げた理由? えらくお優しいのねぇ! あ、もしかして一緒に逃げた子の中に好みのタイプでもいたのかしら?」
「なんでも愛だ恋だの色ボケた話に持っていくのはオカマの悪い癖だぜ? 俺のはただの『兄貴心』だ。」
「なにそれ、『家族愛』って奴? 血も繋がってないのに? 生まれも国すらバラバラなのに『家族』?? 冗談も此処まで来ると大したもんだわ!」
「ああそうだ。本来俺ら輝ける人類は生まれた国すら違う、下手すりゃ一生出会わなかった。いや、出会ってなかったら幸せに生きていた、それこそ冗談のような関係だ。」
「なによ、自覚あるんじゃない。」
「それをB.R.A.I.Nは自分勝手な都合で拉致してきて実験動物にした。」
銃の弾倉を開く。
「しかも俺達の頭をいじくり回して『俺達が研究所で生み出された人工生命体』って嘘の記憶まで植え付けてな?」
話している間に銃の再装填を終えて弾倉を閉じて構える。
「B.R.A.I.Nが一番の『笑えない冗談』だろうがッ!!!!!」
「ぷっ! あはははは!!」
笑うオカマ野郎の様子なんざオカマい無しに銃弾をぶっ放す。
だが当然の様にオカマ野郎は身体をずらして回避して俺に詰め寄る。
「死ねやゴラァッ!!!」
両銃とも残弾を気にせず撃ちまくる。
「やぁねぇ!! 怒りに身を任せて叫びまくる暑苦しい男の子って! それに・・・。」
オカマ野郎はすぐそこまで詰め寄ってまた拳を構える。
「余計な事まで知っちゃう悪い子はもっと嫌いよ?」
拳の位置が高い、俺の頭を潰す気だ。
マズイ、防御が間に合わねぇ!!
「ッ!!?」
突如オカマ野郎は危険を察知して飛び退くと俺とオカマ野郎の間に何かが地面を叩きつけて瓦礫を巻き上げる。
「会ぁいたかったぜぇぇぇ!? オカマ野郎ぉぉぉぉ!!」
「・・・またあんた? 懲りないわねぇ。」
オカマ野郎は殺意むき出しな狂気の笑みを向けて来る目の前の女に呆れる。
「いいタイミングだグラ、愛してるぜ!!」
「うるせぇ、ロキウスの男が俺にナンパとか千年早ぇんだよ。」
「千年とかお互い生きてねぇじゃん、口説かせる気ねぇだろ。」
「ああ、ねぇな。」
「ちょっとぉ、あたしそっちのけで二人でイチャつかないでくれる?」
グラとのやり取りで痺れを切らしてオカマ野郎が会話に割り込んでくる。
「ああ、悪かったな。オカマ野郎には縁の無いやり取りだから妬いたか?」
「オカマ偏見やめてくれる?」
「で? 形勢逆転だ。二対一・・・いや。」
俺はさりげなく指をパチンと鳴らす。
『発射。』
「ッ!!」
俺の動きを察したのか、オカマ野郎は横に転がるように回避する。
すると本来オカマ野郎の頭があった位置に弾丸が通過する。
「三対一だ。」
「・・・構わないわよ? 別に。」
オカマ野郎は右拳だけを胸の高さまで上げ、軽く跳び続けながら構える。
「言うね。」
「どうでもいいけど撤回しろ。『イチャついてた』ってのをよ。」
俺は右手の銃だけ構え、グラは腰を落としながら槍の穂先を奴に向けたまま水平に構える。
「・・・。」
言って見たけどマズイな。
今の狙撃で奴はサンの位置を把握した。
俺の狙撃の合図も見逃さないだろうし、あの構えはどう考えてもちょこまか動く気満々だ。
それに奴は俺には使っていなかったが奥の手の超加速がある。
今の状況は互角どころか未だに勝算が薄いのは確かだ。
なんて考えを巡らせていた次の瞬間・・・。
「ッ!!?」
突如オカマ野郎の態勢が崩れる。
「・・・三対一?」
「あんた・・・!」
オカマ野郎は犯人に気づく。
そいつは剣をオカマ野郎の左足に刺していた。
「四対一だ。」
ウルドが悪い笑みで左脇からオカマ野郎を見上げていた。




